ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか   作:その辺のおっさん

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お気に入りが100件を超えました………マジですか……いろいろと至らぬことが多いかもしれませんが、これからも頑張りたいと思います



あと、感想の返信でも書きましたが、自分はロキ・ファミリア好きですよ、ただ、好きなキャラには曇ってほしいというか、その……ね?


第5話

『豊穣の女主人』を出たカルキは、先刻の【ロキ・ファミリア】の面々を思い出していた

 

「(あの例え話ではわかりづらかったか?ほとんどの団員は呆然としていたが……いや、何人かは気づいていたか)」

 

あのたとえ話を聞いた者たちはほとんどが呆然としていたが、年長者であり、頭の切れる部類の【勇者】(ブレイバー)【九魔姫】(ナイン・ヘル)【重傑】(エルガルム)は今の自分たちを指していることに気付いたのであろう、苦虫を噛み潰したような顔をしていたし、簀巻きにされ、吊るされていた【凶狼】(ヴァナルガンド)【怒蛇】(ヨルムガンド)【大切断】(アマゾン)の双子の姉妹は、自分(カルキ)を親の仇のように睨みつけていたが、他の団員は何を言っているのかわからないという顔をしていた。

 

「(だからといって、変わることだけが正解というわけではないが)」

 

そう、人間は変わるものであるが、初志貫徹という言葉があるように真っ直ぐ自分が決めた道を進むことで成し遂げられることもあるのだ、だからこそ、変わることが正しいとも、変わらぬことが正しいとも言えないというのが事実であるとカルキは捉えているが

 

「(あれらは今のままだとただの英雄の踏み台にしかならないな)」

 

などと考えていると

 

「待って」

 

「……【剣姫】か」

 

どうやら、自分を追いかけてきたらしい【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインに呼び止められたので、「(そういえば、先程もベルを追いかけようとしていたな)」と思い出し、振り向く

 

「どうしてあんなことを」

 

と問いかけてくるが、カルキとしては、その少女の瞳に映っているものが仲間を侮辱された怒りだけではないと気付いていた

 

「(ふむ、復讐者だと思っていたが……何だ、ただの迷子だったか)」

 

カルキには今の【剣姫】は、夜の暗闇の中で親とはぐれ、蹲って泣いている迷子にしか見えなかったのである。いやはや、そんなことも分からないとは自分もまだまだ未熟だなと自嘲していると

 

「……何がおかしいの?」

 

どうやら自嘲した笑みが顔に出ていたらしい、これでは本当に未熟だなと思いつつ、まずは少女が動揺するであろう言葉を放つ

 

「なに、復讐者だと思っていたが、ただ己が今したいことすら理解していない迷子だったかと」

 

「!?」と明らかに動揺した少女は僅かに視線を逸らし、その少女に「それに」と続け、カルキは最も動揺するであろう言葉を投げかけた

 

「どれだけ高位の精霊の血を引いている者でも堕ちる時はどこまでも堕ちるものなのかとな」

 

「ッ!それをどうして!?」

 

動揺した目でアイズがカルキを見たとき、すでにカルキは第一級冒険者ですら認識できない速度でその場を移動していた

 

***

「さて、ベルはどこにいるかな」

 

迷子(アイズ・ヴァレンシュタイン)から離れ、カルキはとある建物の屋上にいた。ベルを探しているのは、もし、ベルが先ほどの一件で【ヘスティア・ファミリア】の本拠(ホーム)に戻って泣いているようなら英雄の見込みはなく、ダンジョンに潜っているようなら蛮勇であるが見込みが多少はあると判断するためである。

 

「ふむ、どうやら本拠には帰っていないか……付近にはいないようだし、蛮勇(ダンジョン)の方か」

 

まあ、見込みはあるようだとひとりごち、その蛮勇でも見に行くかと思い、移動しようとしたが、いい加減先ほどから感じる視線に鬱陶しさを感じて

 

「それにしても、あまりにも無遠慮に見すぎだな、あの女神は」

 

そう呟いてカルキは、屋根の一部を立ったまま砕き、舞い上がった破片を手に取ると、一言小声で「ブラフマーストラ」と唱え、破片をバベルに向かって投擲した。

 

***

「本当に、何者なのかしら……あの人間(ヒューマン)

 

バベルの最上階で、オラリオ最大派閥【フレイヤ・ファミリア】の主神フレイヤはカルキを見ながらつぶやいた。その人間を見つけたのは数ヶ月前、何の気なしにオラリオを眺めていたフレイヤは、たまたまその人間を見かけた

 

「(魂の色が見えない……?)」

 

