カロッテ村のゾネさん   作:おかひじき

21 / 34
現実にカンストなんてありませんよ、ファンタジーやメルヘンじゃないんですから
……いや、アトリエ世界はわりとファンタジーやメルヘンではあるけど


2号店オープニング祭り!

 

 さて、数十万コールを費やして建てられた2号店ですが、

その商品棚は未だに空です。1号店よりはるかに大きいので、

商品棚を埋めて開店準備するだけでも大変ですね。

ここは久しぶりにバルテル兄さんにでも頼ってみましょうか。

 

 流石にタダではアレなので、

ぷにぷに達からいつの間にかゲットしていた「ぷにぷにの像」を用意しておきます。

 

「おーひさしぶりだな。何だ、また店番か?」

「そうですね。お店番もそうですけど、こっちの2号店の開店準備をやって欲しいんですよ」

「何?こっちか。こっちはちょっと家から離れるからな……」

 

 予想通りですね。ヴィオラートの家……バルテル兄さんの家でもあるので、

あちらのお店番はタダでやってくれていました。でも、2号店は別ですよね。

 

「なので、ロードフリードさんと同額の月200コール払います。

あと、開店準備に対する報酬として、これを……」

 

 すっと差し出される「ぷにぷにの像」

 

「お、わかってるじゃないか。そうそう、こういうのでいいんだよ」

 

 手渡ししたぷにぷにの像を懐に入れて、

運び込んだまま山積みになっているコンテナの方へ歩いていくバルテル兄さん。

これで何とか開店準備も出来そうです。

あとはクラーラさんにも店番を頼んで……私、バルテル兄さん、クラーラさんで3人、

これでまあ初回開店営業も行けるでしょう。

 

 顔を出す頻度を考えると私はオマケみたいなもんですが、

一応私の店であることをアピールするために、

最初のうちは最低限出る必要があると思うのです。

 

 新しく拡張されたこの地区で、どれだけお客さんが来てくれるのかは分かりませんが、

開店記念程度なら、あの「ヴィオラーデン・ゾンネン感謝祭」までの勢いはないですよね?

多分、きっと、絶対。

 

 

 

………………………………

 

 

 

 はい、計算違いでした!感謝祭の時より大量に人が来ました!

1号店とは品揃えも違ってるのに、なぜか両方の店舗が大忙しです!

これあきらかに、感謝祭の時より大きな流行になってますよね?

クソ忙しいのに、クソ忙しすぎて追加の店員を雇う暇が……。

 

「はぁ~い、来ちゃいましたですぅ~!お店番はご入用ですかぁ~?」

 

 シュトーラちゃん!救世主だ!

早速新しい待機列を作ってカウンターに……。

 

「今ならたった月1000コールでお店番するですの~!」

 

 ……へっ?

 

「繁忙期にはぁ~、値上げしますの~!お店番の正当な権利ですの~!」

 

 ぬっ……ぐぐっ……クソが!

全くもって正論で反論のしようがないじゃないか!

ちゃんと特別な忙しさの今だけなら払えなくはない金額を提示して来やがって。

いいよ!払ってやるよ!

 

「ありがとうですの~!」

 

 その瞬間、シュトーラちゃんはカウンターに入ると、

即座にお客さんを呼んでさばき始めた。吸い寄せられるように新しい列が形成される。

 

「こちら、竜の舌ですの~!」

「えっ?今……?」

 

待機列をさばく一方で、ウサ耳帽のたれ耳を揺らしながら、

シュトーラちゃんが在庫切れの商品補充のために外に駆けていく。

 

「質量のある残像ですの~!」

 

 カウンターでお客をさばくシュトーラちゃんが、なぜか答える。

うん、普通だな!(思考放棄)

これは正直、1000コールでも安かったのかもしれない。

何にせよ、シュトーラちゃんのおかげで作れたこの隙を見逃す手はない。

 

「ミーフィスさん!カタリーナさん!助けて!」

 

 隙を突いて、ファスビンダーからミーフィスさんとカタリーナさんを連れて来て、

事なきをえました。ようやく私が動けるようになったので、

まずは状況の確認です。酒場に行って2号店の噂を調べます。

 

「やあ、大流行じゃないか。ゾネが仕掛けたのか?」

 

 私の顔を見るなり、マスターのオッフェンさんが話しかけてきました。

 

「ああ、そうですね、特に何もしてないんですけどね……」

 

 どうやら本当に、感謝祭以上の大流行になっているようです。

理由は良く分かりませんが……今まで稼いだ営業度で知名度があるから?

 

「ヴィオラートのアトリエ」には、お店の営業度という数値があるのですが、

今ぐらいの時期になってくると営業度はカンストしてしまうのです。

現状その状態になってそうだなと思ってましたが……もしかして青天井だったり?

