カロッテ村のゾネさん   作:おかひじき

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ヴィオラートのアトリエおもしれー!これは2次創作増えるな!(15年前くらい俺)

もう俺が書くしかない!
俺が!俺達が錬金術士だ!


れんきんじつし(クサイ)

 私がそれに気づいたのは、12歳の時でした。

 

 魔物が出るからと子供だけで入る事を禁じられた森と草原の先。

そこに、村の子供達の体験学習?のような感じで、

騎士様と村のお兄さんに引き連れられて分け入った子供の群れの中の1人、

この遠征の言いだしっぺのメガネ美少女。それが私です。

 

 体感としては、記憶ファイルの中に紛れていた圧縮前世ファイルが展開されて、

今までアクセス出来なかった記憶ファイルにアクセス出来るようになった感じ。

正確には、森に分け入ってしばらくして、青いゼリー状の生物に遭遇した時。

 

「ぷにぷにだ!下がって!」

 

 そう、スライムではなく、ぷにぷにという名称を生の体験で実感したその瞬間、

前世の記憶と共に、ここがヴィオラートのアトリエというゲームの世界である、

と思い出したのです。

 

 はい。騎士様というのは騎士の資格を取った後に首都から村に戻って、

フリーの警備(ガチ)系の仕事をしているパーフェクトイケメン騎士のロードフリードさん。

村のお兄さんはこのゲームの主人公であるヴィオラートの兄のバルトロメウスさんですね。

鎧袖一触です。ぷにぷに1体だし。

 

「今回はぷにぷに1体だけだったけど、どうかな?1人で遠くに行ったら危ないからね」

「どうしても用があるなら、俺かこいつがついていってやるから声を掛けるんだな」

 

 ロードフリードさんもだけど、バルトロメウス……バルテル兄もつきあいがいいな。

バルテル兄はゲーム原作では何年もずっと村と家の中をぶらぶらしてる自称冒険者で、

携帯機の移植版ではニート扱いまでされていたが、こういう面倒見がいいタイプだったんだな。

まあ普通に考えて、ゲームのNPCみたいに何もせず待機してるわけないよな。

 

 その後、村の南の「近くの森」をしばらく探索し、

ぷにぷに(青)と熊(ピンク)に遭遇しながらも、男2人があっさりとかたをつけて、

私達は大量のニンジンとニューズ(はじける木の実)を手に入れて帰路に着いた。

 

 泊まりではなかったものの、夕方に帰って来た私達を心配した親御さん達が迎えに出ていた。

私の両親も来ている。ちなみに私の父親はゲーム原作で、

ヴィオちゃんのお兄さん云々と発言していたモブらしい。だからどうということでもないですが。

 

 しかしこうして見ると、前世で言う学校の遠足みたいですね。

まさか私が遠足イベントの発起人的な子供のリーダー的存在になるとは思いもしませんでした。

まあはっきりと自覚したのは今日ですが、ところどころ前世の記憶が漏れ出して、

それを利用して立ち回っていた記憶があるので、まあそうなるよね、と。

 

 私の今の名前は、ゾンネンブルーメ・トロイメント。

ドイツ語っぽい名称の中では変な名前ではないはずです、多分……?

そしてこの年齢にしては天才的な知恵があると評判のメガネ美少女です。

 

 輝く金髪碧眼に黄金縁のメガネ、ヒマワリを表すような緑と茶色、黄色のエプロンドレス。

あると言えなくもない年齢相応の胸部装甲に、全て黄色で統一された全身のフリフリと、

同じく黄色のリボンで結ばれた、前世記憶由来のツインテール。

過疎が進み、人数が減ったヴィオラートの下の世代では他に並ぶ者は居ません。

それだけなら良かったのですが……。

 

「なんでクサイとか評判になってるんですか!!」

 

 そうです。断片的に漏れ出した記憶は、私を奇行に走らせていたのです。

「れんきんじつ」とかいう怪しげな「私の考えた魔術」の実験と称して、

そこらで拾った雑草【クサイ】や虫【とてもクサイ】を拾ったボロ鍋で煮て、

何とか初歩の初歩「中和剤」を作ろうとしていた残念美少女【メガネ】【クサイ】

それが昨日までの私だったわけです。

 

 ……実際クサイかもしれない。

 

 具体的に言うと、「れんきんじつなら何でも出来る!」と豪語して、

家の畑の今は使っていない物置を使わせてもらい、

自称れんきんじつの実験に精を出していたらしい。

日帰りの出来る、村の周りの草原の浅い所に潜り込んで、

それっぽいものを採取してきてボロ鍋で煮る。

 

 現状、ゲームのような数字やアイコンが見えるわけでもないが、見なくても分かる。

失敗率100%ですねこれは。

 

「少しは錬金術の経験になってるといいけど」

 

 まあ、はっきりとした記憶を利用できなかったのは仕方ない。

 

「これから、私は本当の錬金術士になる!」

 

 せいぜいバッドEDにならない程度に、

主人公のヴィオラートを助けられるように頑張りますか!

