次の日の夜、マギウスと真っ向勝負する時がきた。これまで何度も何度もマギウスに出会うことができたけど、私のほうから断ってきた。だけど、
「もう大丈夫。」
胸に手を添えて落ち着かせた。私のことをわかってくれる人たちがこんなにもいた。だから、みふゆさんには悪いけどマギウスに、姉さんの呪縛に、抗おう。
「ゆき、準備はできた?」
一階からやちよさんの声がした。
「はい、OKです。」
私は意気揚々と階段を下りた。すると、万々歳のカウンターの前にいろはさんたちがいた。
「ゆきちゃん、そろそろだね。」
「…私はもう覚悟をしましたから。みんなに迷惑かけないようにがんばります。」
「もう、ゆきちゃんたら…。」
「その心配はいらないぜ!オレのハンマーでマギウスなんかボコボコにしてやるからな。」
「フェリシアさん…。そうですね、フェリシアさんがいてくれれば百人力ですね。」
「えへへ…もっと誉めろよ。」
この人たちを私が警戒してたなんて、いつかの私に訴えたい。マギウスから逃げてきた裏切り者なのにこれ以上ない親切さがあまりにも嬉しかった。ホテルフェント・ホープにいた時には感じられなかった感情だ。
「それじゃあ、みんな準備できたわね。」
「「はい!」」
「おうよ!」
みかづき荘から約1時間、私の思い出にある遊園地の跡地にみんなを案内した。間違いない、あの観覧車に秘密があるはず。
「ここですみなさん。」
「ここがあやしいのかしら?」
「はい、姉さんが言っていたところは確かここです。」
「マギウスどころか黒羽根もいないじゃん。どうなってんだよ。」
「…いいえ、近くにいますね。…出てきてください!私たちはあなたたちを倒しに来たんです。」
すると、私たちの目の前に白羽根が来た。
「…ゆき様ですね。今まで何をしていたのですか?」
「答える必要はありません。言えることは、姉さんに会いに行くことだけです。」
「アリナ様ですか?」
「えぇ、だからそこを退いてください。」
私は白羽根の肩に手をかけて払った。
「ゆきちゃん…。」
「やっぱりあなたたちだったのね。いつまでもいつまでもアリナのドールを弄んで、アリナの作品にイージーに触らないでほしいんですけど。」
突如、空から聞き覚えのある声がした。
「これは…。」
その声の主は姉さんだった。
「…姉さん!」
「そんなアングリーな顔、やっぱアナタは最高のドールね!あのときのアナタとは違うわネ。」
怒りが込み上がった。だから私は姉さんに衝撃波を打った。だが、姉さんはするりと避けてしまった。
「あはは!せっかく再開したのにハッピーじゃないの?」
「そんなわけないでしょ。」
緊迫した状態になった。姉さんは私をいち早く取り戻してまた私をいじくり倒すだろう。でも、もう一緒にはいられない。
「みなさん、早くあの観覧車に行って下さい!恐らくそこに姉さんが作った結界があるはずです。」
「ゆきちゃん!」
「「ゆき!」」
「さあ、早く。」
いろはさんたちは私を横切って走った。
「…姉さん、決着をつけましょう。」
「ふーん、自分のボディを削ってまで私とファイトしたいんだネ?」
「もちろんです。」
互いに歩み寄った。
「それじゃ、レッツパーティ。」
その言葉と共に姉さんの体から何かが産まれた。
「………。」
黒い物体にいくつものレンズがくっついている。そのレンズから出てくる物体は禍々しく汚れている。これは、魔法少女が唯一魔女にならない方法。“ドッペル”だ。
「もう私は姉さんの言いなりにはならない!」
私の中から怒りが具現化する。
「もう放っといて!」
“労働のドッペル。その姿は分銅。そのドッペルは自分の存在意義はアリナ・グレイの仰せのままに動くことだと思っている。しかし、いろはたちと出会ったことで道具のような扱いをした姉に復讐せんと息巻いている。”
「あはは!」
姉さんは謎の物体を飛ばした。いくつもの物体が私に向かって落ちてくる。
「くっ!」
負けまいと私は分銅を飛ばした。分銅と謎の物体がぶつかり合っていくつかの分銅が姉さんのところへいった。
「ふーん、アリナのドールにしてはやるじゃん。」
姉さんは右手を横にふった。すると、分銅をまとめててのひらで潰した。
「!」
もっと分銅を飛ばした。姉さんが倒れるまで攻撃をやめない。そして、ソウルジェムも濁っていく。
「はぁ、こんなものネ。」
姉さんも謎の物体を飛ばした。
「きゃっ!」
不運にも腕に一発当たった。その部分から異臭を放ち体を溶かしていく。
「くっ!」
「あははは!いいネ!その苦しんだ表情。もっと魅せて。アリナのドールならもっと歪んだ感情を引き出して!」
「ああぁぁ…!」
「そう、そんな感じ。アリナの妹になったんだからどこにも逃げられないの。もっとアリナのために苦しんで!」
嘘…強すぎる。こんな簡単にやられるなんて…こんなこと…。
「いい加減ギブアップしたら?アリナには勝てないことわかったでしょ?」
想定外に強い。姉さんに勝ってみんなで帰るつもりだったのに…嫌だ…嫌だ…。
「じゃあ、帰ろうか。」
姉さんは私を抱えた。それから頭がぼーっとして何もできなくなった。
「お帰りなさい。」
目が覚めると、そこは見覚えのある場所だった。
「ここは…。」
寝ぼけながら外を見た。
「?」
どうしてだろう。覚えてるような覚えてないような…。そのとき、ドアが開く音がした。
「さぁ、レッツパーティ。」
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