 

 あとは原作には存在しないフィンデン王国の街の営業度も加わって、

ゲーム内では見られなかったレベルの知名度と影響力を持ってしまっているのでは?

何となく、この推測が当たってるような気がしますね。

 

 そんな影響力を持ったお店、世界一のフラワーショップの。

「ヴィオラーデン・ゾンネン」が錬金系アイテムをメインに素材系にも手を出して、

大型の2号店をオープンします!まあ、これは大流行になってもおかしくないですね。

 

 これから何かをやる時は、小さな個人商店のイメージじゃなくて、

ガチで有名ブランドショップみたいな心構えで行くべきなのかもしれない。

原作ヴィオラートが旅立った理由、こういうのもあるのかもしれないな。

お店の規模に比べて営業を頑張りすぎちゃった結果、というか。

まあ私は自重する気はないんだけどな!

 

 とりあえず、なぜこんなことになったのか何となく理解出来た所で、

ヴィオラートのいる1号店の方に足を向けてみましょう。

 

 こちらは既にフラワーショップという評判を不動のものとしているし、

人員もユーディウスさんにロードフリードさん、

ブリギットとヴィオラートが協力して店を切り盛りしています。

流行の影響があるのか、4人フル稼働ではありますが、

一時期の2号店のような抜け出すのも難しい忙しさではないようです。

 

 

 

………………………………

 

 

 

 何とか時間が出来てひと安心した私は、ようやくと言っていいのか、

「エリキシル剤」の【全状態異常の回復】と、【肺の病気を治す】

効果のものの作成に入ります。

 

 1つで5日、2つで10日。材料込みだともっとかかるので、

今まで時間が取れなかったんですよね。

出来れば両方作って登録しておきたいですし。

 

 これをどこに登録するか……は作った後で考えるとして、

出来れば【範囲を広く+3】の効果をくっつけておきたい所ですね。

それに必要な、従属効果のないネクタルは……確か買い置きがあったはずだけど……。

あった。錬金ハウスのなけなしのスペースにこっそり置かれた、

無従属のネクタルが2つ。しっかりと熟成されて、極上品に変化しています。

これはナナちゃんのお店で買ったものですね。

 

 これを使って……材料のアルベリヒを変えて、2種類のアイテム効果を出していきます。

 

 予想外に時間がかかり、

半月ぐらいの期間を経てようやく2種類のエリキシル剤が完成しました。

 

 【全状態異常の回復】効果の方は属性値の関係で、

【潜在能力低下+1】効果が付いてしまったのが残念ですが、

【肺の病気を治す】の効果の方は、

首尾よく【範囲を広く+3】をつけることに成功しました。

HPMPLP回復超の効果を味方全体に拡大する神アイテムの誕生です。

 

 そして、この【肺の病気を治す】効果。そうです、

格闘系病弱っ娘(?)のブリギットさんの持病をピンポイントで治す薬です。

 

 本来はこれを目的としてヴェストリヒナーベルに行ってエアトシャッターを倒し、

そこで手に入れた参考書から作り方を知ったエリキシル剤を作るため、

珍しい材料のアルベリヒを探して深き小妖精の森かヴェストリヒナーベルを探索し、

やっとの思いで作った特効薬でさしものブリギットもデレてしまう……という、

一連イベントを成立させるためのアイテムなのです。

 

 しかし、そこに罠があります。

これをやってしまうと、かなりの確率でブリギットエンドに向かってしまい、

村がブリギットの家のジーエルン家の援助で存続し、

名前が「ジーエルン村」になるのです。

元々大きな外来の1つの家が村を救って主導権を持つ……。

 

 それは、正直今の私の未来図とは違う。私は考えました。

ブリギットを救う、私達の村は私達の村、両立させるには。

『あれ?私また何かやっちゃいましたか?』作戦です!

 

 イベントで使われるエリキシル剤ですが、普通に商品として置いても高く売れます。

ブリギットも含めて、普通に買って行きます。

【肺の病気を治す】以外でも、エリキシル剤通常効果のHPMPLP回復超が強力ですから。

そう、しばらく大量の【肺の病気を治す】エリキシル剤を普通に並べておけば、

ブリギットの病気はいつの間にか治っているのです!

