夜が明けて、私は❬十咎ももこ❭という魔法少女と一緒に近くの公園で事情聴取された。
「真夜中に何で外にいたんだ?」
十咎さんは怪訝な顔つきで私に訊いた。
「夜に光る蝶が飛んでるのを見て、追いかけたら黒羽根にやられそうになったんです。」
「そこでアタシが来た、と。」
「はい。」
顔を下にして答えた。
「アンタ、どこの魔法少女?ここの魔法少女ではなさそうだね。」
「いろいろあって鶴乃さんのところでアルバイトしてます。」
「鶴乃?もしかしていろはの仲間か?」
「仲間、というより顔見知りです。」
「ほぅ、そうかそうか!なら良かった。変に疑って悪かったな。ここ最近、隣町の魔法少女が無断で支配区域を抜けるヤツらがいるから警戒してたんだ。」
「隣町の魔法少女がなぜ支配区域を抜けているのですか?」
「事情はいろいろだが、ある町では魔女が激減してグリーフシードが取れなくなり無断で神浜に来て魔女狩りしているんだ。魔法少女を殺してグリーフシードを奪うヤツもいるらしい。運が悪いとアンタもタダじゃ済まないから気をつけてくれ。」
「わかりました。」
魔女がいなくなっているのはいいことだけど、グリーフシードは魔法少女にとって大切なもの。無断とはいい、彼女たちは生きるために必死になっている。だけど、私も魔女を排除するかわりに願いを叶えた魔法少女。自分の領域の魔女は自分たちのものだ。
「そうだ、せっかくだしこのまま万々歳に連れていくよ。鶴乃たちにも伝えないとな。」
「私はやめときます。」
「どうしたんだよ。何かあったのか?」
「あっ…えっと…。いろいろあって万々歳には行きたくないです。」
「いろいろ、て何だよ。」
「それは…。」
言えなかった。鶴乃さんやフェリシアさんに嘘をついてずる休みしてたなんて。それに、今帰ったら鶴乃さんに叱られる。どうしても万々歳に戻りたくなかった。
「じゃあ、ウチに来るか?少し落ち着いてから一緒に万々歳に行こう。」
「…お願いします。」
ももこさんは私の手を握って引っ張った。
数分して、ももこさんの家にやって来た。親は仕事でいなかったので居間で一息ついた。
「少しは落ち着いただろう。」
「はい、ありがとうございます。」
ももこさんが注いでくれた緑茶を一息に飲んだ。
「そんで、万々歳に行きたくない理由を言ってくれるか?」
私にここまで優しくしてくれたのに何も言わずに出ていくのは申し訳ないと思った。だから、ももこさんに万々歳であった経緯を話した。
「なるほどねぇ。あのさ、やっぱり万々歳に戻ったほうがいいんじゃない?鶴乃は多分オマエのこと心配してると思う。オマエも正直に言って反省するべきだよ。」
「そうですよね。鶴乃さんにちゃんと謝りたいです。」
「だったら今すぐ帰ろう。」
「…そうですね。そうします。」
隠れらる場所は万々歳しかない。一度謝って素直にバイトしよう、と思った。そして、一人で帰る事にした。
「ももこさん、黒羽根にやられそうになった私を助けてくれたのはすごく感謝してます。これからは迷惑かけないように注意しますから心配しないで下さい。」
私は玄関まで行ってドアを開けようとした。でも、ももこさんは居間のドアから顔をだし私に言った。
「後悔だけはすんなよ。」
私はそれをきいて外に出た。。そして、後ろを見ずにひたすら走った。ところが、
「いてっ。」
通行人の背中にぶつかってしまった。その上、
「いてて…あれ?ゆきちゃん!こんなところにいたの?」
不幸にも、鶴乃さんだった。
「つ…鶴乃さん…私…。」
突然すぎて目の前で話すのは恥ずかしかった。ついさっきももこさんのアドバイスもらったばっかりだけどサボったことについて叱られたくはなかった。でも、ちゃんと伝えなくちゃいけないからはっきりと言おう。
