ねごしえーたー!   作:社畜だったきなこ餅

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そんなわけで、新たな試練の始まりハジマリなお話。
果たしてコクヨウに課せられる試練とは……

絵師のモロ蔵先生(https://twitter.com/morozoub)に依頼していたコクヨウ絵が仕上がりました!

【挿絵表示】

この世界にやってきてすぐの状態ですね、間違いなく。
ブラっぽいのが見えないのは、きっとつけてない状態なのです。


19.いざ往かん北方山脈(イラスト追加)

 

 皆さんこんにちは、いかがお過ごしでしょうか?

 ただいまボクことコクヨウは……。

 

 

「この速度なら、まぁ五日間ほどで到着できるであるな」

 

「んだな、天候が崩れたらどうなるかわからんけどな」

 

 

 二羽のハビットに牽かれた馬車ならぬ、兎車にてセントへレアの街から遠く離れた北にある北方山脈へ向かっております。

 道中の護衛は神殿からはギグさんに、この前ヴァーヴルグさんと激闘を繰り広げていた《不滅》の《貪竜》ドゥールさん。それに……

 

 

「神妙な顔して頼み込んでくるから何事かと思ったら、護衛の頼みとはねぇ」

 

 

 御者台で巧みに二羽のハビットを操りながら、糸目のまま呑気に欠伸をしているシナバーさんにお願いしております。

 いやね、他意はないんだよ。ただ神殿のベテラン神官の人達もあまり遠出出来ない、そんな中で経験豊富で相談に乗ってくれそうな人ってのが彼しかいなかっただけなのだ。

 

 

「なんで、こうなっちゃったのかなぁ」

 

 

 思わず兎車の中で遠い目をしながら、天井を見上げるボクである。

 事の発端はそう、今も外でギグさんと談笑しているドゥールさんが、訓練場にてヴァーヴルグさんと激闘を繰り広げた日の夜にまで遡るのだ。

 

 

 

 

 

 あの日もボクは、神殿で出された夕食に舌鼓を打ち……さぁお風呂に入ろうかとしていた時。

 何だか凄く苦虫を噛み潰したような表情をしたアクセリアさんに、神殿長が呼んでいるとの事で祭壇のある広間まで呼び出されたんだけども……。

 

 

「急に呼び出して誠に申し訳ありません、巫女コクヨウ」

 

「いえ、気になさらないで下さい。何か問題でも起きたのですか?」

 

 

 憂いを隠すことなく溜息を零していたスェラルリーネさんが、アクセリアさんに伴われて広間へ立ち入ったボクへ頭を下げてお詫びを口にした瞬間、ボクは確信した。

 なんかとんでもない厄介事が起きようとしていると。

 

 

「問題……というのには、聊か不明瞭なのですけれども。河川の守護女神ヘレアルディーネ様より。祈りを捧げていなかった私に直接、神託が下されました」

 

「……中々の緊急案件っぽいですね」

 

 

 何か女神様達からの指示や神託があっても、原則朝一番のスェラルリーネさんがお祈りを捧げているタイミングで来ているのがいつものパターンなのだ。

 それなのに、そのタイミングを待たずに女神様から指示が降りてくるというのは、言ってみれば緊急の案件がメールや直電で来るようなモノっぽいわけで……。

 

 うん、控えめに言っても中々に大変そうだね!

 

 

「信託の内容は、巫女コクヨウを北方山脈へ赴かせ……問題の解決に当たらせよ、というモノでした」

 

「どのような問題、でしょうか……?」

 

「ヘレアルディーネ様も他の神からの忠告を下に神託を下したようでして……しかし、心当たりは幾つかあります」

 

 

 広間の中を通っている清流の流れる音が響くぐらい、静かで重苦しい沈黙が満ちる中神殿長が言葉を続ける。

 

 

「少し前辺りから、北方山脈の方から食料品の買い付けに来る商人が増えており……職人の方からの話によりますと、炭金の搬入量が例年に比べて減っているとの事です」

 

