新しい“好き”という気持ち   作:小鴉丸

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ep 02 リクとサラ

「リク、こっちこっち!」

 

 GBNにログインしたリクとユキオは別行動を取っていた。

 そもそも今日はログインしているのがリク、サラ、ユキオのみというのもある。

 

 モモカは部活、アヤは学校、ナナミとコウイチは今日はガンダムベースを優先している。そんな訳で今日はフォースでの活動ではなく個人個人での行動になった。

 

 ユキオはフォース 百鬼のドージと予定があったらしくすぐに別行動となり、今はリクとサラの2人になっていた。

 

「そんな走ると危ないぞー」

 

「あははっ、大丈夫ー!」

 

 何が大丈夫なのかは置いといて、リクは楽しそうに前を行くサラの後ろを歩く。

 

 それにしても、最近のサラはよく笑うようになったと思う。

 自分では気付いていないだろうが、サラはみんなに笑顔を振りまいている。その笑顔は見る人の心を癒してくれて、どこか温かい気持ちになる。

 

 そんなサラとリクはというと、現在はログインゲートから街へ移動して、特に目的なく店を転々としていた。

 

「わぁーっ!」

 

 目に映るもの全てに興味を示すかのようにキョロキョロとしながら色々な店を見ている。

 

「(あ、そっか)」

 

 おそらくだが、サラはこういう所に来たことがあまりないのだろう。少なくともリクは一緒に来たことがない。

 あるとすればロータスチャレンジ後に大量のビルドコインを手に入れた時、モモカと出掛けた時だろうか。

 それを抜きにするなら、少し違うがベアッガイフェスだろう。

 

「リク、リク! これ見て!」

 

「ん……おぉ、美味そう! じゃあこれ食べよっか!」

 

 こくこくと頷く。

 

 サラが目を付けたのはワッフルだった。メープルの甘い匂いに惹かれたのか、ピタリと移動をやめ、その店の前に止まった。

 

「すいません、これ2つください」

 

「2つですね〜。……ってあれ?」

 

「ん?」

 

 注文をすると店の人に顔を凝視されてしまう。

 

 普通に注文したつもりだが、なにか失礼なことをしてしまっただろうか。急に不安になってしまう。

 

「あなた達ビルドダイバーズの?」

 

 しかし続いた言葉はその不安を打ち消すものだった。

 

「え、えぇ」

 

「あなたがリクくんでこっちが……あらあら、やっぱり可愛いわねぇ〜」

 

 店の人はサラをジロジロと見る。

 当の本人はいつも通りの様子だが、たまにリクにも視線を向けてくるから、変にむず痒さを感じてしまう。

 

「私、ビルドダイバーズを応援してるの。前のフォース戦見てたわよ。リクくん相変わらず上手よね〜」

 

 前のフォース戦というのはおそらく先々週に行ったものを指してるのだろう。

 

 第二次有志連合戦以降、リク達ビルドダイバーズの名前はGBN内に広まった。それに伴うかのように、フォース戦の申し込みが次々と来るようになっていた。

 それは初めてのフォース戦、ロンメル隊に勝利した時以上の申し込み数でもあった。

 

 という訳もあり月に何回か数を決めて、フォース戦を行っているのだ。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「照れなくていいのよ〜。本当に凄かったんだから」

 

 あまりにも真っ直ぐに言われるので、恥ずかしくなって照れ隠しに頭を搔く。

 

 そうこう話してる間にワッフルが焼き上がったらしく「次も応援してるわ」と言葉を添えられながら渡された。

 

「温かい……」

 

 受けとるや否や、サラは小さな口を大きく開けてワッフルを食べた。

 少し熱かったのか、はふはふと口を動かしていて、とても可愛いと思った。

 

「あははっ! サラちゃん可愛いねぇ〜。慌てなくても食べ物は逃げないわよ」

 

 その言葉には耳もくれず、ただもぐもぐと食べ続けるサラは、どこか小動物に似た何かを感じてしまう。

 

「……リクは食べないの?」

 

 ジーッとリクが見続けていたせいか、口にあるものを食べ終えたサラはリクにそう質問をしてくる。

 その言葉で無意識の内に、サラを見続けていたことに気付いたリクは「ご、ごめん」と少し上擦った声で返事をし、ワッフルにかぶりついた。

 

 別に謝らなくともよかったのだが、不思議と反射的にしてしまっていた。

 

 なぜ謝ったのか分からなかったサラは、不思議な表情でリクを見上げていたのだった。

 

 

 

 

 

 それからしばらく経ち、リク達はフォースネストでゆっくりとしている。

 

 元々放課後でリクの時間がなかったのもあり、あのワッフルの店を見たあとは軽く街を歩いただけで終わった。

 

「ごめんな、あまり時間が無くて」

 

「ううん。とても楽しかったよ」

 

 申し訳なさそうに言うリクと真逆に、とても満足そうに言うサラ。

 

 何か満足できるようなことがあったとは思えないが、本人が満足そうなら良かったと思いつつ言葉を呑み込む。

 

 休みの日なら長くいられるが、放課後とかだとやはりリクとしてはあっという間に過ぎてしまうから、悩むこともある。

 

 どうにかしてサラと長くいたい。

 最近のリクは、時間があればそんなことを自然と考えるようになっていた。

 

「……リク」

 

「ん、なに?」

 

 展望台デッキからぼーっと夕日を眺めていると、横から声をかけられる。

 そちらを向くと、サラはペンダントを両手で大事そうに包み込み、リクを真っ直ぐに見据えて言った。

 

「サラは、リクと一緒にいれるだけで嬉しい」

 

 心を見透かされた、そう思ってしまう。

 

「みんなと一緒にいるのも嬉しい。だけどサラはね、リクと一緒にいるのが一番嬉しい。胸が、温かくなるの」

 

「サラ……」

 

 サラは、ペンダントから手を離し、リクの手を両手で包み込むように握る。

 

「だから、心配しないで。どんなに短くても、リクといる時間は楽しいから、無理はしなくていいよ?」

 

 あぁ、そうだ。サラは──。

 

「ははっ」

 

 自然とリクは笑いが零れていた。

 

「ほんっ──と、サラにはお見通しだな」

 

 でも、何故か嫌な気分はしない。むしろ安心してる、とでも言えるだろう。

 

 機体(ダブルオースカイ)を通じて思いが丸分かりな(声が聞こえる)のは、どことなく恥ずかしい。だけど、ちゃんとそれを理解してくれた上で話してくれるのは、リクとしても気が楽というのもある。

 

 ……実際、サラの力にリクは何度も助けられてきた。そのことに感謝しているから、というのもあるだろう。

 

「それでも、俺はサラのために何かしたいんだ。もしも何かして欲しいことがあったら、遠慮なく言ってくれよ? ……恩返し、みたいなもんだからさ」

 

「リク……うんっ!」

 

 タイミングよく話が終わった時に、先にログアウトしていたユキオからメールが届いた。内容はモモカの部活が終わりガンダムベースに向かってる、とのことだった。

 

 そのメールはサラにも届いてるらしく、既にメニューを開いていた。

 

「それじゃあ、そろそろログアウトしよっか」

 

「うんっ。リク、また向こうで」

 

「分かった」

 

 サラの身体が光に包まれる。

 先にログアウトしたサラを見届けて、先程言われた言葉をリクは反芻していた。

 

『だから、心配しないで。どんなに短くても、リクといる時間は楽しいから、無理はしなくていいよ?』

 

「楽しい、か」

 

 リクの言葉は誰もいないフォースネストに響き、消えていったのだった。

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