黒の剣士に憧れし者 連載中止   作:孤独なバカ

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帝国兵

「こんなあっさり。」

「俺ばっかり魔物を倒していたから鬱憤が溜まっていたんだな。」

 

俺たちはハジメがハイベリアという魔物を洗い始めに殺している姿をみて苦笑気味に話していた

 

「シア! ユキ!無事だったのか!」

「父様!」

「パパ。」

 

真っ先に声をかけてきたのは、濃紺の短髪にウサミミを生やした初老の男性だった。はっきりいってウサミミのおっさんとか誰得である

 

「ハジメ殿で宜しいか? 私は、カム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとか......父として、族長として深く感謝致します」

 

そう言って、カムと名乗ったハウリア族の族長は深々と頭を下げた。後ろには同じように頭を下げるハウリア族一同がいる。

 

「まぁ、礼は受け取っておく。だが、樹海の案内と引き換えなんだ。それは忘れるなよ? それより、随分あっさり信用するんだな。亜人は人間族にはいい感情を持っていないだろうに......」

 

カムは、それに苦笑いで返した。

 

「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから......」

 

俺は少しだけ羨ましく感じる。ユキはあぁ言ってはいるけれどちゃんと愛されて育ったのだろう。

 

「……どうしたの?」

「いや。俺の両親死んだからなんかこういうのいいなって思っただけだよ。」

 

ユエも同じように思っているのか頷く。孤独っていうのは本当に辛いのだ。ユエがどれだけ辛かったのか俺には予想もつかないのだが愛されている二人をみて羨ましいと思ってしまう

 

「……守りたいか。」

 

『私が昴くんを守るよ』

 

すると不意にそんな声が聞こえたような気がした。実際聞こえるはずがない声に俺は少し声を失ってしまう。

 

「……あいたいなぁ。」

 

ポツリと自然に言葉が出てくる。

するとハジメとユエが微笑ましそうに見てくると俺は目線をそらし照れたほおを隠した。

 

 

そうこうしている内に、一行は遂にライセン大峡谷から脱出できる場所にたどり着いた。俺が〝遠見〟で見る限り、中々に立派な階段がある。岸壁に沿って壁を削って作ったのであろう階段は、五十メートルほど進む度に反対側に折り返すタイプのようだ。階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見える。ライセン大峡谷の出口から、徒歩で半日くらいの場所が樹海になっているようだ。

 

「帝国兵はまだいるでしょか?」

「ん? どうだろうな。もう全滅したと諦めて帰ってる可能性も高いが……」

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……ハジメさんと昴さん……どうするのですか?」

「? どうするって何が?」

 

 質問の意図がわからず首を傾げる俺に、意を決したようにシアが尋ねる。周囲の兎人族も聞きウサミミを立てているようだ。

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。ハジメさんと同じ。……敵対できますか?」

「残念ウサギ、お前、未来が見えていたんじゃないのか?」

「はい、見ました。帝国兵と相対するハジメさんを……」

「だったら……何が疑問なんだ?」

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと……」

「別に敵なら殺すし、味方なら助ける。それだけだろ。」

 

俺の発言にハジメも頷く

 

「いいか? 俺は、お前等が樹海探索に便利だから雇った。んで、それまで死なれちゃ困るから守っているだけ。断じて、お前等に同情してとか、義侠心に駆られて助けているわけじゃない。まして、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」

「うっ、はい……覚えてます……」

「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔するヤツは魔物だろうが人間族だろうが関係ない。道を阻むものは敵、敵は殺す。それだけのことだ」

「な、なるほど……」

 

 何ともハジメらしい考えに、苦笑いしながら納得するシア。

 

「でも10日間は霧が濃くて迷宮にはいけないと思うよ。」

「……どういうことだ?」

「大樹の周囲は特に霧が濃くてね、亜人族でも方角を見失うだよ。一定周期で、霧が弱まるから、大樹の下へ行くにはその時でなければいけないんだ〜。確か次に行けるようになるのは十日後だったはずだよ。......亜人族なら誰でも知っているはずだけど.」

「「あっ」」

 

ユキの言葉にカムとシアは まさに、今思い出したという表情をしていた

 

「まぁユキが思いだせたんだから別にいいだろ。てか父親や姉よりもしっかりした妹。」

「「うっ。」」

「残念うさぎ。」

 

 一行は、階段に差し掛かった。ハジメを先頭に順調に登っていく。帝国兵からの逃亡を含めて、ほとんど飲まず食わずだったはずの兎人族だが、その足取りは軽かった。亜人族が魔力を持たない代わりに身体能力が高いというのは嘘ではないようだ。

 

 そして、遂に階段を上りきり、ハジメ達はライセン大峡谷からの脱出を果たす。登りきった崖の上、そこには五十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、俺達を見るなり驚いた表情を見せた。 だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ? こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」

 

するとユキの方を見ると驚き武器を構える

 

「小隊長。こいつですよ。セイ隊長を殺した兎人族は。」

「何?」

「白い悪魔だと?」

「こいつだけは気をつけろ。最悪殺してもいい。」

 

 帝国兵達が好き勝手に騒いでいると、兎人族にニヤついた笑みを浮かべていた小隊長と呼ばれた男が、ようやく俺たちの存在に気がついた。

 

