ねごしえーたー!   作:社畜のきなこ餅

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交渉特化、魅力特化が火を噴くかもしれない7話。お待たせしました。
果たしてコクヨウが用意したプランや、いかに。

それと、今現在(2019年11月6日23時時点)……。
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宜しければ、投票してみてくださいませ。



07.足りないならば、他から持ってこよう

 

 今回の二つの宗派の諍いの原因、そしてかつて街であった諍いの原因。

 原因こそ違えども、乱暴に括ってしまえば両方とも神殿に属する人達のリソース不足が全ての発端と言える。

 ならば、どうすればソレを解消できるのか……。

 

 

「皆さん、今日は貴重なお時間を割いて頂き誠にありがとうございます」

 

 

 試練を神殿長より受けてから七日間、この世界にボクが降りたってから八日間が過ぎた日である今日。

 神殿の広間で、神殿長ことスェラルリーネさんを筆頭に、ヴァーヴルグさんとアクセリアさん、それに大きい紙のロールを抱えたギグさんにギグさんのお爺さんであるドグさんの前でボクは深く頭を下げる。

 

 ちなみに諸事情あり、今日のボクはいつもの着物っぽい服ではなく……。

 河川の守護女神様派の人達が纏う体にフィットする衣を纏い、その上から大地母神様派の人が纏っている上着状の法衣を羽織っている。

 意図せずして双方の中間地点に居る事を主張しているような恰好になったけども、まぁ問題はないのだ。

 

 

「諍いを止める案が用意できたそうですね」

 

「はい、勿論コレが決定案に出来るとはボクも思ってはおりませんけども。それでもそれなり以上の形には出来たと思っております」

 

「頼りに、させて頂きますよ」

 

 

 ボクの言葉にスェラルリーネさんはふわりと微笑む。

 ここ数日間の間に、法衣を借りて纏い出した事について何かを察していたスェラルリーネさんだけども、今はまだ詳しくは聞こうとしていないみたいです。ヴァーヴルグさん達も含めて、ね。

 

 

「まず、双方の諍いの根本原因は互いの職務に対する意識の食い違いだとボクは判断しました。そしてそうなっている原因は双方が多忙な事で、同じ神殿の中に居るのに溝が生まれていたんです」

 

「失礼、コクヨウ殿。それは両方とも同じ意味ではないのですかな?」

 

「いえ、コレは全く別の問題です。だからこそ別々に解決していかないと……絶対にどこかで破綻します、そうですよね? アクセリアさんにドグさん」

 

 

 ボクの言葉に同意を示しつつも、自身の中でしっくり来ないのかヴァーヴルグさんが首を傾げながらボクへ問いかける。

 コレを最初にギグさんに話した時も同じ反応をしていたけど、これは決して一緒くたにしちゃいけないんだ。

 

 大地母神様派の人達は、街の中にばかり目を向けている河川の守護女神派の人達が楽をしていると思っている。

 そして河川の守護女神派の人達は、街の外の事ばかりにかまけている大地母神派の人達の配慮が欠けていると思っている。

 まず、この間の意識のギャップを少しでも埋めないとこの問題はまた絶対、どこかで遅効性の毒がごとく双方の心を澱ませていってしまう。

 

 

「ええ、そうねぇ……私はかつてもぉ、そして今もぉ互いが出来る事を何とかすれば解決できるってぇ、思っていたわぁ」

 

「……そうさな、昔は結果的にわだかまりが解けて溝が埋まったが。結局今もまた同じような事になり始めてやがるワケだしな」

 

 

 ボクの問いかけにアクセリアさんは頬に手を当てて嘆息しながら同意を示し、ドグさんもまた同意を示してくれた。

 かつての諍いで出た唯一の死者、その人のおかげで当時は皆が目を覚まし今日に至るまで何とか職務を回してこれた。

 だけれども、根本的な負担も多忙さも変わっていないから、互いの職務が見事なまでに別々な事も関係して溝がまた生まれ……深くなっていってしまっている、それが現状だ。

 

