ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか   作:その辺のおっさん

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フィン「ティル・ナ・ローグ」

オッタル「ヒルディスヴィーニ」

リヴェリア「レア・ラーヴァテイン」

アイズ「リル・ラファーガ」

他冒険者「す、凄い……これが第一級冒険者の力……」

カルキ「フッ」(←通常攻撃で同等かそれ以上の威力)

火力の差はこんな感じ……え?理不尽すぎる?………インドだから仕方がない







…こんなんでホイホイとブラフマーストラなんかブッパ出来るわけがないんだよなぁ………



第28話

何者かによって歓楽街が襲撃され、そのほぼ全てが灰燼に帰した次の日

 

歓楽街を支配していた大派閥(イシュタル・ファミリア)の消滅…ひいては歓楽街の消滅はオラリオに多大な影響を与え、被害を被っているのは冒険者、【ファミリア】、商人、ギルド、神々と例を挙げれば枚挙に暇がない

 

ギルドはこれ以上の混乱を避けるため、犯人捜しよりもまずは後始末が最優先として、歓楽街跡地の後始末をほぼオラリオ全ての【ファミリア】へと命令を出し、その中にはガネーシャ、フレイヤ、ロキの【ファミリア】といった大派閥の団員達の姿もあった

 

『酷い……』

 

更地と化した歓楽街を見た【ガネーシャ・ファミリア】の団員達は、歓楽街がここにあったことを確かに示す建物が、歓楽街周辺の出入り口と真っ二つに両断されつつも奇跡的に燃え残った【イシュタル・ファミリア】の旧本拠(ホーム)跡地とその周辺の建物しかないことに呆然と呟く

 

「これを…これを見聞きしながら嗤っていたのか……」

 

歓楽街の東西南北に4つある歓楽街の出入り口は、この惨劇を引き起こしたと思われる犯人によって内側から開けられず外からしか開けられないよう細工されており、犯人が決して【イシュタル・ファミリア】及びその関係者を歓楽街から逃すつもりがなかったことを無言で語っている。そしてヘスティアとフレイヤの両【ファミリア】が開けた2つの門周辺の遺体は首がなかったり胸を抉られ殺されている戦闘娼婦(バーベラ)の死体が多かったが、これらは生き残った【イシュタル・ファミリア】の者達にこの死体が誰なのかが分かるだけマシであり、それ以外の死体は劫火によって白骨化するまで焼き尽くされており、更には、そのほとんどが出入り口周辺にまるで外に助けを求めるかのように折り重なっていたのである

 

この光景を見てギルドの職員は呆然と佇み、生き残った元【イシュタル・ファミリア】の少女達は力の抜けたように座り込んで涙ぐむ、そんな様子を見て、イルタや【ロキ・ファミリア】の【超凡夫(ハイ・ノービス)】ラウルは、せめて骨だけでも骨壺に入れて弔ってあげようと手に取ると、軽く触れただけで骨はサラサラと灰になってしまい、「あいつらは骨も残らないってのか…」と【麗傑(アンティアネイラ)】アイシャは歯を食いしばり、赤い血が出る程拳を強く握りしめる

 

「(この惨劇を見て何故神々は…ガネーシャは笑えるのだ……)」

 

シャクティは、否、ここにいる者達の中でシャクティだけが2日前の惨劇の全容を知っていた。この惨劇を引き起こした犯人は自分達【ガネーシャ・ファミリア】の居候であるカルキ・ブラフマンであり、その男は自分達冒険者など歯牙にもかけぬほど遥か高みに立ち、人という枠組みを超えて神の領域までたどり着いている可能性があること、そして……この惨劇を心の底から楽しんでいた神が三柱がいて、そのうちの一柱はオラリオにいる神々の中でも善性の神とされている自分たちの主神ガネーシャであることを

 

「団長?」

 

「(もし…次このようなことがあれば、私は…)」

 

自派閥の団員から話しかけられていることにも気付かず、考え込むシャクティは10年以上付き合いのあるガネーシャの変貌ぶりに困惑しつつも、もし今回のようなことが再びカルキによって引き起こされ、ガネーシャがその惨劇を楽しむならば、例えカルキによって一撃で殺されようともカルキに挑み、自らの死をもってガネーシャを諫めようと誓うのであった

 

***

『タケミカヅチ様の様子が変?』

 

