萌えっ娘もんすたぁ 実体験版   作:りんご太郎

4 / 5
 家族が初めてのもえもんを同じ町の中でもらうのに、それについていかないのは変じゃないかと思った。


第2.0話 グリーンと初バトル

 おれが選んだヒトカゲ改め“リゼ”はおれのことをトレーナーと認めてくれたようで、もじもじしながらも自分からモンスターボールに入っていった。かわいい。

 

 

「おめでとう、リン。リゼちゃんのこと、大切にするのよ」

「うん、ありがとう母さん。……見ててよ。おれは絶対に、リゼともえもんマスターになる!」

 

 

 おれが前々から最初のもえもんをヒトカゲに決めていたのは、前世で“萌えっ娘もんすたぁ”でググった時に見つけたゲームスタート画面のリザードンに一目惚れしたからだ。……それに、リザードンならどんな性格でも一応戦うことができる。この世界にメガシンカがあれば物理型もいけるし、耐久に補正がかかっていても鬼羽型にすればいい。

 「おくびょう」は1番いいの引いたな! これならもしメガシンカがなくても、速い特殊アタッカーとして戦える。

 ……にしてもやっぱり、性格はそのままもえもんの個性になるのか……

 

 

「……2人とも、ちゃんと自分のもえもんを選べたようじゃな。では残りのフシギダネは……、リーフにあげることにしようかの」

「えっ⁉︎ いいの⁉︎ おじいちゃんだいすき!」

「ぐはっ‼︎」

「えっ⁈ ちょっ、おじいちゃん、リーフはまだ9歳よ⁈ 自分のもえもんを持っちゃ……」

「……キープじゃよ、キープ。フシギダネのモンスターボールを、ナナミ、お主が持っておれば大丈夫じゃ。リーフだけもえもんがいないのはかわいそうじゃからの」

「あっそっか……よかったわねリーフ!」

「うん!」

「また名前をつけてやってくれい」

 

 

 エンジェルスマイルにやられて満足げなオーキド博士がフシギダネを手渡すと、われらが大天使リーフは、彼女をぎゅっと抱きしめた。誰かカメラ持ってきて!

 

 

 ……オーキド博士がもうカシャカシャやってる。一眼レフで。

 そして……、和んだ空気の中、イオラのモンスターボールを持ったグリーンが不敵な笑みをして近づいてきた。ボールを持った手を、おれに向かって突き出す。

 

 

「リン! おれが最強になる手始めに、まずはお前を倒す! バトルだ!」

「……やっぱきたなグリーン。いいぜ、ぜってー勝つ!」

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 ……というわけで、研究所の外でグリーンとバトルすることになったわけだが……

 

 

「リン、大丈夫かの?その子はバトル向きの性格ではないんじゃが……」

「大丈夫ですよオーキド博士、なんとかなりますって」

 

 

 ……本でだいたいわかってたけど、やっぱり性格補正は知られてないのか。

 リゼをボールから出し、しゃがんで目線を合わせた。

 

 

「リゼ、さっそくで悪いんだけど、今からあそこにいるツンツンヘアーのやつのゼニガメとバトルすることになった。……いける?」

「う、うん……」

 

 

 ーー技「ひっかく」「なきごえ」

 ……まずはバトルに慣れさせないとダメなんだっけ。(オーキド博士著“もえもんトレーナー入門”より)

 

 

「よし、じゃあ作戦を言うからよく聞けよ? リゼ、お前は足がとても速い。そんなリゼなら、相手のゼニガメの動きをよく見れば、攻撃はかわせる。「なきごえ」をしながら、最初はとにかく逃げまくるんだ。慣れてきたら、少しずつ攻撃してみよう。おれの声をよく聞いて、とにかく落ち着いて動くようにな? がんばれ!」

「……うん。りぜがんばる」

「おーい、早くやろうぜー!」

 

 

 グリーンの声に、おれは立ち上がって少し離れたところにいるあいつの顔を見た。……めっちゃ笑ってるな、多分おれも。

 一応の審判はオーキド博士がつとめることになった。

 

 

「……それでは、グリーン対リン、バトル開始!」

 

 

「作戦通りにやれイオラ! 『にらみつける』!」

「! ……リゼ、回り込みながら『なきごえ』」

 

 

 グリーンのイオラが近づきながら『にらみつける』でリゼの[ぼうぎょ]を下げてくる。

 てっきり『たいあたり』とかで押せ押せかと思ったんだけど、どうやらグリーンのやつ、ちゃんと能力ランクについて勉強してたみたいだ。……めんどくせぇ。

 

 

 その後もう一度、リゼがイオラの接近から逃げながら互いの能力ランクを下げた。

 

 

 ーーリゼ[ぼうぎょ]ー2 イオラ[こうげき]ー2

 

 

「……もういいだろ。イオラ! こっちこい!」

 

 

 ? ……なんだ?

