次の日、鶴乃さんとフェリシアさんは、みかづき荘にいるやちよさんに会うために万々歳を出た。一方、私はいきなり頼んだのにもかかわらず快く受け入れてくれたももこさんたちと魔女狩りに行くことにした。
「ごめんなさい。私も講義を受けに行きたいんですけど。」
「ううん、むしろマギウスに直接会いに行くから危ないよ。」
「じゃあ、お気をつけて。」
「ゆきちゃんもね。」
鶴乃さんは店の出入り口から出て出掛けて行った。出掛ける、っていうほど軽いものではないけど。
私は鶴乃さんを見送り、自分の部屋で準備をした。
ももこさんからの連絡によると、集合は夕方になってからももこさんの家に集合することになった。それまでは何もすることがなかった。
「ふぅ…。」
退屈でため息が出た。一人になるとフェント・ホープにいた前の頃を思い出してしまう。
そう、あれは病院に姉さんが行ってしまったときだ。
『姉さんは…姉さんはどうなったんですか?』
『…姉さんは無事よ。』
『!、よかった。』
『一緒に待ちましょう。』
姉さんが突然倒れて、救急車に乗せられたときはびっくりしたけど無事ならよかった。私はそのときには看護婦と一緒にいた。でも、そう思ったのはそこまでだった。姉さんの病室に行ったときのことだっだ。
『姉さん、大丈夫?』
『…。』
『うぅ、姉さん。』
ベットに寝たままの姉さんを前にして何もできない私が悔しかった。この頃の姉さんはとても優しかった。スーパーに行けばいくらでもお菓子を買ってくれた。怪我やインフルエンザになったときはずっと看病してくれた。いいところを挙げるのならいろいろとあった。
『姉さん…起きて…起きてよ…。いつもみたいに…私に…笑顔をみせてよ…。』
そのとき、ドアから女性がやって来た。
『ゆきちゃん、ここにいたの。』
『高田さん。どうしたんですか?』
高田さんは姉さんを担当してる看護婦だ。ときどき、姉さんの様子を見に来てくれる。
『…まだ目覚めないのね。ゆきちゃんは毎日来てえらいはね。わたしにもほしかったわねぇ。』
『いえ、当然のことです。それよりも、何故ここに来たんですか?』
『あぁ、そうだったわね。…ゆきちゃんに伝えたいことがあるの。』
『はい?』
そう言って高田さんは私を連れて外に出た。
『実はね、ゆきちゃんのお姉さんは見たことのない病気にかかってるの。』
『見たことのない病気?』
『そうなの。今までに知られることのない病気になっちゃったの。』
『…助けられますよね?』
『大丈夫、わたしたちが何とかするから。』
高田さんは笑顔で答えた。でも、無理に笑っているのがよくわかった。
数日後、病院から姉さんが起きた、という連絡をもらった。急いで姉さんの病室に向かった。
『高田さん!』
『ゆきちゃん。アリナさん、妹さんが来てますよ。』
『う…ん。』
『姉さん!大丈夫?』
『アリナの…もうひとつの…ボディ。』
姉さんは私に優しく触れた。
『姉さん。』
『はぁ…パーフェクトな…フェイス。』
次は私の顔に触れた。私は驚いて姉さんの手を触った。仄かに温かかった。
『大丈夫…アリナは…。』
「…姉さん。」
今では敵どうしなのになぜかあのときのことを思い出してしまった。
「ゆきちゃーん。」
そのとき、一階から声が聞こえた。そして、気づいたら日が落ちようとしていた。
「!、はい。」
私はとっさに立ち上がり一階に降りた。
「あ、ももこさん。」
「まったく、全然来ないと思ったらまだここにいたのか。」
「ごめんなさい。」
待っていたのはももこさんだった。思い出にふけている間に約束の時間をとっくに過ぎていた。
「準備はできているのですぐ行きましょう。」
「ああ、いこう。」
日は完全に落ち、星空もでない真夜中、私とももこさんは外で魔女を探した。
「なあ、何でいきなりアタシに連絡をくれたんだ?」
