要人救出のためのタスクフォースチーム、コードネーム学園生活部が結成されたRTAの続き、はーじまーるよー。
前回はKちゃんの救出を済ませたので、今回はみーくんの救出に乗り出します。
移動は再びクルルァを使いますが、めぐねぇ号には一足先に学校に帰ってもらいます。
怪我人一人連れた状態では素早く『かれら』の中を切り抜けることは叶いません、いくらくるみちゃんとホモちゃんのダブルアタッカー構成でも速度が出ない以上囲まれてしまいます。
かと言って、移動時点で音が出てしまい『かれら』をおびき寄せてしまうクルルァを使う以上、車の中にKちゃんを残して護衛するというのも下策です。
ではどうするのが最も安全か、その答えは簡単です。
感染者であるホモちゃんを除いた中で筋力
学園周辺は初期マップということもあり、特に夜間の『かれら』の数はかなり少ない方です、おそらく遭遇したとしても合計して両手の指で数えきれる程度まで、それならばたとえ追いつかれたとしてもくるみちゃん一人で十分対処可能な量です。
対するショッピングモール組はどうかと言いますと、それなりの数の『かれら』が居るには居るのですが、別に倒す必要はないのでゆきちゃんセンサーを頼りに可能な限り戦闘は避けて目的地まで駆け抜けていきます、そのための機動力重点メンバーです。
モールはそもそも雨の日を突破していること、あるいは感染者であり単独行動を前提とされたバランスになっているようで、昼間は目も当てられない量の、夜間でもそこそこの数の『かれら』がいます、そこに人を担いで速度が落ちている状態で護衛はしんどいので、こっちは足かせなしにしたいんですよね。
最悪遭遇戦になったとしても同時に相手取るのは数人程度、ホモちゃんなら容易くひとひねりにできるのでさしたるロスもありません。
以上の理由から先にめぐねぇ達には帰還してもらいます、これが一番安全な方法だから納得してくれよな〜
「確かに、その通りですね……でも校外で別行動というのは……」
まあまあそう言わずに、それに後日再度向かうにしてもガソリンもったいないし一度で終わらせましょうや。
ホモちゃんも今更一人二人にやられるほど弱くもないし、早く二人を再会させてあげたいダルルォ?
「わかりました……気を付けてくださいね」
大丈夫だって安心しろよ〜、二人と要救助者には傷ひとつつけさせないから、それにまだめぐねぇにホモちゃん一族相伝(大嘘)の杖♂術を継承できてないから必ず戻るゾ。
これも今まで積み上げてきた信頼関係のなせる技ですね、信じろ(ゴリ押し)でなんとかできるようになってきました。
諦められてるだけとも言います。
とりあえずメンバーの同意も得られましたし、ショッピングモールへ倍速でほらいくどー。
私が呆然としている間に、先輩たちはさっさと班分けを決めて行動を開始していました。
どうやら私は、佐倉先生の車で一足先に学校へと戻るようです。
「あ、あの、向こう戦えそうなの本田……?先輩一人だけで本当に大丈夫ですか?何なら私一人でまだここで……」
「あぁ……まあ心配なのはわかるけどアイツなら一人でなんとかなるだろうし、安心しときな」
私の疑問に答えてくれたのは、シャベルを持った恵飛須沢先輩だった。
大丈夫って言うけれど、ショッピングモールはここより断然多くの『かれら』が居て、私一人で隠れて逃げるのも一苦労な有り様だったのに二人も守りながら……いや、戻るときには三人を守りながら動けるものだろうか。
確かに車に戻るときに見た本田先輩はすごく強かったけれど……
「どうするめぐねぇ、説明しといた方がいいかな」
「そう……ですね……萌香さんには悪い気もしますけど、いつかはお話しないといけないことですし……」
それから私は、学校でも発生した惨事について聞いた。
突如発生したパンデミックから、まずは屋上へ避難したことや、校舎内を制圧していったことなどだ。
そして、本田先輩がすでに噛まれている事も。
未だに本田先輩以外は確認していないそうだが、学校の地下にシェルターが用意されていて、そこにあった抗ウイルス剤を使って今は症状を抑えている状態らしい。
