カロッテ村のゾネさん   作:おかひじき

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大体にんじん村になる模様


3年目オークション終了、深き小妖精の森・二月湖

 

 各種相談と交渉の結果、公的な法や制度、外交方面はオイゲン村長とクラーラさんが、

商店としての実務とその他全般の相談事は酒場のオッフェンさんとユーディウスさんが、

それぞれ助言してくれることになりました。

 

 ……あれ?いつの間にか自分の人生の進路決めてませんか?私。

希望すればヴィオラートも面倒見てくれるということですが、

彼女はどう見ても現場・実践に特化しているので、

この方面は多分おそらく私がやるべき範囲でしょう。

14歳で進路が決まるとか、この世界の労働年齢はやはり若いですね。

 

 しかし、かつての私が経験した、シューカツに苦労(苦労って言うレベルじゃない)して、

何年も非正規バイトに費やして、

やっと定職に付いたと思ったら重労働過ぎて身体を壊して、

そのあげくに……みたいな目にあわなくて済むのですね!(心の闇)

 

 何せ第一歩から超有望な錬金術ショップの共同経営者、

人を雇って自分の力でお店を経営する側での社会参加ですからね。

ただ、本格的に商売をやるとなると、

錬金術と冒険の方面はどうするのか?というのが悩みどころです。

 

 出来る限り店舗は雇われ店主さんに任せて、

私が「商品開発」や「外回り営業」も出来る体制を作らないとですね。

その2つの仕事は「ヴィオラーデン・ゾンネン」の力の源泉ですから。

今後の、年単位の時間をかけての課題にしましょう。

 

 

 

………………………………

 

 

 

「ただいまー!」

 

 ヴェルンの採取地より、ヴィオラートが帰還しました。

森系の素材アイテムを大量に採取して来たようですね。

早速、留守中に考えた色々な物事を実行に移すかどうか、

ヴィオラートと相談することにしましょう。

 

「さっすがゾネちゃん!いいと思うよ!」

 

 知ってた。うん。適当っぽい言動だけど、多分勘で理解してて適切な返事してるよねこれ。

 

「だけどそろそろオークションだから、それが終わってからにする?」

 

 忘れてた。え、もう3年目の7月だっけ?7月だった!

 

「忘れん坊将軍?」

 

 スフィアちゃん!とりあえず思いついたら何か言っとくか、

で何か言わなくていいんですよ!

 

「よーし、負けないぞー!」

 

 そして何で私とヴィオラートが、

オークション落札金額で勝負することになってるんですか!いいですけど!

 

 とりあえずオークション終了までは外への探索無しで、

私とヴィオラートのダブル錬金術士体制で行きますか。

 

 ワームコンパスを駆使して色々な街の依頼をこなしながら、

私とヴィオラートそれぞれでオークション用のアイテムを作ります。

私は……そうですね、3年目となれば、相当レベルの高い錬金アイテムにしたいですね。

 

 というわけで、「時の石版」を作ることにします。

その名の通り時を止める?アイテムで、以前のアトリエシリーズでは猛威を振るったのですが、

ヴィオラートのアトリエではMP攻撃が効かない敵には通用しないので、

まずボスには通用しない微妙なアイテムとなっております。

 

 しかし錬金目標レベルは高めのレベル38となっているので、

レア度や品質、従属効果に気をつければオークションで高く売れます。

材料のコメート・塩・ロウ・中和剤も厳選して、レア度を出来るだけ高く、

従属効果も【戦闘時間を止める】【潜在能力増加+3】【出来がよい+3】

【美味しそうな香り】【マニア向け】品質は最高の5回分、

レア度も最高の星5つ、これ以上ない「時の石版」が完成しました。

これで勝ったも同然ですね。フフフ……。

 

 ヴィオラートもなにやら作成していますが、

私には見せてくれません。むむっ、これはガチだな!

でも私はおとなしく、事後の「お勉強」の前準備や酒場の依頼、

村の拡張具合の情報収集など色々こなしておきますか。

 

 酒場の依頼は、ハーフェンやメッテルブルグ等の高品質、

高レアの宝石類依頼を中心に受けていきます。

もちろん、他の割りのいい伝統ケーキやウニその他の依頼も、欠かさずに受けておきます。

 

 今の想定だと、お金がいくらあっても足りなくなりそうですからね。

 

 フィンデン王国の他の町にも依頼はあるんですけど、

多くはあちらの採取素材アイテムか、もしくは中和剤、量販登録品のソーン軟膏など、

あまり儲かるとは言えない状態であることがわかりました。

 

 とりあえず一番儲かる、メッテルブルグの依頼があるのでそれでいいですかね。

あっちの素材アイテムも溜め込んでおけるようになれば、

素材系依頼も出来るようになるんですけどね。

 

 実際倉庫が完成して使えるようになるまで何ヶ月かかりますかね。

さらにその近くに2号店をオープンするのはいつになるか。

私は別に建設知識を持っているわけでもないし、

この世界の建設事情なんてさらに分からんので、

ここは待つしかないのが歯がゆいですね。

ドンケルハイトが予想を超えて爆売れで、お金はあるんですけどね。

 

