あれから一週間が経ち
「おいもうそろそろ行くぞ。」
俺が声をかけると全員が頷く
「それで次はどこに行くんですか?」
シアが聞いてくる。そういえば最終決定先は伝えてなかったな
「とりあえず商業都市フューレンかな?ギルドで金稼ぎながら素材を売る方向で。大迷宮攻略っと言っても生活費五人いるだけあって結構かかっているしな。」
「まぁ妥当だな。」
「とりあえずしばらくは一般人に紛れることがいいだろうな。」
「無理に教会に目をつけられるっていうのが最悪だろうしな。」
俺は少し考え
「とりあえず依頼も受けてきたから。明日、モットーユンケルって人の護衛。俺とハジメのパーティー登録も済ませてふたり分の枠が余っていたし、少しくらいが商人とのコネを作ったほうがいいしな。」
「……お前よく考えているな。」
「経済的な問題で結構厳しいんだぞ。さすがに迷宮で取れた奴は売れないし。迷宮行くたびに赤字になるんだよ。魔力回復薬結構高いし。」
「「「「あぁ。」」」」
と事情を話したら納得したらしい。俺が戻ってからもギルドの仕事を受けていたことは全員しっているので話は早い。
「後キャサリンさんからなんか書類と伝言。ハジメにトラブル多そうだから町の連中が迷惑かけた詫びのようなものをくれた。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せたら身分証明みたいなものになってくれるらしい。」
「あの人何者だよ。」
知らないけど結構上の人だろうな
ハジメに書類を渡して俺は笑う
新たな旅に少し楽しみになっていた
そして翌日早朝。
「お、おい、まさか残りの5人って〝スマ・ラヴ〟と”黒の王子”なのか!?」
「マジかよ! 嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!」
「見ろよ、俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」
「いや、それはお前がアル中だからだろ?」
「……王子様。」
ユエとシアの登場に喜びを表にする者、股間を両手で隠し涙目になる者、手の震えをハジメ達のせいにして仲間にツッコミを入れられる者俺が依頼で助けた女性など様々な人がいる
「黒の王子?」
「……俺が受けた依頼でとある村を助けたら女性の一人から王子様って言われたのがきっかけで広まったんだよ。」
4日前に受けた依頼でゴブリンに襲われた村の調査をした時に俺がいった村はオークみたいな魔物をいた為に冒険者も思いもよらないことに悲鳴をあげていたのだが。俺が一瞬で討伐したことと、助けたタイミングが悪すぎたのでよばれるようになったのだ。
「……てかスマ・ラブって俺のいない時にお前らは何やっているんだよ。」
「「「「……」」」」
四人が目を逸らす。
こいつら。マジで何をしたんだ?
すると商人がこっちに来る
「君達が最後の護衛かね?」
「ああ、これが依頼書だ」
俺は、懐から取り出した依頼書を見せる。それを確認して、まとめ役の男は納得したように頷き、自己紹介を始めた。
「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ緑だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」
「…ユンケル? ……商隊のリーダーって大変なんだな……」
「お前栄養ドリンクとなんもその人は関係ないぞ。」
俺は呆れたようにすると
「まぁ、期待は裏切らないと思うぞ。俺はハジメだ。こっちはユエとシア」
「俺は一応リーダーのスバルだ。そっちはユキ。」
「それは頼もしいな……ところで、この二人兎人族……売るつもりはないかね? それなりの値段を付けさせてもらうが」
モットーの視線が値踏みするようにシアとユキを見た。商人の性として、珍しい商品に口を出さずにはいられないということか。
「あんな。ユキとシアは大切な仲間だぞ。売るわけないだろうが。」
「……首輪をつけているのにですか?」
「ま、あんたはそこそこ優秀な商人のようだし……答えはわかるだろ?」
モットーが更に俺たちに交渉を持ちかけるが、対応はあっさりしたものだ。モットーも、実は俺たちが手放さないだろうとは感じていたが、それでもシアとユキが生み出すであろう利益は魅力的だったので、何か交渉材料はないかと会話を引き伸ばそうとする。
やはりあっさりしているが、揺るぎない意志を込めた言葉をモットーに告げる。
「攫おうもんならどこぞの神ですら相手になる。」
「例え、どこぞの神が欲しても手放す気はないな……理解してもらえたか?」
「…………えぇ、それはもう。仕方ありませんな。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になったときは是非、我がユンケル商会をご贔屓に願いますよ。それと、もう間も無く出発です。護衛の詳細は、そちらのリーダーとお願いします」
すごすごと商隊の方へ戻るモットーを見ていると、周囲が再びざわついている事に気がついた。
「すげぇ……女一人のために、あそこまで言うか……痺れるぜ!」
「流石、決闘スマッシャーと言ったところか。自分の女に手を出すやつには容赦しない……ふっ、漢だぜ」
「いいわねぇ~、私も一度くらい言われてみたいわ」
「いや、お前、男だろ? 誰が、そんなことッあ、すまん、謝るからっやめっアッーー!!」
「……」
愉快な護衛仲間の愉快な発言に頭痛を感じたように手で頭を抑えた。
その後旅は順調に進み、一度魔物の大群が来たのだがユエの魔法で一撃で倒し他ので何の問題のなく特に何事もなく、一行は遂に中立商業都市フューレンに到着した。
フューレンの東門には六つの入場受付があり、そこで持ち込み品のチェックをするそうだ。俺達も、その内の一つの列に並んでいた。順番が来るまでしばらくかかりそうである。
「す〜す〜。」
「寝てるな。」
「何時ものことだ。てか俺の膝枕なんか誰得だよ。」
馬車の屋根で、俺に膝枕気持ち良さそうに寝ているユキに興味ありげにユエに膝枕をされ、シアを侍らせながら寝転んでいたハジメのもとにモットーがやって来た。何やら話があるようだ。若干、呆れ気味にハジメを見上げるモットーに、ハジメは軽く頷いて屋根から飛び降りた。
俺たちは適当に雑談をしながら話し合う。これからの予定とかについて話していると
強烈な殺気が誰に向けられた
するとその殺気に当てられユキも目が覚め軽く警戒する
「大丈夫ハジメだ。」
「……そっか。」
「何かあったんですかね?」
「どうせ。アーティファクトを譲ってくれって頼まれそれを断ったら俺たちに危害が及ぶとか言われたんだろ?ユンケルさん冷や汗かいてるし。」
後から聞いたことによるとあっていたらしい。奴隷の件は確実に諦めるのは確かだったから予想はつきやすかったけど。
まぁ視線も集めているのでこれからも波乱を帯びるだろう。そんなことに俺は苦笑しざるを得なかった。