魂の色が見えるはずの自分(フレイヤ)が人間の魂の色が見えなかった、それとも神に見せないように何かしらの術を持っているのか……

 

「ッ!!??」

 

今バベル最上階から見下ろし、覗き見ている不思議な人間を初めて見たときのことを思い出し、屋根にいるその人間を見ていると、次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

あまりの痛みに椅子から落ちたフレイヤ、そして物音を聞き、何事かと主神の部屋に入ってきた【フレイヤ・ファミリア】の団長【猛者】(おうじゃ)オッタルは、左肩を抑え、血を流し蹲っているフレイヤを見て、「フレイヤ様!?」と動揺しつつも、すぐに止血を行い、近くにいた従者を呼んで治療の手はずを整えていく、そして治療を受けながら、フレイヤはそばにいるオッタルに話しかけた

 

「オッタル、あの男の実力を測りなさい、多少手荒な真似をしてもいいわ」

 

「御意」

 

短く返事をし礼をしたオッタルであったが、その瞳には己が敬愛する主神を傷つけた人間(カルキ・ブラフマン)に対する憤怒の炎が燃え盛っていた

 

***

ダンジョン6階層、『豊穣の女主人』から飛び出したベルは、気づけば、足を踏み入れたことのない新階層へと降り立っていた。初心者殺しとされるモンスターのウォーシャドウを倒し、ただ、無我夢中で戦い、ボロボロな状態のベルは、はっ、はっと息を荒げ、次に生まれてくるモンスターを待っていたが、

 

「何をやっている?」

 

突然後ろからカルキに声をかけられ、バッと振り返ると、

 

「カルキさん!?ここはダンジョンですよ!?危ないです!!」

 

などと慌てたように言い、その自分より他人を心配するどうしようもないお人好しな姿に、思わず苦笑いしつつ、

 

「さっきの酒場での一件、どう感じた?」

 

そう問いかけると、下を向き、唇をかみしめ、

 

「悔しいです……」

 

苦々しい表情でたった一言言うだけだった。しかし、その「悔しい」という一言からは、

狼人の言を肯定してしまう自分(ベル・クラネル)

何も言い返すことができない自分(ベル・クラネル)

彼女(アイズ・ヴァレンシュタイン)にとって路傍の石にしか過ぎない滑稽な自分(ベル・クラネル)

彼女(アイズ・ヴァレンシュタイン)の隣に立つ資格を欠片も所持していない自分(ベル・クラネル)

その全てが堪らなく悔しいと感じられる一言であった。それを聞き、カルキは「ふむ」と頷くと

 

「だが、今のお前の行為はただの蛮勇だぞ」

 

残酷ともいえる言葉を突き付けた。「!?」と驚いているベルであったが、カルキは諭すようにベルに語り掛ける

 

「何を驚くことがある、今のお前は、自分への怒りで周りが見えていない、さらには恐怖を微塵も感じていないだろう、そんな奴はすぐに死ぬぞ」

 

と言うと、「?」と頭に疑問符を浮かべ、首をかしげるので、やれやれと首を振り、人差し指を立てて、顔の前に持ってきて、ベルを諭す。

 

「いいか、『勇気』のみでは蛮勇であり、『恐怖』に竦むだけでは臆病だ。だが、ここぞという場面での『勇気』は勇敢となり、戦いの中での『恐怖』は緊張感となり、自分を助けるものだと、少なくとも自分はそう教わったぞ」

 

カルキがベルに自らの師匠ともいえる神から教えられたことを諭していると、ダンジョンの壁が壊れ、数体のウォーシャドウが出てきたかと思うと、さらには、出入り口付近にはモンスターの目が光っていた

 

「さて、ベル、いいタイミングでモンスターも出てきてくれたことだし、お前の英雄としての素質を見せてくれ」

 

そう言って笑いかけると、ベルはコクリと頷き、モンスターの群れへと駆けていった。

 

***

その後、明け方まで戦い続け、満身創痍になったベルを【ヘスティア・ファミリア】の本拠まで運んで、ヘスティアにベルを預けたのだが、その際、「・・・僕、強くなりたいです」と言ったその姿に英雄の産声だなと感じつつ、今度、ヴィシュヌ神に報告に行かないとなと思いながら、居候先である【ガネーシャ・ファミリア】の本拠に帰ったカルキであった。

 




インド神話のお約束である炎の矢の雨を降らせて森を焼くという試練、どうしようか『セオロの密林』を「クエスト×クエスト」のついでに焼くわけにもいかないし・・・と思って、ダンメモの動画をあさっていたら、いい具合のエルフの森のイベントを見つけました・・・コノモリヤイテモイイカナ(ダディャーナザン風に)

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