しかもその抗ウイルス剤、職員室に置かれていた、先生すら中身を知らない緊急時マニュアルをたまたま見つけて、そこから傷を負った状態で単独地下まで赴き入手して迷わず投与したそうだ。
そしてその副作用というか、後遺症として異常な怪力や無尽蔵の体力なんていったものがあり、現状学校メンバーの最大戦力らしい。
んなアホな……そんな映画みたいな物が学校にあったなんて想像したこともなかった。
「信じられないのもわかるわ、私もつい最近までずっと疑っていたから」
少し悲しそうに若狭先輩が苦笑していた。
信じられないというか……現実がまるで物語のようになっているから、もはやこのツッコミが意味をなすのかわからないけれど是非叫ばせてほしい。
「あの人本当に人間!?出来の悪い小説か何かの主人公じゃなくて!?」
「それはあたしも思うわ」
「あの……萌香さんは本当に優しい人ですから……たまに突拍子もないことをしたりしますけど」
「まあ……そうねぇ……」
みんな信頼しているのに誰も否定してくれないところに、なんと言うか、その……さっきまで見てた本田先輩らしさを感じた。
ショッピングモールに到着ッ!(KZNAKR)
『かれら』も入り口のバーもシカトして駐車場に突っ込みます。
わざわざこんな夜中に立体駐車場に居るのはヤンキーとか暴走族だった『かれら』位のもので、人数は居ませんので無視だ無視。
「お、お前なぁ!突っ込むなら声かけろ!寿命縮むわ!」
つっこむぞつかまれッ!ウォンッ
というジョークは置いといて、駐車場に入ったら入口付近に車を停めて、ちゃっちゃとみーくん救助に向かいましょう。
すでにKちゃんから住処にしている部屋の場所は聞いているので、そこまで一直線に向かいます、入り組んだ場所ではゆきちゃんセンサーで角待ち野郎を察知するか、そうじゃなくてもホモちゃんなら出会い頭に一瞬で抹☆札できるので問題ありません。
ちなみに物資収集は後回しです、何故なら人出が多いほうが効率いいからですね。
そのためのキャリーバッグ、あとそのための筋力?
画面では無事目的地であるみーくんが立てこもる部屋までたどり着きましたね。
部屋の前に彼らが居座っていますが、邪魔なので掃除しちゃいましょう。
開けろ!デトロイト市警だ!
すると慌てた様子でみーくんが部屋から飛び出してきます、この時扉の正面に立っているとドアで攻撃されるので扉から離れておきましょう。
「ひとっ!?救助が来たんですか!」
部屋の中からたった今まで寝てたみーくんがドスケベランジェリー姿で現れます、あら^〜いいですわゾ〜これ。
とりあえずKちゃんとかいう自称君の友人から教えてもらってここにきたんだけど、付いてきてもらってもいいかな?
「圭……!よかった……生きてたんだ……」
一階に車停めてあるから、物資回収しながら戻りましょ。
君も服着て持ち物まとめたら出発するから、準備ヨロシクぅ!
「すみません、ここに来るまでの間に犬を見かけませんでしたか?太郎丸って名前の……これくらいの大きさなんですけど」
はい、ここで先駆者兄貴と同じく太郎丸捜索イベントが始まります。
時間が経ってピアノに現れるまではどこをどう探したって発見は不可能なので、とりあえずは「犬ならどんくさい『かれら』に捕まりはしないだろうし、とりあえず物資集めながら探そう」と言って主目的である物資調達を行っていきましょう。
ここで手に入れるべきは何より食料です。
あと数日で脱出前のラッシュが始まってしまうので、それまでに可能な限り全員の正気度を高く保つ必要があります。
なにせラッシュの日には『救助に来た(救助とは言っていない)ヘリが墜落する』『『かれら』の大量発生』『学校が火事になる』と言った正気度メガトンコインが大量に用意されています。
特にりーさんの正気度は常時気を付けておく必要が出てくるので、最も手軽な回復手段たる食事に必要となる食材は最優先回収目標です。
次点ではバリケード強化用の資材類や工具類となりますが、今日はそこまで優先して拾う必要はありません、後日暇なときにでも外に回収に行けばいいだけです、そのための言い訳もちゃんと用意してあります、もちろん集めておくことに越したことはありませんので、可能なら拾い集めておきます。
