ねごしえーたー!   作:社畜だったきなこ餅

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今までは、ある意味清廉潔白な空間にいたコクヨウ。
そんな彼女が本格的に挑むシティアドベンチャーの行方やいかに。


11.諦観と悪意の絡む先

 

 

 冒険者の人達の事情や状況を聞き取りすべく、多忙なギグさんに代わり腕に自信のある神官さんを伴ってお出かけしたボク達なのですが。

 香ばしい匂いを上げながらお肉を焼いてた串焼き屋さんに思わず釣られてしまい、ほくほくの湯気を立てる焼き立てのジューシィな美味しい串焼きを頬張っていたところ。

 

 突然、通行人のチョイ悪っぽい男の人が膝から崩れ落ちるように地面へと倒れ込んでしまい、偶然隣に居た優しそうな糸目のお兄さんがしゃがみ込んで倒れた人に呼びかけています。

 ボク達も駆け寄るべきか、と迷っている内に少し離れた場所に居た、倒れた人の知り合いと思しき人が乱暴に糸目のお兄さんを突き飛ばして倒れた男の人を担ぎ上げると、どこかへ走り去っていきました。

 

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「ん? ああ突き飛ばされただけだからな、大した怪我もしてないよ」

 

 

 突然の展開にボクも神官さん達もあっけに取られていたけど、気を取り直して尻餅をついたままの姿勢な糸目のお兄さんへ駆け寄り手を差し出すのです。

 糸目のお兄さんは表情を崩すことなくのほほんとした様子だったけど、ボクの顔を見て不思議そうな気配を滲ませたけどすぐにその気配も霧散して。

 

 ボクの手を掴み立ち上がるのです。あれ、何だか全然重さを感じなかったけどなんでだろう?

 

 そんなボクの疑問を残して糸目のお兄さんはボクに礼を言うと、屋台の方へ足を向け……顔見知りらしい串焼き屋のおじさんと何か話し合った後に、串焼きを一本受け取っていました。

 

 

「巫女様、どうしましょうか?」

 

「あ、うんそうだね。とりあえず近くの冒険者の人達が集まる酒場へ行こうか、そこに駆け出しの人が集まってるから店主さんから色々聞けると思うし」

 

 

 手に持ったままの食べ終わった串を、屋台の近くにあった屑籠へしっかりと捨てて、神官さん達を伴って酒場へ向かおうとしたその時でした。

 

 

「あーお嬢さん方、何かお困りのようだが手助けは必要かい?」

 

 

 さっきまで串焼き屋のおじさんと話しながら串焼きを齧っていた、糸目のお兄さんが助力を申し出てくれました。

 タイミング的に怪しい事この上ないけども、言葉の様子や態度に悪意は見えてこないので、思惑があるとしてもこちらへの害意はない……と見られます。

 

 コレがどこかの組織の調査や裏取りなら、相手方の組織からの監視役だと思えるのですけど……。

 冒険者の人達ってギルド的なものがなく、酒場を中心とした寄り合い所帯なんですよね。探られて困る事や隠し金庫的なモノもない筈だから、その可能性は殆どないと思われます。

 

 そんな事を考えていたら、護衛の神官さんの内一人がやんわりと断ろうとボクを庇うように前に出、糸目のお兄さんへ話をしたのですが。

 ボクの耳でも聞き取れない声でお兄さんが神官さん達へ何かを囁くと、ボクから見て後ろ姿しか見えない神官が明らかに驚愕し動揺した気配を感じます。

 

 一体どんなことを囁いたのか物凄く気になるのですが、囁かれた神官の人は慌てた様子で周囲を見回した後、神妙な顔でボクへと振り返りました。

 

 

「巫女様、この男にも助力を頼むべきです」

 

 

 冷や汗を流しながらこちらに進言してくれる神官さんの様子に、一体何を言われたのだろうと気になる事この上ないのですが。

 護衛の人が必要と判断したと言う事は相応の理由があると言う事なので、ボクにその進言を断る理由はないのです。

 

 

「わかりました……ボクの名前はコクヨウと云います。神殿長から神託を授かり物事に当たっているものです」

 

「ご丁寧にどうも、俺はシナバーというモノだ。この街には久しぶりに帰って来たものだが、違う街で少しばかり後ろ暗い事に携わってた。よろしくな」

 

 

 ぺこりと頭を下げ、気合を入れるべく耳をピンと立てて糸目のお兄さんへ挨拶をすれば、糸目のお兄さん……シナバーさんも飄々とした調子で応じてくれました。

 改めて彼を観察してみると、身長としては180cmあるかないかぐらいの長身。ひょろっとした印象ですが厚着気味に着込んでいるその恰好は暖かそうです。

 

 しかし後ろ暗い事を少しばかり……ですか。

 

 

「歩きながらで失礼しますけども、後ろ暗い事というのは?」

 

