ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか   作:その辺のおっさん

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もう、一気に一巻終わらせてもいいよね


オッタルの話し方これでええんか………


追記
お気に入り350越えありがとうございます


第8話

時計が12時を少し過ぎた頃、【ガネーシャ・ファミリア】の主神、ガネーシャの自室の扉がコンコンと叩かれ、「入っていいぞ!」と室内から返事があり、その扉が開かれ、ダンジョンから戻ったカルキが入ってくる。

 

「む?カルキ一人だけか?シャクティはどうした?」

 

「いや、実は……」

 

一人で戻ったことに疑問を感じたガネーシャはカルキに自派閥の団長について問うと、カルキはバツの悪そうな顔をして、先刻ダンジョンであったことを話し、今現在のシャクティの状況を説明する

 

「なるほど!つまり、ダンジョン37階層でブラフマーストラを放ってダンジョンを破壊してしまい、それによって産まれたジャガーノートをカルキが素手で引き裂くというあり得ないことを見せつけられ、精神的に参って今は自室で休んでいる……ということだな!」

 

「ああ、その認識で構わないと思う、本人と部屋の前で別れたとき、そう言っていたからな」

 

中層以降でダンジョンの修復が追い付かないほど破壊された時産み出されるダンジョンの免疫機構、その階層に存在するものを全て排除することから大神ウラノスによって【破壊者】の意味を持つ名前を付けられたモンスター、驚異的な俊敏性、鋭い爪による桁違いの破壊力、さらには魔法を反射するという能力、あまり長くは存在することはできないという弱点はあるが、階層主以上の力を持ち、5年前産み出されたときは、その場に居合わせた【アストレア・ファミリア】と【ルドラ・ファミリア】を襲撃、たった二人を除いて両ファミリアの団員を殺しつくしたということから【厄災】、【抹殺の使徒】とも称される文字通りの怪物、それがジャガーノートである。

 

―――――だが、そんな怪物をカルキはいともたやすく返り討ちにしてしまった。ブラフマーストラによって破壊されたダンジョンから産み出されたジャガーノートは己の使命に従い、階層にいたカルキとシャクティに襲い掛かった。しかし、カルキはジャガーノートの高速攻撃を一歩もその場から動くことなく迎撃、拳一発で怪物を地面に挨拶させ、手刀の形にした両手を頭部に突き刺し、手首を捻って、「フッ」と一息吐き、そのままジャガーノートを左右に引き裂いた後にはジャガーノートだった灰しか残ってはいなかった。

 

そして、そんなカルキの埒外ともいえる実力を目の当たりにしたシャクティは、一度ブラフマーストラで折られた戦意を喪失、否、それどころか心ここにあらずという状態になってしまったので、カルキはそんな彼女をダンジョンに来た時と同じようにわきに抱え、【ガネーシャ・ファミリア】の本拠(ホーム)へと戻ったのだが、「私は精神的に疲れたから休む……」とだけ言うと、部屋にこもってしまったため、仕方なく、カルキだけがガネーシャのもとに来たということが今回の顛末である。

 

「事情は分かった。……しかーし!オレは明日の『怪物祭』(モンスターフィリア)にシャクティは必要だからやりすぎるなと忠告していた筈!何故その忠告を無視したんだ!」

 

「いや、自分は普通に戦っただけだが?」

 

「まさかの認識の違い!!」

 

そう、カルキとしては普通に戦っただけなのだ……それがオラリオの常識外の強さを持っていたとしても

 

「まぁ、そういうことなら仕方ない!オレは今から落ち込んでいるシャクティをはげましてこよう!」

 

というなやいなや、ガネーシャは部屋を飛び出していった。ポツンと一人残されたカルキは、次はもう数十体追加できれば体を動かすにはちょうどいい数だなとジャガーノートと戦った際のことを思い出しながら、ガネーシャが自派閥の団長を励まし、戻ってくるまで瞑想でもしていようと足を組み、瞑想を行い、ガネーシャが部屋に戻ってくるのをを待つのであった。

 

後日、正義の妖精と白兎がジャガーノートとの決戦を制した後、下の階層から数十体のジャガーノートを引き連れたカルキが乱入、カルキが数十体のジャガーノートを次から次へと倒していく姿に「僕(私)達の戦いはいったい……」と心を折られかけるという事態になることはまだ誰も知らない。

 

***

『怪物祭』当日、年に一回行われる【ガネーシャ・ファミリア】主催の闘技場で行われるモンスターを調教を見世物としている催し、しかし、その裏に隠された本当の意味をオラリオに住む人々の多くは知らず、白兎は酒場で忘れ物の財布を預かりながらも己の主神と出店を回り、美の女神は道化の女神と会った後、偶々視界に入った白兎と戯れようと暗躍し、道化の女神は美の女神と会った後「デートやぁ」と【剣姫】(自分のお気に入り)と出店を回り、その眷属であるアマゾネスの双子姉妹と【剣姫】を慕う妖精の少女が闘技場付近でその二人を待っていたり、とそれぞれが催しを楽しんでいる中で

 

カルキはダイダロス通りの路地裏で一人の猪人(ボアズ)と相対していた

 

