「おーいリク君、サラ君! こっちだ!」
極東ベースのロビーにあるカフェコーナーの入口で2人を呼ぶ声が聞こえる。
「キョウヤさん!」
名前を呼ばれたリクはそちらへ駆け出す。そこには2人を呼んだクジョウ・キョウヤが手を振り立っていた。
「急に誘ってしまって申し訳ない。久しぶりに2人と話したくなってね」
「いえ! 俺も話したいって思ってたところです!」
「はは、それは嬉しいね。さて、立ち話もなんだし中に入ろうか」
「はいっ!」
3人でカフェコーナーへ足を運ぶ。
今日はキョウヤに誘われたためGBNへ丁度ログインしていた2人がその場へ向かったのだ。
「今日は僕の奢りだ、何でも好きなのを頼んでいいよ」
「!」
その言葉にサラは目を輝かせる。そして素早くメニューを取り出しパラパラとページをめくる。
そんなサラを苦笑いでリクは見ていた。
「……こうやってゆっくり話せる日があるのは、とても良いものだね」
「そうですね……」
約2ヶ月前の第二次有志連合戦、それがあったからそう思ってしまうのだろう。
お互いに守りたいものを背負いながらの戦い。絶対に負けられない、絶対に勝たないといけないそんな戦い。
その戦いはリク達ビルドダイバーズが照らした未来への可能性が示され終わりを迎えた。
「──見苦しいかな。今でも思うんだ、あの時、もっといいやり方があったんじゃないか……って。あんな形で戦わなくてよかったんじゃないかって」
「キョウヤさん……」
キョウヤの言葉はいつかリクが言った言葉に重ねられる。
『いつかあなたと戦いたい! 戦えるようになれますか?』
『……待ってるよ』
憧れから来る純粋な気持ち。その純粋から生まれた言葉は2人が予想もしない結果で叶ってしまった。
結果として2人は全力で戦った。
数ヶ月前にGBNを始めたプレイヤーと現チャンピオンが全力で戦ったのだ。そしてそれは、1人助っ人が入ったもののリクの勝利として幕を閉じた。
その時のことをキョウヤは今でも悔やむ。自分の不甲斐なさに、自分の弱さに。
「でも──」
リクは思い出す。
あのレイドボス戦で全ダイバーが繋がった時を。キョウヤが背中を押してくれた時のことを。
「それでも、キョウヤさんは俺達を進ませてくれました。前へ……未来へ、進ませてくれました。その事を、俺は今も感謝しています」
「そう言って貰えて本当に嬉しいよ。気が軽くなる」
微妙に重い雰囲気が漂う中、それを元気な声が振り払う。
「リク! 私これ食べたい!」
2人が話してる間サラはずっとメニューと向かい合い注文を決めていたのだ。
そんなサラの様子に2人は思わず笑ってしまう。
「ははっ! サラ決めるの早いよ」
「リクの分も決めてるんだよ? えっと──」
メニューを指差しながらリクとサラは幸せそうに笑い合う。その姿をキョウヤは久々に見た気がし、この笑顔が残ってよかった。と、心から思う。
「おや、それだけでいいのかい? もっと頼んでもいいんだよ?」
「いいの?」
「勿論。なんせそのために呼んだようなものだからね」
「やった! ありがとうキョウヤ!」
「あ、ありがとうございます!」
キョウヤは思う。本当に、この笑顔が失われなくて良かったと。
「リク、リク! これも美味しそう!」
「うわっ、ほんとだ! ……でもサラ、食べれるの?」
「うんっ! リクと半分にして食べるから大丈夫!」
「勝手に決められた……」
「はは、リク君大変だね」
「うう……。キョウヤさんも見てないで助けてくださいよぉ〜」
こうしてゆったり出来る時間があるのは、2人のおかげでもある。
そのことを口には出さないが、心の中で感謝するキョウヤであった。