ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか 作:その辺のおっさん
………今じゃねーだろうよ!!
「では、あなたは私と共に昨夜決めたように城壁を壊し、敵の半分を引きつけます」
未だ自分を警戒している覆面のエルフと共にカルキは
「すみません、カルキさん…一番危険な役を押し付けてしまって」
『クロッゾの魔剣』は強力で恩恵を得ていない者でもある程度戦える…カルキの本当の実力を知らないベルは申し訳なさそうに危険な役目をカルキと援護をするリューに押し付けてしまうことを謝るがカルキは気にした様子もなく
「気にするなベル、それより、あの程度の相手に負けるなよ」
「はい、僕はあの
真っ白な
昨夜あったことを思い出していたら城壁の前まで来ていたらしい。隣から注意を促す声がかけられる
「……もう敵の前ですが」
「ああ、わかっている」
正午と同時に鳴らされた銅鑼の音と共に始まった
「私は今もあなたを…あの血だらけになった【
「だろうな、昨日からお前は自分をそういう目で見ている」
「ですが、今だけは、ベルさん達の勝利のためにあなたを守りましょう……始めてください」
「(この程度の強さの者に守られる必要などないが……)そうか、では始めるとしよう」
そう言うとカルキは『クロッゾの魔剣』を振るい攻撃を開始した
***
『おおーっと!【ヘスティア・ファミリア】!!まさかの速攻だぁ!これは短期決戦狙いかぁ!?』
ギルドの前に用意された特設の舞台で【ガネーシャ・ファミリア】の団員【
「(ちっ、魔剣使っとたら
「あら、魔剣を使うの?少し期待外れね」
「まあ、あれなら丁度良い手加減だな」
「(どうかこのままスーリヤが介入しないように…)あれは、ガネーシャか!!」
ロキとフレイヤは正体がわからぬことに不満を覚え、ソーマは今がちょうどいい手加減だと評価し、ガネーシャはスーリヤが介入しないことを望みつつ、
「うーん、やっぱりそう簡単には尻尾は出さないか」
「あん?フィンそりゃどういう意味だ」
【ロキ・ファミリア】の
***
「(ほう、あのサポーター…リリルカ・アーデだったか?随分上手く誘導したものだ、まさか本当に敵の半分をこちらへと向かわせるとは)」
北から東へと移動しながら魔剣での攻撃を続けていたカルキは城門から出てきた50名程の【アポロン・ファミリア】を見て上手く誘導したものだと感心する。…彼女はサポーター業を止めても舞台女優にでもなれるのでは?と緊張感のない感想を抱いていると、手元で使用限界を迎えた魔剣が壊れた。それを見て【アポロン・ファミリア】を率いてきた
「アポロン様をコケにした奴だ!囲って潰せ!!」
こちらに来た50人のうち、30名がリューに向かい、20名がカルキを囲む中、カルキはギルドでガネーシャから借金をして購入した普通の槍を装備し向き合う
「アポロン様を太陽神にふさわしくないなどと…報いは受けてもらうぞ!」
こちらに来た
***
「ぬぅあ~!カルキ君は恩恵を貰ってないんだ!20人で囲むなんて卑怯じゃないか!!」
「フハハハハ!残念だがこれはルールだヘスティア!仮にあの男を殺してしまったとしても何も私の
バベル30階ではヘスティアが恩恵を貰っていない一般人に大人数で攻撃していることに卑怯だと憤慨し、アポロンが自分を太陽神を名乗るのにふさわしくないとコケにしてくれた男を自らの眷属が囲んでいて、もし、うっかり殺してしまってもルール上は問題ないと高笑いする。
そんな2柱と今も≪神の鏡≫に映っている映像の中で囲まれているカルキもとい常識のないイキリ野郎を見て、これなら化けの皮がはがれるかもしれないとロキはニヤリと笑い、ヘファイストスは憐れみと心配の視線をカルキへと向け『何秒持つと思う~?』『バッカ、あのイキリ野郎君がかわいそうだろぉ?』『ギャハハハハハハ!!』とカルキを嘲笑する神々の声が響き渡っていた。
「はんっ、大口叩いてあのザマとは情けねえな」
「ちょっとベートうるさい、ねえ団長?……団長?」
ベートが【アポロン・ファミリア】に囲まれ構えもせず躱しているだけのカルキを情けないと評し、ティオネがベートを黙らせようとしフィンに同意を求めるがフィンからの反応はない。それどころかガレス、リヴェリアまでもが鏡に映るカルキを真剣な眼差しで見ていることに【ロキ・ファミリア】の若い幹部たちは首を傾げた
「(……確かに彼は切り札である魔剣を失くし、20人に囲まれ構えもせずに必死で躱しているように見える…だがこの違和感は何だ?)」