みーくんもそれで一応納得してくれるので、これから一階に向かって移動しつつ回収を済ませてしまいましょう。
途中現れる『かれら』は美味しく経験値として頂きつつ、所定の時間を潰しますと、ピアノのところに太郎丸が現れるので、入り口のホールに向かいます。
おーおーおーおー、どこ行ってたんだお前よぉ、逃げやがってよーおい。(HND△)
「太郎丸……!あんなところに……」
みーくんもバレるとまずいと思ったのか、ちゃんと小声で情報共有してくれます。
本来であれば拾ってきたブザーなんかを使って『かれら』をまとめてしまうのが楽なんですが、今回はもっと楽な方法が用意されています。
もうみなさんおわかりだと思いますが……
「そんな、いくら先輩が強くてもあんな中に入って行くなんて自殺行為ですよ!」
そう、ホモちゃんなら誰にも気付かれずにピアノまで行って太郎丸を回収して帰ってこれるのです。
『かれら』に誤認されてるからこそ取れる方法ですが、一番楽で確実で安全な方法です。
音についてもピアノの鍵盤叩いてエレクトリカルコミュニケーション(YYUT)している『かれら』がいる限り気にする必要もないので超余裕です。
まあ見ていたまえよ(余裕)。
「私としても大丈夫だとわかってたって心配だから、ちゃんと安全策使おうぜ?」
「そうだよ、せっかくこれ拾ったんだから無茶しちゃダメだよ!」
えぇ……できればブザー類は極力使いたくなかったんですけど……流石に反対派三人は押しきれませんね……大人のくせにちょろいの(めぐねぇ)とか脳筋だからちょろいの(くるみちゃん)とかちょろいの(Kちゃん)いないし。
しぶしぶ了承して、ブザーを鳴らして遠くに放りましょう、そうすれば『かれら』は音源に誘導されて離れていくので、より安全に回収にいけます。
流石にそうすれば一人で近づくのを許してくれるので回収に行きましょ。
ほーら太郎丸〜お迎えに来ましたよ〜
おい、なぜホモちゃんを無視して真っ先にゆきちゃんに向かって走っていった。
いくらブザーに惹かれて数が減ったとはいえ、わざわざホモちゃんを避ける意味無かったダルルォ!?
ま、まぁええわ、目標は達成したし許したる。
とりあえず後は車に乗って学校に帰るゾ〜。
車までの道中に居る『かれら』は、すでに防犯ブザーに吸い寄せられて減っているのでさっさと乗り込んで脱出しますよ。
「くれぐれも安全運転で頼むからな……」
ここまで事故は一度もしてないんだから大丈夫だって安心しろよ〜
それじゃあ早速入った時と同じで……つっこむぞつかまれッ!ウォンッ
今度は出口側のバーをふっ飛ばして道路に出たら学校までは安全運転で帰りましょう、ちょこちょこ『かれら』を挽いてハンバーグにちょうど良さそうなひき肉にしてたりしてフロントやバンパーが凹んだりしてますが、どうせ私の車じゃないしどうでもええわ(レ)。
ちなみに今壊したバーですが、無意味に破壊したわけではありません、次回以降出入りするときに一々壊してない方から入るようにするよりも、今のうちに両方壊してしまっておくほうが楽だから破壊したまでです、決してガバではありません、それだけは真実を伝えたかった。
「わざわざそっちのバー壊す意味あったか!?お前もう替われよ!私のほうがマシに運転できる気がするわ!」
「……ゆき先輩、この人(頭)大丈夫ですか?」
「……もえちゃんはね、すごく頼りになるんだよ!」
うるせぇよ!お前ら誰も運転スキル持ってないんだからまともに運転できないだろ!いい加減にしろ!
私が一番うまくこの車を運転できるんだ!(天パ並感)
そのまま車内でギャーギャー騒ぎながら学校へと帰っていきます。
ちなみに主人公を除いて運転スキル持ちは主要メンバー内ではめぐねぇとくるみちゃんの二名のみとなります。
そしてくるみちゃんはホモちゃんと同じくゲーム内で運転覚えた人です、同じ条件なのになんでくるみちゃんが運転の時は文句でないんですかね〜、不思議ですね〜。
その後は宣言通りちょっとした『かれら』との人身事故こそありましたが、『かれら』は人ではないので無事故で学校に辿りつけました。
校舎内にはほとんど『かれら』も居ないので素早く生徒会室に戻りましょう。
居たよ!みーくんが!
