ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか   作:その辺のおっさん

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荷物を全て配達し終えました………種火の量がエライことに……新しいガチャ回さなきゃ(使命感)




第32話

カルキに憑依しているスーリヤとガネーシャ、ソーマが【ヘスティア・ファミリア】の本拠(ホーム)の中庭でベルと狐人(ルナール)の少女と戯れている竜女(ヴィーヴル)の少女を観察している頃、ギルド本部の最奥、『祈祷の間』と呼ばれている部屋でギルドの真の主ウラノスは唯一の私兵とも言えるフェルズからの報告に祈祷を中断し思わずといったように普段祈祷している椅子から立ち上がっていた

 

「……本当に…本当にカルキ・ブラフマンという男がその神の名を…その神々の名を語ったのかフェルズ………」

 

「あ、ああ、確かにカルキ・ブラフマンは『三柱神(トリムルティ)』そして『リグ・ヴェーダの神々』、『スーリヤ神』という神を語っていたが……それがどうかしたのかウラノス?」

 

「あり得ん…あの領域の神々はまだ天界にいるはず……それを何故…人間が知っている………」

 

フェルズはカルキ・ブラフマンが語った神々の名前に全く聞き覚えがなかったが、ウラノスとの付き合いが既に数百年になるフェルズが見たこともない程ウラノスは動揺していた

 

「まさか…………怪物祭(モンスターフィリア)の時のヴァーユの介入や歓楽街を燃やし尽くしたアグニの炎は……だが、何故ヴァーユは下界に介入した……それに人間がアグニの炎に耐えられるはずがない……」

 

「ウラノス?」

 

口元を片手で抑えブツブツと呟きながら考え込むオラリオの創設神にフェルズは声を掛けるが反応はなく、完全に思考の海に入ってしまっている

 

「もし、あの神々のうち一柱でもオラリオに介入してきたとして、対抗出来るのは、私とあの神々(リグ・ヴェーダ)と同郷であるソーマ、ガネーシャ、武神であるタケミカヅチ、『不滅』を司るヘスティアぐらいか……?だが、私やヘスティアではあの神々が誇る武の技量には遠く及ばない、ソーマやガネーシャ、タケミカヅチならば互角に戦えるであろうが、ソーマとガネーシャは戦いを面白がって協力を要請しても協力してくれるかどうか怪しい。タケミカヅチは間違いなくあの神々との一対一の戦いを望むだろう……」

 

「ウラノス!」

 

せめて天界でも武闘派とされていた寡黙な男神(ヴィ—ザル)正義と秩序の女神(アストレア)月と貞潔の女神(アルテミス)辺りでもいればと嘆くウラノスに珍しく大声を上げたフェルズにようやく反応する

 

「ああ…すまないフェルズ、それで【ヘスティア・ファミリア】は異端児(ゼノス)とどのように接している?」

 

「今のところは良好だといっていい、今も中庭で戯れているよ……これからどうなるかは分からないが」

 

使い魔のフクロウから送られてくる光景から竜女(ヴィーヴル)の少女と【ヘスティア・ファミリア】は今のところ良い関係を気付いているとフェルズは判断したことにウラノスは今のところの問題はこちらであるとして椅子に座り報告を聞く

 

「そうか…彼らが『彼等』の希望になればいいが……」

 

本当に介入してくるかどうか分からない神々のことに悩むより今は【ヘスティア・ファミリア】がどう動き判断するかを注視すべきだとウラノスは判断し、これからしばらくは【ヘスティア・ファミリア】を監視するようにフェルズに依頼する

 

「……カルキ・ブラフマンはどうする?」

 

ウラノスをここまで動揺させる情報を持ち、ギルド本部の隠し通路を把握していた男をどうするかと問うフェルズにウラノスはしばらく考え

 

「監視はつけるな……いや、敵対する、もしくはそれと捉えられてしまうような行為を一切行うな……最悪、それらの行為が敵対する意思があるとして、あの闘いたがりの神々へのオラリオに介入する口実になるかもしれん」

 

最悪の事態を想像するウラノスの神意をフェルズは完全には把握できなかったが「わかった」と同意しウラノスの前から去り、祈祷の間に静寂が訪れ、ウラノスは独り言ちる

 

「……まさか人間が天界に辿り着きあの神々と何らかの関係を持ったとでもいうのか……?ならばカルキ・ブラフマンという男は神々(我々)の想像を超えた埒外の存在だ………」

 

今自分が想像していること‥‥つまりはあの神々が使うとある奥儀をカルキ・ブラフマンという人間が使えるということになれば、カルキ・ブラフマンという人間の強さ・実力は間違いなく『神の恩恵』を受けた冒険者達では遥か遠く及ばず、神々でさえ戦えるものは最上級の神格を持っている神か武神と呼ばれる神や神々の中でも武闘派とされる神だけではないかとウラノスは考える

