黒の剣士に憧れし者 連載中止   作:孤独なバカ

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ミレディ

「やったじゃねぇかシア。最後のは凄い気迫だった。見直したぞ?」

「……ん、頑張った」

「えへへ、有難うございます。でもハジメさん、そこは、〝惚れ直した〟でもいいんですよ?」

「直すも何も元から惚れてねぇよ」

「ユキもお疲れ。地味だけど支援助かった。」

「…攻撃ではみなさんより劣るからね。」

 

まぁでも今回のMVPは間違えなくシアだな。、最後の場面で、どうしてもシアの止めが必要という訳ではなかった。パイルバンカーが威力不足だろうことは予想がついていたし、それを押し込む手段もあった。だが、温厚で争いごとが苦手な兎人族であり、つい最近まで戦う術を持たなかったシアが一度も「帰りたい」などと弱音を吐かず、恐怖も不安も動揺も押しのけて大迷宮の深部までやって来たのだ。最後を任せるというのもありだろうとハジメは考え俺に念話石で曖昧にだけど伝えた。

結果は上々。凄まじい気迫と共に繰り出された最後の一撃は正直、俺さえ見惚れるほど見事なものだった。シアの想いの強さが衝撃波となって届いたのかと思うほどに。

 

「ふぇ? な、なんだか……ハジメさんが凄く優しい目をしている気が……ゆ、夢?」

「お前な……いや、まぁ、日頃の扱いを考えると仕方ないと言えば仕方ない反応なんだが……」

「ユキやシアはこの迷宮で認められたんだよ。ユキはこの中で偵察とか戦闘外ではかなりの活躍だったし、シアはこの活躍。どう見たって認めざるを得ないだろうな。」

 

俺は苦笑する。 未だ頬を抓っているシアのもとへユエがトコトコと歩み寄っていく。そして、服を引っ張り屈ませると、おもむろにシアの頭を撫でた。乱れた髪を直すように、ゆっくり丁寧に。

 

「え、えっと、ユエさん?」

「……ハジメは撫でないだろうから、残念だろうけど代わりに。よく頑張りました」

「ユ、ユエさぁ~ん。うぅ、あれ、何だろ? 何だか泣けてぎまじだぁ、ふぇええ」

「……よしよし。」

 

最初はユエの突然の行動に戸惑っていたシアも、褒められていると理解すると、緊張の糸が切れたのかポロポロと涙を流しながらユエにヒシッと抱きつき泣き出してしまった。やはり、初めての旅でいきなり七大迷宮というのは相当堪えていたのだろう。

 

「ユキもよく頑張ったな。」

「……ボクも頭。」

「はいはい。」

 

俺は軽く優しくユキの頭を撫でる

何ともいえない暖かい空気が流れるけど

 

「あのぉ~、いい雰囲気で悪いんだけどぉ~、そろそろヤバイんで、ちょっといいかなぁ~?」

 

 物凄く聞き覚えのある声。ハジメ達がハッとしてミレディ・ゴーレムを見ると、消えたはずの眼の光がいつの間にか戻っていることに気がついた。咄嗟に、飛び退り距離を置くハジメ達。

 

「いや。敵意はねえよ。迷宮はあの時にクリアしたはずだ。多分オスカーの時にあった最後の言葉みたいなものだろう。」

 

俺がいうとハジメとユエがあぁと頷く

 

ハジメが、少し警戒心を解きミレディ・ゴーレムに話しかける。

 

「で? 何の話だ? 死にぞこない。死してなお空気も読めんとは……残念さでは随一の解放者ってことで後世に伝えてやろうか」

「ちょっ、やめてよぉ~、何その地味な嫌がらせ。ジワジワきそうなところが凄く嫌らしい」

「で? 〝クソ野郎共〟を殺してくれっていう話なら聞く気ないぞ?」

 

ハジメの機先を制するような言葉に、何となく苦笑いめいた雰囲気を出すミレディ・ゴーレム。

 

「言わないよ。言う必要もないからね。話したい……というより忠告だね。訪れた迷宮で目当ての神代魔法がなくても、必ず私達全員の神代魔法を手に入れること……君の望みのために必要だから……」

