ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか 作:その辺のおっさん
『神の宴』で都市最大派閥の
「貴様!一体どういうつもりだ!『怪物祭』には他派閥の協力が不可欠だというのに!」
と別の個室でカルキの胸ぐらを掴みながら、カルキに詰め寄るが、詰め寄られている本人は全く気にしていないように
「いや、自分はただ挨拶を返しただけだが?」
「―――――――ッ!いい加減にしろッ!」
あまりにも自分の居候先への迷惑を考えてもいないカルキの態度に、とうとう堪忍袋の緒が切れそうになるシャクティであったが「まあ、待て、事情は知っている」といわれ、「何……?」といぶかしげな視線を向けるとそっとカルキはシャクティに誰にも聞かれぬよう耳元で小声で話しかける
「『怪物祭』ではなく、『怪物との友愛』なのだろう?いずれ
「なっ!?、どうしてそれを!?」
明らかに動揺し、胸ぐらを掴んでいる手の力を緩めるシャクティに対し「それに」と続け、
「仮に自分が関わっていようといまいと関係なしに、あの
サラリと言ってのけるカルキは乱れた襟を直しながら、シャクティから離れる。
「……明日、ガネーシャと共に説明してもらうぞ、居候」
こちらを睨むシャクティに「了解した」と返すカルキだった。
***
次の日、『怪物祭』を翌日に控え、【ガネーシャ・ファミリア】の団員たちが準備の最終段階でせわしなく働いている中、【ガネーシャ・ファミリア】の主神であるガネーシャの自室で、ガネーシャとカルキ、シャクティが机をはさんで向かい合って座っていた。
「……で?どうして居候が
「俺が話した!」
「………」
誰が見ても不機嫌なシャクティに対し、馬鹿正直に答えるガネーシャ、我関せずのカルキという、ある意味この数週間で見慣れた光景がそこにはあったが、今回ばかりは納得のいる説明が欲しいのか、シャクティは「ガネーシャ!」と詰め寄る。どうしたものかとガネーシャが隣に座るカルキを見ると、カルキはコクリと頷き、話を促す。本人の了承が取れたとしてガネーシャはシャクティに事情を話し始める
「実はな、カルキはオラリオ外のとある神から依頼を受けてこのオラリオに来たのだ。そして、その神にはオレはどうあっても逆らえない、そのため、カルキにはいろいろ話したというわけだ」
普段とは違う真面目な雰囲気でガネーシャは説明するが
「なるほど……と納得できるか!オラリオ外部の神からの依頼!?オラリオの情報を外部に漏らすな!それに、もしこの居候が襲われて
どうやら、さらに火に油を注ぐ結果になってしまったようである、シャクティが烈火のごとく怒ってしまった。だが、ガネーシャは全く気にしていない様子で
「安心しろ!シャクティ!あの神々はそう簡単には介入してこない!それに……」
一呼吸置いて
「
などと他人が聞けば狂ったのかと思うようなことを言い出す
「何を言い出すのか「では、手合わせしてみるか?」……なに?」
「寝言は寝て言え!」と言いたかったシャクティだったが、その前に今まで黙っていたカルキが横槍を入れる。するとカルキは立ち上がって
「今は9時過ぎ、ならば、昼飯前には終わるだろう」
などふざけたことを言い出し、
「むっ!だがあまりシャクティに重傷は負わせないでくれよ!明日の『怪物祭』に影響が出る!」
「了解した、ガネーシャ神」
ガネーシャもカルキとシャクティが手合わせすることが決まっているかのように話し、仕方なく手合わせの準備をしていると、どこかで手合わせする話が漏れたのか何人かが「団長!あの居候に灸をすえてやってください!」と声をかけられ、苦笑しつつも
「……どこで手合わせをするつもりだ?」
そうカルキに問うと
「まあ、ダンジョンだろうな」
どこか少し困ったような呆れたような答えが返ってきた。そして互いに準備を終え(カルキは防具も武器も持っていないが)、【ガネーシャ・ファミリア】の本拠の出入り口の門まで来たカルキとシャクティは
「では行くとしよう」
カルキがそう言ったかと思うと、シャクティを小脇に抱え、「おい!離せ!」という抗議を無視して、誰もが認識できない速さでダンジョンに潜ってしまったため、こっそりついて行こうと見張っていた【ガネーシャ・ファミリア】の団員や敬愛する女神からの命令でカルキを見張っていた
***
「さて、ここならば地上に影響はないだろう」
カルキが言うこの階層は37階層、通称
「馬鹿な……一時間もかからずに『下層』だと…!?」
ありえない状況に驚愕しているシャクティに対し、「では、始めようか」と声をかける。声をかけられたシャクティは、目の前にいる男への警戒心を最大まで上げて、得物である槍を構える。だが、それに対してカルキは一切の構えを見せない
「……何故構えない?」
シャクティが問うが、カルキは答えずまるで「仕掛けてこい」と言わんばかりであり、ならば、こちらからと一気に加速し、全力の鋭い突きを放つが
「な…に……」
全力で放った突きは、カルキの左手人差し指と中指によって止められていた。さらに、槍を動かそうと思ってもピクリとも動かすことが出来ない、すると、カルキは急にパッと槍を離し、「終わりか?」と眼で語り掛けてくる
「――――――――ッ、なめるなっ!」
シャクティは今、目の前にいる男が自分より遙か高みにいることに気付いていた、しかし、今まで自分が冒険者として積み上げてきた『技と駆け引き』ならばと高速で移動しながら槍をふるい、カルキに攻撃を仕掛けていくが、その全てがカルキに躱され、一回も当たらない、さらに、戦っているうちに、ある事実に気付く
「(一歩も動かせていない!?)」
そう、カルキは左足を軸にしながらその場から一歩も動いていなかったのである。それでも、シャクティは数十分カルキを攻め続けていたが、
「ふむ、どうやら余計な客が来たようだ」
唐突にカルキが38階層に続く階段を見て呟いたので、何事かと思い、そちらの方を向くと、数十体のスパルトイとオブシディアンソルジャーの群れが近づいてきており、迎え撃とうとすると、カルキがすっと前に出て、
「手合わせをしてみて、あなたが磨いてきた腕は分かった、その今まで積み上げてきた武に対して敬意を表し、一つ、奥儀を見せよう」
それだけ言うと、カルキは右手で顔を覆い、
「これはシヴァより授かりし武の奥儀!ブラフマーストラ!」
真言を唱え顔から手を離すと、カルキの目から出た光が真っ直ぐにスパルトイとオブシディアンソルジャーの群れに飛んでいったかと思うと、大爆発が起こりその全てが消滅し、ダンジョンの壁には奥は見えないほどの巨大な穴が開いていた
「では、帰るとするか」
呆然としているシャクティをまた小脇に抱えて帰ろうとしたその時、
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ』
叫び声をあげ、【災厄】ジャガーノートが現れた
「……ふむ、どうやらダンジョンを壊しすぎたようだな」
やっとタイトル回収、まあ、ダンジョンぶっ壊したらこうなるよねって