ねごしえーたー!   作:社畜のきなこ餅

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最近、気付いたことがあります。
もしかすると社畜の考えるロリ巨乳は、世間的にはロリ爆乳やロリ魔乳なのではないんじゃなかろうかと……。

でも、可愛い子にでっかいお胸ついてるのが好きだからね。しょうがないね。


20.異文化交流とは何ぞや

 

 

 えっちらおっちら、兎車に揺られたり道中の宿で一夜を明かしたりを繰り返す事数日間。

 特に何事もなく、ボク達は北方山脈にようやく立ち入る事が出来たのだ。出来たんだけど……。

 

 

「あれ?洞窟に入るの? なんだか凄い間口が広い洞窟だけど……」

 

「ああ、コクヨウ嬢は初めて来たんだもんな。そこの竜人みたいに飛べる連中以外は、基本的にここから足を踏み入れるのさ」

 

 

 窓から顔を出して眺めてみれば、結構な高さに幅のある洞窟がその大口を広げていて。

 それでも壁面や天井から吊るされた灯りから、進む事に不自由しない程度の明るさが確保されていて、少し驚きの光景だね。

 

 

「巫女殿の街辺りを治めてた十代前の領主が、当時の女王や巨人達と盟約を交わし、互いの交易を滞りなく進める為に掘ったのであるよ」

 

「うちの家に残ってた古文書にも載ってたなぁ。何でも、死者が当たり前のように出る大工事だったらしいな」

 

 

 ほへー、と見回していると、疎らにだけども行商人さんと思しき荷兎車もちらほらと見える。

 どうやらこのトンネルは、生活や交易に欠かせない要衝のようだ。

 

 

「我輩達の里はこっからまだまだ先なのであるよー。まぁ、山脈を脚や翼で行くことを思えば全然楽なのであるけどなー」

 

 

 ついてくるのであるよー、と呑気な口調で先導を始めるドゥールさんについていくように、シナバーさんが兎車を進ませる。

 何だろう、シナバーさんが洞窟に入ってから凄い気を張りつめさせている気がする。

 

 そんな事を考えていたら、シナバーさんが無言でボクに自分の背中に隠れるようジェスチャーすると、口を開き始めた。

 

 

「あードゥールさんや、お前さんに何かしら思惑があるのは理解しているが……そこな暗がりから、敵意と殺意をこっちへ向けている連中もお前さんの思惑によるものかい?」

 

「少しばかり問題があってな、外からの客人には色々と神経質になっているのであるよ。しかし不作法なのも事実であるな」

 

 

 え、マジで?と言わんばかりに周囲をきょろきょろと見回しているギグさんを他所に、ドゥールさんは軽く一声咆哮を上げると。

 シナバーさんの背中越しに状況を見守っていたボクの視界の端で、トンネルの影から染み出てきたかのように数人の竜人さんが姿を現した。

 

 

「『不滅』様、今はネズミの子すらも警戒すべき状況である事は重々承知なのでは?」

 

「承知しているのである、その上で頼むであるよ。彼ら……いや、彼女は女王が招いた客人であるしな」

 

 

 え、そうなの?ボクはむしろ神託に導かれるまま、問題解決の為にやってきたっていう意識が強かったんだけど。

 

 

「そこの、ヒュームの後ろに隠れている獣人の娘が?」

 

「不躾な視線を送るものではないのである。彼女は我輩らが食料を買っている街の重要人物なのであるよ」

 

 

 影から現れた竜人の内、代表者と思われる人が剣呑な視線と敵意を向けてきたので……シナバーさんの背中から出してた顔を引っ込めるボク。

 いや、うん。明らかな敵意を向けられるのはちょっとさすがに怖いのだ、自慢じゃないがボクは煩い死ね!って襲われたら儚く散る程度のナマモノなのだ。

 

 

「……わかりました。しかし、監視は続けさせて頂きます」

 

「うむ、まぁ妥協点であるなー。スマンのであるよ『影爪』」

 

 

 申し訳ないと思うのならば少しは話を通して下さい、と影爪と呼ばれた竜人さんはドゥールさんへ苦情を告げると、現れた時の逆回しを見させられるかのように影へと消えていった。

 直接向けられていた敵意のようなモノが消えてホッとするボク、そしてふと気付く。

 

 しがみつくようにシナバーさんの背中に隠れてたせいで、思いきりボクの大きなお胸をシナバーさんの背中に押し付けてました。

 何だか凄く気恥しくなったので、耳をペタンと倒してそそくさと兎車の室内に戻るのです。これは緊急事態のなんやかんやによるコラテラルなダメージなのだ。

 

 

「いやー、シナバー殿苦労されておるようですなー」

 

「誰のせいだと思っている……」

 

「我輩、竜人であるからなー。ヒュームの色恋事情さっぱりなのであるよー」

 

「いやお前さん、ぜってぇわかって言ってるよな?」

 

 

 兎車の外から聞こえてくる会話に、自らの手で耳を塞ぐ。

 あーあー、聞こえないったら聞こえない。聞こえないのだ!

