バカとテストと召喚獣 狂気の努力家   作:24601

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幕が上がるのは愚者の望む喜劇か、狂信者の望む惨劇か

ー数日後ー

 

「失礼する、Fクラス代表の坂本だ」

 

Aクラスの朝のホームルームが終わり、生徒達が始業に向けて準備をしている最中に教室の戸を乱暴に開ける者が一人。

 

威嚇をするかのような鋭い眼光、八重歯を覗かせる不敵な笑みは雄二自身の自信を表しているかのようだ。

 

その背後には明久、秀吉、瑞希、康太らFクラスの主戦力が控えており、不安と期待が入交じったような面持ちである。

 

『んだよ、朝からうるせーな』

 

『え?Fクラス?まさか・・・』

 

『まあBクラスがやられたからこうなるわな』

 

Aクラスはというと訝しげな顔をする者、落ち着いている者、納得げに頷く者などがおり、反応は様々である。

 

しかし入り口付近に集まるということだけは二人を除いて共通していた。

 

「(ついに来たわね)何?話は代表に代わってアタシが聞くわ」

 

優子はAクラスの人だかりの中から一歩進み出て雄二達と対峙する。

 

Fクラスの来訪に対しては秀吉とのやり取りやFクラスの動向から予想はついていたようでさほど動揺した様子はない。

 

「ああ、秀吉の姉か。まあ良い」

 

「それで用件は?・・・・・Aクラスとの戦争?」

 

「察してくれているなら話が早い。俺達FクラスはAクラスに宣戦布告する。ただし、一騎討ちで、だ」

 

「一騎討ち?」

 

「ああ。Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎討ちを申し込む」

 

「何が狙いなの?」

 

「もちろん俺達Fクラスの勝利が狙いだ」

 

自信たっぷらりに言い切る雄二。

 

「面倒な試召戦争を手軽に終わらせることができるのはありがたいけど、だからといってわざわざリスクを冒す必要もないわ。そちらに勝算があるから持ち掛けて来たんでしょ?アタシ達は戦争を断る権利はないけど、形式まで束縛されることはないわ」

 

「賢明だな。でも良いのか?俺達の要求を受け入れなかったらどこぞの変態が攻めて来るかもしれないぞ?」

 

「どこぞの変態って、Bクラスの?」

 

苦い顔をする優子。

 

「ああ。あの変態率いるBクラスだ。幸い宣戦布告されていないようだが、さてさて。どうなることやら」

 

「でも、BクラスはFクラスと戦争したから、三ヶ月の準備期間を取らない限り試召戦争はできないはずよね?」

 

「知っているだろ?実情はどうあれ、対外的にはあの戦争は『和平交渉にて終結』ってなっていることを。規約的には何の問題もない。・・・Bクラスだけじゃなくて、Dクラスもな」

 

「・・・悪いけど、脅迫のつもりなんだろうけど脅迫になっていないわ。BクラスとDクラスは戦争で点数を消費したばかりだし、負けた後じゃあ士気も低いでしょうね。

それに無闇に背中を向けたらCクラスとEクラスに隙を突かれるだけ。そしてFクラスとの取り決めにAクラス進攻が含まれているとは限らないわ。とにかくあなた達の要求に応じる必要はないの」

 

「そうきたか。それなら仕方ない、俺達は少し騒がせてもらうぞ」

 

「騒ぐって、何を?」

 

「Bクラスとの戦争の時、変態がウチのクラスの姫路の大事な手紙を盾に脅してな。戦争の後、奴が言うには手紙をとあるAクラスの生徒から受け取ったって白状しやがった。これは聞き捨てならないよな?そいつは手紙を盗んだ可能性がある。このことを触れ回ればAクラスの評判も地に落ちーー」

 

 

 

 

 

「何やら騒がしいですね」

 

Aクラスの人だかりの後方からの一声が話を遮る。

 

「すみませんが、通していただけますか?」

 

そして声の主はそのまま人だかりを掻き分け前に進み出る。

 

「静かにしていただけませんか?録に勉強もできやしない」

 

「丁度良い、今お前のことを話していたところだ、松永正久」

 

『え?松永が?』

 

『アイツが盗みを!?』

 

Aクラスの生徒達は動揺する。

 

「こちらが言う前に出てきたってことは自覚があるーー」

 

「秀吉!」

 

正久は雄二を無視してその後ろにいる秀吉に目を向ける。

 

突然呼ばれて驚いたのか秀吉の肩が跳ね上がる。

 

「な、なんじゃ、正久」

 