「圭!」
「美紀!」
感動の再会に涙して抱擁する美少女、あぁ^〜たまりませんわ!
この光景を見られただけでも助けた価値があったというものです。
他のみんなも、こんな世界になっても変わらぬ友情と、そして再び巡り会えた奇跡に直面して正気度を大きく回復しています。
戦力補強、人手の獲得、更に正気度の回復といたれりつくせりな神イベントの消化も終わったところで、夜も更けていますしホモちゃんの睡眠欲も無視できないところまで来ているので寝ましょうか。
症状が進行するに連れてだんだん活動できる時間も減っていくので、マスクデータになっている進行度の指標として、こういった睡眠欲は割と有効です。
最終イベントまでは余裕で持ちそうですかね。
とりあえず今宵はここまでに致しとうございます。
手錠もしっかりはめておやすみなさーい!と言ったところで今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。
突然扉が叩かれた音で、私は急速に目を覚ました。
それは今までのように体ごとぶつかったような重たい音ではなく、客人を訪れた時にするような、拳で叩くノックのような音。
もしかして、圭が戻ってきた……?
一瞬そう思ったけれど、次にかけられた言葉で私はそれ以上の驚きを感じた。
「開けろ!デトロイト市警だ!」
「意味わかんないこと言って威圧してんじゃねえよ!普通に助けに来たって言えよ!というかデトロイトってイミフだわ!」
なんとも気の抜けるようなやり取りだが、それ以上に驚いた事があった、今この人たちは助けに来たって……
「ひとっ!?救助が来たんですか!」
慌てて扉を開くと、三人の女の子が立っていた。
救助と言うには、少し頼りないようにも感じてしまったけれど、よくよく考えると驚きを隠せない。
こんな終わってしまった世界で当たり前のように生存し、あまつさえ女の子がたったの三人で外を歩き回れるだけの力を持っているという事に。
というか、チョーカーをつけている子や、猫耳のような帽子を被った子はわかるのだが、道路標識を片手に血まみれというのはいささかショッキングな光景にすぎるし、まさか私は夢でも見ているんじゃないだろうか。
こっそり後ろ手に体をつまんでしまった私を、いったい誰が責められるだろう。
あと通行禁止の標識なのは彼女なりのジョークだろうか?
この先死者通行禁止。
「君の友達らしい圭ちゃん?って子から君を助けて欲しいって言われてきたんだけど、ついてきてもらっていいかな?」
「圭……!よかった、生きてたんだ……」
私の準備を待っている間、何故先輩達─どうやら全員私と同じ巡ヶ丘高校の先輩らしい─がここにやってきたのかを聞いた。
圭はここを抜けだしたあと、足を怪我するも駅までたどり着き、そこからラジオを使って救助を呼びかけて、それをたまたま聞いた先輩達が圭を助けて、そこからさらに私の情報を得て助けに来てくれたらしい。
巡り巡って、圭は私を助けてくれた。
ここで迎える緩やかな死に抗って、この荒廃した世界に飛び出した圭のおかげで、私の熱を失い始めていた希望に新たな
話を聞く限りなら、確かにここに居るよりよっぽど学校にいたほうが良いだろう。
食料は貯蔵があり、電気も水も(なんとシャワーまで!)使えて、そして何より多くの人が集まっている。
ほんの少しの間だけだが、一人と一匹で過ごしてわかったことがあった。
人は、孤独に耐えられる生き物ではない。
私も合流することで物資面で迷惑をかけてしまうことは心苦しいが、それでもまた人の輪の中に入ることができるというのはとても嬉しいことだった。
誰とも会話ができない、触れ合えないというものは思いの外精神に来る、そう学べた時間だった。
そう言えば、太郎丸はどうしたんだろう?
さっきまで一緒にいたはずなのに、気づいたらどこにも……っ!