「なるほど……もしかしてお昼ごろにヴァーヴルグさんと組み手をしていた竜人の方も、その案件で来られていたのでしょうか?」

 

「恐らくは」

 

 

 難しそうな表情を浮かべ、ボクの問いかけに対して首肯を返すスェラルリーネさん。

 内容が内容だけに、ボクに行ってこいとも言い辛そうな雰囲気です。だけども何だかそれ以外の問題もあって、神殿長は試練を下すのに迷っている気がする。

 

 

「……巫女コクヨウ、炭金がどのような事に使われているのかは。ご存じですね?」

 

「はい、生活用の燃料から鍛冶に欠かせない燃料……あ」

 

「気付きましたか。単純に生産量が落ちているだけ、それならばまだ良いのです……しかし、もし万が一にでも大量に購入している所があるとしたら」

 

「直近で大量の武具を生産している、という事ですか……」

 

 

 スェラルリーネさんからの問いかけに答え、自身が発した言葉で今の状況が齎している最悪の事態に思い当たる。

 冒険者の人達への貸与用装備の生産とかは確かにボクもお願いしたけども、だからといって供給が減らされる程の消費ではない事は書類で確認済みなのだ。

 そうなると、大量に炭金を仕入れて消費している所がある事になり。生活必需品等への使用ならまぁ良いにしても。

 

 ソレの使用用途が、武具の大増産だった場合。何かしらの戦争、ないし紛争の準備をしている所がある事になってしまうんだ。

 

 

「無論、領主様にも神殿の方から……巫女コクヨウが普段から仲良くしているシナバーさんを通じて、これらの懸念は伝えてあります」

 

「なるほど……ボクがやる事は、北方山脈で何が起きているか。そして可能ならば弁舌による鎮静化、と」

 

 

 スェラルリーネさんが微妙に聞き捨てならない事を言ったような気がするけども、今はそれどころじゃない。

 大事なのは、ここ十年近くは戦争と言えるものは近隣では起きてないそうだけど……だからこの先もずっと無いとは言い切れないのだ。

 勿論、ボク達の取り越し苦労で終わる可能性も十分にあるし、むしろそっちの方が嬉しいぐらいだ。

 だけども、万が一の最悪の想定が当たった場合……炭金を供給している北方山脈と、普段から取引しているこの街が巻き込まれない保証もまたないんだよね……。

 

 故に、ボクは神殿長から下された。北方山脈で起きている問題の調査と可能な限りの解決という、多分今までで最も難易度が高いであろう試練を受諾したのだ。

 

 

 

 

 そんなこんなで、普段からよくしてもらってる商人組合の人に長旅に必要なモノと兎車を用意してもらい。

 万が一の際にすぐに逃げられるよう、最低限の人員……ボクとシナバーさん、それにギグさん。そして道先案内人の竜人さん事、《不滅》の《貪竜》ドゥールさんで北方山脈へ向かう事となったのだ。

 

 

「しかし、炭金の供給が減らされてたってのは我輩、正直驚きなのである」

 

「なんで称号持ちのてめぇが知らねぇんだよ……」

 

「我輩の本分は敵を砕く事、政はさっぱりぷーなのであるよ」

 

 

 箱型兎車の中の、クッションが置かれた椅子に座ったまま耳をピコピコと動かしてギグさんとドゥールさんの会話に文字通り耳を傾ける。

 意外も意外だったのは、ドゥールさん割と愉快というか、何というかな人だったってところだよね……ヴァーヴルグさんと真正面からやり合ってた姿からは想像できないよ、正直な話。

 

 窓から見える外の景色は、ちらほらと雪が残っており入り込む隙間風は結構冷たい。

 なので、大きい自身のモフモフ尻尾を抱えるようにして暖を取るのだ……旅路の途中で無ければ、ハビットに抱き着くモノを……。

 

 

「道中は何度か野宿を挟むのかな?」

 

「いや、この街道はそこそこ往来が多いからな。それなりに宿はあるから野宿の必要はない筈だぞ」

 

「そっかー……」

 

「そこで安堵するならともかく、残念そうにされるのはさすがに予想外だぞ」

 

 

 いやだってさぁ、野宿ならあのハビットのお腹に埋もれながらすやすやできるんだよ?