「ごめんなさい、私、鶴乃さんに…。」
「やっと会えたー!もう本当に心配してたんだから。」
鶴乃さんは私を強く抱きしめた。突然すぎてびっくりしたが今なら言える。
「ごめんなさい。私、嘘ついたうえにマギウスにやられそうになったりして…。私、恩を仇で返すようなことをして…。」
おぼつかない言葉でも鶴乃さんに謝罪したかった。許されなくていいと思ってた。でも、鶴乃さんは女神のように優しい最強の魔法少女だった。
「いいの、いいんだよ。一緒に万々歳に帰ろう。」
まさか抱きたいほど心配されるなんて思っていなかったが、許してくれた。こんなに大切にしてくれる人なんてフェント・ホープにはみふゆさんだけだった。だから、今は嬉しかった。
「鶴乃!どうしてここに?」
そんな中、バットタイミングでなぜかももこさんが血相かいてやって来た。
「ももこさん。ゆきちゃんを探してたんです。」
「ゆき、て誰?」
「この子ですよ。」
そういえばいままでももこさんに自己紹介していなかった。
「あれ、さっきの子じゃん。」
「どういうことですか?」
「その事も含めて、まずはみんなを万々歳に集めてくれ。」
「うん。ゆきちゃん、行こう。」
鶴乃さんは私の腕を掴んで走った。私はつられて走った。
夕方になって、万々歳にいろはさんにやちよさん、ももこさんが、二階からフェリシアさんが来た。そして、厨房の下で見え隠れしてる緑の髪の子がいる。
「ゆきちゃん、戻ってきてくれて良かった。」
「鶴乃から連絡をくれたときはどうしたかと思ったわ。」
二人とも私を心配していたようだ。
「皆さん、お騒がせして申し訳ございません。」
「謝らなくてもいいよ。ゆきちゃんが無事なら何ともないよ。」
「でも、謝罪させてください。いままでのことを。」
私はももこさんに言ったことを全員に話した。ももこさん以外は驚いた顔をした。
「“ウワサ”が活発化してるわね。より一層注意したほうがいいわ。」
「蝶が襲ってくる“ウワサ”って聞いたことない。新しくできた“ウワサ”なのかな?」
「それよりも、私はどうなるんですか?出ていかないといけませんか?」
「もう、それはもういいよ。最強の魔法少女はどんなことがあっても仲間を見捨てないんだよ!」
「許してくれたことだし、気を落とすなよ。これからは精一杯やればいいだけなんだから。」
「…ありがとうございます。」
やっと皆に謝れた。私の心がすっきりした。それよりも、皆“ウワサ”って言ってるけど何のことだろう?
「ところで、“ウワサ”って何ですか?」
「神浜に伝わるうわさが形になったものだよ。“絶交ルール”がその一つだよ。」
「今回倒した“名無し人工知能”もその一つだったのよ。」
うわさが実現して迷惑をかけている、ってことか。
「マギウスの翼も関わってるかもしれないな。」
「マギウスの翼!?」
「どうした?そんなに驚いて。」
「いえ何も。」
マギウスの翼、と聞いてびっくりした。まさかマギウスたちが”ウワサ”を使って神浜を乗っ取ろうとしてるんじゃないだろうか。もしそうだったら姉さんも関わっているはず。あの蝶も“ウワサ”らしいし姉さんやねむちゃんに居場所を知られただろう。となれば、
「あの…もしよかったら私も“ウワサ”の調査に参加させてください。」
「一緒に行ってくれるの?」
いろはさんが少し驚きながら喜んだ。
「私、“ウワサ”についてもっと知りたいです。」
「良かった。人手が増えればより解決が早まりますね。やちよさん。」
「ええ、ここからもっと詳細に調べるわよ。みんな。」
「はい!」
「じゃあ、アタシが知ってることをまず話すよ。」
マギウスは何をしでかすのか、この目で確かめるため、万々歳で作戦会議を始めた。ところで、緑の髪の子がどこにもいないけどどうしたんだろう。