「(さて、どうしたものか)」

 

カルキが思うのも無理はないだろう、朝というより、少し前(美の女神の肩をぶち抜いた)から自分を探るような視線を感じていたことは確かであり、その正体が【フレイヤ・ファミリア】の団長であるということも気づいてはいた。しかし、いい加減鬱陶しく感じたので、わざと路地裏に入り、仕掛けてくるかどうか探ったら本当に出てくるとは思っていなかったのである。

 

「それで、自分に何か用だろうか?少し前からコソコソ覗き見ているのは分かっていたが……それとも主神と同じように、お前も人を見ることが趣味なのか?」

 

黒いバイザーをつけ、漆黒の戦闘衣を身に纏い、大剣を装備する【フレイヤ・ファミリア】の団長【猛者】(おうじゃ)オッタルに問えば、

 

「あの方からは……」

 

「?」

 

「あの方からは、貴様の実力を測れと言われたが、俺はあの方を傷つけた貴様を絶対に許さん……ここで死んでも文句は言わせん」

 

こちらの問いかけには答えず、大剣を振り下ろしてくる猪人の攻撃からカルキはヒラリと躱し、建物の屋上に飛び上がると、大剣の一撃によって破砕され、砂埃がいまだ舞っている路地裏を見ていると砂埃がはれ、バイザーに隠れて見えないが憤怒の感情を宿した眼をしている【猛者】がこちらを見上げているので見下ろしながら再度問う

 

「【猛者】よ、お前は、「武人」だと聞いた。ならば敢えて問おう、お前がこの世で最も美しいと思うものはなんだ?」

 

「決まっている、この世で最も美しいのはあの方(フレイヤ様)だ」

 

堂々と答えるオッタルに対し、眉間に少ししわを寄せ何か思案するカルキ、そのカルキの姿を“隙”と捉えたのであろう、オッタルは跳躍し屋上にいるカルキに対し大剣を振り下ろす。がその渾身の一撃ともいえる攻撃をカルキは容易く片手でオッタルの腕を掴み、放り投げる。上手く隣の屋上に着地したオッタルに対しカルキはさらに問いかける。

 

「では、重ねて問おう、あの女神(フレイヤ)の本質は風だ、どこにも留まらず誰の元にもとどまらない、あれは誰かを己のものにしようとしても誰のものにもなる気はない一方的な女神だ、そんな女神にどうして心酔することが出来る?」

 

どこかカルキは試すような見極めるような口調でオッタルに問いかける、それに対し、オッタルは薄く笑みを浮かべながら答える

 

「そんなことは貴様に言われずとも知っている。だが、届かぬとわかっていても俺は手を伸ばし続けるのだ。大地に立つ限り風が失われることはなく、もし風が焦がれる空が現れたというのならば大地に立つ自分は見上げることしか出来ずとも俺は手を伸ばし続けよう」

 

そうした愚行を今まで都合6度超えてきたのだからと言外に語るオッタルに対し、

 

「……なるほど、ようやく納得がいった。【猛者】いや、オッタルよ、お前は「武人」ではなく「求道者」だったのか」

 

カルキはどこか納得した口ぶりでオッタルのことを「武人」ではなく「求道者」とした。そのことに対し、「何故だ」とオッタルが疑問を口すると

 

「当然だろう?「武人」であるならこの世で美しいものを「女神」とは答えないからな……だが、「武人」としては認められなくても「求道者」としてならば認めよう。もし、お前が女神以外の答えにたどり着いたらその時はお前を「武人」と認めよう」

 

そう返すカルキに「なにを……」と返したオッタルにカルキは右手を前に出して

 

「だが、どうやら今日はここまでのようだな。どうも、とある神を怒らせてしまったらしい」

 

「なに……?」

 

オッタルが疑問に思うと同時にその周辺にだけ猛烈な風が吹き荒れ、どういった原理なのか不明だがカルキのみが飛ばされてゆき、その場には大剣を持ったオッタルだけが残されていた。

 

***

突然の風に吹き飛ばされ、オラリオの市壁にたたきつけられたカルキは、自分を吹き飛ばし、市壁に叩きつけた犯神について心当たりがあった

 

「確かにあの女神を“風”と称したが、そこまで怒る必要はないと思うのだがな……風神(ヴァーユ神)よ」

 

天界にいるにも関わらず、自らの権能を使い、カルキを吹き飛ばした神に対してつい文句を言ってしまったカルキはゆっくりと立ち上がり、ノロノロとダイダロス通りを歩いていると人だかりを見かけた。その人だかりがやけに興奮しているのとその中心から見知った気配がするので近づくと、自分と同じように今着いたのであろう、【剣姫】とその主神のロキが近くの人に話しかけていることに気付き、話を盗み聞きすると、どうやら白髪赤眼の兎のような少年がシルバーバックを倒したらしい

 

「(なるほど、ベルが……いや、これはあの女神の戯れなのだろうが)」

 

とこの騒ぎの背後にいるであろう女神に呆れつつも

 

「(路地裏の英雄か……)」

 

奇しくも【剣姫】と同じ感想を抱いたカルキだった。

 




ジャガーノートは犠牲になったのだ……インドの犠牲にな………

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