 

 

………………………………

 

 

 

 しばらく真面目に錬金術とお店の仕事をこなし、ついにオークションの日がやって来ます。

 

 これ、村にいると8月1日になってすぐ村長さんが来るんだよなぁ。

オークション早くやりたいんだろうなぁ。

 

 あ、そう言えば、3年目オークションの特殊イベント忘れてました。

まああれはヴィオラートが協力しないとお流れになるので、そっちコースになったのかな。

ヴィオラートは何を作って来たのか。楽しみですね。

 

 さて、オークションの当日。

カロッテ村チャリティーオークションは、今年で終わりが宣言されました。

まあ出品者が身内の村民だけの内輪オークションですから、ここらが潮時でしょう。

 

 しかし、今回の拡張事業で建設予定の「多目的ホール」で、

年1回の恒例オークションが開催され、村外からの出品者も受け付けるとのこと。

前々から思ってましたけど、原作よりもかなり発展してますね、この村。

 

 まあ、ゲーム原作の発展段階は数段階で頭打ち、

それ以上発展しないのがむしろゲーム特有のシステム限界だったという事かも知れませんが。

 

 村長さんの挨拶も終わり、最初の出品者はブリギットです。

何と、「郊外の別荘」を出品して来ました。

まさかの建築物の出品に皆さんヒートアップし、

気がついたら9320コールで落札されていました。ブリギット、なかなかやりますね。

 

 2番目の出品者はロードフリードさん。何となく普通に竜牙ゴマのチェスを出品し、

2890コールで落札されます。まあこんなもんでしょう。

 

 そして3番目、バルテル兄さんは3度目にして「川のヌッシー」を出品。

落札価格は4890コールとそれほどふるいませんでしたが、

ようやく兄さんがまともな物を出品してくれたというだけで感無量です。

これからも方向性を間違えずに頑張って欲しいですね。

 

 そして4番目、問題のヴィオラートの出品物は……三叉音叉でした。

もちろんレア度は最高、しっかりと【大地震を起こす】【潜在能力増加+3】

【出来がよい+3】【破壊力増加+3】【祝福された】、

高レベルの従属効果を盛りまくった極上品です。やるな、ヴィオラート。

 

 当然ながら高値がつき、見事1万コールの大台を越えて1万860コールで落札。

過去最高額です。これに勝つには……この村をニンジン村にしないためには、

私の出品物が1万3千……1万4千コール以上の値段で落札されなければいけません。

果たして私渾身の「時の石版」はそこまでの高値を引き出すことが出来るのか?

いざ、勝負です!

 

 「時の石版」の落札価格は、最終的に13886コールで終わりました。

これは最終的に、ヴィオラートの3年間の落札価格の総額を越えられたのか?

微妙な所です。

 

「発表します!」

 

 おっと、村おこしに最も貢献した者、

つまりこのオークション落札総額1位の出品者が発表されるようですね。貢献度1位は……。

 

「ゾンネンブルーメ・トロイメント!」

 

 私!

 

「やったぁ!」

 

 やった、取れました!1位ですよ1位!

 

「おめでとう!」

 

 ヴィオラートの落札合計金額が25027コールで2位、

私の落札合計金額が25735コールで1位。

結構僅差の1位だったようですね。1位が取れたならもうどうするかは決まっています。

 

「大樹は、村の……いえ、街の大樹として残しましょう!

そしてそれだけでは物足りないので、

我らカロッテ村の象徴であるにんじんを。ただ収穫するだけではない、

命繋ぐにんじんの花畑を周囲に作ろうではありませんか!」

 

 ……どうだ?大樹は切りたくない。しかし、ただ残すのではなく、

残した上でカロッテ村を象徴するような場所にしたい。

両方満たすにはこれがいいと考えてきたんだが。

 

「……素晴らしい!」

 

 お、おう!?

 

「ワシは村おこしばかりに囚われて、大切な村の心を忘れていた……」

「い、いえ、そんな大したもんじゃ……」

 

 あ、これヴィオラート1位と同じパターンだ。

オークション参加者の目の前で褒められまくった私は、

1位賞品の【潜在能力増加+3】【出来がよい+3】【高級品+2】

【珍しい+1】の極上品コメートを渡されて帰路に着き、そのまま寝た。

不思議と夢は見なかった。

 

 

 

………………………………

 

 

 

 オークションも終わり、私はまた探索の季節です。

ファスビンダー近くの「深き小妖精の森」をまだ探索していなかったので、

私が向かうことにします。ヴィオラートは、アイゼルさんの学んだ系統の知識で、

「アルコール」や「パチパチ水」等、未知のアイテム作りに挑戦するようです。

そろそろ、お互いの研究ノートとかをまとめた資料も整理しておくべきかな?

