休憩中、集めた基板の量を確かめてみた。うーん、控えめに言って予想を超えてる。隣の山積みになってる基板の箱を見ればわかる。どんだけ捨ててんだ。箱二つ埋まるぞオイ。
「限りある資源をいとも容易く捨てられる人類の心情がわからん。灰域とアラガミに食い尽くされるより先に資源不足で自滅しそう……全人類アラガミにでもなったら解決するかな」
「何か怖いこと言いだしたこの人!?」
青ざめながらこちらを見るキース。
そういや紹介し忘れてたけど、キースは機械いじりとかが得意なジークの弟だよ。
潜航灰域濃度レベルが低い代わりに、技術屋として活躍しているよ。
「いやいや、現実から目を逸らさず考えてみ?減り続ける物資、汚染されていく土地、どう考えても全滅は免れないっしょ?だったらそんなでも生きていける道探すのって自然じゃね?故にアラガミになるしかなくね?」
「いやどっちにしても全滅してるから!本末転倒もいいところだから!」
「ものは考えようだよ。元・人間だったっていう事実があれば全滅ではないではないと思う」
「だからそれ全滅してるんだってば!なにそのイカれた悪役みたいな考え方!?」
「下らん!正義だ悪だなんてものに答えはねぇんだ!」
「そのアホ理論に意味は無いって答えはあるけどね!」
キースはひとしきりツッコミ終えたところで、ため息交じりに口を開く。
「そんなこと口に出してると、余計に奇異な目で見られることになるよ?気をつけなよ」
「表現に関して規制感じますねー」
「規制以前の問題なんだけど」
そうかなぁ~、よく他のAGE達からは「変わってる」とかよく言われるけど、私そんな変な事言ってる自覚ないし、思ってることが自由に話せないってのが性に合わないっていうかー、口に出さないと気が済まないというかー、気がつくと懲罰房にいましたー、みたいな?
何が言いたいかというとね、私は普通に話してるつもりなの。なにも特別なことはしてないの。……まぁさっきの人類アラガミ化はさすがにどうかも思いますけども。
「……問題と言えばキース、昔よく耳にした『暴君』って呼ばれてるAGEどうしてるんだろう」
「暴君……?聞いたことないなぁ、なにそれ?」
「伝説のAGEだよ。今日まで強いられてるAGEの隷属身分に抗った、一番最初のAGEって言われてる」
『暴君』──。
存在していそうで存在していない、少し存在していると噂されたクッッッソ強いAGE。
過去最高傑作のAGEと言われており、適合試験で手に入れた怪力で、繋がれていた腕輪の接合部を
その際に逃げ出して以降、傘下を増やして各地のミナトを襲撃し回っていたとされる。
枷から解き放たれた猛獣が如く、全てを欲しいままに暴れ回ったその様から『暴君』の異名が付けられた。
目撃情報は多々あるが、なぜか写真媒体が存在していないため、実在しないのでは?と考える人もいるが、略奪行為自体は実際に行われていたため、それに対しグレイプニルが煮え湯を飲まされていたのは事実である。
「AGEが開発された初期の頃は、そりゃあもうそいつらの反発がヒドかったらしくて、他にも『獄王』、『魔神』、『夜叉』とかの異名持ちのAGEが、グレイプニルに楯突いて好き放題してたらしーよ」
「へぇ~、そんな連中がいたんだね。今は音沙汰ないみたいだけど」
「ほとんど取り押さえられたからねぇ、『暴君』だけは捕まってなかったんだ。けど7年前くらいから情報が更新されてなくて。どうなったんだろ」
「ふーん?ずいぶん詳しいね先輩。好きなの?そういうの」
「んー、まぁそんなところかな」
……ホントはペニーウォートから逃げ出す手段として、このAGEたちになんとかしてここを襲わせられないかって足取りを探ってたら、詳しくなっただけなんだよね。
ホントに来たら来たで、こっちの命の保証はしかねたけど。特に暴君。
「……?」
ふと、妙な静けさを感じて窪地の中心の方を向いた。
見えたのはアックスレイダーたちと遊んでいるマール、オウガテイルと一緒にうたた寝をしているショウ。
──リルの姿だけそこにはなかった。
「キース。みんなを集めて」
「え?」
「イヤな感じがする。多分、中型以上が来てる」
私はすぐ、神機を取り出してそこから駆けだした。
私仕様のショートブレード『アメミト短剣型 千』だよーん。って言ってる場合じゃねぇ!
