「ったくよぉ、面倒なことしてくれるじゃねぇか、全く」
一人で教室に残っていたBクラス代表、根本恭二はぼやく。
新学期新学年開始初日からDクラスに戦争を仕掛けたFクラスはこれに勝利し、勢いそのままに今度はBクラスに挑もうというのだ。
Bクラスにとっては迷惑な話である。
始まったばかりの新しいクラスではそれほど団結力も高くはないだろうし、体制も万全に整ってはいない。
加えて召喚獣の強さの源である点数も振り分け試験の時のものであるため上がりはしていない。
さらにはFクラスには学年トップクラスの成績を誇る瑞希が在籍し、代表の坂本雄二の先導と煽動の甲斐あって士気はかなり高い。
当然、イレギュラーたる瑞希は例外として兵隊一人一人の戦力はBクラスの方が高いのだが瑞希の立ち回りや雄二の采配によっては思いもよらぬ苦戦を強いられる可能性もある。
恭二は『卑怯者』だの『クズ』などと陰口を叩かれるほど手段を選ばずに勝ちにいくのを良しとしているだけあって、いくつかの策の構想こそあるものの、最大の脅威である瑞希をどうにかする術だけは未だに思い浮かばなかった。
「失礼、根本君、お時間よろしいでしょうか?」
「あ?・・・・・・松永、だったか?何だよ、こっちは忙しいんだが」
声のする方を見るとそこにはいかにも不健康そうな少年が立っていた。
意外な来訪者に恭二は首を傾げる。
松永正久は度がすぎる程のガリ勉かつ真面目、というのが恭二が見聞きした結果抱いた印象であり、そのような優等生に分類されるような者が不真面目外道を地で行く自分に何の用なのだろうか、と。
「確かに、確かにお忙しいでしょうな。Fクラスに宣戦布告されたのですから。とにかくお時間はとらせませんので」
正久はそう言いながら恭二の前に来る。
「で、何の用なんだ?」
正久の口調に少し胡散臭さを感じたのか恭二は訝しげに言う。
「いえ、根本君に頼みがありましてね」
「頼み?」
「これを見ていただきたい」
正久はポケットから封筒を取り出して恭二に見せる。
『姫路瑞希より』と書かれた面が見えるように。
「先程廊下で偶然拾ったのですがね」
「これは・・・姫路瑞希のラブレターか何かか?」
「さあ?俺には内容は分かりませんが、本人にとってはとても大事な物でしょうな。拾う前にお会いしましたが困惑している様子でしたからとても、とても困っていることでしょう」
「・・・で?俺にどうしろって?」
「困っているであろう姫路さんに一刻も早く届けたいのですがね、急用ができてしまいましてこれからすぐに帰宅しなければならないのです。誰かに頼もうにも近くには根本君しかいなかったものですから。どうか、どうか俺の代わりに彼女に届けていただけませんか?」
恭二はニヤリ、と口の端をつり上げる。
渡りに船だ、と。
この男の真意は分からないが願ってもない話である。
これをネタに脅せばやっかいな瑞希など意のまま、さらにはこのやり取り自体も正久の弱味になりうる。
「ああ、それなら喜んで引き受けよう。姫路の奴も困っているだろうからな」
恭二は正久から封筒を受けとる。
「それでは頼みましたよ。戦争、頑張ってくださいね。Bクラスが勝たねばAクラスまで飛び火するやもしれませんので」
そう言って正久はBクラス教室を後にする。
このやり取りがちょっとした波乱を呼ぶのだがそれはもう少し後の話である。
正久君はどこかのBクラスオリ主みたいに手紙を盾に脅したりなんてしません(棒)
なんて心優しいんでしょう(棒)
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