そして、地味に35話を改訂しつつイラストを追加したのですが、そのイラストがこちらになります。
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絵師の二ノ前先生に依頼して描いて頂いたレオタ仕様コクヨウです。
前話で出した鎧の一番下にコレを着てました。
更に、アンケートを取っていた内容のイラストも仕上げてもらったので続けて、こちらです。
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現代風衣装+布地少な目と言う事で、童貞を殺すセーター着用コクヨウです。
ドグさん達の工房で依頼と言う名のプチファッションショー的なのを楽しんだボク達。
この後は、何もやる事もないので……名残惜しいけどもこのまま神殿へ戻ろうとしたんだけどもさ。
「折角神殿の外へ出たんだ、少し小物を見て回ろうか。 職人街の中なら幾らでもやりようがあるしな」
さっきまで身に纏っていた甲冑を工房の奥で外し、いつもの神官服に着替えて出てきたボクにシナバーさんがそう言ってくれた。
こ、これはまさか、シナバーさんの方も割と乗り気なのかな?
「え、えっと、それって……?」
「……あの騒動から殆ど神殿からお前さん出れてないだろ? 気分転換も必要だと思ってな」
シナバーさんはそう言うと、そっぽを向いて頬を掻いた。
もしかしなくても照れてるよねコレ、うわ、なんだろう、ボクまで顔が熱くなってきた。
「え、えっと、職人街ならやりようあるってどういうこと?」
いけない、ボクまで何だか恥ずかしくなってきた。
耳と尻尾を忙しなく動かしながら、話題を転換すべく先ほどシナバーさんが零した言葉の意味を問うてみるのだ。
「ああ、お前さんはこの街に来てすぐ問題を解決したろ?」
「うん、二つの宗派のちょっとした対立問題を解決……というか相互理解の切っ掛けを作っただけだけどね」
「事も無げに言ってるが、それを為せるのはそうそう居ないさ」
そんでもって、その事を職人達の代表と言えるドグさんが深く恩に感じてるのが答えだよ、とシナバーさんは言葉を続けた。
「?」
「ドワーフって言うのは頑固で偏屈でその上我が強いんだけどな、受けた恩は死ぬまで忘れない種族なんだよ。そしてここで働いてる職人の大多数がドワーフだ」
一緒に職人街の中を歩きながらシナバーさんがのんびりとした口調で教えてくれる。
言われてみれば、今も動き回ったり色々作業をしている職人の人達は、ほとんどがドワーフだ。
「そう言えば北方山脈の方でもドワーフさん達が住んでるって話だったよね、もしかしてそこからやってきた人達なの?」
「ご名答、勿論そこ以外から来て根付いたドワーフも居るが……ルーツを辿れば殆どが北方山脈の方に行き着くらしい」
なるほどなぁ……。
しかしこう、よくよく考えてみるとこの街って所属している国の中では辺境の方らしいけどさ。
戦略物資と言える炭金の搬入口で、先人たちの努力も重なった肥沃な穀倉地帯で……水源も山脈の方から流れてくる清らかな河まである。
そして、生産を支える優秀な職人達に熱心かつ敬虔な神官達もいる、何この黄金立地。
少し思考が脱線したけれども、ドワーフが恩を忘れないと言うのがいまいちボクの安全とイコールで繋がらないのだ。
「でも、それがなんで安全に繋がるの?」
「お前さん、人心に敏いけど自分への好意には割と疎いんだな……まぁ平たく言うと、ここにいるドワーフ全員が警戒の目になるし何かあれば即座に手助けしてくれるのさ」
無論俺も警戒は欠かしていないがな、と言葉を続けるとシナバーさんはお店の前に商品を並べているドワーフさんの前で立ち止まったので、ボクも立ち止まる。
シナバーさんが足を止めたのは……色んな形状のブラシや櫛が適当に並べられた、工房の前に出されている露店の前だった。
こう、髪を梳くのに使うような櫛から、毛先がかなり堅いブラシまで色々と並べられてるけど……日用雑貨の露店なのかな?