歓楽街で春姫を救出した際、炎が一瞬で消えた歓楽街の通りで、無傷…それどころか魔力暴発(イグニス・ファテゥス)をした際の精神疲弊(マインドダウン)もなく、完全回復している命が新しく【ヘスティア・ファミリア】の仲間になった春姫と挨拶をするベル、リリ、ヴェルフ、そして幼馴染である春姫と旧交を温めている桜花、千草に相談してきた

 

「そうなのです……。自分が挨拶に行った時、普段通りに振る舞っているのですが、どこか気落ちしているような……」

 

しゅん…と肩を落とし、不安げな命に『うーん…』とベル達は悩む

 

「そ、そういえば命ちゃんの首飾り、すっごく綺麗だね」

 

「はい、何故かあの夜自分に架けられていたのですが、あまりにも綺麗というか、神々しいというか…でもとても気に入っているのです」

 

暗い雰囲気になっている命をなんとか励まそうとする春姫が命が首から下げている首飾りのことを話すと「あ!」と千草が声を上げ

 

「もしかしたら、命がどこの誰とも知れない方から綺麗な首飾りを貰ったことに嫉妬しているのかも!」

 

「良かったね!命ちゃん!」

 

「えー?あのタケミカヅチ様ですよ?むしろ『そうかぁ…命ももうそんな歳かぁ…』ってしみじみと話すんじゃないんですか?」

 

「ちちち千草殿っ!春姫殿っ!リリ殿もっ!」

 

先ほどまでの暗い雰囲気はどこへやら、キャッキャッとはしゃぐ女性陣を横目に何が何だか分からない鈍感な男性陣は「?」と首を傾げるが、「まあ、明るくなったからいいか」と笑いあう

 

「………んで?実際のところどうなのさ?タケ?」

 

微笑ましい光景から少し離れた所でヘスティアが実際のところどうなのかタケミカヅチに問いかける

 

「いや、なに…不機嫌というよりも、その…自己嫌悪というか‥‥‥‥な」

 

「はぁ!?何だい?それ?」

 

意味わからんとヘスティアは呆れ「ボクはあっち行ってるよ」とベル達の元へと向かっていく。そんなヘスティアの背中を見ながらタケミカヅチは「ハァー…」とこの2日間何度目かのため息をつく

 

「(まったく、こんなに自分が狭量だったとは………)」

 

そう思いながらタケミカヅチの視線は命の胸元…正確に言えば黄金の首飾り、否、スーリヤの鎧の一部をトヴァシュトリかヴィシュヴァカルマンが加工したであろう首飾りへと向かわせる。そう、タケミカヅチはどこの誰とも知れない奴から娘のように思っている命が高価そうな物を貰ったから不機嫌なのではなく、自分以外の神のモノを命が身に着けていることに嫉妬していることに気付き、自己嫌悪へと陥っているのである

 

恐らく、あの首飾りを傷ついていた命に架けたのはカルキであり、それは善意からの行いであり、命を救ってくれたことを感謝しなければならないのだが、タケミカヅチの胸中には何とも言えない感情が渦巻いていた

 

「(いやはや、俺自身が情けなく思える……今ならスサノオの気持ちもわかるな)」

 

タケミカヅチが思い出すのは、かつて天界にいた頃、同郷のスサノオが自分の娘のように可愛がっていたスセリがオオナムヂの所に行ってしまった際、スサノオは普段の荒々しさはどこへやら、一日中部屋に引きこもり酒を飲み、飲んだくれていたのを見かねて同じ武神の誼として励ましに行ったのだが「お前に俺の気持ちが分かってたまるか!馬鹿野郎!!」と殴られ、そのまま取っ組み合いの喧嘩をしたのだが、今ならあの時のスサノオの自分の娘ともいえる存在を他の(おとこ)の元にやった気持ちが分かるような気がした。そして命は、自分の家族はどの神にも渡さんぞと決意する

 

「(よし!今度、借金をしてでも命に武器を買ってやろう!あの首飾りと比べると価値はないに等しいが、それでも大切なのは気持ち()だ。うん、そうしよう)」

 

せっかくなのだから一年後、自分の【ファミリア】へと戻って来る命のために無事で自分の元に帰ってくるように願掛けとして雌雄一対の剣にしよう、そして長剣()の方を自分が持ち、短剣()の方は命に預けようと決心する