「全部ね……なら他の迷宮の場所を教えろ。失伝していて、ほとんどわかってねぇんだよ」

「あぁ、そうなんだ……そっか、迷宮の場所がわからなくなるほど……長い時が経ったんだね……うん、場所……場所はね……」

 

ポツリポツリとミレディは残りの七大迷宮の所在を語る

 

「以上だよ……頑張ってね」

「……随分としおらしいじゃねぇの。あのウザったい口調やらセリフはどうした?」

 

 ハジメの言う通り、今のミレディは、迷宮内のウザイ文を用意したり、あの人の神経を逆なでする口調とは無縁の誠実さや真面目さを感じさせた。戦闘前にハジメの目的を聞いたときに垣間見せた、おそらく彼女の素顔が出ているのだろう。消滅を前にして取り繕う必要がなくなったということなのかもしれない。

 

「あはは、ごめんね~。でもさ……あのクソ野郎共って……ホントに嫌なヤツらでさ……嫌らしいことばっかりしてくるんだよね……だから、少しでも……慣れておいて欲しくてね……」

「おい、こら。狂った神のことなんざ興味ないって言っただろうが。なに、勝手に戦うこと前提で話してんだよ」

「戦わなくちゃいけなくなるってことだ。」

 

俺がいうとハジメはこっちを向く

 

「オスカー曰く俺たちは駒だ。それなら自分の不都合なことならばまず排除しにかかるのが神だろう。」

「うん。スバルくんのいう通り……戦うよ。君らが君たちである限り……必ず……君達は、神殺しを為す」

「……そりゃあ、俺の道を阻むなら殺るかもしれないが……」

 

ミレディは、その様子に楽しげな笑い声を漏らす。

 

「ふふ……それでいい……君は君の思った通りに生きればいい…………君の選択が……きっと…………この世界にとっての……最良だから……」

 

いつしか、ミレディ・ゴーレムの体は燐光のような青白い光に包まれていた。その光が蛍火の如く、淡い小さな光となって天へと登っていく。死した魂が天へと召されていくようだ。とても、とても神秘的な光景である。

 

 その時、おもむろにユエがミレディ・ゴーレムの傍へと寄って行った。既に、ほとんど光を失っている眼をジッと見つめる。

 

「何かな?」

 

囁くようなミレディの声。それに同じく、囁くようにユエが一言、消えゆく偉大な〝解放者〟に言葉を贈った。

 

「……お疲れ様。よく頑張りました」

「……」

 

それは労いの言葉。たった一人、深い闇の底で希望を待ち続けた偉大な存在への、今を生きる者からのささやかな贈り物。本来なら、遥かに年下の者からの言葉としては不適切かもしれない。だが、やはり、これ以外の言葉を、ユエは思いつかなかった。

 

 ミレディにとっても意外な言葉だったのだろう。言葉もなく呆然とした雰囲気を漂わせている。やがて、穏やかな声でミレディがポツリと呟く。

 

「……ありがとね」

「……ん」

 

 ちなみに、ユエとミレディが最後の言葉をかわすその後ろで、知った風な口を聞かれてイラっとしたハジメが「もういいから、さっさと逝けよ」と口にしそうになり、それを敏感に察したシアに「空気読めてないのはどっちですか! ちょっと黙ってて下さい!」と後ろから羽交い絞めにされて口を塞がれモゴモゴさせていたのだが、幸いなことに二人は気がついておらず、厳かな雰囲気は保たれていた。

 

「……さて、時間の……ようだね……君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを……」

 

 オスカーと同じ言葉をハジメ達に贈り、〝解放者〟の一人、ミレディは淡い光となって天へと消えていった。

辺りを静寂が包み、余韻に浸るようにユエとシアが光の軌跡を追って天を見上げる。

 

「……最初は、性根が捻じ曲がった最悪の人だと思っていたんですけどね。ただ、一生懸命なだけだったんですね」

「……ん」

 

 どこかしんみりとした雰囲気で言葉を交わすユエとシア。だが、ミレディに対して思うところが皆無の男、ハジメはうんざりした様子で二人に話しかけた。

 