……あ、違う。よく見ると乱雑に並べられてるように見えてしっかりと整理されてるし、蜥蜴人向けとか人間向けとか注意書きもされてる。
「もしかして、色んな種族用のお手入れグッズ?」
「おぅ正解だぜ巫女様、ウチのとこの見習いの作品だ。儂が作るよりも未熟だが良いモノ揃えてるぜ」
店頭に座り煙管を吹かしていたドワーフのおじさんが、ボクの独り言に近い疑問に答えてくれた。
「そう言いながら、見習いへの試験も兼ねてんじゃないのかい?」
「当たり前じゃろがい、客がふらっと見て欲しいって思えるモノ作れんと話にならんわ」
シナバーさんの言葉に豪快に笑いながら、割と見習いさんに容赦のない事を話すおじさん。
うーん、まさに職人社会。
「見習いの人達は苦労してそうだねぇ……あ、このブラシと櫛包んでもらえるかね?」
「おう毎度あり!」
ほへー、と思いながら陳列物を眺めていたところ、シナバーさんが少しお洒落な意匠が施された櫛とブラシを指差してそんな事を話し。
おじさんに代金を渡して小奇麗な袋に入れられた二つの品を受け取ると……。
「ほいコクヨウ」
「こゃっ?!」
軽い調子で袋をボクへ手渡してきた。
余りにも自然な流れだったから流してたけど、これ、これって要するに……。
「おうおう見せつけてくれるじゃねぇか色男」
「囃し立てるのは良い趣味とは言えないと思うよ」
ゲラゲラ笑いながら紫煙を吐き出すおじさんへ、シナバーさんは苦笑いをしながら答えるとボクの手を引いて歩き始める。
「え、えと、シナバーさん、これって……」
「まぁ、なんだ、あー……気にするな」
シナバーさんと繋いでない方の手でしっかりと、さっき渡されたばかりの袋を胸元へ抱きつつ彼の横顔を見上げれば。
彼はもごもごと煮え切らない言葉を紡ぎながら、何かを言おうとしてはぐらかした。
「……ありがとう、大事にするね」
「お、おう」
尻尾をはしたないぐらいにブンブン振りながら、シナバーさんと繋いだ手を強く握りながら素直な気持ちを伝える。
シナバーさんはと言えば、ボクと目を合わせずにあいまいな返事をするだけで。
だけども、繋いだ手を強く……そして優しく握り返してくれた。
その後は、特に何事もなく神殿へと戻り……。
「おやお二方、随分と仲睦まじい様子であるな。幸せそうで何よりなのであるよ」
神殿の入口で偶然鉢合わせたドゥールさんに、手を繋いだままだったボクとシナバーさんを目撃され、互いに少し気恥しい想いをしたりしつつ。
ボク達の初デート的な活動は、無事終わりを告げるのであった。
もしかすると、デートだってはしゃいでたのはボクだけだったかもしれないけどね……!
そんな感じにふわふわ気分のままシナバーさんと別れ、残ってたお仕事を片付けて夕ご飯とお風呂も終え。
今ボクは……宛がわれた部屋で、シナバーさんが買ってくれた櫛とブラシを見て……暖かい気持ちがこみ上げるのを、感じている。
「……でもシナバーさんは可愛いって言ってくれたし、うん、進展はある!」
机の上に置かれた櫛に、指先を滑らせながら半分自分に言い聞かせるように力強く呟く。
ボクはシナバーさんが好きだ、そしてあの人の苦悩を晴らしてあげて……彼の隣で生きていきたい。
だけども、多分だけども……シナバーさんはボクがありのまま想いを告げても、想いを受け入れてくれない……何となくだけど、予感めいた確信がある。
あの時ボクはシナバーさんの苦悩と後悔を受け止めた、それが少なからず彼の気持ちを楽に出来た自信はある。
だけども……いや、ここにはボクしかいないんだ、正直な気持ちを自覚しよう。
「ボクは、シナバーさんが守れなかった誰かの代わりじゃなく……彼が愛してくれる女になりたい」
尻尾をゆらり、と振りながら一人呟いた言葉はストンとボクの胸の中に落ちてくる。
彼の守れなかった女性の代品として愛されようとするのなら、『ボク』が持つ全てを駆使すればそんなに難しくないと思う。
だけども、それは嫌なんだ。
酷い感情だと思うし、醜い考えだと言う事は理解している。
勿論、シナバーさんの過去の想い人を否定する気はない、そんな事出来るワケがない。
シナバーさんが買ってくれたブラシを手に取り、今のボクの気持ちを代弁してるかのようにゆらゆらと揺れる尻尾を前に持って来てブラッシングをしながら思考する。
ごめんなさい、名前も知らないシナバーさんが愛していた人。
そしてお願いします……貴方の場所だった、シナバーさんの隣をボクに下さい。
悪魔さん「いやー、己のエゴを隠そうとしなくなってきたね。彼女は」
悪魔さん「彼女が厄介な所は、ソレを自覚しつつそれすらも己の目的に活用するところだよ」
悪魔さん「何?代品扱いなら難しくないって言っていた理由? そんなの簡単さ、彼のトラウマを刺激しつつ己に依存させてしまえば良い」
悪魔さん「細かい微調整は現地で必要になるだろうけどね、ソレが出来る程度には目的を選ばなくなれば本来の彼女の能力なら造作もないのさ」
『TIPS.塩の流通』
この世界において塩の調達手段は、大きく分けて三つに分類される。
そのうちの二つは、海水から塩を抽出する方法に、岩塩の掘削となる。
それでは三つ目は何かというと、一部の地域で自生している植物型魔獣からの採取である。
この魔獣の特性として、地中の栄養や殺害し食料とした得物から吸い上げた塩分を体内で結晶化させ、定期的に吐き出すというモノがある。
そうやって排出された塩の塊は不純物が無く雑味も少ない為需要が大きいのだが、採取は命がけとなる為市場ではそこそこの金額で取引されている。