その日の放課後、ユキオとモモカは困惑していた。
今日は息抜きに、とモモカがGBNにログイン出来る日。そしてアヤも日程が空いていたため、ガンダムベースに足を運びログイン出来る日という、久々にビルドダイバーズのメンバーが揃う日だった。
ガンダムベースに着いたリク達はサラやナナミ、コウイチと挨拶をしたあと、アヤが来るまでの時間でGBNにログインする準備をしていた。
そんな時、何でもないことを話すかのように、自然に出たサラの言葉でユキオとモモカは困惑することになった。
「リク」
「ん? なに?」
「リクの好きはどんな好き?」
「? ……好き?」
サラは至って真剣に、リクは訳が分からないというふうに首を傾げている。
実際、何故こういうことをサラが聞いたのかを知るのはナナミだけだが、そのナナミは仕事をしているせいで理由を聞けない。
「どんな……って、好きは好き、だからなぁ」
「うん。サラもそう思う」
ついでに言うと、2人が話す内容に困惑しているのも事実だ。
「だけどナミが『好きの意味は人によって変わる』って言ってたから」
「あぁ、それで俺に聞いてみようと思ったわけか」
リクは成程、と頷くもののすぐに唸り出す。
結局のところリクの“好き”の答えが出ていないからだ。
「うーん……」
そこには答えを考えるリクをただ無言で見守るサラ──達を変な気持ちで見るユキオとモモカ、という変な構図が完成していた。
「り……リっくん、頑張れ──!」
「リクくん……!」
謎の応援が聞こえる中もリクは必死に考える。そして……。
「……こ、これ一体どういう状況……?」
少し遅れて到着したアヤがその光景を見て不思議に思うのだった。
「──つまり、サラちゃんは好きの意味が知りたいってこと?」
「うんっ」
ことの成り行きをサラから聞いたアヤは少し考えた後サラに質問をする。
「因みにだけど。サラちゃんの“好き”はどんなの?」
「私の?」
言われればサラ自身そのことを考えていないことに気付く。
好きな物はいくらでも思い付く。だけど“好き”とは何だろうか?
数ある中で1番に思い付くのは、ナミの言ったような一緒に居て落ち着く人、アークに言われた大切な人……だろう。そしてそれは──。
「私……リクが好き。だから私の“好き”はリクだと思う」
「「!?!?」」
「あ、あはは……」
サラの発言に当然驚く外野2人になんとも微妙な様子のアヤ。
追い打ちをかけるかのように、その会話を聞いていたリクがそこに割り込んで更に話をややこしくするような発言をする。
「え、そういうのでいいの? それなら俺もサラが好きだよ」
「リっくん!!」
「サラちゃん!!」
その様子を見ていたユキオとモモカはすぐさま名前を呼んだ方に抱き着きに行く。
「流石だよリっくん! もうなんて言うか、清々しいくらいだよ!」
「え、何が?」
モモカとサラは身長差があるため近くに寄って目線を合わせるだけだが、ユキオは普通に後ろから抱き着いた。
ガンダムのことを話すようなテンションとは違う感じで盛り上がってるユキオをリクは冷めた様子で対応する。
「ごめんごめん! ナナミのやつが手伝えって言ってて──って、随分盛り上がってるね。何かあったのかい?」
「あ……こんにちはコウイチさん。えっとですね、サラちゃんが“好き”を調べてるらしくて……」
そこまでアヤが言ってコウイチは何か納得したように「そういうことか、ナナミのやつ……」と呟く。
「何かあったんですか?」
「『面倒なことになってたらごめんね』なんて言われてたから何だろうな、って……。確かにこれは面倒だなぁ」
頭を掻きながらその不思議な空間を眺めている。
「まさかこんなことになってるなんて。これ、どう収拾をつけるんだよ……」
「と、とりあえず時間に身を任せときましょうか」
盛り上がる4人とそれを見守る2人で分かれたその日は、結局GBNにログインすることはなかった。