もう三話だよ三話!計四話もやっててユウゴは一話!ジークは名前しか出てきてないんだよ!ゲーム的にはRANK1のストーリー半分も行ってないからね!どうしてこうなった!
※作者の話の進行が下手なせいです。
鳥頭が恨めしそーな顔して退散していく。うまく追い払ったようではあるけど、ありゃまだ余裕あったかもな……。機嫌が悪くなると立ち去るタイプで助かった。
「──はぁー全く。何だったんだ今の」
神機を肩に乗せながらため息をついた。咄嗟にスタングレネード投げたのは英断だったみたい。まさか一瞬で背後取られるとは思ってもみなかった、あんなアラガミもいるんだなー、気をつけよ。
「…………」
ちらりと、真っ黒になったオウガテイルを視界に入れる。今回のMVPは紛れもなくこいつだ、こいつが抵抗してなかったら、無傷で迎撃は不可能だった。
「アンタには感謝しかないよ。本当に、お疲れ様」
そんな言葉をかけた途端、そのオウガテイルの体が、徐々に朽ちていき、塵となって消えた。
……間に合わなくてゴメンな。せめてその眠りが、安らかであることを祈るよ。
のんびり歩いて作業場に戻ると……その前でアラガミたちがおしくら饅頭してた。ここが一番安全だって気がついたんだなー、賢いヤツらめ。
仕方ないのでゴミ山を通って作業場に向かう。そこでキースは落ち着かない様子でウロウロしてて、ちびっ子たちは三人で向かい合って何かを話していた。
「戻ったよみんな~」
「先輩!大丈夫だった!?」
「まぁなんとか。実は頼もしい助っ人がいてだね……」
私の勇敢な戦闘録を語ろうとしたとき、リルが抱いているものに目がいった。
「リルー?それなーに?」
「……!」
私の声に、ビクッと肩を震わせた……。
──オジサンなぁ!小さい子からそういうのされるとちょっと傷付くんだよ!わかる!?
おっと生前の素が出るところだった。年齢バレしてしまう、平常心平常心。
少し躊躇って、リルはその腕の中の、小さなオウガテイルを見せてくれた。
『──キュ、キィ!』
牙は小さくて、尻尾の鬼瓦もない。見るからに幼体のオウガテイルだね。かわいいですね……。
「この子どうしたの?」
「……実はね……」
幼体オウガテイルをぎゅっと抱きしめて、涙ぐみながらリルは事の顛末を話してくれた。
生命の誕生に立ち会ってたら、突然ならず者が現れ、母親がそいつの進行を食い止めて「お行きなさい!」ってリル達を逃がしてくれた、と。
──それを聞いて、ああ、そうか。と納得した。
鳥頭があんなことになるわけだよ、そっちは幾ら金積まれようと許さんけど。
「ねぇリル。世界で一番危険な生き物って、何かわかる?」
「?……アラガミ?」
「いーや、それよりもっと危ないよ」
私の質問に、ショウも、マールも、キースも、もちろんリルも、みんな首を傾げた。まぁ危ない生き物って言っても、このご時世にアラガミ以上にヤベェのなんて思いつかないよな。
「──親だよ。子を守る親、異様に強かったでしょ?この子のお母さん」
「あ……!」
リルが目を見開いた。腑に落ちたみたいだね。
私は生まれてこの方天涯孤独だけど──親ってのは良くも悪くも、子を第一に想うもの。自然界だと尚更な。
子どもが食べ物に困らないよう、生き餌を用意する昆虫とか。強く育つよう、崖から落として上ってきた子どものみを育てる猛獣とか。危険に晒されずなおかつ、安全に成長できるように他の生き物に卵を産み付ける寄生虫とか!
