次の日の朝、昨日の夜に突如現れた光る蝶と姉さんの発言について考えてみた。
「姉さん、私に何を伝えたかったんだろう?」
これまでのことを整理しよう。マギウスはウワサ、っていうねむちゃんが作っている魔女のようなもの。あの蝶もねむちゃんが作ったものだが、ねむちゃんが勝手にやったことで、姉さんがそれをジャックして私のところにやって来た。
『…一応その忠告は受けとるよ。でも、あなたたちのやってることはお見通しなんだから。』
『ホントにそう思っているの?』
『?』
よりマギウスのやりたいことがわからないけど、きっともう私たちを排除するタイミングをうかがっているにちがいない。
「…。」
私は二度とフェント・ホープには帰らない。この思いは決して何があっても揺るぎはしない。
朝ごはんを食べるために一階にきた。すると鶴乃さんが私に気づいた。
「ゆきちゃん!おはよー!」
「おはようございます。」
「そこのテーブルにチャーハンおいてあるから食べててね。」
「わかりました。いただきます。」
「召し上がれー。」
部屋の端っこにチャーハンが置いてあった。見た目だけは美味しそうなチャーハンだ。
「いただきます。」
私はチャーハンを食べた。やっぱり味が濃すぎるような気がする。毎回毎回食べるたびにご飯の甘さより醤油のしょっぱさが勝ってくる。こんなのを毎日食べている。
「…ごちそうさまです。」
文句を鶴乃さんに直接言うことはないが、あのときに比べれば何倍もましだ。
「ふふん、お粗末さまです。どう?おいしかった?」
「えぇ、おいしかったです。」
「えへへ、ありがとう!」
本音を隠したまま今日も店を開ける準備をする。
お昼、お客さんが来やすい時間帯になった。だが、
「………。」
誰もいない。こういう日がたまにあるが最近3日間これが続いている。
「誰か来てくれないかなぁ。」
私は軽いため息をした。そんな時、
ガラガラ…
やっと誰か来た、っと思ったら 、
「鶴乃ちゃん、いる?」
来たのはいろはさんだった。
「いろはさん、どうかしたんですか?」
「ゆきちゃん!鶴乃ちゃんいる?」
「はい、厨房にいると思います。」
「呼んできてくれないかな?」
「あ、はい。」
何がなんだかわからないけど、とりあえず連れてこよう。
「鶴乃さん、いますか?」
「?、ゆきちゃん。どうしたの?」
「いろはさんが鶴乃さんを呼んできてほしい、っと言ってます。」
「え?わかった。今すぐ行くから。」
そう言うと鶴乃さんはすぐに下に降りていった。
鶴乃さんと一緒に一階のレジカウンターに待っていたいろはさんと合流した。
「鶴乃ちゃん。」
「いろはちゃん、何かあったの?」
「それがね…。」
「?」
いろはさんは突然黙ってしまった。
「いろはさん?」
「みふゆさんがみかづき荘に来たの。」
「え?みふゆさんが?」
「え?みふゆさんが?」
私と鶴乃さんのしゃべるタイミングがぴったり合った。
「?」
「?」
「?」
二人は私に向かって首をかしげた。私はわけがわからず首をかしげた。
「ゆきちゃん?」
「なんでみふゆさんのこと知ってるの?」
「あ。」
やらかしてしまった。つい声が出てしまった。
「そ…それは…。」
「ゆきちゃん、ちゃんと話して。」
「ま、待ってください。私は―」
「ゆきちゃん、もしかしてマギウスの―」
「違うんです!私は…。」
こうなっては仕方ないか。少しだけ本当のことを言おう。
「私は…私は、みゆきさんに助けられたんです。」
「!?」
「うそ!?」
プライドとかそんなものは無かった。ただ、テンパってしまっただけ。マギウスが関わっている以上、避けられない運命だと自覚していた。だけど、まさかこんなときに言うことになるとは。
「実は、私…私は、アリナ・グレ―」
「いろは!」
こんなときに誰かがやって来た。
「やちよさん?」
息を切らしながらやちよさんがいろはさんに近づいてきた。