 

「いや、流石に考えすぎか……」

 

ウラノスが呟いた言葉は『祈祷の間』の闇に吸い込まれていった

 

***

「他者を傷つけ謝罪し怯えるか……本当に幼子と変わらんな」

 

中庭でベルと春姫というらしい狐人(ルナール)の少女と戯れる竜女(ヴィーヴル)の少女を観察しているとき、ベルに抱き着きたがり、じゃれついていた竜女(ヴィーヴル)の少女の爪がベルの腕をかすめ、傷つけ血が流れた

 

観察していた三柱はベルと竜女(ヴィーヴル)の少女がどうするのかと観察していると、竜女(ヴィーヴル)の少女は目に涙を浮かべ、震える手を胸に隠す。それは人を簡単に傷つけてしまう己の手に少女自身が怯えているようであった

 

「うむ!確かに生まれたばかりとはいえ、ソーマの言うとおりだ!が!それ以上に驚くのはベル・クラネルの行動だな!!」

 

確かに人を傷つけ、それに泣き、怯える竜女(ヴィーヴル)の少女は幼子と変わらないと思ったがそれ以上にソーマとガネーシャ、スーリヤを驚かせたのは、その後のベル・クラネルの行動であった

 

「確かにカルキが目を付けただけのことはある‥‥‥まさか傷ついているにもかかわらず爪ごと包み込み、笑いかけるとはな」

 

後はその無償の行為を他人の眼があるところで出来たら本物だと声も口調も変わったカルキ‥‥‥スーリヤが呟き、ため息をつくと

 

「それにしても、何故あの下半神(インドラ)はこの者達‥‥‥異端児(ゼノス)がいることを許容できないのか……嘆かわしいことだ」

 

やれやれといったように首を振るスーリヤに「それはお前が異端児(ゼノス)を許容しているからでは?」と何かとスーリヤとインドラが張り合っているから今回もその延長だろうよと思うが、そんなことは言わないソーマとガネーシャであったが、ふと、ソーマが何かに気付いたようにスーリヤに声を掛ける

 

「そういえば、お前がカルキに入っている間、カルキの魂はどこにあるのだ?アポロンに問答した時のようにカルキの体にカルキの魂がある気配が感じられないのだが?」

 

そういえばそうだとガネーシャも思い、スーリヤを見ると「ああ」とスーリヤは反応し

 

「今頃、天界で自分以外の神が『破壊者』を名乗っていることをヴィシュヌ経由で知ったシヴァに色々と報告しているのではないか?」

 

恐らくシヴァは下界で自分以外の神が『破壊者』を名乗っていることを怒っているだろうなと付け加えるスーリヤに「うわぁ」とソーマとガネーシャは今頃天界でシヴァに報告しているであろうカルキに心から同情した

 

その夜、スーリヤがカルキの体から去り、天界に戻った後、天界で何があり、シヴァから何を聞かれたのかとソーマとガネーシャが尋ねても「………生きた心地がしなかった…………」とだけしか言わず遠い眼をして、思い出したくもないといわんばかりのカルキにソーマとガネーシャはポンっと肩に手を置くことしか出来なかった

 

***

5日後、【ヘスティア・ファミリア】の本拠(ホーム)で春姫と戯れる竜女(ヴィーヴル)の少女…ウィーネを見にミアハ、タケミカヅチ、ヘファイストスが集まっていたが三柱とも唖然としており、ヘスティアが「やっぱり何も心当たりはないかい?」と聞いても三柱とも首を横に振るだけであった

 

「何か知っているとしたら………ギルドかしら」

 

「………確かに、今の我々より何かを知っている可能性がある」

 

「…………」

 

都市の管理機関であり、ダンジョンの管理者でもあるギルドであればエイナやミイシャ達末端の職員には知らされてすらいないダンジョンについての独自情報―――――機密情報として『喋るモンスター』の情報があるかもしれないとヘファイストスとミアハは考えを話すがタケミカヅチは黙って何かを考えているようであった

 

「?どうしたんだい、タケ、さっきから黙って」

 

「うん?ああ、恐らくギルドと同じようにこのことを知っているかもしれない奴らについて考えていただけだ」

 

『!?』

 

タケミカヅチのまさかとしか言いようのない考えにその場にいた誰もが驚き、タケミカヅチを見るがタケミカヅチは「やめておいた方がいい」と首を振る

 

「な、何故ですかタケミカヅチ様!もしかすればウィーネ殿の詳しい情報が得られるかもしれないのに!」

 

「お願いしますタケミカヅチ様っ!」

 

ウィーネと親しくなった命と春姫が教えてほしいと頼むがタケミカヅチは「ダメだ」と拒否するが

 

「………タケ、お願いだ教えてほしい」

 