 わだかまりをまずは解さないといけない、だけれどもそうする為には互いの心に余裕を取り戻すべく職務の改善をしなければならない。

 今まで神官の人達と努力と根性、有り体に言ってマンパワーでゴリ押しをしてきた結果が今日の結果なんだと思う。

 

 

「なるほど……確かにコクヨウさんの仰る通りです、なればどのようにすれば良いのかもまた。考えておられるんですね?」

 

「はい、短期的なプランと長期的なプランの併用が最適だと判断しました。ギグさん、お願いします」

 

「おうよ」

 

 

 スェラルリーネさんが深く頷くと、ボクへ試すような……頼るような視線を向けてきたので、打ち合わせ通りギグさんに抱えていた大きな紙のロールを広げ上端を持っていてもらう。

 ドグさんが孫息子の様子に若干複雑そうな視線を向けている、ごめんねギグさん。何だか助手のような真似をしてもらって……!

 

 

「まず、奇跡の行使が不得手な双方の宗派の人達を集めて、商人の人達への対応や神殿の運営を中心に行う部署を立ち上げます」

 

「なるほどぉ、最初はギクシャクすれども一緒に集まって仕事をすればぁ。連帯感はそれなりに産まれるものねぇ」

 

「はい、勿論初めての試みになるので別の問題の呼び水になる事も懸念されますが、奇跡の行使を得意とする人達が抱える職務が少しでも軽くなれば……」

 

「ええ、少なくとも私達の浄化や治療もかなり楽になるわぁ。だけどぉ、大地母神派の人達はどうかしらぁ?」

 

 

 ギグさんが広げた紙のプランを記述した個所を指差して説明するボクに、アクセリアさんの質問がぶつけられる。

 ソレに対して淀みなく回答すれば、若干含みを持たせた事をアクセリアさんは言うと共に、ヴァーヴルグさんの方へチラリと視線を向けた。

 向けられたヴァーヴルグさんはと言えば、まさに質問をしようとした矢先に言おうとしたことを先に言われたのか、むぅと唸り口を真一文字に結ぶ。

 

 

「見回りや農夫の人への直接的な聞き取りを行う人は確かに、商人の人への対応を優先的にやる人が出来ても……率直に言えば人が減る形になるので負担は増えると思います」

 

「そうでしょうな……全体が上手く回るのならそれもやむなしと言えますが、若い信徒には少々酷と言えましょう」

 

「はい、なので。冒険者の人達に恒常的な依頼を各酒場へ出して見回りや対応が楽な害獣への対応を彼らにしてもらい、今まで害獣駆除に当たっていた人達を緊急時に動かす為の予備戦力として編成します」

 

 

 ギグさんが掲げて広げたままの紙の一部を指差し、ヴァーヴルグさんへ説明を行う。

 農地や放牧地の範囲は広大で、それを見回りするだけでも結構な労力を大地母神派の人達は強いられている、ならばそこを職務から外してしまう事で余力を作ろうというのがこの案の目的だ。

 

 

「しかし、冒険者の方達を蔑む意図はないのですが。果たして彼らに見回りや農夫の方々への応対に親身になって行動できるものでしょうか?」

 

「その疑問はヴァーヴルグさんの仰る通りだと思います、なので彼らには農夫の人達が困っている事を聞き取ってもらいその内容を新たに作る部署へ報告……最悪、どこの農地で問題が起きているかだけでも聞き取りさせるつもりです」

 

「ふむ、なるほど……とても魅力的ではあります。ですが我々……いえ、神殿にそれだけの依頼を出して報酬を払う余裕があるとは言えませぬ。我々は農夫の方が奉納して下さる作物や、寄付金で生活をしておる身ですから」

 

 

 ヴァーヴルグさんは渋い顔をしつつも同意を示し、しかし現実的な支出の話に踏み込んでくる。

 正直、これだけの職務を日々こなしてるんだからもっと寄付金とか集めても許されるんじゃないかなぁ、なんて思わないでもないけど……さすがにそこまではボクが口にしてよい話でもない。

 だがしかし、コレについては既に次善策を用意してあるのだ。

 

