「ねぇ、正久」
雄二らFクラスが一旦教室へと帰り、Aクラスの生徒達が来る一騎討ちへの準備やそれに関する話に花を咲かせようとしている中、優子は正久を呼び止める。
「何でしょう、優子さん」
「・・・さっきの話は本当なの?」
「・・・・ああ、姫路さんの手紙に関する件ですか?事実ですよ、俺が根本君に依頼したのは」
「・・・・何でそんなことしたの?」
優子は声を震わせる。
「何で、と言われても、先ほどFクラスの連中に話した通りですよ。急用が入って・・・・ ほら、俺の机の上に問題集が置いてあるでしょう?あれは最近発売されたものでしてね」
正久は自身のシステムデスクの上に置いてある『難関大学突破レベル 数学難問集』を指差す。
「姫路さんの手紙らしきものを拾った直後でした。あれを書店でずいぶん前に予約していたのですがね、恥ずかしながら忘れてしまっていたのですよ。で、それを思い出して引き取りに行こうと思った次第でして。いてもたってもいられず、やむを得ず近くにいた根本君にお願いしたんですよ。彼は俺の頼みを快諾してくださったのですがね、その結果、彼が悪用してしまいました。その点は非常に、非常に残念に思います」
「それは都合が良すぎないかい?」
正久の背後から利光が怪訝に言う。
「偶然姫路さんの手紙を拾って、偶然用事を思い出して、偶然根本君が近くにいたから届けるように頼んで、偶然根本君が戦争で悪用した。・・・・偶然が多すぎないかい?」
「偶然と言われましても、それが事実ですよ」
「吉井君が言っていたように、君は知っていたはずだ。姫路さんの手紙を根本君に渡せばどうなるかということを」
「先のことなんて分かるわけないじゃないですか」
正久が鼻で笑う。
「初日に君はFクラスがDクラスに宣戦布告したのを聞いて憤っていたじゃないか。君がFクラスを良く思ってないのは明白だろ?だから姫路さんを根本君に脅させることで彼女が参戦できないようにしてFクラスがBクラスに負けるように画策したんだ。現に君は根本君にも言っていただろ、Bクラスが勝たないとAクラスまで飛び火する、ってね」
「それは状況証拠というやつですか?お粗末ですねぇ。何一つ証明していない。それにBクラスに勝って欲しいというのは社交辞令みたいなものですよ。まあ、よく考えてみてください。Fクラスは戦争にて消火器やスプリンクラーなどの防災設備及び窓ガラスの破壊、戦争の弊害として他クラスは自習となって授業が進まない。以上のように迷惑極まりないFクラスが負けて欲しいと願うことはとうぜんでしょう?しかし、しかしFクラスの観察処分者や君は俺が態とやったと証拠もないのに姫路さんを愚弄した卑劣漢呼ばわり。酷いのはどちらでしょうね?」
「・・・・・・君は根本君よりも卑怯者だよ」
「おやおや、言い返せずに罵倒ですか。そんなに言われると流石に傷つきますよ、久保君。」
口とは裏腹にうっすらと笑みを浮かべる正久に対して冷たい目で見る利光。
「まあ事の真偽にせよ、此度の戦争が一騎討ちになってしまった一因が俺にあるのは確かみたいですから、俺がその内の一戦に出て勝利をもぎ取るのが筋でしょうな。だから君は出なくて結構ですよ、久保君」
「・・・・・何で」
「ん?どうしましたか、優子さん?」
利光を挑発するように言い捨て席に着かんと移動しようとした正久の肩を優子が掴む。
「何でこんな酷いことを平気でするようになったのよ!!どうして・・・・どうして変わっちゃったのよ、正久!!以前の、昔のアンタは・・・・・人の気持ちを踏みにじるような人じゃなかったでしょ・・・・!?」
涙ながらに叫び語りかける優子の声に周りは静まる。
「俺は悪くないんですよ、優子さん。
今までも、そしてこれからも」
優子と正久の距離はあまりにも遠かった。
次回、一騎討ち突入です。
ちなみに本作は3部作を予定しています。
この一騎討ちまでが第一部です。