 

「(あー…それに今度、ヘスティア達に謝らないとな)」

 

そう決心したところで、ふと、今度余計な心配をかけさせてしまったであろう、ヘスティア、ヘファイストス、ミアハに謝らなければとタケミカヅチは思い出す。

 

あの日、あわよくばカルキと手合わせ(殺し合い)をと思っていたタケミカヅチであったが、少し離れた屋根の上で本質丸出しにして酒を飲んでいるソーマ、カーリー、ガネーシャの三柱の気配を感じ取ったタケミカヅチ(ヘスティアはヴェルフと桜花を止めるのに必死で気付いていない)は、惨劇を見ながら嗤い、更にはたかだか杯を落とされた程度で大人げなく【フレイヤ・ファミリア】の幹部たちを半殺しにしたソーマを見て、一周回って冷静になったタケミカヅチは、下界で、家族のいるオラリオで、ああはなるまいと思ったのである。

 

また、タケミカヅチは武神であるが、それと同時に地震を鎮める国家鎮護の神でもあり、強者と闘うのであれば神々が定めたルールなど無視して暴れるのだが、それ以上にタケミカヅチが戦わなければならないのは国家や都市、ひいてはそこに住む無辜の民に危害を加えようとする超常の邪悪な存在である

 

明らかにカルキという男は人間という枠を飛び越えた圧倒的な強者であり、超常の存在であるが邪悪な存在ではない。歓楽街での惨劇も先に喧嘩を売ったのはイシュタルであり、殺戮も他の神からの依頼や殺戮を司る神からの祝福を受けているのであればその殺戮は正当化され、タケミカヅチが戦わねばならない邪悪な行いとはならないのである

 

「天界にいれば、ぜひ一戦交えてみたかったな…」

 

惜しいと思いつつ、今は、再び会えた少女と自分の家族と共に旧交を温めることの方が大切だと思い、微笑を浮かべ、はしゃいでいる自分の大切な家族とその仲間、神友の輪へとタケミカヅチは歩みを進める

 

「いやー、それにしてもこの首飾りは綺麗だねぇ!……あっ!これを売ったら多少は借金返済に……!!」

 

首飾りの素材に気付かずヤバいことをことを口走るヘスティアに「ダメですよ!!」と総ツッコミが入るが

 

「いや……その首飾りの素材に気付いていないのか、ヘスティア…………………」

 

別の意味で神友に呆れ果ててしまうタケミカヅチであった

 

***

「……エニュオ?」

 

その夜、普段何かあれば貸し切りにしている店が休みで【ソーマ・ファミリア】所有の酒蔵も仕込みの最中で使えないため、仕方なく、『焔蜂亭』でカルキとガネーシャはソーマから情報を得ていた

 

「ああ、それが奇跡的に一命をとりとめた【イシュタル・ファミリア】の生き残りから聞き出した闇派閥(イヴィルス)の残党と結託しオラリオを滅ぼそうとしている黒幕の名だ」

 

何故か笑いをかみ殺しながら黒幕を伝えるソーマに、何故そんな情報を得ることが出来たのかと珍しく小声でガネーシャがソーマに聞くと

 

「……なに、歓楽街の跡地で【フレイヤ・ファミリア】の団員共が何やらコソコソしていたので後をつけてみたら、案の定【イシュタル・ファミリア】の本拠(ホーム)で生き埋めにされていたレベル4のタン何とかを運び出していたのでな、そのまま【フレイヤ・ファミリア】の本拠(ホーム)に行ってフレイヤをおど…頼み込んでその男から話を聞きだした」

 

もう完全に昔に戻っちゃてるソーマに「うわぁ…」とドン引くガネーシャであったが、それよりも黒幕の名前が明らかになったことを喜ぶが

 

「しかし…エニュオか、知らん名前だな、そんな名前の奴は下界にいる神々、いや、天界にいる神にもおらんぞ?」

 

「……まるで双六で6の目を出したら5戻るマスだった時のようだな」

 

しかし『エニュオ』という黒幕の名前が分かっただけでも十分だろうとガネーシャとカルキは判断するが、ソーマは『エニュオ』という名前が余程可笑しいのかその名前が出るたび机に突っ伏し笑いを堪えている様子であった

 

「ソーマよ、何がそんなに可笑しいのだ?」

 