 

 まず必要なのは現状の把握だ。私の年齢が12歳で、主人公のヴィオラートの年齢が15歳。

最近は洗濯屋のアルバイトをやっているらしい。……すぐじゃん!始まるじゃん!

いや、ゲーム原作が始まるから、私も記憶が開放されたとかか?

 

 ちなみに村長の家のそばの大樹のまわりを、

一日中うろうろする濃い青っぽい黒髪と赤目の美少女がいました。

なぜか村の人は気にもしていません。これは携帯機リメイク版で、

しかも2週目以降スフィアEDありの世界ですね……。

私が前世でクリアしてるから?知らんですが。

 

 とにかく、原作ゲームのヴィオラートのアトリエでは、

ヴィオラートが15歳の時、洗濯屋でアルバイトをしていると、

旅の錬金術士「アイゼルさん」が錬金術で作った薬で服の染みをあっさり消してしまう。

 

 それに感動したヴィオラートは、村の過疎と廃村の危機にも、

「錬金術なら何とかなる!」と奮起して、ほぼ独学で錬金術を身につけて、

錬金術のお店を開店して、冒険の旅に出てボスを倒して、他の街に営業をかけて、

時にはダンジョンで参考書を見つけて、といった盛りだくさんの内容をこなし、

見事村の廃村の危機を救い、それどころかEDによっては、

村を世界一レベルの大都市にするきっかけになるという、

後世の歴史家にこれ盛られてるだろ……って突っ込まれるレベルの大活躍をする。

 

 という内容のゲームで、他に冒険者EDや先生ED、

数キャラだけだがキャラEDも用意されていて、

盛りだくさん過ぎて1週では極めきれない、イベントが渋滞して序盤自由に動けない、

リメイク版参考書が普通に利用できないその他の欠点はあるものの、

前世の私は相当な熱意を持ってやり込んだものだ。

 

 そのおかげで、ゲームの攻略・設定知識は相応にある。

どれくらいの猶予があるか分からないけど、

せめて中和剤くらいは作れるようになっておきたい。

 

 しかし、それには重大な問題があった。

 

「錬金術の調合って、具体的にどうやるんだろう?」

 

 中和剤を例に出すと、中和剤は中和剤カテゴリのアイテムを調合して作る。

これはアトリエシリーズの作品ごとに仕様が違うが、

このヴィオラートのアトリエでは井戸水やフェスト(石)やニンジン、

塩や真珠玉までの膨大な範囲が中和剤カテゴリアイテムとして利用できる。

 

 材料の他に調合で消費するのは……MPとLP?

MPはマジックポイント、LPはライフポイント……だけど、

その消費は総合して疲労度(らくらく)(がんばる)などと書かれていたはずだ。

精神力や生命力、あるいは疲労をして鍋や錬金釜でアイテムを作る方法……。

 

「まあ、ゲーム通りに1日鍋をかき回してみるかな?」

 

 森で拾ったものの内、あまり貰い手の無かった【クサイ】だの【出来が悪い+1】だの、

ダメな従属効果がついてそうなニンジンやニューズは全て私が回収したので、

材料は豊富にある。ゲームみたいに数字は見えなくても、

従属効果はフィーリングで大体理解できるのは安心できる。

ヴィオラートのアトリエで従属効果がわかるかわからないかは大違いだからね。

 

 とにかく最初は中和剤を作れるようになるのが目的だ。

これが出来ないなら錬金術士なんて名乗れない。私が納得できない。

お昼の時間も惜しんでかきこみつつ、疲れそうで精神集中も必要そうな作業を色々試して、

作り続けた結果。

 

 《中和剤》《粗悪品》

【腐りやすい+1】【見た目が貧相】【出来が悪い+1】【腐りにくい+1】【クサイ】

 

「出来たあああああああ!!!」

 