鏡に映るカルキは囲まれ、確かに窮地に陥っているように見える。だが、フィンには今のカルキからは余裕を感じられ、それどころかワザと反撃していないようにも見えていた。また自分には気づけない『何か』があるように感じられ、違和感を覚えるフィンであるが、チラリと横を見ればどうやらガレスやリヴェリアも同じように違和感を覚えているらしい。真剣な表情で鏡に映るカルキを凝視していた
フィンやガレス、リヴェリアといった第一級冒険者に違和感を覚えさせるカルキの戦い方を正しく認識し、カルキの実力が図抜けていることをオラリオで気づいたのはやはり武神であるタケミカヅチだけであった
「桜花、千草、お前たちも命の応援もいいがあの男から決して目を離すな、あいつの技量は間違いなくこのオラリオの中で並び立つ者のいない遙か高みに立っているぞ」
タケミカヅチの言葉にどういう意味かわからず首を傾げる眷属に「まあ、仕方がないか」とタケミカヅチは説明し始める
「まずは左足をよく見てみろ…あいつは左足を軸にして右足だけを動かし、槍捌きと体捌きだけですべての攻撃をいなしている。それだけではない、相手の攻撃をいなした際、次の攻撃をする相手が常に自分の正面に来るように相手の動きを全てコントロールしている。……その卓越した己の技量を、誰にも気づかせないように技を振るい、年季の入った者だと違和感を感じるが決して自分の技量には気付かせないように偽装し、『武』を司る神でないとその技量の神髄に気付くこともできないというレベルまで鍛え上げられた技量を平然と今のあいつは披露している……こんなことが出来る人間がこのオラリオに、いや、下界にいると思うか?」
武神の言葉に驚き、確かによく見てみるとその通りであることに気付いた眷属達は鏡に映る男と武神の言う卓越した技量に戦慄する。その一方で武神はカルキの背後にいる神々に当たりをつけていた
「(……おそらくあの男はかなり手加減をしている。それに、あの槍捌きと体捌きは偽装しているが間違いなくカラリパヤット…つまりあの男の背後にいるのは『リグ・ヴェーダ』の神々ということか……チッ…ガネーシャの奴、あの時この男の存在を隠していたな)」
カルキの背後には『リグ・ヴェーダ』の神々がいることを確信しつつ、数週間前の
***
一方、シュリーム古城での戦いは佳境を迎えていた。事前に決めた作戦通り、北の壊れた城壁から命が潜入、変装したリリが【アポロン・ファミリア】の残った半分を向かうように誘導、自爆覚悟の魔法を行使しつつ、完全に死角となった西の城門をリリが開け、ベルとヴェルフを場内に引き入れることに成功し、後は一気に【アポロン・ファミリア】の総大将ヒュアキントスをベルが打ち取れば【ヘスティア・ファミリア】の勝利である
「(ふむ…このままいけばここで【アポロン・ファミリア】を間引かなくても良くなるな、終わった後にアポロン神を消滅させればスーリヤ神の命令を果たせ)――――――ッツ!?」
未だ一人も倒さず、躱し続けていたカルキであったが急に動きを止め、何やらブツブツと呟くカルキに【アポロン・ファミリア】だけでなくリューも動きを止めてしまう。しばらく何か考えるそぶりを見せたカルキは【アポロン・ファミリア】を真っ直ぐに見据えて問う
「ああ、どうやら時間切れのようだ、…すまないがこの
唐突なカルキの問いにうろたえる【アポロン・ファミリア】の団員達のなかで、すぐに正気を取り戻した小隊長のエルフのリッソスが怒声を上げる
「確かに我らはアポロン様が見初められ眷属にした!だが心の奥底では複雑な心境のダフネや悲観的なカサンドラとは違い、我らはアポロン様に忠誠を誓っている!」
カルキは激高するエルフを一瞥し、他の者達の反応を確認するがその場にいる者達はエルフの言うことが当然だという雰囲気を確認し
「では、ダフネとカサンドラとは誰だ?特徴があれば教えてほしい…その者達は見逃そう」
不敵な物言いをするカルキにその場にいる誰もが唖然とし、オラリオでは神々が『イキリ発言キター!!』とカルキを嘲笑する中、リューがカルキにここにいる【アポロン・ファミリア】の団員の中で2人だけが女性であり、その2人であることを伝えると
「では…その2人と
カルキの言い方に怒りを覚えたリッソスがカルキへと攻撃しようとした瞬間、一瞬で距離を詰めたカルキから首をへし折られ、力なく両腕をたらす
「悪いが早く終わらせろと急かされたのでな……始めるとしよう」
カルキの宣言により一方的な蹂躙劇の幕が上がった
カルキさんスーリヤさんに急かされ本格的に参戦決定
あと最初間違えて魔剣で小人族吹っ飛ばして「あ、これリリやんけ」ってなって書き直したのは内緒
次回『1万年後までごきげんよう』(cv中尾〇聖さんで)
この元ネタ知らない人も多いやろなぁ