いい加減不思議に思ったガネーシャが問いかけるとソーマは笑いをかみ殺しながら

 

「ガネーシャ、よく考えてみろ、『エニュオ』とは我々神々の言葉で『都市の破壊者』という意味だ……都市の『破壊者』だぞ?いくら今、カルキを通してシヴァがこのオラリオを視ていることを知らないとはいえ…なあ?」

 

もう耐えきれぬとばかりにソーマはクスクスと笑い始めるが、カルキとガネーシャは諫めることもなく「あー、成程」とソーマの意見に納得してしまう

 

カルキによって天界に送還されたイシュタルがフレイヤを嫌っていたように、神とは自分と同じモノを司る神を嫌う傾向が強い、そしてそれは天界最強と恐れられる破壊神シヴァも例外ではない

 

つまりはシヴァもシヴァ以外の『破壊』を司る神を嫌うのだ。しかし、天界最強の異名は伊達ではなく、シヴァは都市や国、大陸や世界を破壊するなどは容易いものであり、星の破壊、更にはこの宇宙を破壊し、『不滅』という概念すら破壊し、第三の目を開きシヴァの炎で焼き払えば1万年経てば復活できる神でさえ、この宇宙から消滅させ2度と復活することはない規格外の破壊神なのである

 

勿論、他の『破壊』を司る神々にシヴァ程の破壊の権能と同等、もしくはそれ以上の力を有している神など存在するはずもなく、天界で神々に殺し合いをさせ、トリックスターと恐れられていたロキでさえ、『破壊』を司る側面を持つ女神であったが、ちょっとでもシヴァに睨まれては文字通り消されると圧倒的に格上のシヴァを恐れ、自らを『道化の女神』であるとして『破壊の女神』の側面を隠していたのである

 

だというのにこの『エニュオ』を名乗る神(?)はシヴァが視ていることも知らずに『破壊者』などと名乗っているのだ。それ故、ソーマはエニュオはつい先日、スーリヤを怒らせカルキによって消滅させられたアポロン以上の自殺志願者であると嘲笑しているのだ

 

「流石にシヴァ神自ら来ることはないと思うが?」

 

「というか、そうなったらシヴァの神気だけでオラリオ…いや、下界にいる者のほとんどが肉片になるのだが…?」

 

思わずシヴァが下界にルールやら諸々を『破壊』して第三の目を開き完全武装した状態で降りてくる最悪の未来を予想してしまい震え上がるカルキとガネーシャであったが、流石に考えすぎかと笑っていると

 

「…明日も神酒の仕込みがある、ここで俺は帰ろう」

 

机に大量のヴァリス金貨を置いていき店を出るソーマに必要ない分を返そうとするカルキにガネーシャは笑いかけ、これは先日俺達を楽しませた褒美だから受け取って今日は旨い飯でも喰えと肩を叩いて明日も早いからと店から出ていく。偶には旨い物でもたらふく食べてほしかったのだろう、カルキはソーマとガネーシャの好意を素直に受け取り、暫く『焔蜂亭』の料理と紅玉(ルビー)を煮詰めたかのような蜂蜜酒に舌鼓をうっていると

 

「例えば――――――周りにいるこの雑魚どもを、酒の肴にしたってなぁ!」

 

店の喧騒を飲み込むほどの大声が響き、その声のするテーブルの方向を見ると、【ロキ・ファミリア】の牙と爪の折れた狼と哀れな復讐者がいた

 

「ふむ、どうやらあの狼人(ウェアウルフ)酔っているようだな」

 

この程度の酒に飲まれるとは……随分と情けない犬だと内心で嘲笑いながら蜂蜜酒を口にするカルキであった




都市の破壊者(笑)「なんか…悪寒が……」




地雷を踏み抜かれたベートや母親の風を「(ヴァーユと比べて)大精霊の風も大したことはないな」と風を軽く止められ絶望するアイズでも愉悦は感じられるが、それ以上に愉悦を感じられるのはカルキにインドキャッチプ○キュア躍りながら穢れた精霊倒され、15年掛けた計画を簡単に潰されて、絶望しながら消滅させられるディオニュソスを見せられて、今まで自分のしてきたことが無意味となり、高潔なエルフでも悍ましい怪人でもなく、ただの雑魚モンスターとして処理されるフィルヴィス




















………を見せつけられるレフィーヤだと思う

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