「久しぶりですね、といってもほんの一ヶ月ぶりですが。どうですか、演劇の方は?」

 

「わ、ワシら二年生が中心となるべく頑張っておるのじゃ」

 

「それは結構。頑張ってください、応援していますからね」

 

秀吉の返答に満足げに頷く。

 

「おい松永、無視するんじゃーー」

 

「全く、他のFクラスの怠け者共は秀吉のように

努力するということを見習ってほしいものですね。爪の垢を煎じて飲んでもらいたい」

 

「てめぇーー」

 

雄二に構わず続ける正久。

 

「いやぁ、それにしてもFクラスの代表とはどのような人物なのでしょうね?消火器を緊急時でもないのに、そしてあろうことか人に向けて使用したり、スプリンクラーや窓ガラスを破壊したりなど戦争の名のもとに好き放題やる愚か者達の親玉ですからきっと、きっと録でもない輩なのでしょうな」

 

「いい加減にしやがれ!」

 

苛立ちが頂点に達したのか正久の胸ぐらを乱暴に掴む雄二。

 

「ち、ちょっと雄二!喧嘩をしに来たんじゃないだろ!?」

 

「お、落ち着くのじゃ雄二!!」

 

「(こくこく)」

 

雄二を慌てて引き剥がす明久達。

 

「ちっ!」

 

「おぉ、これは失礼。あなたがFクラスの代表でしたか」

 

正久は襟元を正しながら涼しい顔で言ってのける。

 

「それにしても流石はFクラス。すぐに暴力を振るおうとするとは。見習いたくないものです」

 

「・・・お前が言うかよ」

 

「どういう意味でしょうか?」

 

「昨日思い出した。中学三年の初め頃、他校で何人も病院送りにした生徒がいるって噂になっていたことをな。・・・それ、お前のことだろ?松永」

 

雄二の言葉に再びざわめきが広がる。

 

「・・・その一件はこちらの正当防衛で決着しています。あなた方と一緒にしないでいただきたい」

 

少し間をおいて正久は答える。

 

「ところで先ほど、何やら騒ぐと言っていましたが何でしょうか?」

 

「とぼけやがって。根本が全部白状したんだよ、お前から姫路の手紙を受け取ったってな」

 

「ああ、その件ですか。俺は事前にそれらしき物を見つけたら姫路さんに届けると約束していたものでしてね。そうでしたよね、姫路さん?」

 

「は、はい。確かにそうです。」

 

「姫路さんと別れた後にそれを拾ったんですよ。しかし、しかしそこで急用を思い出しましてね。書店に問題集の取り置きを頼んでいたことを。期限はその日まで、しかもその店は個人の商店ですから閉店が早い。やむを得ず近くにいた根本君に俺の代わりに姫路さんに返すようにお願いしたのですが・・・・残念ながら根本君は悪用してしまったようですね。いやはや、実に残念です」

 

「嘘をつくなよ」

 

今度は明久が正久を睨む。

 

「君は態と根本君に渡したんだろ!?戦争で姫路さんが動けないようにすることでFクラスを負けさせるために!」

 

「それは推論でしょう?俺はそんな卑怯な真似はしませんよ。それに、こちらには証拠があるんですよ」

 

「し、証拠だって?」

 

「ええ。こちらです」

 

正久はポケットからある物を取り出して見せる。

 

「俺のボイスレコーダーです。怠惰なあなた方には高度なことで分からないでしょうがこれは反復学習にうってつけでしてね。繰り返しやることで効率的に学習できるんです」

 

「失礼な!反復横跳びぐらい分かるよ!」

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

「あれ?何で皆黙るの?」

 

「・・・とにかく、論より証拠です」

 

正久は仕切り直しと言わんばかりにボイスレコーダーを再生する。

 

 

 

 

『失礼、根本君、お時間よろしいでしょうか?』

 

『あ?・・・・・・松永、だったか?何だよ、こっちは忙しいんだが』

 

『確かに、確かにお忙しいでしょうな。Fクラスに宣戦布告されたのですから。とにかくお時間はとらせませんので』

 

『で、何の用なんだ?』

 

『いえ、根本君に頼みがありましてね』

 

『頼み?』

 

『これを見ていただきたい』

 

『これは・・・姫路瑞希のラブレターか何かか?』

 

『さあ?俺には内容は分かりませんが、本人にとってはとても大事な物でしょうな。拾う前にお会いしましたが困惑している様子でしたからとても、とても困っていることでしょう』

 

『・・・で?俺にどうしろって?』

 

