ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか   作:その辺のおっさん

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ベル君オラリオに来たの半年じゃなくて半月前だったわorz………

色々書きなおしました

アイズの話し方がわからん!これでええんか……?(2度目)




第12話

「(どういうこと……?)」

 

この場にいる都市最強冒険者を含む第一級冒険者達が通路の奥から現れた(カルキ・ブラフマン)に対して警戒心や敵意、殺意を抱く中、たった一人だけその場で動揺し困惑していた者がいた

 

「(この人は、『神の恩恵』を貰っていないはず……)」

 

自分と特訓していた白兎とその主神から今自分を放り投げた男についてそのように聞いていたアイズ・ヴァレンシュタインは今、自分の常識では考えられないことが起こったことに混乱していた

 

***

そもそも、今、【ロキ・ファミリア】の面々が目の前に現れた男に対して凄まじいほどの敵意や殺意を向けているのは『豊穣の女主人』でその男が話したドラゴンの例え話が自分たちのことを暗喩していたことを酔いが覚めたベートとティオネが気付き、「俺が折れた牙と爪だと…情けねえってか!」「ころころ色の変わる鱗…誰が一貫性がないだとぉ!」と完全にキレてしまい、なんとか二人を宥めようとしたティオナもキレている(ティオネ)から「てめぇは『笑うしか能がねぇ』って言われてんだぞ!」と少し違ったニュアンスで言われ「むー、それは何だか嫌だ」と嫌悪感を示し、他の団員たちも自分たちが言外に『弱い、弱すぎる』と言われていたことに気付いたラウルやアキから伝えられたため、『あの酒場であった男は会ったら絶対ボコボコにしてやるorブッ殺す』という雰囲気が【ロキ・ファミリア】内で出来ていたからである。

 

幸い(?)その男とその居場所はすぐに分かった。男の名前はカルキ・ブラフマンといい、オラリオに来たのは一ヶ月たつか経たないかで【ガネーシャ・ファミリア】に「ガネーシャ神宛だ」と手紙を渡し、一週間後、ガネーシャの自室で二人きりで何事か話し合った後部屋から出てきたガネーシャが「明日からカルキもここに住むぞ!」と言い、説明を求めてもはぐらかし続けるガネーシャに抗議した団員たちに対して極東の武神から教わったという極東に伝わる最終奥儀DOGEZAをして【ガネーシャ・ファミリア】で居候することを認めてもらったらしいのだが

 

「あんな穀潰しのことなんて話すことはない」

 

とは【ガネーシャ・ファミリア】の副団長【赤戦の豹(パルーザ)】イルタ・ファーナにティオナがカルキ・ブラフマンについて尋ねた際に返って来た答えである。また、他の団員にもカルキ・ブラフマンという男について尋ねてみると『最悪の居候』、『ガネーシャに金をせびるクズ』、『いい加減働くか派閥の仕事を手伝え』、『数日間木の下で動かないの止めろ』、『とうとう団長までアイツのやる事を認めてしまった』等々、最低の評価しか聞こえてこないので、こんなクソ野郎に馬鹿にされたのかと怒り狂ったベートやティオネを中心とした一部の団員たちが最悪【ガネーシャ・ファミリア】の本拠地(ホーム)にまで乗り込んでカルキ・ブラフマンに痛い目を見せてやろうと意気込んでいたのだが

 

その団員たちを半ば力ずくで黙らせたのは【ロキ・ファミリア】の団長であるフィン、副団長のリヴェリア、最古参のガレスといった【ロキ・ファミリア】の顔ともいうべき人物たちであった。フィンは団員たちに『他派閥の本拠地に乗り込むことはルール違反であり、さらには都市に住む人々から信頼の厚い【ガネーシャ・ファミリア】と戦争することにもなる』『たかが批判されただけ、それも同業者ではなく一般人に怒り狂ったとなれば派閥や冒険者ひいてはオラリオの名誉にかかわる』この二つを徹底して団員たちに説き、『自分達は一切気にしていないのに勝手に行動する気か?』と半ば脅すような形で無理矢理沈静化を図ったのである。そのことにほとんどの団員は「団長たちがそこまで言うのなら」と渋々納得したが、やはりベートやフィンに固執しているティオネ等はカルキに対しての怒りが収まらなかったのである。

 

その一方でアイズは数日前、カルキ・ブラフマンについて特訓をつけてあげていたベルとその主神であるヘスティアからとある情報を得ていた

 

「恩恵を貰ってない……?」

 

「はい、カルキさんはそう言ってました」

 