「先輩!?どこ行くの!?」
「リルを探してくるッ!」
おいおいおい……まさか遭遇とかしてないよな……!?頼むリル──無事でいて──!
さもないと私…………………………ユウゴにバックブリーカー喰らわされるから!!!
「助けたきゃ理由なんてどうでもいいじゃなーーーーーーーーーい!!」
「今スゴく不純な動機で動いてる気がしたんだけどーーーーーーーーーー!?」
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □
『GGGG──』
なんとか足を動かして、ガラクタの物陰に隠れて必死に息を殺した。大丈夫、まだ見つかってない、見つかってない……!
お願い、気づかないで……!助けて……!
『──キィ、キィ!』
あっ──あの子が……!
『GG……』
『キィ!キュ!』
ダメ!そのアラガミはあなたと違うの!近づいちゃダメ!
そんな願いが届くはずがなく、鳥の顔のアラガミは、火の玉を子どもに叩きつけようとして──
『GAAA──!』
『────ガルァアア!!』
──ッ!? オウガテイルのお母さん──!
生きてたの!?
あと少しの所で噛み付いて止めた!
『GOOOO!?GAAA!!GAAA──!!』
『……!!……ガゥ……!!』
死に物狂いで食らいついてる……!
……もしかして、あの子を助けようとして──?
『GAAAAAAAA────!!!』
『ガ────』
鳥の顔のアラガミは、噛み付いたままのオウガテイルのお母さんを、力いっぱい壁に叩きつけた。それでも、お母さんは、アラガミに食らいついたまま離さない。
何度も、何度も、どんなに攻撃されたって、お母さんは怯まない。
──と、その途中に、私と、お母さんの視線が合った。
一瞬だったけど、たった一瞬なんだけど、私に、何かを訴えかけてた気がした。
「────っ……!」
そうだ──今なら、あいつがお母さんに気を取られている今なら……!
私は迷うこと無く、足を踏み出して──
「──行こう!」
子どもを抱えて、みんなの所まで駆けだした。
振り向かずに、でも……ただ一言呟いて。
「……ごめんなさい……!」
ゴミの山を抜けると、ここのアラガミたちの群れと、その中を走る人影が目に入る。そして、私を呼ぶ声も聞こえる。
「リルーーーーーーーーー!!どこ行ったーーーーーーーーー!!おーーーーーーーーい!!」
「ライン──!」
その時、後ろから、とてもイヤな気配を感じた。あいつが──来る!
「逃げて──!!」
私が叫ぶのと、周りに炎がまき散らされたのは同時だった。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □
「ヤッバ──!」
リルの声が聞こえたと思ったら、ゴミ山の一角から火災が発生しよった!この火力……クアドリガでも入ってきたか……!?
とにかく炎の上がった方から「逃げて」って聞こえた。多分そこだ!死んでんなよ、リル!じゃないと私(の背骨)が死ぬ!
「──ッ、いた!
けどなんか──うわぁメンドーそうなのいるぅぅ!」
さっきの炎に吹き飛ばされたのか、うずくまって横たわるリルに──その炎を放ったと思うアラガミを見つけた。なんっだあれ!?太陽が!トーリーニーティ~!夜なんて来そうにねぇ!
にしても、見たことないアラガミだな。
鳥の顔、ネヴァン?浮いてますやん。
グウゾウ?手足あるやん。
あと……えーと、何て言ったっけちょうちょみたいなあのアラガミ。アカンど忘れした。まぁ属性違うからそれはないな。わかるのは──。
『GGGG……!』
──えらく小っさい奴だってことか。体格じゃなくて性格が。
どうにも、黒こげになって投げ出されたそのオウガテイルを、ボコボコにしてたらしい。たった一匹相手にこれだけ執拗に……君たちみたいなのが食べられるのは自然の摂理ではあるけれど、こんな暴挙を許しておくほどラインさん外道じゃないよ──!
「全く、食い物で遊ぶなって習わなかったのかこの鳥頭」
携帯していた小瓶の蓋を開けて、一気に飲み干す。すると鳥頭のアラガミは、私に視線を移して吠えた。
『──GAAAAAAAAAAAAA!!!』
挑発フェロモン。飲むとアラガミからのヘイトを稼げる、効果てきめんだね。
「ほらこっちだ!こっち来い!」
神機を振り回しながら、窪地のひらけた場所に向かって走った。鳥頭も私に倣うように付いてくる。
ここでまた火を放たれると、ゴミ山に移って燃え広がる恐れがある。可燃物多いからなぁここ……そうなりゃここは火の海だ。アラガミたちはともかく、私らは普通に焼け死ぬから!