 

 

 

 そんな具合に多少のハプニング、うん、多少なのだ。多少と言ったら多少なのだ。

 ガタゴトと、言葉も少なくトンネルを進んでいくと。大きく兎車が揺れると同時に何かに乗り上げたような感覚を受けた。

 

 気になって、窓から少しだけ顔を出してみてみると。さっきまで歩いていた洞窟とは少しばかり情景が変わっており。

 今ボクが乗っている兎車を後3台ぐらいは並べられそうな、大きな縦穴に出たようです。

 

 

「……アレは、歯車に鎖?」

 

「おお、コクヨウ嬢も気付いたか。アレはドワーフと巨人、それに竜人の技術の結晶とも言えるもんだ。まぁ見てな」

 

 

 今もどこかから聞こえてくる蒸気の音と、大きな歯車が回り鎖が巻き上げられる音に耳をピコピコ動かしながら疑問の声を上げてみれば。

 ギグさんがワクワクした様子を隠すことなくボクに説明し、その言葉と同時にガツンとくる振動を感じたと思った次の瞬間。

 ゆっくりと、今ボクが乗っている兎車が上に……否、今ボク達が乗っている足場ごと上昇を始めた。

 

 

「手入れが大変そうな機構だねぇ」

 

「うむ。里の職人や北方山脈のあちこちに住んでるドワーフ達によって、定期的に整備してもらってるのであるよ」

 

 

 シナバーさんも少しばかり驚いたのか、若干世知辛い呟きを漏らせばドゥールさんが彼の言葉に頷きながら解説してくれる。

 何でもこの昇降機によって、北方山脈地下の大坑道を中心に住処を広げているドワーフ達や、上層部に住んでる竜人達がこのトンネルの中を行き来しているらしい。

 

 

「あれ?そうなると巨人の人達はどのあたりに住んでるの?」

 

「あー、彼らは更なる奥地、北方山脈の山間に居を構えているのであるよ。炭金の素材の搬入や出来上がったモノの搬出もあるから、道は繋がっているのであるけどなー」

 

「巨人の人達は個体差あるけど、人によってはあのトンネルですら窮屈になるぐらいでかいからねぇ」

 

 

 どうやらこのトンネルや昇降機は、基本的に竜人やドワーフ、それに出入りする商人や旅人相手の為のモノらしい。

 あれ?でもそう言えばこのトンネルに足を踏み入れた時、空を飛べる竜人はそんなに使わないみたいなことギグさんが言ってたような……。

 

 

「竜人の人もこの昇降機を活用してるんですか?」

 

「ああ、天候が酷い時や……肉体に自信のないモノにモノグサな連中も良く使うであるな」

 

 

 なるほど、まぁ言われてみれば確かに納得な話だよね。

 でも何だろう、気のせいか酷い吹雪の時に空を飛んで迷子になった竜人もいるんじゃないかって気がする、いやそんな事聞いて本当にいたら気まずいってモノじゃないから聞かないけどさ。

 

 

「まー、毎年命知らずが吹雪の時に飛んで里まで行こうとしては何人か遭難しているのであるけどな」

 

「それ、笑い話で済ませていいのかい?」

 

「自身の実力も限界も見極められずに無茶をする輩は、遅かれ早かれ屍になるものであるからなー」

 

 

 自分から豪快に笑いながら言いやがったよこの竜人、そして修羅すぎるよ竜人族。

 シナバーさんが小声で、文化が違い過ぎると呟いたのをボクの耳は聞き逃さない。そしてその言葉に果てしなく同意なのだ。

 

 思わず兎車の中で頷いてたら、金属の擦れる激しい音が響くと共にお尻から突き上げられるかのような大きな衝撃を感じた。

 クッション越しでも感じた衝撃に、思わずお尻を摩りながら外を見てみれば……明るく照らされた大きなトンネルの先に、竜を象った見事な細工が施された大扉が見える。

 

 ついでに、兎車を牽いてくれてる二羽のハビットは呑気に毛繕いしてました。この子達タフすぎる……!