 

「その辺りについても……ドグさん、お願い致します」

 

「ほいさ。まず、今まで俺達職人組合は言うに及ばず、この街で商い全般を取り仕切ってる商人組合の銭ゲバ連中も冒険者の連中へ支払う報酬について金額を負担する用意がある」

 

「……宜しいのですか? 職人組合の重役でもある貴方への非難も少なくなかったでしょうに」

 

 

 ボクの言葉に、静かに話し合いを静観していたドグさんが一歩踏み出し。懐から今回の案件についての職人組合と商人組合で連名の署名が為された羊皮紙を取り出して告げる。

 その発言の重みを理解したのかヴァーヴルグさんとアクセリアさんは目を見開いて驚愕し、スェラルリーネさんもまた驚きを隠すことなくドグさんへ問いかける。

 

 

「まぁ無かったとは言わねぇよ。けどこの街の中心は良くも悪くもこの神殿だ、そこがまたぶっ壊れそうだってのに何もしねぇってのは筋が通らねぇし、職人連中は皆納得してるよ」

 

 

 この街全体の問題でもあるしな、などと言いながら豪快にガハハとドグさんは笑い飛ばす。

 

 

「ソレにこの街の作物は他の街や地方には結構な値段で売れてるそうだぜ? 俺も付き添ったけどよぉ、商人の連中がこんなちまこい嬢ちゃんに真正面から口で負かされたのを見た時ゃ胸がスッとしたわ!」

 

 

 その時のことを思いだしたのか、広間中に響くような大声でドグさんは笑い始める。

 いや、あのね。違うんだよ。この街の商人組合の人達ってね、確かに大地母神派の人達の努力で農夫の人達から買い叩いたりはしてなかったんだよ、本当だよ?

 だけどね、そこにブランドイメージを見事なまでに乗せてね。領主さんに収める税金を差っ引いても結構な儲けを叩き出してたの、だからそこから少しは今後も素敵に儲ける為に利益を守る為に投資しない?って持ち掛けただけなんだよ?

 

 何度もね、ドグさんにはソレを説明したんだけどもこの人根っからの頑固職人親父だから、いけ好かない商人連中からボクが銭を引き出したっていう風にしか理解してくれないの。不思議だね!

 

 

「……なるほど」

 

「ソレにこの嬢ちゃんは大事な一張羅を担保にまでしたんだ、そこまでされたら応えてやらにゃ男が廃るわい」

 

「えぇ?! コクヨウちゃん、ソレほんとぉ?!」

 

 

 そして、隠そうと思ってたワケじゃないけど相手に気遣わせるのは何となく嫌だったから言わなかった事まで、ドグさんバラしちゃいました。

 

 

「コクヨウ殿、ソレは一体?」

 

「い、いやあのね。ボクが着ていた服や下着ってさ、結構独特かつ売り物になりそうな技術の塊らしくてさ。皆さんにお金出してもらうんだったら、ソレを担保に出来ないかなぁ。なんて」

 

「コクヨウちゃん、貴方って子はぁ……」

 

「あ、大丈夫だよ! ちゃんと洗濯してから渡してるから!」

 

 

 着物もどきの服の縫い方や生地の使い方に、ドグさんの所に行ったときに職人の人達が凄い興味を示してさ。

 コレ差し出したら、お金を引き出せる信頼を得る為の担保にならないかなぁ、って思って提案したらこれが大当たりしたのです。

 ちなみに合わせて……お胸を下から支えるタイプのチューブトップ状のブラと尻尾があっても履きやすいローライズのパンティについてもデザインや構造について情報を渡してます。

 さすがに下着そのものは、渡してないけどね!