絶対に!防がねば!ならん!
さて……ここは、良い感じのセリフがあると、映えると思いますんで──
「最初に言っておく──お前に食わせるタンメンはねェ!!」
「タンメン!?」
遠距離ツッコミ、ナイスショットだキース。
と言うわけで鳥頭、今日のアラガミ食堂は閉店だ。とっとと出て行ってもらおう。
キースのツッコミを合図に、鳥頭が短く吠えて突進する。敢えてスレスレで躱すと同時に、神機を
『G──』
バースト状態に移行。ステップした勢いで下半身に一刀、さらにステップして背後から切り上げて跳躍──ライジングステップで空中へ。数回切りつけて滞空しつつ、最後に切り下ろして地面に戻る。
鳥頭がこちらを向こうとすれば、すれ違いざまに切りつけてまた背後へ──。あとは飛んで、切って、背後に移動の繰り返しかな、パターン入りました。イケる。
『GGGGGG……!!』
「──!」
っと、そうはいかないか。炎を纏いながらあっちも空中に、からのー?
『──GAAッ!!』
「っ熱……!」
降りてきた瞬間にシールドを展開して防げたものの、熱気が装甲の隙間から吹き付けてくる。
これは、ストンピング──いや足無いから違うか。着地と同時に炎を衝撃波みたいにまき散らすのね。低射程ながらも、全方位攻撃持ち。意外にも死角が無いな……。
「ン?」
展開したままの装甲の上から鳥頭の様子を見ると、右肩から手先にかけて、複数の歯形が見つかった。
アラガミはそう簡単に傷つかない、結合崩壊させるのも一苦労。でもそれは、神機使いでの話。あの噛み跡は──あのオウガテイルか!
「ナイスファイト」
思わぬファインプレーに私は、ニッと口角を上げる。すかさず銃形態で鳥頭の右半身に射撃。近接だと範囲攻撃喰らいかねないからねー、少し遠めからチマチマつつく。
あの噛み跡は間違いなく脆くなってる。結合崩壊させられれば、迎撃の難易度はグッと下がるはず。
『GIII……!』
いいね……噛み跡からヒビが入ってきてる。このままゴリ押しでイケる──
『GA──!!』
「んな──」
火の玉が白く変色して──ホーミング弾!数十発のうち5発は私の所に、残りが──ぎゃああああ遠くに行った流れ弾が可燃物っぽいポリタンクに──ぶち当たったァァァァ!!
…………。
…………………………爆発せんのかーい!!
で、出てきた中身が……緑の何かが混じった液体。藻が育っていたらしい。たくましいな。
ふぅ、ビビらせやがって、だが、所詮は鳥頭の考えることァアアアアアアアアアアア今度はリルに向かってェェェェ!!
「リルーーーーーーーーー!!」
「っ──!」
気がついたのか、頭を抱えていたリルは、ホーミング弾に気づいて、何かを抱えながら猛ダッシュ。うまく逃げてくれた。
予想外の事態に思わず背後見せちゃったよ、ヤバいよ。こういうの命取りなんだけ……
「ど?あれ?どこ行った」
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
「あっ……!」
走ってる途中で後ろを向くと、キョロキョロと周りを見渡すラインの後ろに、あのアラガミが──!
一瞬だった。炎に包まれたと思ったらそのまま消えて、違う場所から現れた。ワープしたんだ!
アラガミの両手に掲げてる火の玉がパックリと割れて、文字通り口を開いた。ラインを食べる気だ……!
「ライン──」
呼ぼうとした時には遅かった。あのアラガミは大きく振りかぶって、その口をラインに向かって振り下ろ──ッ!?
『──GAAA!?』
ピカッと、強い光があのアラガミの前で放たれた。アラガミは驚いて、後ろに仰け反る。
それを見逃さないかのように、ラインはくるりと素早く回って、銃形態の神機をアラガミに向けて──。
「────」
──女の子にはとても似つかわしくない、不敵な笑顔を浮かべながら、アラガミの肩を撃ち抜いた。
『──GEAAAAAAAAA────!!!』
腕の表面が砕け散ったアラガミは、一際大きく叫び上がると、何度もワープしながら崖の上まで移動して、そこからラインを睨んで逃げていった……。
ひゃ~おっかねぇ!!
全文消えたかと思った!!ハーメルン便利だね!!
戸惑った方々、ご迷惑おかけしました。