私は急いで先輩達に、太郎丸という犬を見かけなかったか聞いてみたけれど、誰も見かけていないらしい。
一直線にここに向かってきたため見ていないところも多く、犬なら逃げ切るのも容易いだろうからとりあえず探してみようと提案してくれた。
元々物資集めも兼ねて来ているから、捜索するのは問題ないそうで、確かに犬が、それも太郎丸のような小型犬が『かれら』に摑まるというのは想像しにくい。
私もこれから世話になることから、資材集めのついでというのも賛成できた。
それにしてもわざわざキャリーバッグまで持ってくるというのは本当に準備がいい。
その後ショッピングモールを下って物資を集めていったが、ついぞ太郎丸は見かけなかった。
どうにかもう一度探させてもらえないか声をかけようとしたところで、先輩がホールの方に目を向けました。
「もしかして太郎丸ってあれ?」
わたしもそっちを見ると、ピアノの上でぐるぐると降りる隙を伺っている太郎丸の姿がありました。
最悪なことに、そのピアノの鍵盤にぶつかり音を立て続けている『かれら』が居るせいで、多くの『かれら』がそこに集まってしまっていてとてもではないが簡単に助けられる状態ではない。
どうすれば太郎丸を……
「んー、まあ私が行けば拾ってこれるよ、ちょいと行ってくるね」
あっさりと、まるで『ちょっとコンビニまで買い物行ってくる』とでも言うような、あまりにも軽すぎる言い方に一瞬私は呆然としてしまったけれど、すぐに止めに入る。
一体この人は何を言ってるんですか!
確かに本田先輩はここまでも正直引くくらいサクッとその手に持った道路標識で『かれら』を文字通りの意味合いで粉砕してきていました、それでもあの数の中に入ると言うのはただの自殺にしか思えない!
一緒にいた丈槍先輩や柚村先輩も宥めて、どういうわけかわからないけど本田先輩は不服そうにしながら、防犯ブザーを使っての救助を行うことになりました。
そうして無事太郎丸と合流出来た私達は、本田先輩達が乗ってきた車で学校に帰ることになりました。
躊躇なく『かれら』を轢くこととか、意味もなく──先輩的には次来るときのために──駐車場のバーを破壊したりとか、やっぱりこの人頭おかしいんじゃないか、あるいはこんな世界になっておかしくなってしまったんじゃないかと思ってしまう。
ただ、こんな状況になっても笑い合える人がいるというのは、とても心強いことだと、改めて思えるちょっとした旅路になりました。
「本田先輩が、噛まれている……それって平気なんですか?」
学校に到着してその日のうちに、佐倉先生から現状などについて話を聞いた。
パンデミックが起こった直後のこと、雨の事、何よりあの事件の初日に本田先輩が噛まれているという事。
「そんな都合のいいこと有りますか?噛まれて直ぐにたまたま抗ウイルス剤の場所がわかって取りに行くなんて……むしろ本田先輩は最初からこの事──」
「美紀、それはダメだよ……私も思わなくもなかったけどさ」
「……すいません、ちょっと色々ありすぎて」
「いえ……まあ……そう思ってしまうのも仕方ないことだとは思いますから」
「深く考えない方が気が楽だぞ、萌香だからな」
どうにもよろしくない。
昔から圭にはよく言われていたけれど、私は論理的に考えすぎるし思ったことをすぐ口にしてしまう。
しかし、こればっかりは私は悪くないと言いたい。
あの人が規格外すぎるのが何よりいけないと思うのだ。
何よりあの人の行動全てがおかしいと言える。
初日に大人の佐倉先生を選んで助けて屋上に連れて行き、噛まれたら抗ウイルス剤を入手しに隠されていた地下へ。
症状が安定したら校内の残された生徒を助けながら物資を集めて生存者へ贈る?
どんな存在がそんなことを可能にすると言うんだろうか。
よほど慈愛の精神があふれた怪物か、あるいは何か裏のある怪物にしか思えない。
私や圭を助けてくれたことには感謝しているし、実際彼女のおかげでこれだけ多くの人が助かっているから、信用してもいいのかもしれないけれど、私はとてもではないけれど信頼するというのは難しいかもしれない。
それだけだったら、の話だが。
まだこれから、実際に接していかないとわからないけれど、少なくとも悪い怪物ではない……ような気はしている。
何せその怪物は、今まさに私達の前で身動きが取れないように体を拘束してアホづr……幸せそうな顔をして寝ているのだから。
みーくんの懸念はそらそうだなと書いてて思いました(小並感)