「いろはさんたちがマギウスの根城に向かうそうで私は万々歳に待ってるように言われたんですけどどうしてもじっとできなくてももこさんに頼ったんです。」
「なるほどねぇ。一緒に行きたくなかったのか?」
「敵のアジトに行くから危ない、って。」
「そっか。」
本当はみふゆさんに会いたくないからだけどももこさんに言う必要がない。
「実はさ、ちょっと聞いたんだけど講義に参加するんだって?」
「えぇ、直接みふゆさんが来た、って言ってました。」
「何でこんなときに。」
そういえば、あのこと聞いてなかったな。
「あの。」
「どうした?」
「この前、やちよさんは東のボスだ、って言ってたじゃないですか。」
「ああ、前に約束してたな。やちよさんは神浜市の東側を統括する魔法少女で十七夜さんは西側を統括する魔法少女だよ。」
「へぇ。」
「昔は二人が領地をめぐって争いが起きたんだ。そのときはあたしと鶴乃も巻き込まれたんだ。」
「ももこさんと鶴乃さんは昔から魔法少女として生きてきたんですか?」
「そうだな。それでいろいろとあって戦争は和解、という形で幕を引いたんだ。」
「そんなことがあったんですね。」
そんなことを話しているうちにシルエットが二つあった。
「あ!やっと来たよ。」
「アンタたち、遅すぎなんだけど。」
そこにいたのはいつか助けてくれたレナさんとかえでさんだった。
「すみません、遅くなっちゃいました。」
「あれ?あのときの子だね。」
「あ。ホントだ。」
「こんばんは。あのときはありがとうございました。」
「よし、そんじゃ行くか。」
私たちは魔女の反応があるほうへ向かった。
数時間後、魔女の結界を見つけた。
「ここが魔女の結界。」
魔女と戦ったことはあるもののやっぱり緊張する。
「ゆきちゃん、大丈夫?」
ももこさんが心配してくれた。
「はい、大丈夫です。」
「さっさとかたをつけましょう。他の魔法少女に奪われる前にね。」
「そうだね、行こう。」
私たちは結界に入ることを決意した。
結界の中は摩訶不思議な光景があった。草木が生い茂り、青空がみえている。ただ、それらがまるで油絵のような感じだ。
「不思議な空間ですね。」
「アンタ、魔女狩り初めてじゃないわよね?」
「そうですけど…。」
「だったらなんでそんなこと言うのよ?」
「いや、でも…。」
「ちょっと待って。何かいる。」
いきなりももこさんがみんなを止めた。
「どうしたんで…は!」
「あそこにいるのは…。」
目の前にいたのは見たことのある姿だった。
「どうして?」
信じられなかった。聞き覚えのある声がした。
「久しぶりだネ。アリナだけのビューティーなボディ。」
「…あのときの蝶。」
いたのはねむちゃんが作ったという魔女より数倍大きい光る蝶が羽と足を縛りつけられたまま壁に張りついていた。
「間違いない、ここの結界の主だ。」
「今回は案外すぐに見つかったわね。」
「ふえぇ…大きすぎるよぉ…。」
「あんな大きいなんて、信じられない。」
すると、蝶から声が聞こえた。
「よく来たネ。正直にいえば、まだ来てほしくなかったケド。」
「!、アリナ!」
「アッハ、アリナのミュージアムにウェルカム。」
「ここで何をしてるんだ?」
「もちろん、アリナの作品を神浜のみんなに届ける準備をしてるんだよネ。」
「何を考えてるのか知らないけど、アンタをここで止めるわ。」
「邪魔させない。まだ制作段階だケド、解放しちゃえ。」
すると、縛りつけた紐がほどけて、蝶は大きく羽をひろげた。強い風が体全体にあたる。
「みんな、耐えてくれ。」
蝶は私たちに目を向けた。
「じゃ、あとはヨロシク。」
蝶はいっそう明るくなった。
「みんな、来るぞ。」
蝶はまっすぐここにやってきた。
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