咲-Saki- 京太郎ss置き場   作:五代健治

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2年前に書いたもの。
これ書いてから2年もたっていることに心が折れそう。


和誕生日ss2017

「なぁ和、ちょっと質問があるんだがいいか?」

「? はい、何でしょう?」

 

 夏休みが開けた9月の初旬、他に人のいない部室で、和に話しかけた。

 別に二人きりになる必要はなかったのだが、ありがたくはあった。

 

「簡単な心理テストだと思ってくれればいいけど、頭・首・手・足・お腹。どれがいい?」

「はい?」

 

 和が怪訝な表情を浮かべる。まぁ普通そうだよな。

 

「うん、直感でいいから。深く考えないでくれ。別に答えた部分を斬って命を奪うとかそんなミステリー小説みたいなことはないから」

「余計に心配になりますよ、その補足………じゃあ、手で」

「手だな? わかった」

「結局なんなんですか?」

「気にしないでくれ、そんじゃお疲れ」

「?」

 

 和の疑問を打ち切り、俺は部室から出て携帯を取り出した。

 通話のコールが9回目に入ったあたりで、相手が出る。

 

『もしもし、すみません。お嬢様の前でして』

「いえ、俺の方こそすみません。それで頼んでいたことですけど、手になりそうです」

『なるほど。では材料をそろえておきます。今日は5時ごろいらっしゃるのですよね?』

「はい、じゃあまた後でお願いします」

『ええ、お待ちしていますよ』

 

 

 そんな和に疑問を残すようなやり取りから約1か月後。

 長野には早くも寒波がき始めていた。

 

「「「「「和((ちゃん))、ハッピバースデー!」」」」」

 

 パンパン! と、クラッカーが部室で鳴らされる。

 

 さすがにどでかいホールケーキは持ち込んでいないが、各自が簡単なお菓子を持ち込んでのプチパーティーが開かれる。

 部室でこんなことをしていいのか疑問だが、ベッドを設置したりとやりたい放題なのは今更だろう。

 

「はい! プレゼントだよー!」

 

 それぞれからプレゼントが手渡されていく。

 

 咲はエトペン柄のブックカバー。

 優希は手作りタコス。

 染谷新部長は実家の割引券。

 竹井先輩は雪だるま型の髪留め。

 そして俺からは、ラッピングされた包み。

 

「ほい、和。どうぞ」

「ありがとうございます。

 わぁ………!」

 

 包みを開けた和の笑みがさらに広がる。

 中から出てきたのは、手の甲の部分にエトペンの柄が入ったピンクの手袋だ。

 

「すごいです!

 これ、どこで買ったんですか!?」

「あ、いや………手編みなんだけど………」

「手編み!?」

 

 和が手袋を回して、まじまじと全体を眺める。

 

「夏休みが終わったころに、和に訊いただろ?

 頭・首・手・足・お腹だったらどこがいいって。

 頭だったら帽子、首だったらマフラー、手だったら手袋、足だったら靴下っていう具合に考えていたんだ。

 ちなみにお腹の場合は腹巻を考えていたんだけど、女の子へのプレゼントにそれはどうかと思ったから手袋を選んでくれて助かった」

「すごいです………! 須賀君、本当にありがとうございます!」

 

 顔を赤くしながら手袋に頬ずりする和を見て、俺の胸の中にも嬉しさがこみ上げる。

 

「早速つけてもいいですか?」

「ああ、最近寒くなってきたし、丁度いいと思って作ったわけだし」

「それにしても、京ちゃん編み物出来るのは知ってたけど、そんなにうまかったっけ?」

「龍門渕の執事さんに教えてもらったんだ。1か月賭けて何とか間に合わせることが出来たよ」

「ふふふ………エトペンてぶくろ………えへへ………///」

「のどちゃん喜び方が半端ねーじぇ」

「ハギヨシさんにもお礼言っておかないとなぁ」

 

 その後お菓子を食べるために和も一旦手袋を外し、パーティーも済んで部活が始まり、6時にはお開きとなった。

 

「お疲れさんじゃ。鍵はわしが返すから先にあんたらは帰りんしゃい」

「はーい」

 

 最後に染谷部長が部室の鍵を閉め、俺達は先に帰路に着いた。

 

「あの……須賀君………」

「ん?」

 

 帰り道、咲と優希との距離が少し離れた隙に、和が俺の服の裾を引っ張る。

 

「今日は本当に、素敵な手袋をありがとうございました。ありがとうございます」

「ん………どういたしまして」

 

 満面の笑みを浮かべる和を正面から見据えるのが照れくさくて、にやける口元を手で覆って顔を背ける。

 

「その………来年も、欲しかったら言ってくれよ。今度は俺一人で何とか頑張るからさ」

「須賀君………。そうですね…………じゃあ」

「?」

 

 和が、俺が口元を隠している手を取ってどかせる。

 その行動の意味を理解するより早く

 

ちゅっ

 

「!!?×▼@?!*!○!¥!!?」

 

頬に触れた柔らかくもほんの少しだけ湿った感触に動転する。

 

「来年だけじゃなくて………もっと先まで。毎年1個ずつくださいね」

「え? あ、え? そ、それって………」

「さ、行きましょう。咲さんたちを待たせてはまずいです」

「お、おい?」

 

 和は俺の声を無視して、少し距離の離れてしまった咲たちの元へと駆けて行った。

 その時の俺は呆けて結局その場にもう数分立ち尽くしてしまったのだが―――――

 

 

 あれから10年。

 

 寒い時期に一緒に出掛ける時、和は俺が最初にプレゼントした手袋をいつもつけてくれている。

 自宅に帰ってからその手袋を取り、中から結婚指輪をつけた和の綺麗な手が出てくるのを見る度に、俺はとても幸せな気分になる。




のどっちいぇい~
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