さすがにそれはどうかと思って……
村に帰った私は、
とりあえずまたヴィオラートと共同して依頼をこなし、
資金と経験値稼ぎに精を出した。
そうこうしているうちに、クラーラさんが家庭菜園の話を持ってくる。
彼女は村長の孫娘で18歳、ヴィオラートの3つ上で、
あわれ村おこしの景品のような扱いを受けている。
お決まりの、女主人公が一番になって無かったことになる展開なので、
ゲーム的にはそれほど悲壮感はない。
いま現実となっている本人にはたまったものではないだろうが。
で、家庭菜園の話になるが、私は結構ゲームでは活用する派だった。
1回世話するだけで最長60日で作物が育つ不思議農園だったけど、
それが今実際どうなってるのか興味がある。
「よーし、家の2階に作っちゃおー!」
「流石に2階はどうかと……」
家の2階に作る!と言い出すヴィオラートに冷静に突っ込んで、
ゲームには無かったが今現実に過疎の村に溢れかえっている廃屋、
その廃屋の一つを、村長さんに頼んで錬金術施設として借り受ける。
今までちゃんと依頼をこなしてきたのが良かったのか、
何と無料で借り受けることに成功してしまった。
引越しする時に、輸送の負担と当座の資金の足しにするために、
家と土地だけでなく家財ごと村に売りたいという方が結構いて、
村所有の廃屋は有り余っているらしい。
村長さんの家のメイドさんやクラーラさんが、
たまに掃除して最低限様子を見ているようだが、
一つでも負担が減るのは大歓迎だとか何とか。
……本当に切羽詰ってるんだなって。はい。お金に余裕が出来たら、
正式な錬金施設として大金で買い取る形で恩返ししよう、うん。
で、家庭菜園の実装には、それに掛かりきりになって丸8日かかる。
ヴィオラート1人で2階に大量の土を運びこんだとすれば妥当か?
資金を使って人を雇えば短縮できるかな?
ゲームと違って専用の施設を借りた分、大きくするのもありか。
そうなると……ああ、いましたね。ちょうどいい人が。
そう、バルテル兄さんです。
「おいおい、今度は土遊びか?いくら俺でもこれは……」
渋る兄さん。まあ、そうですよね。
しかし、この間のバイキングの剣の話を持ち出しました。
あれ結構高いんですよ?基本価格で1500コールです。
そしてそれだけでは何なので、追加報酬として、
私はカロッテ遺跡で手に入れた「はたき」を取り出しました。
「加えて、協力していただけたら今回これを進呈します。
クラーラさんに贈れば、話すきっかけ位にはなるんじゃないですか?」
「おいおい、俺を誰だと思ってんだ?村のためならいくらでも協力しようじゃないか」
わかりやすいですねぇ。
クラーラさんは確かはたきをバシバシ使ってすぐ折るって話がありましたから、
実際喜ぶとは思います。はい。
ちょっと張り切ったバルテル兄さんのおかげで、
家庭菜園は原作を超える10個のタネを植えられる大きさとなり、
工期は5日で終わりました。兄さんお疲れ様です。
補助作業に加えて掃除や整頓作業は私がやったので、私も疲れました。
とりあえず遺跡で手に入れた「四季の植物」に載っていた、
「何かのタネ」を作って、まいてみますかね。
早速「何かのタネ」を作るのだが、これは「属性値」が重要である。
アイテムの中には、属性値でアイテムの効果自体が変わるものがあるが、
「何かのタネ」は何と10種類に分かれてしまう。
タネなので、何のタネであるかが変わるだけだが、
属性値が高いほど珍しいものになっていくのが特徴である。
プレイスタイルによっては全く使わないこともあるようだが、
私はかなり活用していた記憶がある。
今ある素材アイテムの中では、ぷにぷに玉が一番属性値が高いかな?