「はぁ、もういいだろ? さっさと先に行くぞ。それと、断言するがアイツの根性の悪さも素だと思うぞ? あの意地の悪さは、演技ってレベルじゃねぇよ」

「ちょっと、ハジメさん。そんな死人にムチ打つようなことを。ヒドイですよ。まったく空気読めないのはハジメさんの方ですよ」

「……ハジメ、KY?」

「ユエ、お前まで……はぁ、まぁ、いいけどよ。念の為言っておくが、俺は空気が読めないんじゃないぞ。読まないだけだ」

「……それにハジメが言っている意地の悪さ。今後も続きそうなんだよなぁ。」

「……どういうこと?」

 

そんな雑談をしていると、いつの間にか壁の一角が光を放っていることに気がついたハジメ達。気を取り直して、その場所に向かう。上方の壁にあるので浮遊ブロックを足場に跳んでいこうと、ブロックの一つに三人で跳び乗った。と、その途端、足場の浮遊ブロックがスィーと動き出し、光る壁までハジメ達を運んでいく。

 

「……」

「わわっ、勝手に動いてますよ、これ。便利ですねぇ」

「……サービス?」

 

 勝手にハジメ達を運んでくれる浮遊ブロックにシアは驚き、ユエは首をかしげる。ハジメは嫌そうな表情。ユキも何か気づいたようだ。

 

そして運んできた先には

 

「やっほー、さっきぶり! ミレディちゃんだよ!」

 

 ちっこいミレディ・ゴーレムがいた。

 

「「……」」

「やっぱり。」

「ほれ、みろ。こんなこったろうと思ったよ」

「……ぷっ。」

 

その後シリアスな雰囲気をバカにされたユエとシアによる一方的な虐殺を終えた後

 

魔法陣の中に入る俺達。今回は、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。

 

「これは……やっぱり重力操作の魔法か」

「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は一応重力魔法。上手く使ってね…って言いたいところだけど、君とウサギちゃんたちは適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」

「やかましいわ。それくらい想定済みだ」

「それとは比べてそこのスバルくんはかなりの適正だね。多分一週間もすれば物にできると思うよ。まぁ、ウサギちゃんたちは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君は……生成魔法使えるんだから、それで何とかしなよ。金髪ちゃんは適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ」

 

適正ありと聞いて俺は少しワクワクする。どうやらやっとまともな魔法を使えるようになるらしい。

なぜかシアが落ち込んでいるが

 

「おい、ミレディ。さっさと攻略の証を渡せ。それから、お前が持っている便利そうなアーティファクト類と感応石みたいな珍しい鉱物類も全部よこせ」

「……君、セリフが完全に強盗と同じだからね? 自覚ある?」

 

否定できない。俺はため息を吐くと 歪んだニコちゃんマークの仮面が、どことなくジト目をしている気がするが、ハジメは気にしない。ミニ・ミレディは、ごそごそと懐を探ると一つの指輪を取り出し、それをハジメに向かって放り投げた。パシッと音をさせて受け取るハジメ。ライセンの指輪は、上下の楕円を一本の杭が貫いているデザインだ。

ミニ・ミレディは、更に虚空に大量の鉱石類を出現させる。おそらく〝宝物庫〟を持っているのだろう。そこから保管していた鉱石類を取り出したようだ。やけに素直に取り出したところを見ると、元々渡す気だったのかもしれない。何故か、ミレディはハジメが狂った神連中と戦うことを確信しているようであるし、このくらいの協力は惜しまないつもりだったのだろう。

 

「おい、それ〝宝物庫〟だろう? だったら、それごと渡せよ。どうせ中にアーティファクト入ってんだろうが」

「あ、あのねぇ~。これ以上渡すものはないよ。〝宝物庫〟も他のアーティファクトも迷宮の修繕とか維持管理とかに必要なものなんだから」

「知るか。寄越せ」

「あっ、こらダメだったら!」

「ハジメやめとけ。」

 

俺はハジメを止める

 

