バカとテストと召喚獣 狂気の努力家   作:24601

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事実か無根か、偽善か傲慢か

「勤しみ励むは学生の本分、それを、それを放棄し努力する者を引き摺り下ろそうなどとは!どうしてそのような愚考愚行蛮行をするのでしょうか!?俺にとって不思議でなりません。堕落するならば人様に迷惑をかけずに勝手に落ちぶれて行けば良いものを・・・」

 

正久は怒りで顔を歪めながら言う。

 

クラスメイト達は奇行こそは目立っていたものの、自己紹介では丁寧な物腰と口調で印象に残っていた正久がいきなりFクラスを罵倒し始めたため呆気にとられており、またその剣幕から狂気を感じ取ったためか引いてさえもいる。

 

もっとも、優子など極一部の者達は驚いた様子は見せなかったのだが。

 

「松永君、それは言い過ぎじゃないかな?」

 

極一部に含まれる一人、久保利光が席を立ちながら言う。

 

その眼鏡の奥の眼は冷たく、冷静というよりも少々怒気を孕んでいるようにも見える。

 

「これは、これは久保君。言い過ぎとはどういう意味ですか?」

 

正久は利光の方に体を向ける。

 

「そのままの意味さ。君はさっきからやたらとFクラスのことを堕落だのクズだの言っているけど、全ては君の主観と偏見に基づくものだろう?確かに怠けてFクラスになった人もいるだろうけど中には君の大好きな努力をしている人達もいるとは思わないのかい?」

 

「主観偏見とは失礼な。事実を言ったまでですよ?では皆さんに問いましょう。昨年度のそれぞれのクラスで宿題をしない、授業態度が悪い、遅刻を繰り返す、他人に多大な迷惑をかける、といった生徒がいたことでしょうがその生徒は今、このクラスにいるでしょうか?・・・・・・いないはずです。そして賭けても良い、彼らのほとんどがFクラスにいるでしょうな。それから久保君、俺はFクラスの全員が努力をしていないとは言ってはおりません。少なくとも知っている限りでは二人。先に挙げた姫路さんと優子さんの弟の秀吉です。まあ秀吉は勉学よりも演劇に熱を入れていますがね。とにかく、とにかく努力をしているのはほんの少数なのです。大多数は遊び呆けることしか頭に無いことは確かですな。その中にはかの有名な観察処分者もいることでしょう。彼は堕落した果てに盗みを働いたそうじゃありませんか。まさしく堕落の権化です」

 

「事実と言いながら推論と混同しているじゃないか。そもそも彼らを執拗に貶めるようなことを言う権利は君にはないはずだ」

 

観察処分者、という言葉に眉をひそめながら言う利光。

 

「権利、ときましたか。便利な言葉ですよ権利とは。人には何かをする権利が必ずありますからそれを主張すると何でも正しいように聞こえてしまいます。大方、Fクラスには上位クラスに挑戦する権利があるのだから俺に非難される謂れはないはずだと言いたいのでしょう?それを言われたら立つ瀬がありませんから、俺も便利な言葉を。偽善ですな、久保君」

 

「!?」

 

「なぜ文月学園が学力別のクラスに別れていてかつクラス毎に設備に差異があるのか。それは下位クラスは上位クラスを見上げてああなりたいと目指し勉学に励むように、上位クラスは下位クラス、特にFクラスを見てああはなるまいと反面教師にするためです。文月学園のFクラスより上のクラスは深層心理では彼らのことを見下しているんです。あなたも例外ではないはずですよ、久保君。いやはやしかし、しかし残念ですな。学年次席の努力家であるあなたがあろうことかFクラスの行いの肩を持つとは」

 

偽善と言われて正久を睨んだ利光だったが最後の言葉に嘲笑する。

 

「納得したよ。僕が偽善なら君はただの傲慢だよ」

 

「・・・・何ですと?」

 

今度は正久が利光を睨む。

 

「今朝、西村先生から封筒を受け取った後、僕はすぐに職員室に行って成績開示を申請したんだ。結果は学年三位。一位は霧島さんで姫路さんはこのクラスにいない。だったら残る可能性があるのは松永君、君しかいない」

 

「何を、何を馬鹿な。俺ごときが次席のはすがない」

 

「試験中、僕は君と席が近かったから見ていたけど高熱か何かできつそうだったじゃないか。体調が万全じゃなくても学年次席。万全だったらどうだったんだろうね。君は努力している自分に酔って他人を見下しているだけじゃないのかい?」

 

「努力されている皆さんを見下しているなど戯れ言です。俺はただ、ただ正しくあろうてしているだけです。真面目にひたすら努力をすることこそ正しい、これを掲げてこそいるものの俺はまだまだ努力不足です」

 

「学年トップクラスで努力不足なんて、必要以上の謙遜はかえって僕らへの侮辱になるだけだよ」

 

利光が鼻で笑う。

 

正久はこぶしを強く握りしめる。

 

「久保君・・・・・あなたも、あなたもあの時の奴らのようにーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい正久、そこまで」

 

険悪な雰囲気の中、優子が割って入る。

 

教科書を丸めて軽く正久の頭を叩く。

 

「アンタ初日から何で喧嘩腰なのよ。久保君も落ち着いて」

 

「僕はいたって冷静だよ」

 

「ちょっと優子さん、邪魔しないでーー」

 

「四の五の言わずに放っておけば良いでしょ、Fクラスのことは」

 

「ですが!」

 

「・・・二人とも、矛をおさめて」

 

優子に続いてこのクラスの長である翔子も間に入る。

 

「・・・私達は、挑戦を受けるだけ」

 

「・・・・・」

 

「・・・仲違いしたら、勝てるものも勝てなくなる」

 

「霧島さんがそう言うならこの場は引き下がりましょう。ですが、ですが考えを曲げるつもりはありません」

 

「・・・構わない。でも他人の悪口を言うのは控えるべき」

 

「善処しましょう」

 

 

 

 

漸くAクラス教室に平穏が戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺こそ、俺こそ正しい。いずれ証明してみせますよ」

 

正久の呟きに気づく者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久保君は明久のことを侮辱されたようで気に入らなかったんでしょう。

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