しかしそれほどの数はないから、とりあえず3つほど種にしてみるか。
1日ひとつで、合計3日。しましま模様のタネが出来た。
これは蓮花のタネだったかな?悪くない。まいておこう。
ちなみに借りた廃屋に悪くない大鍋があったので、
現在ヴィオラートと平行作業で別のものを作れるようになっていた。
半分壊れたようなのばかりだけど錬金器具として使えそうな物も結構あるし、
それを騙し騙し使いつつ私はここをメインに使って、
ヴィオラートの方は現在、依頼をメインに新規アイテム作成という、
アトリエシリーズの王道を助言してやってもらおうと考えている。
そうこうしているうちに、酒場のオッフェンさんが新しい街、
ハーフェンについて教えてくれたのだ。だがしかし、
新しい街の情報が出たら即行けばいいという話でもない。
なんせハーフェンに普通に行くと、往復で1ヶ月弱かかってしまうのだ。
一大旅行である。まず必要になるのは、
例によって量販店に登録するためのアイテム。
幸いにして、最近ヴィオラートがアイゼルさんから、
新しい参考書である「シグザール見聞録」を頂いたので、
水中呼吸が出来る重要アイテム、エアドロップを作れた。
そしてヴィオラートが作っていた貴族のたしなみ(LPダメージ)、
解毒剤。エアドロップはファスビンダーで登録し、使いやすくする。
そしてファスビンダーの登録品のうち、
ロウと琥珀湯はハーフェンでも登録しておく。
そして研磨剤は、一旦消してハーフェンで作成し、新規登録する。
ハーフェンには良質で出来がよい+1がついたフェストが売っていて、
それで研磨剤を作ると極上品・出来がよい+1の研磨剤になるのだ。
記憶の有効活用!
…………………
そろそろ準備が整ったかな?と思ったちょうどその時。ついに、
オッフェンさんから、お店を開いてもやっていけるかもしれないな、
という評価をいただきました。開店!ヴィオラーデン開店ですよ!
ヴィオラートの家が、一部店舗に改装されていきます。
え?あれ?これは看板の設計図ですか?何ですかこのSの字は?
Sonnen……ゾンネン?正式名称ヴィオラーデン・ゾンネン?
え?2人の名前を入れようと思ったけどちょっと長いかなって?
んもーヴィオラートさん!めちゃくちゃいいじゃないですか!
本物のブランド名みたいでちょうかっこいいです!
これで行きましょう!やだーもー有名になっちゃうわーもー!
その日は開店準備に大わらわでした。
最初にどんな商品を並べるかでヴィオラートはお悩みでしたが、
とりあえず錬金アイテムの余りを並べつつ、
穴埋めには量が作れる中和剤を置くといいと言っておきました。
実際最初の最初は本当にこれで十分ですからね。
2人いるので、店番と錬金調合を両立できるのが強みです。
前世のコンビニバイト経験が火を噴くぜ!
基地外クレーマーとの死闘、アホ店長の無茶振り、
何とかして酒や煙草を買おうとするクソガキからの防衛術……。
うっ頭が……。はい止め、この話止め!
最初は自分で店番しないと、店番雇用できる人が増えないので、
どうしても最初は自分で店番した方がいいです。
物々交換系のお客が結構いて、
それ系の客は好感度を上げないと良い交換品を出してくれない、
という事情もあります。
まあ、ちょっと落ち着いたらすぐハーフェンに行くので、
お兄さんかクラーラさんあたりに店番を頼むのですが。
特に最初はお店での利益は期待せずに、
まずお店を休みなしで営業すること、商品を隙間無く並べること、
値引き要求は常に最大の半額で答えることは指示しておきます。
しばらくあと、ハーフェンに行って帰った後のタイミングあたりで、
最後まで使える主力商品を作るので、儲けるのはそこからです。
…………………
さあ、お店をクラーラさんに頼んで、いざハーフェンへ!