 意味のわからないグリーンの行動におれが戸惑っている間に、イオラはグリーンの元まで戻り、リゼがもう一度『なきごえ』をした。

 ……グリーンは黄色い道具をイオラの身体に当て、そのボタンを押す。

 

 

 あれは……?

 げっ、あれか、能力アップアイテムか。あの色のは何だっけ? [ぼうぎょ]以外なら……

 

 

ーーリゼ[ぼうぎょ]ー2 イオラ[こうげき]ー3[きゅうしょ]+2

 

 

 そっち⁉︎ ……あれ?

 

 

「よし行けイオラ! 連続で『たいあたり』だ!」

「ッ! リゼ、突っ込んでくるぞ! 相手の動きをよく見て攻撃をかわすんだ!」

 

 

 まずいまずいまずい! 今急所に当たったら1発でリゼがやられる! くそっ! なんでグリーンが道具なんか使うんだよ!

 

 

 リゼはイオラの『たいあたり』をなんとかかわすが、その動きはぎこちない。……イオラの動きを直視できていないようだ。

 

 

「リゼ! 落ち着いてイオラの動きをよく見るんだ!」

 

 

 その言葉を聞いたリゼが再度『たいあたり』してくるイオラに目を向けると、2体の目が合った。その目に恐怖を感じたリゼは、動き出しが遅れてしまい……

 

 

「リゼ‼︎」

 

 

吹き飛ばされた。

 

 

ーーリゼ(きょうふ)[こうげき]ー2,HP17/20

 

 

 幸運にも急所には当たらなかったようだが、震えていて、とても起き上がれそうにない。

 

 

「……降参だよ」

 

 

「よっしゃ! よくやったなイオラ!」

「……うん」

「へへっ、もっと喜べよな、こいつ!」

 

 

 おれは倒れているリゼに急いで駆け寄って抱き上げた。

 

 

「ごめんなリゼ……、怖かったよな?」

 

 

 まだ『きょうふ』の状態異常が取れずに震えている。……多分、序盤でずっと近づかれながら『にらみつける』されたことが、『おくびょう』なリゼにとっては精神的ダメージが大きかったんだ。……おれのミスだ。

 

 

「どうだリン! おれたちの勝ちだ!」

「……あぁ。『クリティカット』なんてどこで手に入れたんだ?」

「前ねーちゃんたちとクチバデパートに行った時に買っといたのさ! けっこう高かったんだぜ?」

 

 

「2人ともおつかれさま。リン、リゼちゃん大丈夫なの?」

「いや、もうちょっとこのまま……。今日は家で休むよ」

「大丈夫……?」

 

 

 母さんとリーフが、未だ震えているリゼのことを心配そうに近づいてきた。ナナミ姉さんとオーキド博士は何か話してたけど、リゼの背中を撫でていると2人も近づいてきた。

 

 

「2人とも、闇雲に攻撃するわけじゃなくちゃんとやろうとしていることがあって、良いバトルじゃったぞ。リンよ、あそこですぐに降参したのは正解じゃ。……リゼに優しくしてあげるんじゃぞ」

「うん」

「……グリーンは特に言うことなしじゃ。道具をあそこまでうまく使えるとは、驚いたの。イオラの力を十分に引き出せておった」

「へへっ、とーぜんだろ! じゃ、おれはもう行くぜ!」

 

 

 そう言ったグリーンは、足元にいたイオラをモンスターボールに戻した。

 

 

「……行ってらっしゃい、グリーン。気をつけるのよ」

「お兄ちゃん……いってらっしゃい」

「あぁ! 次ここに帰ってくる時は、チャンピオン・グリーン様だからな!

 ……リン、先に行くぜ!」

「……待ってろよ、すぐ追いついてやる」

 

 

 グリーンは、「待たねぇよ!」と言いながら、おれたちに見送られてマサラタウンを飛び出して行った。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 おれはリゼを抱えたまま、母さんと家まで帰ってきた。リゼを心配してくれたリーフも一緒だ。……リーフもまだフシギダネを抱えてる。

 ナナミ姉さんはオーキド研究所に残った。

 

 

 ……リゼは、今のままじゃバトルできない。

 

 

 グリーンとのバトル、おれはグリーンをなめて、「こっちのが[すばやさ]高いし、変化技から入ればいけるやろ」と考えていた。……しかしバトルが始まってみると、グリーンは能力ランクだけでなく急所についても理解しており、おれが実機で使ったことのない戦闘用の道具を使われて敗北。そしてリゼは心に傷を負った。