「ああ、ちょっとばかり他所様の噂話を集めては情報を売ったり、古代の遺跡で鍵開けやったりとかしてたのさ」

 

 

 こう、ちょちょいとね。なんて軽い調子で鍵開けのジェスチャーを見せてくれるシナバーさん。

 いわゆる、シーフ的な職務についていたっぽい人です。神官さんの目もあるので言葉にしていませんが、盗み等もきっとやっていたのでしょう。

 その手の事に明るい人が助力を申し出てくれるというのは有難い話です、問題はなんでそんな人が手助けしてくれるかという所ですが……。

 

 

「そう警戒しなさんな、故郷で問題が起きてるようだから。暇だったしちょっと手助けしようと思っただけさ」

 

 

 ボクの警戒する様子に気付いたのか、シナバーさんは糸目を崩さないまま肩を竦めてそんな事をのたまいます。

 なんかこう、胡散臭いんだけど……まぁいいか、うん、きっと大丈夫だよね。

 

 そんなこんなで話してる内に目的の酒場に到着、扉を開けてみれば若干据えたような臭いがボクの鼻を突くと共に賑やかな喧騒がピコピコ動くボクの耳に入ってきます。

 法衣を着込んだボクや神官さん達に、冒険者の視線が一瞬集まります、何だか注目されているようです。

 

 

「そりゃ、コクヨウちゃん綺麗だからねぇ。女っ気のない連中には少々刺激が強いってもんさ」

 

 

 思わず立ち止まったボクの肩を軽く叩きつつ、シナバーさんはそんなことを言いながら慣れた様子で酒場の中へ足を踏み入れていくので、遅れないようにと慌てて神官さん達と一緒に後を追いかけるのです。

 時折スケベな視線を向けた酔っ払いさんがボクへ手を伸ばそうとしてますが、何だか周囲への警戒を密にしている神官の人達に牽制されておずおずと手を引っ込めてたのが印象的です。

 

 

「おおコレは神殿の巫女様ではないですか、貴方方のおかげで食いっぱぐれが減って感謝感激ですぜ」

 

「お世辞はいいよ店主さん、見たところ盛況な様子だけどさ。駆け出しの子達の様子はどう?」

 

 

 少し高めのカウンターの椅子によじ登るようにして座りつつ、頭頂部が薄くなっている店主のおじさんと話を始めるのだ。

 しかし、ボクの質問に対して店主さんの態度がいまいち煮え切らない。

 

 

「あー、そうだなぁ。可もなく不可もなくと言ったところか、無駄におっ死ぬガキが減ったのは事実だがなぁ」

 

「店主、俺のおごりだ。こちらのお嬢さんと神官さんらへ酒精の入ってない飲み物出してやってくれ」

 

 

 奥歯にものが挟んだかのような物言いの店主さんに、どうしたものかと考えていたら横からシナバーさんの助け舟。

 彼が銀貨を2枚ほど店主さんへ弾いて渡せば、満面の笑みを浮かべた店主さんがソレを慣れた様子で受け取ってすぐにボク達へ飲み物を出してくれる。

 

 

「情報というのは金になるもので酒場の店主は業突く張りばかりだ、ただ訊くだけじゃ世間話程度にしか教えてくれないぞ」

 

「おう兄さん、これも商売なんだよ。そんなに厳しい事は言わないでくれ」

 

 

 木で作られたと思われるジョッキを傾け、何かを飲みながらボク達に教授してくれたシナバーさんの言葉に店主さんが肩を竦めながら反論している。

 しかし、なるほど……考えてみたら酒場とのやり取りを直接やるのは初めてだし、違う領域には違うルールがあるんだなぁ。あ、このジュース薄くて水っぽいけど甘くて美味しい。

 

 

「まぁ注文してくれたなら教えるけどよ。神殿の方々が依頼を定期的に出してくれるようになって、食えない冒険者が減ったのは事実なんだが……」

 

「危険な仕事をこなせるほど技量はない、しかし駆け出しというには齢を食った連中が駆け出し向けの仕事を奪ってしまっててなぁ」

 

 

 余りにも酷い連中はこっちから依頼受けさせてねぇけどよ、とボヤく店主さん。

 

 

「冒険者ってのは仕事の奪い合いだからな、割が良かったり安定した依頼を受けるのに手段を選ばないヤツも結構いるもんだ」

 

「実入りはそんなに多くないけど暫く食ってける程度の金は、農地の見回りの依頼で出るからな。まぁ仕事をこなせないアホが受けて、受注禁止の処分食らったヤツも何人かいたけどよ」

 

 

 ほへー、などと言いながら耳をピコピコ動かして店主さんの話を聞いていたボクに補足するように、いつの間にか頼んでいたっぽいナッツを齧りながらシナバーさんが解説してくれました。