「もう、なにしてんの。戻ってきて。」
「いやでも、待ってください。」
「待ってられないわ。さあ、早く。鶴乃もゆきもみかづき荘に来て。」
せっかく決心ついて話そうと思ったのに…。でも、言うタイミングがずれてよかった。
今日はなんかドタバタしてるなぁ。そう思いつつみかづき荘に呼ばれた。
「いろは、万々歳にいる三人を連れて来て、って言ったじゃない。」
「あの、やちよさん。わたしはちゃんと万々歳に行―」
「どうでもいいわ。」
「えぇ…。」
「それよりも、いろはから聞いたかしら?」
「みふゆさんがここに来たこと?」
「そうよ。マギウスのリーダーが直々に来るなんてとても怪しいわ。」
「リーダー、って誰ですか?」
「…みふゆよ。」
「みふゆさんが…。」
驚きはしなかった。姉さんやねむちゃんのいる組織にいるんだもん。ただ、不思議だった。マギウスのリーダーが何故あれほど私を心配してくれたのか。
「なんでみふゆさんが来たんですか?」
「魔法少女を救済することについての講義を開催する、って言ってたわ。」
「講義、って。」
「どうするんですか?師匠。」
「かなり怪しいけど、またとないチャンスだと思う。たから、わたしは行くわ。」
「わたしもやちよさんと行きます。ういのこともわかるかもしれないから。」
「うい、って誰ですか?」
「わたしの妹なの。わたしはういを探すために魔法少女になったの。」
「それがいろはさんの叶えたい願いですか。」
「あなたたちはどうする?」
「あたしはついていきますよ。ししょー。ゆきちゃんはどうする?」
私はみふゆさんに会うべきだろうか。会ってしまったらみふゆさんが余計に心配してしまうだろう。私にはみふゆさんに会う資格なんてない。
「やめときます。」
「どうして?」
「私は…絶対にみふゆさんに会いません。」
「へ?」
「…ももこさんたちと魔女狩りの約束があるので。」
「そ、そうなんだ。わかった。」
「じゃあ、決まりね。」
「ごめんなさい。皆さん。」
「いいの、いいの。頑張ってね。」
「はい。それでは。」
私は階段を昇って自分の部屋に戻った。
そのあと、
「どうしたのかしら、ゆき。」
「最近、ゆきちゃんの様子がおかしいんです。」
「鶴乃ちゃん、何か知ってるの?」
「マギウスの作戦会議した時、アリナさんのことを言ったら動揺してたの。なんでだろう?」
「アリナと何か関係があるのかしら?」
「そうなると、マギウスのことを知ってる可能性がありますね。」
「でも、マギウスに襲われたことがあって、それがトラウマになってるんじゃ…。」
「いまは憶測でしかないけど、近いうちに彼女の尻尾が掴めるわ。」
「やちよさん、まだ疑ってるんですか?」
「…疑うことができる条件がまだあるよ。」
「鶴乃?」
「いろはちゃんがここに来た時も、みふゆさんのこと知ってるかのようだった。」
「そうだった。みふゆさんとの関係もあるのかな?」
「わからないけど、彼女には何か裏があるわ。」
「ゆきちゃんのことも心配だけど、いまはマギウスの思惑を阻止することが優先だと思います。」
「…そうね。この事はわたしたちだけの秘密にしておきましょう。フェリシアやさなに言うと面倒なことになるかもしれないし。」
「そうしましょう。」
「わかりました、ししょー。」
「じゃあ、私は先に帰るわ。明日の夕方にみかづき荘のラウンジに集合して。」
「さようなら、ししょー。」
「鶴乃ちゃん。」
「どうしたの?いろはちゃん。」
「…ゆきちゃんのこと、よろしくね。」
「…任せて。最強の魔法少女は何でもできるんだから。」
「やっぱり、鶴乃ちゃんは頼りになるね。」
「ありがとう。」
「じゃあ、わたしも帰るね。」
「じゃあね。いろはちゃん。」
そして、鶴乃一人になった。
「ゆきちゃん…わたし、心配だよ。」
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