『困っているであろう姫路さんに一刻も早く届けたいのですがね、急用ができてしまいましてこれからすぐに帰宅しなければならないのです。誰かに頼もうにも近くには根本君しかいなかったものですから。どうか、どうか俺の代わりに彼女に届けていただけませんか?』

 

『ああ、それなら喜んで引き受けよう。姫路の奴も困っているだろうからな』

 

『それでは頼みましたよ。戦争、頑張ってくださいね。Bクラスが勝たねばAクラスまで飛び火するやもしれませんので』

 

 

 

 

「以上です。いやぁ、いけませんね。よくやらかしてしまうのですよ、録音ボタンを入れたままにしておくのを。幸いにも今回は俺の無実を証明する手助けになりますがね」

 

「ま、待ってよ、捏造かもしれないだろ!?」

 

「・・・・・知識があればできないこともない」

 

明久の言葉に康太が頷く。

 

「では、捏造と言うならそれを証明できますか?」

 

「それは・・・」

 

「根本君が俺の善意を悪用して勝手に独断で行動した、これが真実です。したがって俺に非はありません。姫路さんを追い詰めたのでしたか?関知しておりませんので」

 

「ち、違う!君は分かっていたはずだ!根本君に渡せばどうなるかってことぐらい!」

 

「それも証明できますか?ま、悪魔の証明みたいなものですが」

 

「!!?・・・このっ!!」

 

身の潔白を主張し悪びれる様子もない正久に明久は掴みかかろうとする。

 

「待つのじゃ、明久」

 

「秀吉!?」

 

が、それを秀吉が静止する。

 

「正久に何を言っても無駄じゃ。反証できない以上、筋が通っているのはむこうじゃ。認めさせたいなら・・・ワシらが勝つしかあるまい」

 

「・・・・・戦争、ですか。残念です、秀吉。いくら秀吉といえど、クズ共に与するのなら、仕方がありません。あなたの演劇に対する情熱と努力は評価しなければなりませんが、今回は他の連中と同じで勉強に対する努力を怠る者とみなさなければなりません」

 

「う、うむ・・・・仕方が・・・・ないのじゃ」

 

悲しげに俯く秀吉。

 

「・・・・それじゃあAクラスとFクラスの戦争は通常通りーー」

 

「・・・雄二の提案を受けてもいい」

 

弟と正久を見ながら優子が交渉に戻ろうとした時、一人の少女が割って入る。

 

「あれ?代表?」

 

「その代わり、条件がある」

 

割って入ったのはAクラス代表の翔子。

 

一連のやり取りを後ろで見ていたようである。

 

「条件だと?」

 

「・・・負けた方は何でも一つ言うことを聞く」

 

翔子は雄二を見つめながら言う。

 

「待って、霧島さん」

 

「・・・何?」

 

明久が話しかける。

 

「Fクラスが勝ったら松永君が姫路さんに謝るってことも加えてくれないかな?」

 

「謝る?俺が?詫びる非も無いのにですか?・・・・じゃあこうしましょう。負けた方は二つ何でも言うことを聞く。そのうちの一つはAクラスが勝った時は俺が決め、Fクラスが勝った時は・・・・すみません、あなた、誰でしたっけ?」

 

「よ、吉井明久だよ」

 

「ああ、そうですか。Fクラスが勝った時は観察処分者が決める、ということでどうでしょうか?」

 

「知っているんじゃないか!」

 

ちくしょう、と憤慨する明久。

 

「ちょっと正久、勝手にーー」

 

「こっちはそれで構わない」

 

「・・・構わない」

 

優子が止めようとするも両首脳がそれを承諾する。

 

「じ、じゃあこうしましょう?勝負は五回、内容は五つの内三つそっちに決めさせてあげる」

 

「分かった、交渉成立だな」

 

「・・・勝負はいつ?」

 

「そうだな。十時からでいいか?」

 

「・・・分かった」

 

 

 

 

 

こうしてAクラスとFクラスの戦争の幕は上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・松永」

 

「何ですか?」

 

「・・・雄二は録でなしなんかじゃない」

 

「それはあなたの主観ですよ。客観的に見れば彼は録でなしですよ」

 

「・・・その言葉は自分にも返ってくると思うべき」

 

「これは、これは手厳しい」

 

「・・・もう悪口は言わないで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧島さんは何であんな愚者の肩を持ちたがるのでしょうかねぇ。この状態が続くのなら、あるいは・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クーデター、いえ、革命も吝かではありませんな」

 

 

 

 

 

 

正久の呟きは誰にも聞こえはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『僕は悪くない』と言わんばかりの正久君。



いよいよ開幕です。

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