二週間後
俺は両手にある片手剣を振るい八重樫に突撃する
数週間ながら件二刀流の剣筋は誰よりも重く、そして早い剣に成長していた
八重樫も一本で捌こうとしているのだがそれでも手数とステータス的に押し切れてしまう
そして俺は剣を弾き飛ばすと八重樫の首に剣をあてた
「一本だよな。」
「えぇ。」
俺は少し苦笑し二つの剣をさやに入れる
今のステータスは
飯塚昴 17歳 男 レベル:10
天職 剣士
筋力 400
体力 100
耐性 40
敏捷 600
魔力 40
魔耐 40
技能 二刀流[+剣舞] 隠密 気配感知 直感 投剣 無属性適正 限界突破
「しかし、速くて重いわね。」
「防御系が弱い分攻撃特化だからな。ほれ。」
俺は水筒に入れてきた水を渡す。八重樫はそれを受け取ると飲み始め、俺は自分の分のものを飲み始める
「でも、あなたよく二つの剣なんてうまく操れるわね。普通単調化しやすくて剣筋がみだれるはずなんだけど。」
「あんまり言いたくないけど黒の剣士に憧れていた時があって。その名残かな。元々家が道場だったわけあって剣術は元々叩き込まれていたわけだし。」
飯塚流。今は昔の教え子が広めているわけだが嘗ては八重樫流と飯塚流は結構友好のある剣術だった
俺は剣道に才能はなくてやってなかったのだが、遊びでやった二刀流が中々様になっていたことから二刀流を真剣にやらされていたので途中からスポーツチャンバラの道に変更になっていた。
まぁ両親が死んでからも時々やっていて、知名度は低いけど全国大会3連覇中だった
「そういえば南雲くんは?」
「図書館プラス例の物を用意してもらっている。一応俺も控えに欲しいし。一つは完成したけどコスト的にも重いからな。」
「ファンタジーって言いづらいのが難点ね。」
「そんな余裕がないから言っているんだけどな。」
ハジメにも自衛ができる方法を与えていた方がいい
「精神的にも最弱って結構くるからな。錬成も考えれば戦闘に使えないことはないけど魔力消費がでかすぎる。」
「……錬成って戦闘に使えるの?」
「元々触っている無機物を変化できるのが錬成の技能だからな。使えるさ。」
元々剣や運動が苦手なハジメだからこそ多分思いつくんだと思うけど
「てか香織いい加減隠れてないで出てくれば?」
「……へ?」
さっきから隠れている香織の方を向く。何もないように見えると思うがしっかりと気配感知に反応している
「……うぅ。」
すると香織が観念したかのように出てくる
「香織。一体いつから。」
「い、いやさっき来たところ。」
「こいつ一戦目の最初から隠れていたぞ。」
「……ちょっと待って。あなた。」
多分こいつも気づいているのだろう。八重樫一回言いかけたことを止める
最近ずっと視線を感じ毎回同じ気配だったので一回確かめたら香織だったので毎回付けてきたのが香織だと判明した
……こいつストーカーに近い行動をしている
「隠れるくらいなら出てくればいいじゃねーか。全員知った仲だし。」
「うぅ。でも。」
「でもも何もないでしょ?香織。」
正論を二人から言われる香織に俺は溜息をはく
「それで何の用だ?何か言いたいことがあっただろ?」
「飯塚くんと話そうと思っていたんだけど。雫ちゃんが一緒にいたから。」
「あ〜。」
そういえばそうだな
最近八重樫とほとんど同じ訓練をしているし、自主練も八重樫でいつの間にか八重樫とペアで行動してたからな
それじゃなければハジメと例の物の開発を手伝っているのだがそういえば香織と話す時間が取れてなかったのか
「……そういえばいつの間にか飯塚くんと行動するのが当たり前になっていたわね。」
「俺と八重樫はアタッカー。香織はヒーラーだから連携が大事な方を優先されるんだよなぁ。」
実際連携で俺と八重樫は最大評価を得ておりパートナー認定をされている。
だから集団行動でも八重樫ばかり組んでいることから男子や女子からの嫉妬が集まっていた
「……まぁ、晩飯は一緒に食うか。ハジメも誘って。」
「南雲くん?」
「あぁ。なんというか嫌な予感がするんだよ。近いうちにとんでもならないようなことが起こる気がして。」
「……」
二人は黙り込んでしまう。それが俺の直感スキルのことを知っているからだろう
すると不意に直感スキルが反応して気配感知を使った方がいい気がする
俺は使うと四人が一人に対して囲んでいる状況が感知できた
「ちょっとついて来てくれ。」
真剣な声に八重樫と白崎は首を傾げながら頷くと気配にあった方に歩いていく
するとそう言って、蹲るハジメに四人組がリンチしている姿が見られた
「何やってるの!?」
その声に「やべっ」という顔をする檜山達。それはそうだろう。その女の子は檜山達が惚れている香織だったのだから。
「いや、誤解しないで欲しいんだけど、俺達、南雲の特訓に付き合ってただけで……」
「南雲くん!」
檜山の弁明を無視して、香織は、ゲホッゲホッと咳き込み蹲るハジメに駆け寄る。ハジメの様子を見た瞬間、檜山達のことは頭から消えたようである。
「特訓ね。それにしては随分と一方的みたいだけど?」
「いや、それは……」
「言い訳はいいからさっさと失せろ。これ以上やるなら俺が相手になるけど?」
「くっだらねぇことする暇があるなら、自分を鍛えろっての」
三者三様に言い募られ、檜山達は誤魔化し笑いをしながらそそくさと立ち去った。香織の治癒魔法によりハジメが徐々に癒されていく。
「あ、ありがとう。白崎さん。」
苦笑いするハジメに香織は泣きそうな顔でブンブンと首を振る。
「いつもあんなことされてたの? それなら、私が……」
「いや、お前が言ったら多分逆効果だから。それよりも遠回しにいじめるような人は嫌いって伝える方がいいだろうな。」
「どうして?」
いや、虐めの原因が嫉妬とかから来ているからな。お前の
「……まぁ、俺のとばっちり食らっているんだよなぁ。俺が強くなければ多分方向性は俺にくるだろうし。」
「……どういうこと?」
「あぁ。なるほど。そういうことね。」
香織は純粋だから通じないのだろうけど、やっぱり気がひけるんだよなぁ
「南雲君、何かあれば遠慮なく言ってちょうだい。香織もその方が納得するわ」
「悪い。お前ばっかりに押し付けさせて。」
渋い表情をしている香織を横目に、苦い顔をすると俺と苦笑いしながら雫が言う。それにも礼を言うハジメ。
「ほら、もう訓練が始まるよ。行こう?」
ハジメに促され一行は訓練施設に戻る。香織はずっと心配そうだったがハジメは気がつかない振りをした。流石に、男として同級生の女の子に甘えるのだけはなんだか嫌だったのだろう。
訓練施設に戻りながら、ハジメと俺は、本日何度目かの深い溜息を吐いた。
訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となるのだが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。
「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」
ついに来たかと俺は少し気合いを入れる。ざわざわと喧騒に包まれる生徒達の最後尾でハジメは天を仰いでいた
まぁ俺も少し動き始めるか
そういうと隠密スキルを使いクラスメイトから離れていった。