……うん、例えが悪いな。まぁ、それ程必死になってるんだよ。そういうことにしといて。
「うん──うん……!強かった……っ!」
リルはまた、幼体オウガテイルを強く抱きしめて、泣きながら何度も頷いた。
大丈夫だぞリル。お前のやったことは、オウガテイルの母さんの最後の望みのハズだ。胸を張っていいことだ。
「親って、そんなに強いの……?」
「ショウ~、本気出した親は強いぞ。それこそオカン的なユウゴとか、兄貴分のジークとか、一家の大黒柱の化身とも言える私みたく、日夜君らに苦労をかけないようにって頑張ってんだからね」
「ライン姉ちゃんが頑張ってるところ言うほど見たことないんだけd──」
「はい作業再開ー!もう一踏ん張りだよー!」
「はぐらかしたな先輩」
「うん、先輩灰域行っても基本サボってるよ」
「うるっっっせぇぞおんどれぁ煮付けにしてヤローカッッッッ!!?!?」
『こっわ』
なんやかんやあって、基板は結局3箱埋まった。キースの直したガラクタと合わせて、かなりの額が期待できると思う。私らの稼ぎは基本ミナトの総取りだけれど、そこは私、ちゃんと考えてますとも。
実はある看守とコネ持ってましてね……そのつてで買い取り先と取引出来るワケなんですよ。それで基板を買い取る輩を知った私はこの場所を思い出して、今に至るわけです。
ミナトのアンポンタン共だと、大体何拾ってきてもゴミとしか思わない。だから需要のある輩を探して、高く売ることで儲けようって算段です。もちろん、その売り上げは、コネの稼ぎってことで片付けてます。
まぁ要は……儲け話を持ちかけて、コネのやつと互いに稼いでるだけですな。ミナトに内緒で。
その看守以外にも、賄賂を、他者の弱みを、利害の一致を、果ては取引を条件に繋がってるヤツらがいます。わざわざ外から私に会いに来る人もいるよ。ひぃ忙しい。
「なるほど……効率よく稼ぐ方法があるから暇してても問題ない訳か……」
「売り上げの4割くらいはコネの方に回ってっから、ミナトの収入が激減して給料減ってもほぼ誰も文句言わないんだよね~。ちなみに分け前も4割、ミナトには2割」
「コネぐるみで横領かよ!」
「故に──ミナトが儲からなければ儲からないほど、売り上げ目当てにコネの皆さんが買い取り先のつてを増やす仕組み」
「横領やめるって選択肢ないの!?」
「上がアホだから無いな」
「ペニーウォートって先輩みたいなのしかいないのか!?」
「まぁ声かけたのが取り分の少ない新入りか、変わり者の一匹狼か、まともな思考の爪弾き者だけだからねぇ。私がこの話持ってきたとき、ほとんどが「是非やらせてくれ」って面白がって引き受けてくれてさw このミナトの信頼度がw露呈した瞬間でしたわwwwアッハッハッハッハwwwwwwクwッwソwwwwwwwww」
「……先輩みたいなのしかいないんだ……」
余談だけど、一番売れたのはアラガミの写真。私の撮ったヤツだけで本が出来てるらしいよ。印税ナンパーにしてたっけ。
「フーム……」
二度目の休憩で遊んでいるちびっ子たちを眺めた。その中の、歩くリルと、とことこついてくる小さいオウガテイル。
「フーーーム…………」
時々リルが振り向いて微笑みかける。その度にオウガテイルは応えるように元気よく鳴いた。
「フーーーーーム………………」
楽しそうだ。とっても楽しそうだ。出会って数時間も経っていないというのにとっても仲良しだ。
リル──お前……。
「男を知る年かッッッ」
「どんな勘違いしてんの先輩」
「は!?!!!???あれを勘違いで済ます気概がよくありますねキースくん!!?!??」
「過保護って行きすぎると奇跡的なバカになるんだな」
「──それ卍固めだ」
「──ぎゃああああ痛い痛い痛い痛い痛い先輩のはホントにシャレになんないからアアアアア!!」
失礼極まりないキースをしばいた所で話をしよう。
リルがミニオウガテイル、略してミニガテイルを気に入ってしまった。ミニガテイルもリルに懐いてしまっている。これはちょっと良くない。帰り際に「連れて帰りたい」とごねられるに違いない。だけど、連れて帰るだけなら何ら問題ない。灰域のお宝隠すのと同じ要領で運べば簡単だ。しかし──あんなのがウチに来ようものなら
「……そんな訳で、リル。里親探そう。とてもじゃないけど……その子はミナトには連れて行けない」
「……そっか……うん」
消え入りそうな声で、悲しげにリルは了承した。悪いな……私の背骨の為なんだ。許してくれ。
でもマールが私の説明に反論してきやがった。何だよ、文句あんのかこのヤロー。
「あるよ!リルが親でいいじゃん。それにコイツまだ小さいし、アラガミだってわかんないって」
「マール……」
「二足歩行ができる生き物がその辺にいると思いますか?どっちにしろ認められる訳ないでしょ」
「そんなの先輩が潔くバックブリーカー食らえばいい話じゃんか」
「なんで私がバックブリーカーされれば解決するんだよ!」
「先輩何やっても最終的にそれで済んでるってジークが……」
「野郎帰ったらぶっ飛ばす!」
同じ空の下で仕事してるであろうジークに向かって叫んでたら、ショウも挙手して言ってくる。
「僕も、この子はリルと一緒にいていいと思う。ユウゴ兄ちゃんも納得させるし、お世話も手伝うから。いいでしょ?」
「おいおいおいおいショウ~~~一番まともな君がそんなこと言っちゃって~~~ユウゴの恐ろしさを知らないから言えるんだそれは」