数日前、特訓の休憩中に、ふと、アイズはカルキのことを思い出し、一緒に『豊穣の女主人』に来ていたベルにカルキについて聞いてみるとそのような答えが帰って来たので、一体どういうことなのだろうかとアイズはコテリと首を傾げる。あの夜、自分は確かに動揺していたが、それでも一瞬で自分の前から消えたと錯覚させるほど早く動ける人物が『神の恩恵』を貰っていないはずがないと思って特訓を見学していたヘスティアにも尋ねると

 

「うん、カルキ君は恩恵を貰っていない、本人から聞いたからね」

 

との答えに思わず疑った顔をしてしまったのであろう、「むっ、なんだい?その顔は」とヘスティアがプンプンと怒り始め

 

「当り前じゃあないか、神の前で人間(子供たち)は嘘をつけないんだぜ」

 

豊かな胸を揺らしながら「ふふん」と胸を張り自慢げに語るヘスティアにそれもそうだと納得したアイズは休憩を終え特訓を再開したのだが、だとするなら、今、ダンジョン9階層にいて、レベル6の自分が受け身をとれない程の速さで放り投げた目の前にいる人物は何者なのであろうか

 

「(あの子とヘスティア様が嘘をついていた?でもあの子が嘘をついているようにはとても……)」

 

思わずベルとヘスティアが嘘をついていたのでは?と思ったがすぐにそんなことはないと思いなおす。神は分からないが、あの純粋な白兎が一応(ロキ)の言動である意味鍛えられている自分を騙せるほど器用ではないとこの一週間でアイズは感じ取っていた。

 

「(ううん、今はそれよりもあの子を)」

 

既に通路の奥からは戦闘の音が小さくなってきており、恐らく今だ戦っているであろう白兎を助けることが先決だとアイズは立ち上がり、自分を奥に通さないように妨害をしてくるであろう【猛者】とカルキを見るのであった。

 

***

「(何者かが戦っているとは感じたが、まさか求道者と【ロキ・ファミリア】とは……)」

 

求道者や【ロキ・ファミリア】の幹部から発せられている敵意や殺気を軽く受け流しながらカルキは悩んでいた。復讐者の少女をつい放り投げてしまったが、何故あの少女がそこまでベルを助けようとするのか分からないが、ふとベルから聞いた話を思い出した

 

「(そういえば、ベルは5階層でこの少女にミノタウロスから助けられて一目惚れしたと言っていたな・・・ならば行かせた方が良かったか、さてどうする……)」

 

アイズにベルを助けに行かせ、ミノタウロスをアイズに任せるようなら英雄の器ではないとし、伸ばされた手を払いのけて自分であの怪物と向き合うのならば英雄の器であると見極められたかと少し後悔し、もし、後者をベルが選択した際、今、目の前にいる者たちがその行動にどのように影響されるのかということにも興味がわいたので「はぁ…」と一つため息をついてから

 

「(仕方がない、通すか)……この奥に行きたいのならば行けばいい、自分は邪魔をしない」

 

そう言うと自身はダンジョンの壁に半身を預け腕を組んで、敵対する意思がないことを示す。そんなカルキにその場にいる第一級冒険者たちはカルキが何を考えているのか分からずその場から動かなかったが「行かないのか?」と目で聞いてきたカルキにアイズだけが反応し、奥の広間に向かおうとし

 

「ぅぅおおおおっ!!」

 

アイズを奥へ行かせまいとオッタルが大剣を薙ぎ払うが、カルキが足元に落ちていた長剣を蹴り飛ばして大剣に当てオッタルの手から大剣を弾き飛ばす。その光景に誰もが驚愕するが、一直線に通路の奥に行くアイズを追いかけてベートとティオナ、ティオネがすれ違いながらカルキを睨みつけて横を通って行き、その場に残ったのは、カルキ、オッタル、フィン、リリの治療をしているリヴェリアだけであった。

 

「……フィン、リヴェリアお前たちも行け…お前たちを止められなかった我が身の未熟だ」

 

暫く黙っていた後フィンとリヴェリアに話しかけながら大剣を拾い上げるオッタルにそれならばとフィンとリリを抱え上げたリヴェリアはカルキの横を通る際に

 

「あの酒場で言われた一言はなかなかクるものがあったよ。だが()は曲げられなくてね」

 

厳しい顔で横を通り過ぎる小人族(パルゥム)の団長に「意固地だな」と肩をすくめるカルキに対し

 

「いずれあの酒場でのことの落とし前はつけさせてもらうぞ」

 

やはりエルフの誇りとやらが許せなかったのであろう、リヴェリアはカルキを睨みながら奥へと進んでいく。そんな二人を見送った後、カルキは今だ動かないオッタルに問う

 

「どうした?何故どこにも行こうとしない、お前の女神から出された仕事はおわっただろう?」

 