 

 

「コクヨウ殿……本当に申し訳ありません、貴方にそこまでの負担を強いてしまうとは……」

 

「え、え? なんで皆そんなに沈痛そうなの!? 完全に権利売り飛ばしたワケじゃないし、新しく作られる服から生じる利益はボクにも少しは入るし!」

 

 

 スェラルリーネさん、ヴァーヴルグさん、アクセリアさん一同が沈痛そうな表情で俯いて広間がお通夜ムードなのです。

 ドグさんに助け舟を求めて顔を向けてみれば、この嬢ちゃんまさか何も考えてないんじゃなかろうか。とまで言いたげな顔をされました、解せぬ。

 

 ボクとしては、一張羅ではあったけど似たような服が手に入るチャンスだったし、不労所得が得られる機会だったから今回の件と合わせて全力でノっただけなんだけどなぁ。

 

 

「……こほん!少し話が脇道に逸れちゃいましたけども、続けてもよろしいですか?」

 

「……ええ、お願いします」

 

 

 何故か少しダメージを食らってる様子のスェラルリーネさんに先を促されるボクである。

 もしかして、故郷から遠く離れた地で……故郷との繋がりである服すらも売って問題を解決しようとしてるように見られてる? そんなわけ、ないよね、うん。

 

 

「今回の案で、双方に余裕は出来る事が期待できるので。今はバラバラに摂っている昼食を、出来る限り夕食と同じように皆で揃って食べれたらいいな、と思ってます」

 

 

 同じ釜の飯を食うってのは、やっぱり大事だと思うんだ。

 今までは夕食だけ一緒だったけど、それがあったから今まで何とか繋ぎとめれたんだろうしね。

 

 

「ここまでが、双方の宗派の負担を減らす事を優先する中期的なプランです。溝埋めは副次的効果と言えますね」

 

「コレで中期間ですか、正直これだけでも何とか改善できそうな気もするのですがな」

 

 

 さっきまで大きな手で目元を覆っていたヴァーヴルグさんが再起動したのか、ボクの言葉に若干ボヤくような様子で反応を示してくれた。

 アクセリアさんとスェラルリーネさんへ視線を向けてみれば、お二人もまた同意を示してくれている。

 

 

「そして、長期的プランですが……これは今先ほど挙げたプランを遂行した上で行う活動になるんですけども」

 

 

 スゥ、と息を吸い。気合を入れ直す。

 この街では日々の生活でいっぱいいっぱい、なんて事は無い。餓える人は早々いないし街の人にも活気がある。

 だけども、街の歴史を紐解いても……街や神殿が一丸になって当たる大きな共同作業って無かったんだ、小さなお祭り程度ならあってもね。

 

 だから、ボクはここぞとばかりに提案するのだ。

 

 

 

 

「神殿の皆さんで、職人や商人の人達も巻き込んだ大きなお祭りを開きましょう!」

 

「日々の幸せを喜び合い、明日も良い日が来ることを願って神様達に感謝をささげる楽しいお祭りを!」

 

 

 




コクヨウ「商人組合の親方さぁん♪ちょっと儲け話と、日々の儲けを守れるお話持ってきましたぁ♪」

大体こんなノリで、ドグさんを連れて切り込んでいったロリ巨乳狐耳尻尾美少女がいたらしい。


『TIPS.コクヨウ』
近未来的なサイバーパンク世界で、『僕』が動かしていた黒髪の狐耳尻尾のロリ巨乳美少女。外見は『僕』の趣味全開である。
スペックとしては経済知識や交渉能力、そして交渉を円滑に進め相手の懐に潜り込む為の魅力関係に特化している。
問題はリソースを全てそっち方面に注ぎこんでしまっている為、その世界観特有の強力なサイバーパーツは『一切』搭載しておらず、戦闘系技能やそれに関わる能力値を一切強化していない所にある。
その為、TRPGでキャラクタとして動かしていた際は、護衛できる戦闘系PCと必ず一緒に動いていたらしい。
なお狐耳尻尾が生えた理由は、その世界における遺伝子異常の『変異』によるものである。
作中世界ではランダムで変異が進む事もあるが、悪魔の優しさか悪戯か。これ以上の変異は起きる事はなく、彼女の遺伝子は安定している。
そう、今彼女がいる世界でも健康な子を産むことが出来る程度に。

なお天敵は「うるせぇ死ね!」と問答無用で襲い掛かってくるタイプの人種である。

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