「ライン姉ちゃんが怒らせることしかしてないからだと思うな……」
「ユウゴの沸点が極めて低いだけだから!まだ法に抵触するかしないか程度のことしかしてないし私!」
「……これはユウゴ兄ちゃん怒っても仕方ないね……」
「なしてぇ……」
ショウが厳しぃ……マヂムリオウチカエリタイ……。
「……いやちょっと待て。君らいいっつってっけど、リルの意見を無視すんのはどうかと思うんだなー私!」
「うぐ……」
「そ、それは……」
二人とも言い淀んでる。リルはちゃーんと「うん」って答えたもんねー。
「……ら、ライン、私やっぱり……!」
ま さ か の 裏 切 り 発 生 。
「ぅおーっと手のひら返し早ァッ!?そんなに押しに弱いと悪い男に絡まれっぞ!」
「いやライン以上に悪い人なんていないから。余計なお世話。ホントに」
「ウボァ予想だにしなかった流れ弾ァ!」
「それ流れ弾じゃなくて標準ど真ん中」←キース
血を吐くようにぶっ倒れた私に、リルは続けて言う。
「私、この子と一緒にいたい!ちゃんと面倒見るし、みんなには迷惑かけないから……!だからお願い!」
必死に頭を下げる姿を見て、リルなりに本気だってことはわかった。マールとショウの言い分もわかりますとも、バックブリーカーで解決以外は。
──しかしこちとら元営業マン。ただで注文を受け付けるのはなんか違うんだよねぇ~。
「そうは言うけどさぁ、結局運び込むのも怒られんの私なんだよね。損じゃん私、それに対して何も無いっておかしくない?具体的に言うと対価がない」
「ちょ──先輩!?」
「あっ……えと、えーと……」
リルたちがオロオロし始めた隙に、キースが肩を組んで小さい声で訴えてきた。なんだよ、文句あんのか。
「あるよ!何あんなちびっ子たちにたかろうとしてるのさ!」
「なぁに、ちょっと試してるだけだって。しゃかりきになって動いてさえくれれば、持ってくるものに文句は付けないから。人に物事を頼むのは有料ってことを身につけさせたいんだよ私は」
「だからって……それじゃいつもの仕事と変わらないじゃんか」
「まままま、誠意さえ見せれば、ね?理想としては泥だらけになって大きめの金属片でも持ってきてくれれば──」
振り返ると、ちょうどそこに泥だらけになったちびっ子たちと……。
──新品みたいにピカピカの金床が置いてあった。
「……これは」
「拾ってきた」
「早ない?」
マールがぐいっと頬に付いた泥を拭う。よく見ると、汗まみれにもなってるし、みんな肩で息をしていた。どんだけ急いだの。君らから目離して一分も経ってないよ。
……そういや『アレ』の装飾を作るのに、ちゃんとしたたたき台が欲しかった所だ。故にこれは、対価にはなっている。
「ン、ンー、これちょうど欲しかったんだよね。よく見つけてきたなぁ。エラいぞー」
「別に……その辺にあったものだったから」
いやその辺から出てくるモノではないだろ。なんなら買おうとしたってなかなか見つかんないぞこんなもん。
「これじゃ足りない?」
「そ、そんなことないよ。これで十ぶ……あ、そうだ。はんだごて壊れてたっけ」
「はい、拾ってきた」
「早ない??」
そして当然の如く新品(みたいな状態のやつ)。
「あ、あはは、助かる……ん、そういえば」
「ポリタンクでしょ?」
「早ない???」
これも新品(みたいな(ry
てかまだ喋ってもねーぞ。
「ふぅ……」
「バッテリーでしょ?」
「早ない????」
とうとう考えるより先に動いたよ!早すぎて未来が見えちゃってない!?
ていうか、これバッテリーっていうか、バッテリーになる前じゃない!?まだ組み上がってなくない!?組み上がってないどころか加工前じゃない!?原材料じゃない!?一周回って私の期待通りになってない!?
「あのー、これ出来上がってないんですけど……」
「ああ、早すぎて追いつかなかったのかな」
追いつかなかったってなんだよ!?お前らどこに行ってきてんの!?
「……せ、先輩」
「キーーースッ!!ちびっ子たちが!ちびっ子たちが早すぎて困る!何とかしてェ!」
「こっちも……困ってる……」
震える声でキースが指さしてたのは………………虹色の、ぐわんぐわん動く枠でできた穴でした。
「…………これは」
「ちびっ子たちの生物としての限界を超えた『速さ』でこじ開けたタイムホール。ほら、リルが二人、マールは四人、ショウは……」
「ギャアアアアアアアアアアアアアア────」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「──ァァァァァアアアアアア夢オチィ!!」
「あ!起きた」
傍にいたリルが声を上げる。
そっか……笑い疲れて寝てたんだった。しょーもない夢見てたな。マジで。
「ねぇライン!私この子と──」
「……いていいから光速だけは超えないでくれ」
「へ?こ、こうそ……??う、うん!」
じゃないと、この子時空を超えそうな気がしたから降参しました。さようなら背骨。
※特にお咎めは無かったそうです。
最後の締め考えるのにめっっっちゃ時間かかった……。いいオチの付け方って難しいなぁ……。とりあえず、この幕間の話はここまでです。と言いたいけど、もしかするともう1話くらいストーリーと関係ない話やるかもしれません。でも時系列的には進んでます。それではまた次回。