黒の剣士に憧れし者 連載中止   作:孤独なバカ

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新たな旅立ち

「……ってことで今の攻略することは無理そうだぞ。」

 

大樹に来たハジメたちに俺は報告をする

 

大樹を調べていると石版があり窪みが空いていたのでそこにオルクスの指輪を嵌めると文字が浮かび上がり

 

〝四つの証〟

〝再生の力〟

〝紡がれた絆の道標〟

〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟

 

と書かれていた。このことより4つ以上の大迷宮の攻略と再生魔法がここの攻略の鍵になるのではないかと考えたのだ。

 

「はぁ~、ちくしょう。今すぐ攻略は無理ってことか……面倒くさいが他の迷宮から当たるしかないな……」

「ん……」

 

ここまで来て後回しにしなければならないことに歯噛みするハジメ。ユエも残念そうだ。しかし、大迷宮への入り方が見当もつかない以上、ぐだぐだと悩んでいても仕方ない。気持ちを切り替えて先に三つの証を手に入れることにする。

ハジメはハウリア族に集合をかけた。

 

「いま聞いた通り、俺達は、先に他の大迷宮の攻略を目指すことする。大樹の下へ案内するまで守るという約束もこれで完了した。お前達なら、もうフェアベルゲンの庇護がなくても、この樹海で十分に生きていけるだろう。そういうわけで、ここでお別れだ」

「ボクもスバルさんのところについて行くから。ここでお別れだね。」

 

するとユキの言葉にハウリア族はよかったなとか色々揶揄われているのだが笑顔で返していくユキの姿があった。そして、チラリとシアを見る。シアは頷き、カム達に話しかけようと一歩前に出た。

 

「とうさ「ボス! お話があります!」……あれぇ、父様? 今は私のターンでは…」

 

 シアの呼びかけをさらりと無視してカムが一歩前に出た。ビシッと直立不動の姿勢だ。横で「父様? ちょっと、父様?」とシアが声をかけるが、真っ直ぐ前を向いたまま見向きもしない。

 

「あ~、何だ?」

「ボス、我々もボスのお供に付いていかせて下さい!」

「えっ! 父様達もハジメさんに付いて行くんですか!?」

 

 カムの言葉に驚愕を表にするシア。シアが聞いてなかったってことは本当に知らなかったんだろう

 

「我々はもはやハウリアであってハウリアでなし! ボスの部下であります! 是非、お供に! これは一族の総意であります!」

「ちょっと、父様! 私、そんなの聞いてませんよ! ていうか、これで許可されちゃったら私の苦労は何だったのかと……」

「ぶっちゃけ、シアが羨ましいであります!」

「ぶっちゃけちゃった! ぶっちゃけちゃいましたよ! ホント、この十日間の間に何があったんですかっ!」

 

何だ、この状況?

俺は苦笑してしまう。しかし俺たちは蚊帳の外でただ見ているだけだ

 

「却下」

「なぜです!?」

 

 ハジメの実にあっさりした返答に身を乗り出して理由を問い詰めるカム。他のハウリア族もジリジリとハジメに迫る。

 

「足でまといだからに決まってんだろ、バカヤロー」

「しかしっ!」

「調子に乗るな。俺の旅についてこようなんて百八十日くらい早いわ!」

「具体的!?」

 

なお、食い下がろうとするカム達。しまいには、許可を得られなくても勝手に付いて行きます! とまで言い始めた。このまま、本当に町とかにまで付いてこられたら、それだけで騒動になりそうなので仕方なく条件を出すハジメ。

 

「じゃあ、あれだ。お前等はここで鍛錬してろ。次に樹海に来た時に、使えるようだったら部下として考えなくもない」

「……そのお言葉に偽りはありませんか?」

「ないない」

「嘘だったら、人間族の町の中心でボスの名前を連呼しつつ、新興宗教の教祖のごとく祭り上げますからな?」

「お、お前等、タチ悪いな……」

「そりゃ、ボスの部下を自負してますから」

「自業自得だ。」

 

頬を引きつらせるハジメ。ユエがぽんぽんと慰めるようにハジメの腕を叩く。次に樹海に戻った時が面倒そうだと天を仰ぐのだった。

 

「ぐすっ、誰も見向きもしてくれない……旅立ちの日なのに……」

「お姉ちゃんどんまい。」

 

 傍でシアが地面にのの字を書いていじけているが、ユキ以外誰も気にしなかった。

 

 

 

「ハジメさん。そう言えば聞いていませんでしたが目的地は何処ですか?」

「あ? 言ってなかったか?」

「聞いてませんよ!」

「……私は知っている」

「ボクもスバルさんから教えてもらったよ?」

 

むっと唸り抗議の声を上げるシア。

 

「わ、私だって仲間なんですから、そういうことは教えて下さいよ! コミュニケーションは大事ですよ!」

「悪かったって。次の目的地はライセン大峡谷だ」

「ライセン大峡谷?」

 

現在、確認されている七大迷宮は、【ハルツィナ樹海】を除けば、【グリューエン大砂漠の大火山】と【シュネー雪原の氷雪洞窟】である。確実を期すなら、次の目的地はそのどちらかにするべきでは? と思ったのだ。

 

「いやライセン大峡谷にも七大迷宮があると言われているからな。シュネー雪原は魔人国の領土だから面倒な事になりそうだし、取り敢えず大火山を目指すのがベターなんだが、どうせ西大陸に行くなら東西に伸びるライセンを通りながら行けば、途中で迷宮が見つかるかもしれないだろ?」

「つ、ついででライセン大峡谷を渡るのですか……」

「お姉ちゃんもう少しは自分の力を自覚しようよ。僕たちも谷底の魔物もその辺の魔物も変わらないよ。ライセンは、放出された魔力を分解する場所だから僕たちが主戦力になるんだし。」

 

「……師として情けない」

「うぅ~、面目ないですぅ」

 

 ユエにも呆れた視線を向けられ目を泳がせるシア。話題を逸らそうとする。

 

「で、では、ライセン大峡谷に行くとして、今日は野営ですか? それともこのまま、近場の村か町に行きますか?」

「出来れば、食料とか調味料関係を揃えたいし、今後のためにも素材を換金しておきたいから町がいいな。前に見た地図通りなら、この方角に町があったと思うんだよ」

「というよりステータス隠蔽しとけよ。俺らステータスバレると面倒くさいんだから。」

「おう。了解。料理はお前任せだからな。」

「……むぅ」

「ボクも手伝うよ。よくお姉ちゃんと料理やっていたから。」

「私も手伝います。」

 

料理は俺担当は変わらないらしい。まぁ二人が料理ができることができるのはしっているしなぁ

 

 数時間ほど走り、そろそろ日が暮れるという頃、前方に町が見えてきた。俺とハジメの頬が綻ぶ、奈落から出て空を見上げた時のような、〝戻ってきた〟という気持ちが湧き出したからだ。

そうやって俺たちは街へと急いだ


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