七大迷宮の一つにして、深部に亜人族の国フェアベルゲンを抱える【ハルツィナ樹海】を前方に見据えて、ハジメが魔力駆動二輪で牽引する大型馬車二台と数十頭の馬が、それなりに早いペースで平原を進んでいた。
俺の後ろにはユキが乗っており俺たちのことを聞いてみたいということだったので俺たちのことについて話していた
「……そうですか。」
迷宮のことを話し終わるとうさ耳を倒し目を瞑っている
俺は大体ハジメと念話石を使ってお互いの推測を話していた
「……やっぱり出て行くつもりだったのか?」
「…はい。お姉ちゃんと相談していたんです。元々二人とも異端の力を持っていて自分がいる限り、一族は常に危険にさらされます。今回も多くの家族を失ったので。次は、本当に全滅するかもしれないですし。」
すると隠し事が通用しないと思ったのであろう。ユキは本当のことを話していく
最悪、二人でも旅に出るつもりだったが、それでは心配性の家族は追ってくる可能性が高い。しかし、圧倒的強者であるハジメ達に恩返しも含めて着いて行くと言えば、割りかし容易に一族を説得できて離れられると考えたのだ。
「でも大迷宮に挑戦する以上ぼくじゃ足手まといですよね。」
「……」
「ぼくは結局何も守れなかった。特別な力を持っているのに。ぼくのせいで今回も家族を。」
すると後ろで悔し涙を流すユキに言葉をかけることはできない
……なんでだろう。既視感がある
俺はあの時奈落に落ちた日のことを思い出す
多分ハジメも気づいている
あの火球はハジメの方を向けて放たれた
放たれたけどそれでもあれはハジメを殺そうとして放たれた魔法ではない
俺は絶対にハジメをかばうことが分かっていてハジメを狙ったのだ
「…っ。」
その瞬間俺は気づいてしまった。
こいつは俺に似ているのだ。
家族を守りたくて
その腕を磨いて
それでも守れなくて
胸の中にある悔しさや憎しみは誰にも見せない。
だから誰かに頼るしかなかった。
「……」
気づかなきゃよかった。
二輪バイクに跨りながらまた重い空気の中で俺たちはハルツィナ樹海へと道を急いだ
樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないのだが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。
「それでは、ハジメ殿、昴殿。ユエ殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。お三人を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」
「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」
「予定じゃ同じ兎人族の村に滞在するんだろ?許可おりるのか?」
「はい。そこは抜かりなく。」
それなら別にいいけど
俺はユキを背負いながら苦笑してしまう
泣き潰れていつの間にか寝てしまったユキは力強く俺の背を話さなかった。
小さな体にはどれだけの重い過去を背負ってきたのか予想もできない。
でも。こいつは守ってやりたくなったのだ
ただのわがままだなのは分かっている
「はっはっは、ユキは随分とスバル殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて……ユキももうそんな年頃か。父様は少し寂しいよ。だが、スバル殿なら安心か……」
「……」
「どうしたスバル。」
「……ハジメ。こいつ連れて行ったらダメか?」
俺の言葉にハジメは驚く。
「……理由は?」
「ねぇよ。ただ見過ごせなくなったんだよ。こいつは一つ間違うと本当に壊れる。多分今までも魔物を殺したりハウリアの為に本当に尽くしてきたんだろうよ。なんか。俺らしくもないと思うけどこいつが壊れてしまうのは嫌なんだよ。」
「……本当に珍しいなお前がそんなに心配するって。」
「……悪いか?」
「俺達の目的は七大迷宮の攻略なんだ。おそらく、奈落と同じで本当の迷宮の奥は化物揃いだ。お前じゃ瞬殺されて終わりだよ。だから、同行を許すつもりは毛頭ない。でもお前はそれを知っていているんだろ?」
俺は頷く。
「10日間時間がある。俺はこいつをとことん鍛える。だから俺たちはここで別れて修行に当てていいか?それでユエに一度でも攻撃を当てられたら同行を許してくれないか?」
「……私に?」
「だってこの中で迷宮攻略最低ラインってどう考えてもユエだろ?」
「……うっ。」
俺とハジメはアーティファクトと魔物を食ったおかげでかなりのステータスの差がある
だから手加減をしないといけなくなるのだ。
「それが最低条件。生憎俺はユキならそれができると確信している。」
「……あぁ。それなら構わない。」
「……ハジメ!?」
ユエは驚いたようにしている。
「元々スバルが頼むことは珍しいんだよ。それに嫌ならユエが当たらなければいいだけだろ。」
「……」
まぁ今のままじゃ当てることは愚かとしかいいようがないけどな
「それとカムさん。娘さんもらって行くんで。異論反論は認めないので。」
「えっ?」
「んじゃ。10日後。ユエは念話石でルールは伝えるから切るなよ。」
と俺は嵐のように話すと俺は急いで森の中に入っていく。
俺の感知の特訓と合わせてがんばりますか。
「……ってことでお前には俺が直々戦闘訓練をすることにしたから。」
「へ?」
ユキの声が驚きの声だったことにまぁ仕方がないかと思う
「……えっとどうして?」
「お前が寝ている間にハジメ達は無事っていうよりもハウリア族の安泰を約束してくれたらしい。」
「……ほんとうですか?」
「ハジメの話では『ハウリア族は忌み子シア・ハウリア、ユキ・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である南雲ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする』ってな。まぁ奴隷みたいのは気にくわないけど。」
「……」
するとへたぁと座り込むユキ
なお俺も長老会議は聞いていたのだが。……その場にいなかっただけマシだったと言っておこう
「でも終わってないんだよ。俺たちがハウリアと交わした約束は、案内が終わるまで守るというものだ。じゃあ、案内が終わった後はどうするのか。ハウリアは悪意や害意に対しては逃げるか隠れることしかできない。そんなお前等は、遂にフェアベルゲンという隠れ家すら失った。つまり、俺たちの庇護を失った瞬間、再び窮地に陥るというわけ。」
「そんな。」
「だから今はあっちはハジメが鍛えるらしい。」
「……えっ?」
「ついでにシアはユエが見ることになっている。んで俺はお前ってこと。まぁ完全にユエが不機嫌だったからな。助けられた恩義で好きになったってことだろうな。元々ハジメの方をよくみてたから惚れるのも時間の問題だと思っていたし。」
俺はそういうと剣を握る
「……ついて行くためにあいつはお前と同じルールを。それもあいつは組手でっていうお前よりも厳しいルールを受け入れた。」
「っ!!」
「つまりお前は一回当てれば勝ちなんだけどシアは組手で傷を一つつけないといけない。その意味が分かるよな?」
あいつは覚悟を決めたってことだ
「別に俺たちについてこなくても構わない。ただ。このままだったらお前は居場所がなくなるだろう。だから鍛え上げる。9日かけてハウリアのリーダーにも。俺たちの背を預けられるようにな。」
「……」
「もう一度聞く。お前はやる気はあるか?」
するとユキは頷く。覚悟を決めた目で俺の方を見るのだった。