 そして、シナバーさんの言葉に更につぎ足すように店主さんの説明が入ります。そう言えば最近も評判が悪い冒険者さんへの、見回り依頼受注禁止の沙汰を下した覚えがあります。

 

 

「あの、よろしいでしょうか? 食うに困るのならば、大地を耕す仕事に就けばこの街ならば生きていくのにそうそう困らぬと思うのですが……」

 

「神官さんらしい言い方だな、だが冒険者になろうって連中は根本的にコツコツ働くのが嫌いな連中の行きつく果てなんだよ」

 

 

 護衛の大地母神派の神官の人が戸惑いながら店主さんへ質問してみれば、返ってきた言葉は身も蓋もない言葉でした。

 お金は欲しい、だけどコツコツは働けない、縛られるのも嫌い……渡世人って言うとカッコよいけど、なんかこう違う気もする。

 

 

「書籍で読んだのですが、魔物退治や古代の遺跡の発掘で大成功を収める人ってどのぐらいいるんですか?」

 

「空を自由に飛び回るハビットの数程度には、いるんじゃねぇかな」

 

 

 神殿の書庫にあった冒険譚とかから得た知識から聞いてみれば、これまた身も蓋もない回答。

 鳥みたいに空を飛ぶ巨大兎が出る程度の確率、要するに殆どどころか全くいないて言う事だ。

 

 

「そもそもアレ、奇跡的大成功を収めた冒険者が法螺ふきまくって書いた自伝が大当たりしたもんが大半なんだよな」

 

「おうよ、しかも笑えないのがそれを心から信じて……夢にお目目輝かせたガキが、毎年出てくるという現実だな」

 

 

 ポリポリとナッツを齧りながら、ぼそりと呟いたシナバーさんの言葉に店主さんも頷きながら同意を示す。

 ナッツの入ったお皿をじー、と見詰めながら二人の会話に耳を傾けてたら、苦笑いしたシナバーさんがボクの手が届くところにお皿を滑らせてくれたので、お礼を言いながらポリポリナッツを齧るのです。

 

 

「……もしも、ですけど」

 

「うん?」

 

 

 もっきゅもっきゅと、ナッツを頬張って飲み込みジュースで口の中を洗ってから。

 重い溜息を吐いていた、店主さんを真正面から見据えながらボクは口を開く。

 

 

「冒険者の人達に札をつけ、適正依頼を受けれるよう調整し冒険者の人達の仕事内容を評価して報酬を渡す。そんな組織を作るとしたら笑いますか?」

 

「おうそうだな、怒り狂ったドラゴンに棒きれ一本で挑むバカを見た時みたいに指差して笑ってやる」

 

 

 気合を入れたボクの言葉への容赦のない言葉に、おもわずむぎゅぅ。と言わされてしまう。

 だけども。店主さんはさらに言葉を続けた。

 

 

 

「だが棒きれ一本でドラゴンに立ち向かうっていう勇気は本物だし、成し遂げられたのならばそいつは間違いなく英雄だ」

 

 




悪魔さん「冒険者ギルド?この世界にはないねぇ、なんせ冒険者という輩がありったけの夢を搔き集めて探し物を探しに行くような夢見がちボーイか」
悪魔さん「はたまた、鬱屈した日常を嫌って飛び出したような連中が大半だ。そんな連中に首輪をかけようと思うモノも居なかったみたいだよ」
悪魔さん「まぁ、入る銭とかかる手間が明らかに釣り合ってないだろうしね。今のままやろうとしたら」


『TIPS.魔法とは③魔術』
魔法の大系の一つであり、かかる手間と負担は大系化されている魔法の中でも最も大きい種別である。
例えば火を放つ《発火》の魔術を発動しようとした場合……
《発火》を発動する地点に狙いを定め、集中し余分な思考を省き、そこから火を放つコマンドワードを唱える必要がある。
さらに、爆発し周囲を燃焼させる《爆裂火球》になると手間は更に跳ね上がる。
まず火球を一時的に保持しておく地点を定め、集中して余分な思考を省き、コマンドワードで発生させた火球を保持、そこから火球を大きくするコマンドワードを唱えてから爆裂し延焼するワードを付与。そこまで準備を終えてからようやく発射する。
熟練者になれば幾つかの手間をスキップしたり、一つのワードで複数のワードを混ぜる事が出来る為発動時間が短縮可能となるが、待っているのは膨大な知識の蓄積と実践の繰り返しである。
これらの複雑さや煩雑さから、自然と学者肌の人間が魔術の研鑽を積む傾向が強い。

余談であるが、誰が唱えても正しい手順を踏めば効果を発動するという特性から、魔法の道具と言われる様々なモノに付与されている魔法の大半は、魔術が付与されている。
そこまで技術を積めば富には困らない為、夢見がちな学者がよく挑んでは先が見えない研鑽に発狂するというのが最早風物詩扱いされている。
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