「ミレディ曰くここは迷宮なんだろ?勝利報酬的にはかなりの報酬だし、利益も十分。それに俺の直感が使い物にならないどころか、ここでもらうと不利益になるって出ている。」

「……ちっ。俺はただ、攻略報酬として身ぐるみを置いていけと言ってるだけじゃないか。至って正当な要求だろうに」

「それを正当と言える君の価値観はどうかしてるよ! うぅ、いつもオーちゃんに言われてた事を私が言う様になるなんて……」

「ちなみに、そのオーちゃんとやらの迷宮で培った価値観なんだけどな。」

「オーちゃぁーーん!!」

 

なんかかわいそうだなミレディ。ホロリときていると

 

「はぁ~、初めての攻略者がこんなキワモノだなんて……もぅ、いいや。君達を強制的に外に出すからねぇ! 戻ってきちゃダメよぉ!」

 

 今にも飛びかからんとしていたハジメ達の目の前で、ミニ・ミレディは、いつの間にか天井からぶら下がっていた紐を掴みグイっと下に引っ張った。

 

「「「?」」」

 

まぁさすがに今回はやりすぎだからな。止める気はない。

 

「てめぇ! これはっ!」

 

ハジメは何かに気がついたように一瞬硬直すると、直ぐに屈辱に顔を歪めた。

白い部屋、窪んだ中央の穴、そこに流れ込む渦巻く大量の水に押し流される

 

「嫌なものは、水に流すに限るね☆」

 

 ウインクするミニ・ミレディ。ユエが咄嗟に魔法で全員を飛び上がらせようとする。この部屋の中は神代魔法の陣があるせいか分解作用がない。そのため、ユエに残された魔力は少ないが全員を激流から脱出させる程度のことは可能だろうけど

 

「〝来…〟」

「させなぁ~い!」

 

ミニ・ミレディが右手を突き出し、同時に途轍もない負荷がハジメ達を襲った。上から巨大な何かに押さえつけられるように激流へと沈められる。重力魔法で上から数倍の重力を掛けられたのだろう。

 

「それじゃあねぇ~、迷宮攻略頑張りなよぉ~」

「ごぽっ……てめぇ、俺たちゃ汚物か! いつか絶対破壊してやるからなぁ!」

「ケホッ……許さない」

「殺ってやるですぅ! ふがっ」

 

『……どう見てもこっちが悪役なんだよなぁ。』

『そうだね』

 

俺とユキは思いっきり息を吸って潜っていく。

ミレディの部屋に手紙を投げつけて

 

その後迷宮の最奥に、「ひにゃああー!!」という女の悲鳴が響き渡った。その後、修繕が更に大変になり泣きべそを掻く小さなゴーレムがいたとかいないとか……

 

激流で満たされた地下トンネルのような場所を猛スピードで流されていた。息継ぎができるような場所もなく、ひたすら水中を進む。何とか、壁に激突して意識を失うような下手だけは打たないように必死に体をコントロールした。

と、その時、俺達の視界が自分達を追い越していく幾つもの影を捉えた。それは、魚だった。どうやら流された場所は、他の川や湖とも繋がっている地下水脈らしい。ただ、流される俺達と違って魚達は激流の中を逞しく泳いでいるので、追い越して行く。

しばらくたつと光が見えそして

 

「ゲホッ、ガホッ、~~っ、ひでぇ目にあった。あいつ何時か絶対に破壊してやる。みんな。無事か?」

「ケホッケホッ……ん、大丈夫」

「ゲホっ。ごほっ。お前ら少しは自重しろ。」

「う〜せっかくの服が濡れてしまったじゃないか。」

「ユキお前そこなのか?ってシアは?」

 

俺が聞くとみんなが探し出す

 

「シア? おい、シア! どこだ!」

「シア……どこ?」

 

 呼びかけるが周囲に気配はない。ハジメは、急いで水中に潜り目を凝らす。すると、案の定、シアが底の方に沈んでいくところだった。意識を失っている事と、ドリュッケンの重さのせいで浮くことができないのだ。

 

「ちょっと助けてくる。」

 

