新章スタートです。
先日友人宅で遊んでたらハードダーツの矢が膝に当たりそうになりました。
もう少しで衛兵になるところだった・・・・・
狂信者の不意打ち、そして現るは・・・
学校生活の始まりである4月という節目に華を添えていた桜はすっかりと花びらを散らし、代わりと言わんばかりに青々とした葉を風で揺らす。
同時に春の陽気とは異なりジリジリと太陽が肌を刺すように照りつけ、蒸し暑さも感じられるようになってきた今日この頃。
2年FクラスのDクラス侵攻から始まった一連の戦争から落ち着きを取り戻したのか、文月学園の生徒及び職員は平穏を満喫していた。
と言っても、上は冷房やコールドドリンクなどを完備してあるクラス、下は行事テント一枚でグランドの隅に放り込まれたクラスとかなりの差があるのだが、これは文月学園においてはもはや見慣れた光景である。
両クラスの生徒が文明及び現代社会がもたらした利器のありがたさを肌で感じているのは言うまでもない。
「それじゃあAクラスの出し物は執事喫茶で決まりね」
教卓に立った優子が嬉しそうに声を弾ませる。
ここAクラスでは他のクラスに先駆けて、新しいクラスでの初の共同作業及び学校行事である清涼祭の出し物についてLHR(ロングホームルーム)の時間を利用した会議が開かれていた。
学年においてリーダー的な立場であるAクラスが先に決めることで他のクラスも続きやすいように、という腹で学園からの指示で開かれた会議だったのだが、代表である翔子から司会進行を一任された優子の張り切りぶりが尋常ではなかった。
当然、最初に何か提案はないのかとクラスの面々に意見を募った訳だがそれらに対しぐうの音も出ない程的確に欠点を指摘、論破することで潰していったのである。
また優子の提案に対しても反対意見が寄せられたがいつの間にやらクラスの何人かの女子(及び利光)を味方につけていたらしく数々の反論でこれを一蹴。
普段は優等生としてAクラス内外からの評価の高い優子だが、普段から想像できないまでの飽くなき(趣味嗜好的な)執念がもたらす謎の気迫に気圧される形になってしまい、結局最後に残ったのが執事喫茶であった。
「それじゃあさっそく割り振りを決めーー」
「異議あり」
優子の独壇場に対して苦笑いするしかなかった空気の中、挙手をして反旗を翻す者が一人いた。
彼は鉛筆を置いてノートを閉じるとゆっくりと立ち上がる。
「いつになくやる気ですね、優子さん」
「な、何よ正久(ああ、もう!熱中するあまり正久のことを忘れてた!)」
小さな議長に異議を申し立てたのは退院してからしばらくして漸く調子を取り戻しつつある正久だった。
それほど養生しているわけでもないのか依然として顔色は優れないままである。
「何か意見でもあるの?」
「そう睨まないでください。別に優子さんの提案を潰そうというのではありませんので。むしろ、むしろ賛成ですが少々訂正すべきかと」
「え?」
「へぇ、意外だね。てっきり松永君なら勉強がどうだとか理由をつけて出し物の企画自体に反対するのかと思ってたよ」
予想外の正久の言葉に優子は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をするが、愛子がその気持ちを代弁するかのように言う。
二人だけでなくこの教室のほとんどの人間がそう思ったことだろう。
「失礼な。俺はそんな無粋な輩ではありませんよ。祭りは楽しまなければ意味がありません。普段我々は勉強に勤しんでばかりですからたまに息抜きぐらいは必要ですよ。メリハリという奴です」
「それで訂正って?」
「『執事』喫茶、と男子の異装に限定してしまっている点です。最近はメディアで取り上げられることも多くなったせいかアニメや漫画などのサブカルチャー、それに伴ってメイドやキャラクターなどのコスプレに対して理解が広まったのは事実でしょう。まあ俺は興味ありませんがね。しかし、すべての人が受け入れている訳ではありません。あまり見聞きしないであろう執事喫茶、というものに対してはなおさらです。果たして、客足はどうなるのでしょうかねぇ。・・・ああ、勘違いしないでいただきたいのですが別に特定の趣味嗜好を否定したいのではありませんよ。率直に言ってしまえば女子はともかくサブカルチャー的なものに抵抗感のある人や大多数の野郎無勢の層に受けないのでは?、ということです」
「相変わらずだ、松永君。それは君の主観にすぎないと思うけどね。だいたいそんなデータ、ソースがあるのかい?無いなら君の主張は一人よがーー」
「ああ、それなら大丈夫よ、正久。女子にも男装してもらうつもりだから」
(((((そういう問題なの!?)))))
利光の反論を遮って言ってのけた優子に心の中で突っ込む一同。
「じゃあこうしませんか。男装というジャンルは残念ながら未だマイノリティに属するものです。そこで女子はメイドに扮することにして執事・メイド喫茶にすれば良いではありませんか。メイド喫茶などは広く知られている分、比較的多くの親しみを持ちやすいのではないですか?」
「でもメイド喫茶じゃ逆にありふれていると思わない?目新しさがないわ」
ああ言えばこういうかと優子はため息をつきながら反論の言葉を紡ごうとしたのだがーーー
「そうですか。残念ですねぇ、優子さんならメイド服、似合うと思うのですがね」
この正久の一言に固まってしまった。
最終的にAクラスの出し物は執事・メイド喫茶に決定したのだった。
「最近は英単語の暗記ミスも減ってきましたか。いや、自惚れてはいけない」
放課後。
正久は参考書の応用記述問題の添削をしてもらうために職員室へと向かいながら小さな手帳を広げる。
その手帳には彼自身が行っている小テストの結果などが記されているらしくページの隅から隅までびっしりと埋まっている。
「構文・例文の方が最近疎かになっていますから、そちらの方にも力をいれなければ」
独り言をつぶやきながら階段に差し掛かろうとした時である。
「先生方の言うとおり、勉強熱心みたいじゃないか、松永君」
階段の下から見上げながら正久に話しかける人物が一人。
「おや、これは、これは教頭先生」
その人物は文月学園のナンバー2、竹原教頭であった。
なにやら笑みを浮かべているが、生徒を慈しむ教師のそれではないことは確かである。
「ちょっと君にお願いがあるんだ。君なら喜んで引き受けてくれると信じているよ」
どうやら文月学園の平穏は長くは続かないようだ。
竹原教頭登場です。
というか彼は上手く立ち回ることができれば目的を果たせたと思うのですが・・・
作中の趣味嗜好、マジョリティ、マイノリティ云々は自分の主観ですのであまり気にしないでください。
特定のジャンルを否定する意はありませんので。
長らくの間「萌え」という概念に対し理解に苦しんでいたけど、戦国無双4の流浪演武のガラシャ・立花誾千代のイベントと暗殺教室の自律思考固定砲台さんのおかげで漸くその末端を理解できた気がしました。
天使だわ。