私はアリナ・グレイの妹。
「ほらさっさと持ってきなさいよ。いまサイコーにクールなアートができそうなんだから。」
いつも仕事を押し付けてくる大嫌いな姉が。
「は、はい。」
「はぁ、アンタっていつも遅い。私の最愛の妹なんだからアタシのためにもっと働きなさいよ。」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
毎日毎日この繰り返し、元よりやりたいとは言ってないのに。
私がいるところはホテル・フェントホープ。マギウスという集団の本拠地だ。どういうことをするのか知らないけど、姉がそこでやらなきゃいけないことがある、って言って中学生の頃に姉と一緒にここに来た。私は姉のアシスタントとして手伝えと言われたのではっきり断ったが、アンタの面倒はもう見ない、と脅されて仕方なくやっていた。
フェントホープには私と姉以外に3人いる。灯花ちゃんとねむちゃんとみふゆさんだ。灯花ちゃんは顔見知りで、ねむちゃんは親しくはないが私が一人になるとすぐくっついてくるのでうっとおしい。みふゆさんは私のことを心配してくれる優しい人だ。
3人とは前までよくしてくれたが、私が中学2年になったばかりの時、姉が突然アトリエに来て欲しいと言われて行ってみたら、部屋に閉じ込められ、それから今まで過ごした。食事は水と乾パンのみ。学校にもしばらく行っていない。体が持たない毎日が続いた。
「アンタに仕事をやらせてあげてるんだからきびきびしなさいよ。」
もう我慢の限界だった。狭い部屋で一定のことしかできない毎日はもうしたくない。だから前みたいにはっきり言った。
「姉さんは何も感じないの?」
「は?」
「姉さん、私よりも絵のほうが好きなの?姉さんは私のことを褒めてくれない、思ってくれない。私に話してくれることなんて自分が描いた絵のことばっかり。もういや、出ていく!」
「ちょっと!待ちなさい!」
私はドアを開けて一心不乱に走った。一度も後ろを見ず、まっすぐに。
でも、
「おやおや、部屋から出ちゃダメだよ。」
この声は!しまった。姉よりもめんどくさい子に会っちゃった!
「ねむちゃん、何でここに?」
そこにいたのは、柊ねむと黒羽根たちだった。本当なら灯花ちゃんと会議室にいるはずなのに。
「当然だよ。この、ホテル・フェントホープは、ボクが作ったウワサで、マギウスの翼の本拠地だからね。」
「意味がわからないよ?」
「この本拠地に何かあったら、一瞬でわかっちゃうからね。まあ、駆けつけてみたらキミを見つけたんだよ。」
ねむのちゃんの口は微笑んでいる。やっぱり姉と同じものを感じる。そう、言葉で表すなら、
狂気
私は一歩も動けなかった。黒羽根たちに囲まれて怖じ気づいた。そして、いきなり目隠しされて何かを飲まされた。
「さあ、帰りなさい。」
睡魔が襲う中で、微かにねむちゃんの声が聞こえた。
ふと目が覚めた。目をこすって周りを見たら、
「! ここは!」
すぐにわかった。ここは姉のアトリエで、また戻って来てしまったのだと。でも、目の前にはまたもや知っている人がそこにいたのだった。
「あなたは…。」
「…やはり、戻って来たのですね。」
「! みふゆさん!」
そうだ、この声は梓みふゆさんだ。
「ここにいるということは、またアリナさんたちにやられたんですね。」
「そうなんです。もう姉の言いなりになりたくなくて。だから逃げ出したんです。それから、」
今まであったことをすべて隠さず話した。
「やはりそうでしたか。わたしはもう限界です。私に考えがあります。」
「考え?」
「はい、あなたを逃がす考えを。」
突然、みふゆさんはこう言って私にその考えを教えてくれた。
そうして行った所は更衣室だった。すると、みふゆさんは
「このフードを被って下さい。」
そう言っていつの間にかもってた手提げ袋から黒羽根が着てるフードを取り出した。
「あなたを黒羽根のチームに入れます。10分後にここを出る予定なので、ここから出ることができたなら、あなたの力で黒羽根たちを倒して下さい。そうすれば、あなたは自由になれます。」
「私の力で?」
お姉さんもみふゆさんもそうだけど、ここにいる人たちは皆“魔法少女”と呼ばれる。彼女たちはそれぞれの願いを何でも叶え、常人にはない特別な力を使うことができる。私の力は嫌いなものを排除する力。周りのものを無効化することができる。これを使えば外に行けるらしい。
「みふゆさんはどうするんですか?」
「わたしも近いうちにここを出ます。しばらくの間、一人でいれますか?」
「一人じゃ何もできないです。」
「それなら、調整屋に行って下さい。あなたのチームはその辺りを巡回します。倒した後、調整屋の場所を書いた紙を頼りにして下さい。」
そう言うと、みふゆさんのポケットから紙切れをもらった。これが調整屋までの地図だ。ここまでしてくれたので、こうなったら…
「うまくいきますか?」
「私のことを信じて下さい。」
今、みふゆさん以外に信用できる人はいない。逃げないとまたあの生活に逆戻りする。逃げれたとしても居場所がない。でも、ここから出ていくことを決めた以上、やってみせる。
「わかりました。行きましょう!」
迷っている時間はなかった。私たちはすぐさま準備してチームに入った。
そして、やっと外に出た。
だが、尋常じゃない雨が降っていた。そんな中、作戦を始めた。
「とんでもない雨だな。」
黒羽根のリーダーの言葉と同時に力を使った。すると、皆が一瞬にして意識を失った。
「これでよし。」
とにかく走る。みふゆさんの地図を頼りに目的地まで走る。やっと外に出たから生きてみせる。
「ここから、調整屋まで!」
もう少しで入り口、やっと着く。
そう思った矢先、突然体が重くなった。
「な…なんで…」
足がいうことをきかない。手も動けない。自由がすぐ近くにあるのに、届かない。
ダメ、ここで倒れちゃ……。
初めまして。時間遡行者です。初投稿ですが最後まで見て下さりありがとうございます。不定期更新ですが、宜しくお願いします。