「再三言うけどね、お前たちの襤褸屋を学園が直接救済するなんてことはしない」
「だからそれだと困るんですクソババア!僕らはともかく体が弱い子がーー」
「ーーといつもなら門前払いするところなんだがね、ここは一つ、取引といこうじゃないか。もし、こちらの頼みを引き受けてくれるのならお前たちの望みをできる範囲で叶えてやろうじゃないか」
「ありがとうございます学園長!」
「おい、待て明久」
学園長の鶴の一声に一瞬にして態度を変え、猛スピードで頭を下げ承諾の意を表明する明久だったがそれを雄二が阻む。
「簡単に流されるな。この間痛い目を見たばかりだろうが。・・・・『できる範囲』ってのは?」
「文字通りの意味だよ。あまり贔屓しすぎると上位クラスにとっては不公平以外の何物でもないだろ?そうだね・・・・・『テントに重大な故障が発覚、倒壊の恐れあり。代用品が補充されるまでFクラスは前設備を使用、補充時期は未定』っていうのはどうだい?あとは模擬店の売り上げを設備向上に使うのを許可してやるからそれでマシになるだろ?」
「でもそれだと松永君が黙っていないんじゃ・・・」
「それは仕方がないことだよ。『偶然発覚した』んだからね。誰も責められやしない」
明久の心配を鼻で笑う学園長。
「なるほど、『たまたま起こったアクシデント』なら誰も文句は言えないな。・・・・・で?そちらの頼みは?」
「清涼際で行われる召喚大会は知ってるかい?その優勝商品の副賞に『如月ハイランドプレオープンプレミアムチケット』ってのがあるんだけどねーー」
学園長は続け、交渉は進んでいく。
「と、いうわけだよ。とにかくウチの可愛い生徒の将来を決めようなんて計画、それを潰すためにもお前たちには是が非でも優勝してもらいたい」
「つまり取引はーーー」
「お前たちが優勝して副賞を回収できたら襤褸小屋を何とかしてやろう。ついでに前の教室も少し改修してやるよ。ただし、設備に関しては自分達で何とかしな。これで良いね?」
「せ、せめて設備の向上ぐらいおまけしてくれてもーーー」
「だめだ。そこは譲れないよ」
「これ以上は無駄だ明久。俺たちはこれに応じるしかない」
「それなら交渉成立だね?」
思ったとおりに事が進み学園長は笑みを浮かべる。
「ただしこちらから提案がある。大会のルールはタッグマッチだよな?。それはそのままで良いから対戦表が決まったら科目の割り振りは俺にやらせてもらいたい」
「それぐらいなら構わないよ。・・・・・お前達、優勝してもらわないと困るんだ。絶対できる、ね?」
学園長の念押しに年相応のはつらつとした返事を返してFクラスコンビは学園長室を飛び出した。
「(さて、こちらは何とかなるかもしれないね。・・・・問題は竹原だ。十中八九何か仕掛けてくるだろうね)」
虚空を見つめながら新たに思案にふける学園長だった。
「「はぁ!!!?」」
「ふ、二人とも声が大きいのじゃ」
秀吉が顔をしかめる。
教室という名の、学園長曰く襤褸小屋に帰還し事の次第を秀吉、美波、康太の三人に報告した雄二と明久だったが、逆に秀吉から正久と組んで大会に出場することを聞き、二人揃って声を上げて驚いたのだ。
「だって秀吉、松永君だよ?また何をされるか分からないじゃないか!!」
「奴がFクラスに力を貸す生徒が現れないように細工をして自分のところに誘導したとも考えられるな。・・・・・絶対何かたくらんでやがるぞ」
「し、しかしじゃな、正久は思い出作りのためとも言っておったし、何よりも正久と組めば上位は間違いナシじゃ。ワシも見劣りせぬよう勉強して点数を稼がねばなるまいがイメージアップにはなるじゃろう?何か謀っておるなら監視としても役立つと思うのじゃが・・・」
「ウチと土屋だって最初は反対したのよ。松永は瑞希を転校させようとしていたヤツだし。でも木下がどうしてもって・・・。」
「・・・仕方がない。ムッツリーニ、奴に探りを入れてくれ」
雄二は少し考えるそぶりを見せるがすぐに顔をあげる。
「・・・・・承知」
「え!?雄二、このままで良いの?」
「良いのか?」
「奴が何をたくらんでいようが知ったこっちゃねぇ。たくらんでいるなら今度こそ負けずに叩き潰す。こうなったらそれまで利用できるだけ利用するしかないだろ?」
ため息を吐くが雄二の眼光は鋭い。
「いいかお前ら、気を抜くな!気も手も抜いたら姫路は転校だと思え!!
」
四人に檄を飛ばす。
今より神童が再び勝負に出る。
クラスメイトと自身の将来のために。
しかし、今はこの時はまだ彼ら彼女らは正久の思惑など知る由もなかった。
リアル知らない天井状態になったり学業だったりディベートだったりレポートだったりと、やっと落ち着きました。