「青空教室だと?」
雄二は眉をひそめる。
「ええ。青空教室とは言っても雨が降っては話にならないでしょうから屋根は行事用のテントを複数使用、地面にはビニールシート。机の代わりには画板、黒板には部活動のミーティングなどで用いられるような脚にローラーがついている移動式のホワイトボート。校庭の隅なら邪魔にならないでしょうし大丈夫でしょう。台風落雷突風などが懸念される日のみ今の教室を利用する。ま、こんなところでしょうな」
「ちょ、ちょっと待てよ」
明久が正久に詰め寄る。
「それじゃあ姫路さんはどうなるんだよ!?ただでさえ身体が弱くて体調を崩しやすいのに・・・・!!そんな設備じゃますます酷くなるじゃないか」
「・・・吉井の言う通り」
翔子が進み出ながら明久の意見に参加する。
「・・・松永、いくらなんでもやりすぎ。確かにFクラスは私達Aクラスと戦って負けた。それなら通常通り1ランクだけ設備のグレードを下げれば良い。姫路の体調以前にそれだと勉強できる環境だと言えーー」
「知らねぇよ」
正久から笑顔が消える。
「おかしいですねぇ。Aクラスが勝ったらFクラスは何でも2つだけ命令に従いその内一つは俺が決めることになっていたはず。それに対して何故今になってとやかく言われなければならないのでしょうか?裁量権は俺にあるというのに。Fクラスの負け犬は群れの一匹がかわいそうだと吠え、Aクラスの勝ち馬の御者もかわいそうだと言う。俺は勝利という義務を果たしたというのに権利を行使することができないとは。それに姫路さんはあなた達Fクラスの大事なお仲間でしょう、観察処分者君?仲間とは運命共同体なのですから『姫路さんは、姫路さんだけは』と仲間外れはかわいそうです。仲間内で差別とはいただけませんな」
「・・・もう戦争は終わった。これ以上追い詰めなくても良い」
「戦争の敗者を裁くのは勝者の特権です。そして約定にある通り、いくらAクラス代表の霧島さんでも口出しする権利はありません。下がってください」
「・・・でも松永ーー」
「下がってください」
翔子の言葉に聞く耳を持たない正久は強くそう言うと雄二の方へと向き直る。
「ではこういう文言を加えましょう。『Fクラスの青空教室設備の変更手段は試召戦争の勝敗のみ』、と。これで万が一霧島さんが命令権を行使しても安心です。それでお願いします、高橋先生」
「なっ!?」
「・・・・・・」
高橋教諭は苦い表情を浮かべ黙ったままである。
「あれ?何故黙したままなのでしょうか、先生。まさかできないとでも?・・・・・宣戦布告の乱発で他のクラスの授業妨害、戦争時にスプリンクラー及び窓ガラスの破壊、消火器の不正使用、Bクラス代表への女装を強制。俺の知る限り、これらのFクラスの蛮行は学園側は黙認してきたはずですよね?それが通るなら俺の要求も通るべきでしょうに。それとも何ですか?学園側は勉強を怠り生活態度も悪く問題ばかり引き起こすFクラスを保護するとでも言うのですか?それでは真面目にやってきた俺達や他のクラスの方々が浮かばれませんよ。敗者のFクラスは罰を受けるべき、違いますか?」
「・・・・・分かりました。許可します」
ゆっくりと頷く高橋教諭。
『そんなの受け入れられるか!!』
『横暴だ!!』
『姫路さんがかわいそうだと思わないのか!!』
この決定に対してFクラスの生徒達が抗議する。
「おやおや。なんと、なんと見苦しい。自分は好き勝手やってきたのに、好き勝手やられるとなると拒否すると喚きたてるとは。
良いですか?君達のような人間は腐った蜜柑と同じです。ただひっそりと朽ち果てれば良いというのに、そこに存在するだけで周囲の正常な蜜柑までも腐らせてしまう。その腐った蜜柑はゴミになるか肥料になるかぐらいが辿るべき道だというのに温室に自分達も入れろと言う。こんなふざけたことが罷り通ってはたまりませんよ。これ以上被害が広がる前にゴミはゴミ箱に捨てるべきなんです。腐った蜜柑のクズ共に与した姫路さんも同罪ですよ」
「ひっ!?」
正久に睨み付けられたじろぐ瑞希。
「姫路さんがかわいそう?知るかよ。彼女もテストの結果次第では設備が劣悪になるということは知っているはず。その上で入学願書を出したはずです。それが受理されて今この場にいるのですから自分への戒めとして受けるべきです」
「・・・・して」
「ん?何かご意見でも?姫路さん」
「どうして・・・・・松永君はそこまで、Fクラスの皆さんに対して非情なんですか・・・・?」
「どうして、ですか。別に俺はFクラスに所属する特定の個人に対して恨みがあるわけではありません。ただ、Fクラスにいるような努力もせずに努力する者を引きずり下ろそうとする下賤な輩が許せないだけ何ですよ。今回の場合、それを支持したあなたもね」
今にも泣き崩れそうな瑞希に対して冷たい目で言ってのける。
「このっ!!」
明久は激昂を抑えられずに右手で正久の襟首を掴み左の拳を振り上げる。
「やめろ、明久!」
「落ち着くのじゃ!!」
今にも正久を殴らんとしていた明久を雄二と秀吉が慌てて引き離す。
「邪魔しないでよ二人共!!松永君は、こいつだけは!!」
「気持ちは分かるがな、明久。俺だってこいつをぶん殴りてぇよ。だが俺達は敗者だ。ここで手を出したら奴の思うつぼだ」
「残念じゃが明久、今回だけは、今回だけはワシらが引かねばならん」
必死に二人が取り押さえる。
「これは、これは酷い。言うに事欠いて暴力に訴えるとは。これだから粗暴の輩は・・・・て・・・におえな・・・・・」
襟首を正しながら正久をだが突如猛烈な頭痛が走り視界が揺らぐ。
呂律も回らなくなり足に上手く力が入らなくなり膝をついてしまう。
「は!?どうなってんだ!?」
「え!?まだ何もしてないよ、僕」
「ま、正久!!」
「ちょっと!!」
秀吉が明久から手を放し正久の元へと駆け寄ると正久に駆け寄り、それに優子が続く。
「あ・・・・・れ・・・・・・?」
そのまま床に倒れ正久は意識を手放した。
金八先生にぶたれそう。
正久君、日頃の無理が祟ったようです。
青空教室は逆に健康に良いんじゃね?とは自分も思いましたが
青空教室になる
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とても勉強する環境ではない(風雨にさらされ、砂ぼこりなども防げない、保健室、水道、トイレなども遠い、夏は高温と日光の照り返しで熱中症の危険、秋冬は冷たい風がダイレクト)
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瑞希の親の耳に入ると・・・・