 しかも二羽いるんだよ、二羽の間に挟まって寝れたらきっと極楽だよ?! ああでも、独り占めはさすがにマナー違反だよね……。

 

 

「顔は見えてないが、またアホな事考えてそうだな。この娘」

 

「まぁいつもの事だからなぁ、御守お疲れさん」

 

 

 こちらに視線を向ける事無く、御者をしているシナバーさんから容赦のない突っ込みが刺さると共に、ギグさんもフォローなしであった。解せぬ。

 そんな具合に、特に襲撃があるとかそういう事もなく旅路は順調に進み……やがて今日泊まる宿へと到着。ちなみに宿代は神殿長から預かったお金で支払うのだ。

 

 兎車を厩舎に預けて、シナバーさんについて宿の扉をくぐってみれば、その中は結構な賑わいであちこちのテーブルで杯を酌み交わしてる商人と思しき人がいるね。

 ともあれ、まずは部屋を……。

 

 

「申し訳ありません、ただいまお部屋が埋まっておりまして……二人部屋なら二つなんとかご用意できるのですが」

 

「あ、そうなの? じゃあそれで」

 

「待てぃ」

 

 

 店主さんに代金を支払おうとしたら、シナバーさんに止められた。解せぬ。

 

 

「そこで既にお酒飲み始めてるギグさんとドゥールさんで一部屋、ボクとシナバーさんと一部屋で問題ないんじゃないの?」

 

「心の底からお前がそう思ってるという現状に、俺は今一番驚いてるよ……」

 

 

 だって、片方に男3人詰め込むわけにもいかないし。二人部屋二つに分かれるなら効率的だよね。

 そう首を傾げて問いかけてみれば、シナバーさんは無言で頭を抱え何か諦めたような笑みを浮かべて、それでいいと返事をくれました。

 

 

「大胆でありますなー、巫女殿は」

 

「ふぇ?」

 

 

 体格に見合った大きな杯を片手に、度数の強そうなお酒をぐいぐい飲んでたドゥールさんの呟きが耳に届く。

 大胆って、何が?

 

 シナバーさんは頼りになる人だし信頼できる男の人で、そんな人と一晩同じ部屋で寝るのぐらい……。

 …………一晩、同じ部屋で寝るのぐらい……?

 

 

「あ、固まった」

 

「言われて気付くとは、初心な女子であるなー」

 

 

 ギグさんとドゥールさんの会話が凄く遠く聞こえる中、気まずそうにシナバーさんへ視線を向けてみれば。

 今更気づいたかと言わんばかりの顔をしながらも、どこか気まずそうに目を逸らされました。

 

 

 

 

 

 

 まぁ結論から言えば夜に何かがあったかと言えば何もなかったんだけどさ。

 何だろう、これはこれでとても複雑な気がする……い、いや、そういう事をやりたいとかそんなんじゃないんだけどね!

 




何となく道先案内人としてついてきたノリの竜人さんことドゥールさんですが……。
彼は彼なりに使命を受けてセントへレアの街へ赴き、そして今回の旅路についてきております。
その辺りは次回判明するかもしれない。



『TIPS.旅人の宿』
街道沿いに点在する、行商人や旅人を顧客としてあてこんだ宿泊施設。
規模や内容は店によってピンキリあるものの、それなりに安全な夜と暖かい食事を提供してくれる旅人たちにとっては必須とも言える施設である。
支払いは貨幣から、様々な荷物による現物払いまで色々な支払いにも対応している店が多いのが特徴。

ついでに言えば、ひっそりとあいびきしたい関係を秘密にしたい恋人や貴族が、一夜のロマンスを交わすのにも使ったり使わなかったりするらしい。
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