ちょっと冒険(穏当な表現)するので、
私・ヴィオラート・ロードフリードさん・アイゼルさんの、
カロッテ村ガチメンバーで行かせていただきます。
実はブリギットも雇えるようになっているのですが、その……。
病弱っ娘(ガチ)を月単位で冒険の旅に連れ出すのはちょっと。
ゲームじゃないのですのことよ!?
かなり後半ですが、治療が終わってからになるでしょうね。
あとお兄さんは結局クラーラさんと一緒にお店番をやってもらうことに。
ワンオペは禁止、禁止です!(魂の叫び)
村の西の山を迂回して、ファスビンダー経由で北回りでハーフェンへ。
ファスビンダー量販店で、研磨剤の代わりにエアドロップを登録する。
不足してるものも補充しておこうか。
道中の盗賊やら怪物やらは危なげなく撃退。
後衛火力がアイテム回復も兼ねるのはやはり強いです。
ハーフェンについた我々は、
さっそくゲーム原作でもあったイベントの洗礼を受けた。
かつてこの国にいた錬金術士は、
遺跡に侵入して爆弾で遺跡を破壊した爆弾魔だったという。
ヴィオラートが錬金術士と名乗ると、
ヴィオラートと何故か私が爆弾魔扱いされました。
何故みんなで私を見てしまったのですかね?(すっとぼけ)
実際爆弾であるフラムとクラフトを持っていたので、
誤解が解けるまで時間がかかりました。
後でばれるのもどうかと思うので、バラすしかなかったのですが。
私達を爆弾魔扱いした竜騎士隊のローラントさんは、
お詫びにというか何というか護衛として力を貸すと言ってくれました。
まあこれは、ローラントさんの事情もあるのですが。
人数に制限とかないので、力を借りるのもいいかもしれませんね。
首都で騎士にならずに村に戻ってしまったロードフリードさんと、
ちょっと微妙な空気になったりもしたのですが……。
とりあえず連絡手段を聞いて、例によって酒場兼宿屋に向かいます。
宿を確保した後、最初に向かうのはやはり量販店ですね。
登録用に持って来たアイテムを登録、日程調整も抜かりありません。
そして今までの稼ぎを開放する時!
雑貨屋で参考書や機材、アイテムを買いつくします!
特に重要なのは妖精の腕輪(粗悪品)。
これがあれば、迂回せずに山を突っ切って村に戻る道が開けます。
大量の参考書や機材で、新しいアイテム作成の道も一気に開けました。
武器屋をチラ見して、武器の修理だけ頼んでおきます。安いです。
ここでヴィオラートに参考書やアイテムを渡して、
参考書を先に読むのと荷造りを頼み、
その間に酒場で簡易調合を行います。
例の良質フェスト【出来がよい+1】を使った、
極上品研磨剤【出来がよい+1】の作成登録。
ここで1日経過するので条件を満たします。
武器屋というか鍛冶屋のダスティンに出会って1日以上経過し、
ヴィオラートの錬金レベルが一定以上あると、
「釜の設計図」イベントが起こります。
何と、会うのが2回目のヴィオラートに対して、
ダスティンが釜の設計図を描いてくれるのです!
いや、鎧か服系防具でも買おうと言ってヴィオラートを連れて来て、
実際にその光景を見ると……アレですね。
ヴィオラート先輩マジぱねぇっすね!
まあ、実際助かるのは確かなので、これはこれで良しとします。
とりあえずもう一日、今度は完全休養として一日経過させ、
狙い通りに量販店に並んだアイテムを買い込みつつ、
戦力として新たにローラントさんを雇用して、
ゲームでは最適でもリアルとなれば無謀な冒険に、
みんなを誘いました。
「失意の森を越えて、山も越えてカロッテ村に向かいましょう!」
……うん、かなり頭おかしい事言ってるぞ、私。
戦闘で爆弾を投げるのは爆弾魔じゃないんですか……?(直球)