 

 

「さて、楽しく話をしてる間に里の入口である上層部に到着なのであるよー」

 

 

 ドゥールさんがボク達へ声をかけると共に歩き始め、大扉の前に控えていた門番と思しき竜人の人達に声をかけるとその扉が開かれ始め……。

 大扉が開き斬ったその先には、日差しが差し込む白銀に輝く山々が見えており。

 山へ寄り添うように建造されたであろう、大小様々な建物がその姿を見せつけていた。

 

 

「うわぁ……凄い」

 

「初めてくる人物は皆、そんな感じの反応なのであるよー」

 

 

 ガタゴトと進み始めた兎車の窓から外を眺めてみれば……。

 見てみると、建物から建物へ飛び移っているであろう竜人と思しき人影がちらほらと空に見えており、この大扉から伸びる道が大通りに当たるのか道沿いには様々なお店が並んでいた。

 

 窓から見える感じお店の種類は雑多にある感じだけども、お店の店員さんも道行く竜人達も皆男性と思しき特徴の人達ばかりのようだね。

 勿論体格の大小や、角に顔付きの違いなどに差はあるんだけど……竜人の女性は一人も出歩いていない。

 

 

「久しぶりに来たけども、セントへレアの大通りとはまた違うよなぁ」

 

「我輩に言わせてもらうと、あの街の大通りは賑やかすぎるのであるよ。後、美味い物の誘惑が強すぎるのである」

 

 

 それが自慢だからな、とドゥールさんの抗議をゲラゲラ笑って笑い飛ばすギグさんである。この人あの街大好きだよね、ボクも大好きだけど。

 

 

「ドゥールさん、この辺りでオススメのご飯ってどんなのがあるの?」

 

「コクヨウ、ステイ」

 

「わっはっは、道中もそうであったか中々の食道楽であるな! やはり自慢と言えば火吹き鍋であるよ、器一杯平らげれば吹雪の中全裸で飛び出してもへっちゃらなのである」

 

 

 時折吹き抜ける冷たすぎる風に身を震わせながら、窓からドゥールさんへ問いかけると。シナバーさんがこめかみを抑えながらまるでワンコを抑えるかのような事を言ってくる、酷くない?

 しかしそんなボク達の様子に、ドゥールさんは心から愉快そうに笑いながらオススメグルメを紹介してくれた。この人良い人だ!

 

 

「まぁ、今日はまずは女王への謁見が先なのである」

 

「それが目的だからなぁ、コクヨウ嬢。俺だって酒我慢してるんだからお前さんも少しは堪えろ」

 

「……はい」

 

 

 しかしお仕事優先だと言わんばかりに、ドゥールさんは告げ……ギグさんも溜息を吐きながらボクに我慢するよう告げてくる。

 

 

 

 

 うん、そうだよね……でも正直、女王様への謁見とかちょっと心の準備が……ほらやっぱり、お腹一杯になってからにしない? え、ダメ? そんなー。

 

 




ドゥール「若い竜人の間では、火吹き鍋を平らげた後全裸で吹雪の中に飛び出し。どのぐらい耐えられるかを競う遊びが流行ってるらしいのである」
シナバー&ギグ「「そんな遊び今すぐ駆逐してしまえ」」




『TIPS.竜人達の食文化』
寒さの厳しい山脈地帯である北方山脈では、生育できる作物が大きく限られている。
その中で主に収穫される作物の一つが、洞窟で栽培できる『淑女の椅子』とも呼ばれる大型の茸である。
芳醇な香りと独特な味を持つその茸は、北方山脈地帯では広く愛されている食材であり主食に近い扱いを受けている。
また、山間では様々なベリーに寒冷地帯でのみ成長する香辛料など、穀倉地帯とはまた違った独特な食文化が形成されているのが特徴である。

その中で、竜人のソウルフードと呼ばれるモノが。ふんだんに穀物や芋、茸と肉を放り込み……香辛料をこれでもかとぶち込んで煮込む事で作られる、『火吹き鍋』である。
余りの辛さに慣れない人物には敬遠されがちであるが、竜人はコレを平気な顔をして平らげるらしい。

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