 

 まあ、それはまた後日ということで、今回の「深き小妖精の森」に行く準備をします。

まずはいつもの鉱石探し用のロッド。

ここでは「月長石」の従属効果を【潜在能力増加+3】にするために使います。

 

 そしてここ固有の問題点……ここでは、

属性に耐性のあるエルフ系の敵に遭遇する確率が非常に高いのです。

そのため、属性に関係ない全体攻撃アイテム、

出来れば【HPダメージ大】の「メテオール」が欲しいのですが、

まだそれは出来ていませんね。

何もしなければ、ヘルフェンダイスで1体ずつ削っていく戦いになりそうです。

これはいけません。

「カリヨンオルゴル」が万全の状態で残っていたらそれで良かったのですが。

 

 あれこれ代用品で繋ぐのも何なんで、

【身体にひびく曲】に【潜在能力増加+3】【破壊力増加+3】

のついた「カリヨンオルゴル」を都合3つ、

しっかりとおろしたての品質で用意しておきました。勝ったな……。

 

 準備も整って、いつもの4人、私、スフィアちゃん、パメラさん、

ローラントさんを仲間に入れた私は、ファスビンダーから「深き小妖精の森」に向かった。

しっかりとロッドを使用して森の奥へと向かう。

 

 この森は、大木のうろから地下道が伸びていて、

そこには豊富な月長石がある。そして森の奥には強敵がいる。

固定敵はいるけどボス敵はいない。そんな構造になっている。

 

 素材アイテムとしては月長石と、一般的な森系の素材の上級品、

特にジョロウグモの糸は高品質なものがある。

奥の奥にはドンケルハイトもあり、あまり品質は良くないが、

エリキシル剤の効果を引き出す「アルベリヒ(虫)」も生息する。

今回のお目当ては主にこれとジョロウグモの糸ですね。

 

 数が少ない敵にはヘルフェンダイスで、植物系モンスターにはテラフラムで、

強めのエルフ達にはカリヨンオルゴルで対処します。

 

 ……ローラントさん、期待してるとこ悪いけど、ここにはボス敵とかいないんですよ。

にくへ……前衛だけ守ってくれればいいなんて言えない……。

なんて澄んだ瞳をしてやがるんだ。

 

 テラフラムを用意したはいいけど、この森はツタやら下草やらが鬱蒼と生い茂っている上に、

地面は落ち葉が大量に折り重なっていて、炎系アイテムを使える機会が少ないですね。

 

 ここはカリヨンオルゴルやヘルフェンダイス、

氷系ブリッツスタッフやら何やらで何とかしますか。

別にテラフラムを使わなきゃいけないってわけでもないですし。

 

 下草や枝がひどいので、ローラントさんにこの間の三日月斧を渡して、

先頭に立ってもらいます。

大きな障害物は私が雷属性のブリッツスタッフで壊すから許して!

 

 様子を伺うと、むしろ張り切ってバッサバッサと道を切り開いている模様。

 

 ああうん、残り3人、見た目だけは美女、美少女、萌えキャラだからね。

なんかこう男としては任された感あるよね。わかるわかる。

張り切って騎士らしくあっていただけるのはありがたいことです。

……LP使いそうだから、何もなくても回復アイテムとかあげたほうがいいかな。これは。

 

 道なき道をゆき、敵を倒しながらきのうろの中の地下道を通り、

月長石、世界樹の葉っぱ、ジョロウグモの糸を次々と回収していく。

予想通りに大量のエルフ達に襲われたが、

何度もカリヨンオルゴルを使って殲滅したら出てこなくなった。

 

 ……ゲームと違って学習能力あるのはホント助かるわ。

リアルとなった今では、来る敵全てを打ち倒して行くなんてごめんですからね。

 

 順調に奥に進んで、そこにあるドンケルハイトやアルベリヒも確保して、

今回の探索は終わりですね。

 

 

 

………………………………

 

 

 

 案外時間がかからなかったので、ファスビンダーで一旦宿泊した後、

続いて二月湖に向かうことにします。

 

 この場所はハーフェンからそれほど遠い場所ではなく、

採れる素材アイテムもこれはってものがないので、

こういう暇を見つけてじゃないと行く理由もないですからね。

 

 二月湖はその三日月状の湖全体が温泉っていう、なかなか珍しい場所です。

ああ、温泉水なら何かに使えるかもしれないので、たるにでも入れて採取しておきますか。

モンスターがいなければものすごい観光地になってそうですけどねぇ。

 

 行って来ました。

 

 ……いや、本当に珍しい場所で、「へえ~っ!」とはなりましたけど、

他に特筆するべき所は無かったんです。ゲーム原作でもそうでしたけど、

二月湖・一角島・大砂丘は、わざわざ大きな地名がついた入り口がある割に、

特に何も無いのですよね。

 

 ひょっとして没ネタ的なイベントやら街やらがあったりしないかな、

と期待してあてもなく探索を試みた私は悪くない。多分きっと。

 

 二月湖の探索を終えた私は、珍しくこちらでは大した収穫の無いまま、

カロッテ村への帰路に着いた。

 

 




二月湖~大砂丘でイベント欲しかったけどなー俺もなー

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