咲-Saki- 京太郎ss置き場   作:五代健治

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干したての布団でぐっすり眠っていた時に思い付いた話だった気がする。


京和ss①

「よいしょ……っと」

 

 5月の上旬、よく晴れた日。

 マンションのベランダから、午前のうちに干しておいた布団を取り込む。

 太陽の光を浴びたそれは、癒し成分のかたまりだ。

 

 暖かさを失わないうちに取り込み、ベッドの上にシーツ、敷布団、掛け布団と重ねていく。

 

「和ー、布団取り込んだぞー」

「はーい」

 

 同棲中の彼女を呼ぶと、すぐにパタパタと可愛らしい足音が向かってくる。

 ふんす、 と少し上気した様子の彼女も、干したての布団が待ち遠しくて仕方ないようだ。

 

「えいっ」

 

 ぼすっ と、彼女がベッドへダイブする。

 ふかふかの布団に全身をすり寄せる彼女は、小動物のようで愛らしい。

 

「のーどかっ」

「ひゃんっ」

 

 そんな彼女と布団を取り合うように、俺もベッドへとダイブする。

 太陽の匂いと彼女の甘い匂いに包まれ、これ以上なく幸せなひと時を過ごす。

 

「ふぁ……ぅ……」

 

 ひとしきりじゃれあいを楽しむと、和があくびを漏らす。

 時刻は午後3時。お昼を食べてから掃除と洗濯を二人で済ませ、日の傾く夕方まで、干したての布団で一緒に寝る。

 起きたら眠気覚ましに買い物に行き、二人で夕飯を作る。

 彼女とゆっくり過ごすパターンの1日だ。

 

「京太郎くん」

「ん」

 

 俺があおむけに寝て、その左脇に和が収まる。

 身体を俺に密着させ、俺の左胸の上に頭を乗せる。

 布団が吸い込んだ太陽の温かさと、彼女の温もりに包まれ、幸福感で満たされる。

 

「京太郎くん……」

「んー?」

「布団が温かいですね……」

 

 ぷっ、 と俺は少し小さく噴き出す。

 

「なんだそれ、俺は『死んでもいいや』って答えればいいのか?」

「ダメですそんなの」

 

 ぷぅ と、彼女が頬を膨らませるのを、左胸に伝わる感触で感じる。

「わかってるよ」

 

 前に和に聞いたことがある。

 俺の左胸を枕代わりにするのはどうしてかと。

 すると和はちょっと恥ずかしがったあとこう答えた。

 

『なんていうか……こうしてあなたの心臓の音を聞いていると、すごく幸せになるんです。

 ああ、自分の好きな人が生きてる って、感じられて……』

 

 それ以来、俺達が寝る時は、いつもこの恰好で寝ている。

 和は俺の心音を聞きながら、俺はそんな和の頭を撫でながら、身も心も一緒の時間を過ごす。

 

 大卒でプロ入りし、日々戦う彼女を休日はこうして支える。

 プロとして鎬を削り、公私ともに凛とした態度を貫く一方、二人きりの時はこうやって甘えてくれる彼女が、何よりも大事でいとおしい。

 

「京太郎くん………」

「んー…?」

「とっても……しあわせです…………」

 

「ああ……俺も」

 

 こんな1日の過ごし方を、ずっと無くさないでいられる関係でありたいなと心に願いながら、俺達は、多分世界で一番幸せな昼寝を始めた。




私にしては結構短めな気がする。
和の話は割と頻繁に浮かぶけど、一つ一つは短い話かな。
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