「あぁ? お前誰だ? 兎人族……じゃあねぇよな?」

「ああ、人間だ」

「はぁ~? なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

「「断る。」」

 

俺とハジメは同時に答える。

 

「……今、何て言った?」

「断ると言ったんだ。こいつらは今は俺のもの。あんたらには一人として渡すつもりはない。諦めてさっさと国に帰ることをオススメする」

「てか自分の力量くらい武人ならば分かれよ。」

 

 聞き間違いかと問い返し、返って来たのは不遜な物言い。小隊長の額に青筋が浮かぶ。

 

「……小僧たち、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

「十全に理解している。あんたらに頭が悪いとは誰も言われたくないだろうな」

「てかお前らに命令されるほど弱くはないつもりだけど。」

 

スっと表情を消す小隊長。周囲の兵士達も剣呑な雰囲気で俺たちを睨んでいる。

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。てめぇらの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやる」

「へぇどうするんだって?」

 

俺は一瞬の抜刀術を使い小隊長の四肢を切り落とす

 

「ぎゃぁぁぁ。」

「てめぇは四肢を切り落として何もできない中でゆっくり部下が死んでいくのを楽しんでもらおうか。」

 

返り血を浴びながら笑顔を向ける

するとハジメもその合図と共に一発の破裂音で頭部が砕け散ったからだ。眉間に大穴を開けながら後頭部から脳髄を飛び散らせ、そのまま後ろに弾かれる様に倒れる。

何が起きたのかも分からず、呆然と倒れた兵士を見る兵士達に追い打ちが掛けられた。

ドパァァンッ!

一発しか聞こえなかった銃声は、同時に、六人の帝国兵の頭部を吹き飛ばした。実際には六発撃ったのだが、ハジメの射撃速度が早すぎて射撃音が一発分しか聞こえなかったのだ。

突然、小隊長を含め仲間の頭部が弾け飛ぶという異常事態に兵士達が半ばパニックになりながらも、武器をハジメ達に向ける。過程はわからなくても原因はわかっているが故の、中々に迅速な行動だ。人格面は褒められたものではないが、流石は帝国兵。実力は本物らしい。

剣と銃声はとことんなり響きむしろ、兵士は悪い夢でも見ているのでは? と呆然としながら視線を彷徨わせた。

 

「うん、やっぱり、人間相手だったら〝纏雷〟はいらないな。通常弾と炸薬だけで十分だ。燃焼石ってホント便利だわ」

「そこかよ。」

「ひぃ、く、来るなぁ! い、嫌だ。し、死にたくない。だ、誰か! 助けてくれ!」

「殺気を見せたんだ簡単に死ねると思うなよ。」

 

俺はせっかくだし神経毒を含んだ剣で刺すとすぐさま白く泡を吹き始める

 

「迷宮やっぱりやばいな。」

「た、頼む! 殺さないでくれ! な、何でもするから! 頼む!」

「そうか? なら、他の兎人族がどうなったか教えてもらおうか。結構な数が居たはずなんだが……全部、帝国に移送済みか?」

 

 ハジメが質問したのは、百人以上居たはずの兎人族の移送にはそれなりに時間がかかるだろうから、まだ近くにいて道中でかち合うようなら序でに助けてもいいと思ったからだ。帝国まで移送済みなら、わざわざ助けに行くつもりは毛頭ないだろう

 

「……は、話せば殺さないか?」

「お前、自分が条件を付けられる立場にあると思ってんのか? 別に、どうしても欲しい情報じゃあないんだ。今すぐ逝くか?」

「ま、待ってくれ! 話す! 話すから! ……多分、全部移送済みだと思う。人数は絞ったから……」

 

 〝人数を絞った〟それは、つまり老人など売れそうにない兎人族は殺したということだろう。兵士の言葉に、悲痛な表情を浮かべる兎人族達。俺は、その様子をチラッとだけ見やる。直ぐに視線を兵士に戻すともう用はないと瞳に殺意を宿した。

 

「待て! 待ってくれ! 他にも何でも話すから! 帝国のでも何でも! だから!」

「死人に口無し。」

 

俺は刀を振り下ろす

 

「黙って死ね。」

 

 息を呑む兎人族達。あまりに容赦のない俺の行動に完全に引いているようである。その瞳には若干の恐怖が宿っていた。

 

「ありがとうございました。僕たちを助けてくれて。」

 

するとユキが俺たちの方を向き頭を下げる。

その眼差しは恐怖も何もなくただ感謝の気持ちを伝えていた。

 

「……別に。そういう依頼だったからな。」

 

ハジメがぶっきら棒に話す。

 

「それでもです。ボクたちはあなたたちに命を救われました。その恩は絶対に忘れません。」

 

……真剣に頭を下げる少女に俺は素直に感心を覚える

 

「……ハジメ。むず痒いかもしれないけど受け取っておけ。」

「あぁ。分かっている。」

 

俺はそういうとハジメも純粋な好意に受け取ったらしい

ハジメは、無傷の馬車や馬のところへ行き、兎人族達を手招きする。樹海まで徒歩で半日くらいかかりそうなので、せっかくの馬と馬車を有効活用しようというわけだ。魔力駆動二輪を〝宝物庫〟から取り出し馬車に連結させる。馬に乗る者と分けて一行は樹海へと進路をとった。

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