 ……はっきり言ってグリーンにあの立ち回りをされると、『おくびょう』で[こうげき]に下降補正がかかっているリゼの勝ち筋は、初手から『ひっかく』して急所に当てるしかない。……戦略の時点で負けていたんだ。

 

 

 “萌えっ娘もんすたぁ”(改造ポケモン)の世界は甘くない。

 思っていたよりもトレーナーのレベルは高いし、自分のもえもん各個体のメンタル管理もしないといけない。

 

 

 ……とりあえず今は、リゼのメンタルを回復させないといけないから、オーキド博士言ってたし、いっぱい優しくしてあげよう。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 おれはこの日、リゼを抱いて過ごすことにした。

 膝の上に乗せたままテレビ見て、そのまま昼ご飯食べた(もえもんはポケモンフーズみたいなやつじゃなくて、普通に人間と同じように食事をとる)後は、フシギダネの“ふーちゃん”を抱えたリーフと一緒にマサラタウンを散歩した。

 元気に話しかけてくれるリーフの存在も大きく、散歩から戻ってくるころには、リゼも少し笑顔を見せてくれるようになっていた。

 家に入ると、オーキド博士のとこにいたナナミ姉さんがお菓子をかじっている。

 

 

「……心配してたけど、大丈夫そうね。おじいちゃんにも言っておくわ」

「あー! お姉ちゃんずるい、リーフも食べる!」

 

 

 それからはナナミ姉さんに旅をしていた時の話を聞いた。みんなで晩ご飯を食べて、おれが風呂に入った後、2人とふーちぃは家に帰っていった。

 さすがに『ほのお』タイプのリゼを風呂に入れるわけにはいかないのでその間はリーフたちと遊ばせていたのだが……、風呂上がりに彼女たちの仲睦まじいご様子を影からもえもん図鑑で写真に収めたのは言うまでもない。

 ……リーフたちが帰るときのリゼの悲しそうな顔がやばかった(語彙力崩壊)から、思いっきり抱きしめてやったよ。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 夜、リゼはおれの枕元の大きなクッションに丸まっている。……しっぽの火のせいで、布団に入れないんだよなぁ……。

 

 

「……リゼ、起きてる?」

「……うん。おきてるよ、ますたー。なに?」

 

 

 ……なぁ聞いた?(誰に言ってんだ) “ますたー”だって! 散歩中に初めてそう呼ばれた時は、リーフの前で悶絶しちゃったよ! ……もえもんの習性上トレーナーをそう呼ぶのは本で知ってたけど、これほどニヤけてしまうとは……っ‼︎ リゼ、恐ろしい子……!

 

 

「……今日はどうだった?」

「……たのしかった、りぜ、りーふすき」

「……おれも、リーフのことは好きだな。リゼのことも」

「……ますたーはりぜすき?」

「うん好き」

「……」

 

 

 ……うわこれちょー恥ずい。

 暗い中で俯いているせいで、リゼの表情は見えない。

 

 

「……なぁリゼ」

「……なに? ますたー」

「……おれは、リゼと一緒にいろんなところに行って、リゼと一緒にもえもんマスターになるのが夢なんだ」

「……? もえもんますたー……?」

「……もえもんマスターっていうのは、バトルで1番強い人のことだよ」

「! ……だめだよ……だってりぜ、つよくないもん……」

 

 

 暗闇の中でしっぽの炎が揺れている。ベッドの上で身体を横に向けて、リゼの温かい身体に手を置いた。

 

 

「……大丈夫、おれもリゼと一緒で、今は強くないんだよ。……でも頑張ったら、おれもリゼも、これから強くなれる。……リゼは絶対強くなれる」

「……ほんと?」

「ほんと。リゼは絶対強くなれる。絶対」

「……」

「……だから、一緒に強くなるために、旅をしない?」

「……たび?」

「……うん、旅。おれとリゼが、一緒にいろんなところに行って、一緒にいろんな相手とバトルすることだよ」

「……ばとる……」

 

 

 彼女の背中を撫でていた手で、今度は頭を優しく撫でる。

 

 

「大丈夫、おれがついてる。リゼ、がんばれ」

「……っ……、うん。りぜがんばる!」

「しーっ。母さんが下で寝てる」

「あっ……ごめんなさい」

「ふふっかわいーなー……(やべっ声に出た)……じゃあ、明日の朝にとりあえず1番道路に行ってみよう。……おやすみ、リゼ」

「……うん、おやすみ、ますたー」

 

 

 その夜、リゼはおれの手にひっついて眠った。

 ‥…寝相よくてよかった……

 




 難しい……
 切りがいいところまでいったら、前よりめっちゃ文字数増えた笑
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。