 思わず叫んでしまった私だが、それも仕方ない。

 

 こうして私は前世からの夢だった、錬金術士としての第一歩を踏み出したのだ。

 

 

 

……………………

 

 

 

さあ、錬金術士として頑張るぞ!と思い立って数ヶ月。

 

「あれ?もしかしてアトリエ主人公って天才では?」

 

 知ってた。この数ヶ月私に出来た事と言えば、

中和剤の品質をどうにか普通以上に出来るようになったことと、

長年のれんきんじつ(偽)でかき集まっていたがらくたの中から、

数だけは多かったフェスト(石)を選び出して、

どうにかこうにか乳鉢と粗悪品の研磨剤の作成に成功したこと位だ。

 

「数ヶ月でこれだけとか……」

 

 とりあえずは研磨剤の品質向上のために再度の作成に取り掛かりながら、

私は現実の厳しさに思いを寄せる。

 

 この時点では気づいていなかった。ただの研磨剤とはいえ、

参考書なしでの新アイテム作成という意味に。

 

 私がさらにゲーム開始時点までに作成できたのは、

雑草に紛れていた魔法の草と中和剤で作ったほうれんそうだけだった。

 

 そもそも前世の記憶頼りの上何でも思い出せるわけじゃないし、

今ある素材にも限りがある。だからこれは仕方ない。

出来る範囲で頑張った自分を褒めてあげたい。

 

 そう思いながら今日も目覚めて私にもたらされたのは、

思いがけない原作補完系イベントだった。

 

「村民魔法講座?」

 

 そうだった、ただの村娘だったはずのヴィオラートだが、

なぜか原作開始時点で攻撃魔法が2種類使えたのだ。

これはそれを補完する出来事……?

 

「村長さんが冒険者の魔法使いさんを雇ってくれたんだって」

 

 マジか。というか面識がろくにないのに何で、

十年来の親友みたいに尋ねて来てるんですかヴィオラートさん!?

 

「ゾネちゃんは錬金術に興味あるんだよね?」

 

「はい、そうですけど……」

 

「じゃあ、あたしと一緒に錬金術やろうよ!」

 

 はい。全くゲーム通りですねヴィオラートさん!

ゲームの仕様だが、とりあえず皆に話しかける、

家の中にも気安く入る、話しかけると好感度が上がる、

後に開店するお店で店番中に買い物をすると好感度が上がる、

好感度がカンストするとお客が差し入れと称してアイテムを持ってくる、

 

 好感度を下げるにはゴミを高く売りつけるとか、

頼まれた仕事をしないとか、わざと下げる努力がいるレベル。

一番凄かったのは鍛冶屋の釜イベントだが……これはとりあえず置いておく。

私のような闇の住人には信じられない対人能力だ。

 

「じゃあ、魔法講座が終わったら一緒に頑張ろう?」

 

 あれ、いつの間にか約束してたぞ?

恐ろしい。何が恐ろしいって、参考書も機材も共有できるしダブル錬金術士、

私に得しかないところが一番恐ろしい。

 

「よーし、頑張るぞー!」

 

 しかし時系列どうなってるのか、私がれんきんじつだの何だの言ってたから?

まあ、堂々とれんきんじつしだの何だの公言してるのがいたら、

ヴィオラートの思い付きが早まっても不思議はない……かな?

 

 本人は何も考えていないようで、

こうなればいいなーとか最初から考えてるんだろうな。まあいい。

それよりも今は魔法講座だ。

ヴィオラートが使えるようになるのは分かってるから。

問題は私がどこまで使えるようになるかだ。頑張ろう。

 

 私の思惑?そんなもの、大好きなヴィオラートのアトリエの世界に転生して、

錬金術士になる以上の目標があるのか?いやない。

 

 そして魔法講座。結果から言うと、ヴィオラートは順当に原作通りに、

グリューネブリッツ(火炎)とエンゲルスピリット(MPダメージ)

が使えるようになりました。

 

 私は……お役立ちなレジスト(属性軽減)とエンゲルスピリット。

そしてヴェクター(雷属性+マヒ)も気合いで憶えましたよ?

エンゲルスピリットは霊体だけでなく、

MPの低い動物や盗賊系などにも効果大なのです。

雑魚なら一撃です。

 

 まあ、ぷにぷにやボス敵等の「MP設定なし」の敵には、

全く効果がないのはアレですが。

 

 ……エンゲル最強!

 




今日から君も錬金術士!

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