午後0時15分、病室で昼食を摂った。献立はご飯、わかめと豆腐の味噌汁、ほうれん草のおひたし、ちくわの磯辺揚げ、ウーロン茶、こんにゃくゼリーだった。正直に言うと、今まで生きてきた中でも一番まともで安心する献立だった。万々歳でも仕事した後にまかないを食べるが、もともと食が細いこともあって残しがちだった。というより、口に合わない。他の人からみたら、
『精進料理じゃん。』
、と言われるだろうけど、シンプルで味が薄い食べ物が私は好きだ。
(さな。なぜか私のことを知ってるようだけど、本当に誰なのかわからない。私のいた場所にその子がいたとするのならば知ってるはずなんだけど…。)
考えても仕方がない。とにかく、やちよさんに間接的にあんなことを言ってしまったのは謝らないといけない。私としたことがつい躍起になってしまった。
「梓ゆきさん。」
そんな考え事している間にナースのお姉さんがやってきた。
「調子はどうですか?」
「えぇ、大丈夫です。」
「それはよかった。ところで、さっきゆきさんの診断結果が届いたの。」
「はい。」
「ただの高熱だから今日中に退院できるみたいですよ。」
「そうですか。」
「本当によかったですね。あ、服や靴などはいろはさん、という人が持ってきましたよ。」
「あ、わかりました。…少しの間でしたがありがとうございます。」
「ふふっ、ゆきさんはすごく礼儀がいいですね。」
「あの、そういう性格なんです。」
「将来、デキる女性になりそうね。」
「はぁ…。」
訳のわからないことを言ってるのはさておき、すぐに着替えていろはさんに会いに行かないと。すると、
「ゆきちゃん。」
やってきたのはいろはさんだった。
「退院できるって?」
「え、えぇ。」
「じゃあ、一緒にみかづき荘に行こう。万々歳よりもわたしたちのところにいたほうが安全だよ。」
「でも、やちよさんは許してくれるでしょうか?いろはさんに伝えてください、と言っておいてなんなんですけど…。
「…そのことは伝えてないよ。」
「え?」
「そんなこと、伝えるわけないでしょ。」
「そ、その、すみませんでした。」
「とりあえず、みかづき荘に行こう?鶴野ちゃんを助ける方法をみんなで考えよう!」
「…はい。」
迷惑をかけてしまった。いつかはやちよさんとじっくり話す時間があればいいのに、と思ってたからこのチャンスを見逃すわけにはいかない。ああいうこと言ったけど、ちゃんと説明しなくちゃいけないと思った。なんにせよ、さな、というマギウスとかかわりがある魔法少女に私の正体を勝手に暴かれたのだから、もう逃がしはしないだろう。
「じゃあ、着替えてきます。」
私はカミングアウトすることを決意し、みかづき荘の魔法少女たちと共にすることにした。
着替えを終えて、私はもう一度自分がいた病室に戻った。
「お待たせしました。」
「うん、じゃあいこうか。」
いろはさんは私に向かって手のひらを見せた。
「手をつなぎながらね。」
初めて言われた。姉さんとは一度も言われたことがないことをいろはさんが初めて言われた。
「いろはさん。」
「?」
「行きましょう。」
私はいろはさんの手をとって病室を出ようとした。
「あら、もう帰るんですか?」
「はい、改めてありがとうございました。あなたといろはさんたちのおかげでなんとかなりました。」
「わたしたちからすれば当然なことをしただけですよ。お大事に。」
「…はい!」
ナースさんに最後のあいさつをし、私といろはさんは病院の出入口を出た。すると、
「…待ってたわ。」
入り口にやちよさんがいた。
「!、どうして?」
「退院する、っていろはから聞いたからここで待ってたのよ。」
「…そうですか。」
「わたしがさっきのナースさんから電話をもらったとき、やちよさんが一緒に行く、って言うから付いてきたの。」
「そんなことよりゆき、あなたには今疑いがかかっているわ。」
「やちよさん!またそんな事を言って。きっとさなちゃんの勘違いですよ。何度もみんなで話し合ったじゃないですか。」
「さなが言っていることは確かだと思うわ。アリナやみふゆたちを知ってたし信用していいと思うわ。」
「そんな…。」
「みふゆがマギウスにいることがわかった以上、どうにかしてみふゆを連れてこないといけないのよ。」
「…一つ疑問があるんですけど。」
「何?」
「なんでそんな必死にマギウスを探してるんですか?みふゆさん、っていう人を救うためですか?」
「そうよ。みふゆはもともとわたしと一緒にいたのよ。なのに、いまはマギウス、っていう危ない組織の幹部だなんて。」
「みふゆさんにとってみふゆさんは大切な人だったんですね。」
「今でもそうよ。」
「私、実は鶴乃さんにもフェリシアさんにも言っていない秘密があるんです。」
「?」
「?」
このタイミングで話さないといけない。そう思った。だから、ここで真実を言わなきゃいけない。
「私は…そのみふゆさんに救われたんです。」
「!」
「!」
「そして、私はマギウスの一人、アリナ・グレイの妹なんです。」