沈んでいく。朧気な記憶の中、目に映ったのは様々な色。赤、青、緑、紫、あらゆる色が別の色に侵食していく。
「きれい。」
触れてみたくて手を伸ばした。その時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「アリナが溶かすから!」
姉さんだ。そう思った時にはもう逃げられなかった。私の体に太い棒が当たった。一気に底までいき、身動きができなくなった。
「アハハハハハ!!」
高笑いが響く中、段々と息ができなくなった。
「!」
ふと、目が覚めた。体に異変はないか確かめたが問題はなかった。ほっとしていたらドアが開く音がした。
「みたまさん、やちよさん、起きてますよ。」
「見たところ問題は無さそうね。」
「えぇ、ホントによかったわぁ。」
会ったこともない女の子が3人が私のところにやって来た。
「あなた、名前はわかる?」
ピンク髪の女の子が私に話しかけた。
「私は…。」
自己紹介しようと思ったら、突然ドアを開けるとは思えないような音がした。
「お待たせ!最強魔法少女・由比鶴乃。ただいま見参!」
なんか騒がしい女の子が突進するかのようにやって来た。
「あ!起きたんだね。じゃあご飯食べて元気出して。」
岡持ちからチャーハンを出して私の口に無理矢理入れようとした。
「あの、食べるので起こしてもらえませんか。」
鶴乃さん以外の3人が上半身を持ち上げてくれた。そして、久しぶりにご飯を食べた。具材がでかかったので食べ応えがあった。
食べ終えて彼女たちから自己紹介された。
「私は❬環いろは❭。よろしくね。」
ピンク髪で制服を着ている彼女が環いろは。無垢な笑顔がまぶしい。
「❬七海やちよ❭よ。よろしく。」
青ワンピースに水玉がある青髪の彼女が七海やちよ。無愛想な顔をしていて怖い。
「調整屋の❬八雲みたま❭です。あなたのような魔法少女に安心と安全をお届けするわ。」
白髪で喪服のような衣装を着ている彼女が八雲みたま。笑顔を見せてるが、何だか浮いてる。
「私は神浜の最強魔法少女・由比…」
「由比…鶴乃?」
「おぉ、私って有名?」
「さっき自分で言ってたじゃないですか。」
「あ!そうだった。ふん、ふん!」
いろはさんと同じ制服を着た鶴乃さんは笑顔でごまかした。
「それで、あなたは?」
「えっと…。」
皆優しそうだけど名前を教えるべきだろうか。助けてくれたのは感謝してるけど、魔法少女の存在を知ってるし、まだ彼女たちの素性がわからない。もしかしたら彼女たちに利用されるかもしれない。
「………。」
悩みに悩んだが、結局決断を下せなかった。
「もしかして、名前が言えない事情があるのかしら?」
「やちよさん。単純に名前を忘れてしまったのかもしれません。」
やちよさん?
「マギウスの手下かもしれないわね。」
「あったばっかりの人になんてこと言うんですか!」
「そうでなくとも情報が得られるかもしれないわ。わたしにこの子を預かってもいいかしら?」
「…何をするんですか?」
「事情聴取よ。」
そう言って、突然私の腕をつかんで強く引っ張った。
「きゃ!」
地面に足を引きずりながら、やちよさんは離そうとしなかった。
「ちょっと、やちよちゃん。」
みたまさんもこう言って止めようとしたが、止まろうとしなかった。しかし、
「だったら、アタシがこの子を見る。」
手を差しのべてくれたのはいろはさんでもみたまさんでもない。鶴乃さんだった。
「鶴乃、どきなさい!きっとこの子がマギウスの在処を知っているはずよ。います…」
「ししょー、アタシが面倒を見るから安心して。」
「ちょっと!」
「大丈夫。信じてよ。」
「………………わかったわ。」
やちよさんは手を離した。動悸がして落ち着かない。そんなとき、
「アタシは最強の魔法少女だから、皆の味方だよ」
そう言って、私を背中にのせてくれた。
「万々歳にこの子を置いてくる。皆くる?」
「私は行くよ。」
「…私は行かない。先に帰るわ。」
こうして、万々歳に鶴乃さんといろはさんが来た。
「ごめんね。いきなり連れて行かれそうになって怖かったでしょ?」
「はい、助けてくださりありがとうございます。」
「やちよさんはマギウスの本拠地を探していてるのに必死だからついあんな態度になったけど、本当は優しい人なの。だから、気にしないで。」
「ししょーはマギウスの本拠地を探していてるからね。」
私は落ち着いて疑問に思ったことを訊いてみた。
「なぜ、マギウスを追っているんですか?」
「マギウスがこの神浜に何かしようとしているの。それを止めるためにマギウスと戦ってるの。」
マギウスが何か企んでいる?私は名前しか知らなかったけど、お姉さんたちは何かしようとしてるってこと
ね。なんであれ、一応、私もマギウスの一人だからここは嘘をつくほうがいいかも。
「そういえば、名前、何て言うの?」
「❬梓ゆき❭です。きへんに辛いと書いて梓。ひらがなで、ゆきです。」
「じゃあ、ゆきちゃん。」
「はい。」
「なんであそこで倒れてたの?」
「私は魔女狩りをしていたのですが、魔女の結界に入ろうとしたら茶色のフードを被った集団に囲まれたんです。それで、予想以上に苦戦して調整屋に行こうとしたら気を失ったのです。」
「そうだったんだね。」
「これからどうすんの?帰る家はある?」
鶴乃さんが心配そうに問いかけた。マギウスが帰る家です、て言えないなぁ。
「家に帰りたくないんです。」
「何かあったの?」
「…家族とケンカしました。ご飯もほぼ食べてないです。」
あの日までのことは今でも思い出す。あまりにも苦しい毎日だった。
「…じゃあ万々歳で働く?」
「えっ?」
「あたしおところで働こうよ。賄いつきで部屋も貸してあげるよ!」
「でも…。」
今断ったらもう私が隠れる場所なんかないだろう。できるだけ外にでないようにして黒羽根やマギウスたちに見つからないためにここは甘えよう。
「わかりました。お願いします。」
「よし、決まりだね。」
今日から私は万々歳のアルバイトとして過ごすことになった。そして、マギウスと対立する始まりでもあった。