 

 ゲームではちゃんとイベントを経る必要がありますけど、リアルですから。

継続的に薬を使い続ければ治る。そして私はこう言うのです。

『あれ?私また何かやっちゃいましたか?』と。

 

 エリキシル剤は、【肺の病気を治す】【全状態異常の回復】

双方をアルテノルト量販店に登録します。

ここの登録枠がいっぱいになったので、以前登録した適当なエリキシル剤は消去。

琥珀湯をファスビンダー量販店に移動、

代わりにチーズケーキをプロスタークの食品系量販店に移動します。

 

 ここらへん、量販店の制度の違いが響いてますね。

万能で便利なこちら側、カナーラント王国の量販店に比べて、

フィンデン王国の量販店はアイテムの系統が決まっている。

 

 どこかで聞けた、お店を開く資格云々の話が関係してるんですかね、

こちら側、カナーラント王国ではお店を開くハードルが低い感じです、

まあ、それに関して私が出来ることはないので、

今の状態で利用するしかないんですが。

 

 多分一番の問題は、メッテルブルグにあった薬・爆弾・食品、

計3つの量販店が使えないことです。

 

 そのせいで、あちらで利用出来る量販店が食品系に偏ってしまっています。

食料品……食料品ねぇ。正直そんなに大量に登録するものはないんですよね。

 

 いっそ同じアイテムの別効果のものを多重登録するとか?

錬金術や冒険用ではなく、販売用と割り切って、

形違いや香り違い、従属効果で言うと【変な形】や【美味しそうな香り】

等々をつけたアイテムの登録も考えるべきですかね。とりあえず、

空いているフィンデン王国側の食料品系量販店のアイテム登録枠を使って……。

 

 ん?何か忘れてるような……そういう使い方に都合がいい、

フィンデン王国の食料品系量販店で……あっ!

 

「レヘルンクリーム!」

 

 そうです、「ユーディーのアトリエ」の時は、

メッテルブルグ食料品系量販店の基本アイテムとして売られていたレヘルンクリーム。

「ヴィオラートのアトリエ」ではそのお店が閉店していたためか、

作ることは出来なくなっていました。

 

 しかし、今は私がいます。街が封鎖状態の中でも普通に営業している雑貨屋、

そこの在庫にあった参考書をしっかりと見つけ出して、

レヘルンクリームが作れる状態になっているのです!

 

 レヘルン(アイス)クリームは、

私の過去の記憶でも専門店や自販機が出来るほどの売れ筋商品。

色、材料、香りを変えて多くのレパートリーを用意し、従属効果を駆使して、

「劣化しない」レヘルンクリームという夢の商品を提供出来れば……フフフ。

 

 これは私の時代……来ちゃったかな?

まあ、今日の所はお店もそろそろ心配だし、一旦戻るとしましょう。

錬金術の調合だけしていると、新しいお店が私のお店っていう感じになりませんからね。

 

 他人のお店で雇われて働くってのはただの労働ですけど、

自分のお店で何をやるか自分で決めて好きな時に好きなだけ働く、

ってのは頑張った自分へのご褒美なんですよ!

 

「わかる?この楽しみ」

「ゾネさんは……うん、ゾネさんのままが一番いいと思う」

 

 何ですか、その暖かい目は。全くスフィアちゃんは、働き過ぎて心と身体を壊して、

感覚が狂ったどれ……働き過ぎの人を見る介護の人みたいな目をして。

 

 イベントで強制ボランティア、中型免許あるから中型トラックで荷運び、

災害時は災害対応のために「いつもより早く出勤」……はい回想ここまで!

 

 既に雷属性のスーパー錬金術士美少女店主となった今の私に隙はない!

趣味の錬金術と冒険とお店経営だけで生活してやる!

お仕事にくれてやる時間は1秒たりとも存在しないぞ!

 

「それは仕事……」

「趣味です!」

「それに同時に3つも……」

「趣味は別腹!」

 

 ……冷静になって考えるとやばいような気もしてきた。

私的には趣味で心では何一つストレスを感じずにむしろ楽しんでいるとはいえ、

この身体はまだ15歳。……15歳!?いつの間に……。

あっちでは高校生になる年齢と思えば、全力で働いても行けるのでは?

 

 うーん。まあ無理をすることもないか。

でも、休むって言っても純粋な遊びってのが少ないんだよなぁ。

 

 そう、今の世界で遊びと言ったら、

どうしてもいかがわしい飲む・打つ・買うのイメージが付きまとう。

例によって紙や本が高い、電化製品がない、

外はモンスター+盗賊っていう人外魔境なのでアウトドア系が楽しめない、

などの理由はあるけど、

理由があれば遊びがないって状況に満足出来るわけでもないんですよね。

 

 折角「キワモノ村」の方向で発展したなら、それも何とかしたいです。

しかし現状では、せいぜいヘルフェンダイスとトラウアタロットを量販登録して、

それをお店で売っている位の抵抗に終わっています。

 

 ダイスと紙があるならTRPGとか考えたのですが、

そもそも今の文化レベルで普通の人がロールプレイを遊びとして出来るのか?

っていう不安があるんですよね。ロールプレイ上の演技が演技で済まなくなる気がする。

 

 そんな、とりとめのない新商品の構想を考えながら、2号店に向かいます。

いつものように、スフィアちゃんは時折突っ込みを入れながら私について来ます。

何が楽しいんですかね……。

 

 




ヒマが出来ると自分で仕事を増やす自爆系スーパー錬金術士美少女店主

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。