半ば挑発しているようなカルキの物言いであったが、オッタルはそれを聞き流してカルキと向き合い

 

「あの方からは貴様とこれ以上関わるなと言われているが……あの方が望んでいることを引っ掻き回した貴様を許せぬ」

 

大剣を構え、下級冒険者ならばそれだけで戦意を折られるほどの殺気を向けてくるオッタルに対し

 

「そうか…」

 

とだけ返し、カルキは少し離れたところにある刀を拾い上げ、オッタルに向き合うと、拾い上げた刀を数回感触を確かめるように振ってから

 

「では……少しだけ遊んでやろう」

 

刀をオッタルに向け、明らかに都市最強冒険者を格下にみているとしか思えないカルキの言動に

 

「ッツ!嘗めるなっ!」

 

激高する都市最強冒険者が振り下ろす大剣とカルキが振る刀が激突し、その衝撃だけで通路のいたるところにヒビを入れた

 

***

「アイズ・ヴァレンシュタインに、もう助けられるわけにはいかないんだっ!」

 

あの時と同じように【剣姫】から助けられた白兎は自分の前に立っている少女を自分の背後に押しやり、ナイフを構え漆黒隻腕の猛牛と対峙する。

 

その眼には絶望も恐怖も感じられず、ただ真っ直ぐな情熱をもって立ち向かう。

 

素早い動きは猛牛を上回り、猛牛から短剣を折られたら、いつの間にか自分たちの近くに刺さっていた大剣を地面から引き抜き、その重さに振り回されながらも両刃斧と打ち合う。

 

幸い大剣は上手に整備されているのか何合打ち合っても漆黒の猛牛を斬っても刃こぼれ一つしなかった。両刃斧を叩き落して大剣による三連撃を体に叩きこむと後退した猛牛は突撃体勢を取る。それを見て大剣を構えなおし迎撃する。

 

猛牛の突撃を真正面から受けて大剣は砕けるが、ベルはそのまま猛牛の懐に潜り込みヘスティア・ナイフを抜刀、猛牛の腹に突き立て

 

「ファイアボルト!」

 

砲声する。ただ目の前にいる強大な敵を倒すためだけ、ただそれだけのために何度も砲声する都合10の砲声を上げたところで猛牛の体は限界を迎えたのか爆散しそこにはモンスターの灰と魔石、ドロップアイテムの角と立ったまま気絶しているベル・クラネルだけがその激闘の跡を雄弁に語っていた

 

***

「ほう、ベルは勝ったか……やはりあの復讐者を行かせたのは間違ってはいなかったな」

 

どこかうれしそうな様子で()()でほかの戦いの様子に気を配ることの出来る余裕があるカルキに対して

 

「…ッツ!」

 

都市最強冒険者はたった数分の戦いで既に満身創痍であった。頭から大量の血を流し右目は閉じており、装備していた軽装のプレートアーマーごと真一文字に胸を深く切られ、左手は指先から肩口まで真っ二つにされ、全身は先ほど【剣姫】の魔法で出来た裂傷を的確に上から傷に沿って斬られたためズタズタにされている

 

今は右手で持った大剣を地面に突き刺し倒れないようにするのがやっとの有様であった

 

「では、ベルの方も終わったことだから地上に戻るとしよう」

 

オッタルに背を向け、持っていた刀を地面へ捨てて、石ころを一つ拾い上げてから、そのまま地上に向かおうとするカルキにオッタルは都市最強と呼ばれている意地と都市最強派閥を率いる団長としての矜持をもってカルキに向かっていく

 

「ウオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

モンスターの咆哮と聞き違えるほどの大音声を放ち、全身から血を流しながら突貫するオッタルが残された力を振り絞り大剣を大上段に構えた瞬間

 

「!?」

 

ゴボッとオッタルは大量の血を吐き膝から崩れ落ちる。オッタルは自らの腹部に穴が開いていることを感じ、いつの間に振り返ったのか、()()()()()()()()()、腕を下した姿のカルキを見ながら意識を失って腹に空いた穴から血を吹き出しながら前のめりに倒れた。

 

そんなオッタルに対しカルキは前のめりに倒れ背中を地面につけなかったことを好ましく思いつつも

 

「求道者よ、お前がもし本当に武人を名乗り自分の前に立ちたいならばせめて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を修めてから挑むべきだったな」

 

意識を失い倒れているオッタルを見下ろしながらカルキが呟いた言葉は誰にも聞こえることなくダンジョンの暗闇に消えていった




今回は戦わなかった方々ですが、ゼノス編で一方的に蹂躙されるのはどっちなんでしょうね(微笑)

追記
お気に入り件数600件超えました

ありがとうございます

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