俺はハジメに縄を投げた後息を吸い一気に潜る。そしてシアを担ぐと固定をし縄を引く。するとハジメが引っ張ったのか分からないがすぐに地上へと上げられる

 

シアを引きずりながら岸に上がる。仰向けにして寝かせたシアは、顔面蒼白で白目をむいていた。

 

「ゲホっゲホ。容態は?」

「心臓と呼吸が止まっている。ユエ、人工呼吸を!」

「……じん…何?」

「あ~、だから、気道を確保して…」

「???」

 

ハジメの説明に首を傾げるユエとユキ。もしかして心肺蘇生というものがないのかもしれない。怪我をしているわけでもないし、水を飲んでいるところに更に水分を取らせる訳にもいかないので神水は役に立たない。

いつから意識を失っていたのかわからないが、一刻を争うことは確かだ。ハジメは、意を決してシアに心肺蘇生を行った。

 

「えっ?」

 

ユキが顔を真っ赤にしている。本当に心肺蘇生ってものがないんだな。

 

「ケホッケホッ……ハジメさん?」

「おう、ハジメさんだ。ったくこんなことで死にかけてんじゃッん!?」

 

 むせながら横たわるシアに至近から呆れた表情を見せつつも、どこかホッとした様子を見せるハジメ。そんなハジメを、ボーと見つめていたシアは、突如、ガバチョ! と抱きつきそのままキスをした。まさかの反応と、距離の近さに避け損なうハジメ。

 

「んっ!? んー!!」

「あむっ、んちゅ」

 

シアは、両手でハジメの頭を抱え込み、両足を腰に回して完全に体を固定すると遠慮容赦なく舌をハジメの口内に侵入させた。シアの剛力と自身の体勢的に咄嗟に振りほどけないハジメ。

俺は宝物庫に入れてあったスマホでこっそりと撮影ボタンをおした

 

「わっわっ、何!? 何ですか、この状況!? す、すごい……濡れ濡れで、あんなに絡みついて……は、激しい……お外なのに! ア、アブノーマルだわっ!」

 

 そこへやって来たのは妄想過多な宿の看板娘ソーナちゃん。そして「あら? あなたたち確か……」と体をくねらせながらするおかまに。そして、嫉妬の炎を瞳に宿し、自然と剣にかかる手を必死に抑えている男の冒険者達とそんな男連中を冷めた目で見ている女冒険者だった。

 

「あんっ!」

 

 思わず喘ぐシア。一瞬、緩んだ隙を逃さず、ハジメはペイッ! とシアを引き剥がすとそのまま泉に放り込んだ。

 

「うきゃぁああ!」

「ゆ、油断も隙もねぇ。蘇生直後に襲いかかるとか……流石に読めんわ」

 

俺は宝物庫にスマホをなおし苦笑する

 

「うぅ~酷いですよぉ~ハジメさんの方からしてくれたんじゃないですかぁ~」

「はぁ? あれは歴とした救命措置で……って、お前、意識あったのか?」

「う~ん、なかったと思うんですけど……何となく分かりました。ハジメさんにキスされているって、うへへ」

「その笑い方やめろ……いいか、あれはあくまで救命措置であって、深い意味はないからな? 変な期待するなよ?」

「そうですか? でも、キスはキスですよ。このままデレ期に突入ですよ!」

「ねぇよ。っていうかユエ。お前も止めてくれよ」

「……今だけ……でも、シアは頑張っているし……いや、でも……」

「ユエ~? ユエさんや~い」

 

「……ぼく達忘れられてないかい?」

「元々メインはあいつらだしなぁ。見ているだけじゃ面白いからいいんじゃね?」

 

俺とユキはそういうと笑い合う。結果、自分達のいる場所が、ブルックの町から一日ほどの場所にあると判明し、町に寄って行くことにした。クリスタベル(オカマ)の馬車に便乗させてくれるというので、その厚意に甘えることにする。濡れた服を着替え、道中、色々話をしながら、暖かな日差しの中を馬の足音をBGMに進んでいく。

 

いつのまにかどんなことでも笑顔がやまない。いいパーティーになっていた


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