タケミカヅチを真っ直ぐ見据え教えてほしいと少しでもウィーネのためになる情報が欲しいと目で語り掛けるヘスティア達にタケミカヅチは根負けしたのか「絶対に探りを入れるなよ」と前置きして

 

「…………『喋るモンスター』について何らかの情報を持っていると考えられるのは、ソーマ、ガネーシャそしてカルキ・ブラフマン……こいつらだろう」

 

「えっ、カルキさんですか?」

 

タケミカヅチが告げた意外な人物の名前にベルが間抜けな声を上げ、ヴェルフ、リリ、命もベルと同じような顔をし、カルキを知らない春姫とウィーネは首を傾げるが、カルキがリグ・ヴェーダの神々と繋がっていることを知っているヘスティア、ミアハ、ヘファイストスは顔を険しくさせる

 

「ちょっと…まさかあの神々が関わってるっていうの?」

 

「それは…ギルドに探りを入れるより危険だぞ」

 

「タケェ…いくらなんでもそれは無理だよ」

 

カルキの背後にいるあの神々にケンカを売るような真似なぞやった日には……と苦い顔をするヘファイストス、ミアハ、ヘスティアに「だから言っただろう?」とタケミカヅチが問いかけ頷くしかないヘスティア達をみて重苦しい空気が流れる中

 

「な、なら!交渉として私の首飾りを渡してみたら良いのではないでしょうか!!とても綺麗ですし、きっとソーマ様やガネーシャ様、カルキ殿も話ぐらいは聞いてくれるはずです!!」

 

そう言って部屋から「これならば金ですし相当の価値があるはず!」と命が持ってきた黄金の首飾りを見て

 

「でもそれは命君のお気に入りだろう?そこまでしなくても、もしかしたらダンジョンに手掛かりがあるかもしれない」

 

と返したヘスティア以外は「あちゃー」という顔のタケミカヅチ、瞠目するミアハ、そして

 

「ふぅ‥‥‥」

 

と一つ息を吐いてパタリと倒れ気絶したヘファイストスに『ヘファイストス(様)-!?』と【ヘスティア・ファミリア】の本拠(ホーム)は大騒ぎとなり、「と、とにかく、ヘファイストスの看病はボク達でするから、ベル君たちはダンジョンで手掛かりを探してくれぇー!」とヘスティアが指示を出し、ベル達は慌ただしくダンジョンへと向かう準備をするのであった

 

***

「…………あの首飾り、お前が渡したな」

 

昨日と同じ建物の屋上で早朝から【ヘスティア・ファミリア】を観察していたソーマ、ガネーシャ、カルキであったが、黄金の首飾りによる騒動を見て、あの首飾りについて察しのついたソーマが前髪で隠れた眼でカルキをジトリと視ると

 

「歓楽街での一件で死にかけている彼女が降って来たので緊急措置として首に架けました」

 

一切悪びれもなく言うカルキにソーマはため息をつき呆れ、ガネーシャは物惜しみしない奴だと笑う

 

「ガネーシャ、分かっているのか?あの首飾り一つで貧しい小国ならば一つは買える程の価値があるのだぞ?」

 

「なに!スーリヤならば後生大事にするより誰かに施すことを善とする…そうだろう、カルキ!」

 

「ええ、先日、あの首飾りを造ったトヴァシュトリ神からは叱責されましたがスーリヤ神からは何も言われませんでした」

 

そういう問題かと聞くソーマにそういう問題だろうとガネーシャとカルキは答えるが、それよりもとカルキは話を変え

 

「流石は武神であるタケミカヅチ神ですね、気配を消して視線も感じられないようにしていた筈でしたが」

 

「恐らくはこちらが一瞬タケミカヅチを見た時に気付いたのだろうがな……」

 

「うむ!やはり極東の神は我々と違ってイカれているな!!」

 

ほんの一瞬視線を感じただけで視線の正体を把握してみせたタケミカヅチに感服・感心するカルキ、ソーマ、割と失礼なことを言うガネーシャであったが、準備を終え、ダンジョンに向かう前に、とある酒場のエルフに助っ人を頼みに行こうとしているベル達をみて

 

「…………カルキ、事態はいつ動くと思う?」

 

「遅くても明日、早ければ今日にも動くかと」

 

「シャクティにそれとなく準備をするようには言ったが……どうなるか」

 

恐らく近いうちに何かが起きると二柱と一人は確信に近いモノを感じ取っていた……そしてその確信はその日の夕方、当たることになる




クソッ!どうしたら自然に『ご注文はインドですか』を躍らせることが出来るんだ……このままだとカルキが一人でダイダロス通りで人に見られながらHo〇 Limitをヴァーユの風を色々な方向から吹かして、サビの爆発はインドラの雷、アグニの炎、スーリヤの光のド派手エフェクトで歌って踊ることになる……






今回の被害者はウラノスとヘファイストス、なおヘファイストスの場合は間接的であり直接的には命のやらかしの模様

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