ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか   作:その辺のおっさん

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in天界

維持神・太陽神・冥府神「さて……この事態どう動くかな……………」

下半神「……………は?『最強』を名乗ってるのがロキとフレイヤの所だと?」




inオラリオ

カルキ「……………何か悪いことが起きそうな気がする」

ソーマ・ガネーシャ・カーリー「何か愉快なことが起こる気がする!!」




第38話

オラリオの中心部———————中央広場(セントラルパーク)にオラリオ中の注目が集まっていた。広場にはギルドから待機命令を出されたが何か情報が欲しいと集まった冒険者だけでなく、未知の出来事に心躍らせ野次馬根性ではしゃぐ神々、モンスターの地上進出に恐れ不安げな民衆、彼らが注目しているのは広場の中で最も屈強な冒険者の集団——————【ガネーシャ・ファミリア】の精鋭達だった

 

「――――――調教(テイム)!?討伐対象を!?」

 

が、その討伐隊の間には動揺と困惑によるざわめきが広がっていた

 

「どういうことだ!今は緊急事態ではないのか!?」

 

「そ、それが主神(ガネーシャ)様からギルドからの密書を手渡されて…………………ご、極秘に行えという指示が」

 

主にイルタと名前を『ナントカ』と呼ばれ「自分はモダーカですっ!?」と突っ込むモダーカを中心に不可解かつ、理不尽なギルドの指示にイルタを中心に言い争いが起こる中、さらに自称『喋る火炎魔法』、【ガネーシャ・ファミリア】のお祭り男のイブリが火に油を注ぐ真似をし、

 

「イブリ黙れ!?お前は地上居残り組だ!!」

 

「うわあああああああああああっ!!聞いてねえよおおおおおおおおおおおおおおお皆頑張れええええええええええええええええええええええええええッッ!!」

 

「お願いですから冷静になってくださいっ!?あとイブリうるせぇ!!」

 

イブリの言動がイルタの激昂に拍車をかけ、お祭り騒ぎ——————————【ガネーシャ・ファミリア】恒例の光景ではあるが今はそんな場合ではないとモダーカや他団員達が慌てふためき、周囲のオラリオ市民達の間に若干不安そうな空気が流れるが

 

「イルタ、落ち着け、他の者達もだ」

 

騒がしい【ガネーシャ・ファミリア】の中で唯一冷静なシャクティが口を開くとあれ程騒がしかった【ガネーシャ・ファミリア】の団員達が静かになる

 

「ガネーシャは何と言っていた?」

 

「ギ、ギルドの指示に従えと………」

 

「そうか…………」

 

【ガネーシャ・ファミリア】の団員達の中で唯一、ガネーシャから異端児(ゼノス)について聞かされており、【ヘスティア・ファミリア】が異端児(ゼノス)を匿っていて、【イケロス・ファミリア】が異端児(ゼノス)をオラリオ外に売りさばいていることを知っているシャクティは少し目を伏せた後、顔を上げ

 

「モンスター達には調教(テイム)を施す。殺さず、生け捕りにしろ」

 

「姉者、いいのか!?」

 

「私達の主は【群衆の主(ガネーシャ)】だ。彼を信じ、彼について行く。違うかイルタ?」

 

とある男のせいで天界にいた頃の『善神』とは言えない闘争や殺戮を楽しむ性格に戻りかけているガネーシャのことはイルタ達には伏せつつ、彼らのガネーシャへの信頼と忠誠を喚起させることに心苦しく思いつつも「出発する、準備しろ!」と命令を出し、団員達が鬨の声を上げる中、シャクティはふと、先程別れた【ガネーシャ・ファミリア】の居候を思い出す

 

「(そういえば、あの男、今回はどう動くのか…………)」

 

暴れたら間違いなく自分達ではどうしようもない男がこういう状況で全く姿を見せないことに不安を覚えつつも、今はこの事態を鎮静化する方が先決だと、ダンジョンを睨み、準備が終わったと団員から報告を受け

 

「出るぞっ!」

 

シャクティの号令と共に第一級冒険者を含む【ガネーシャ・ファミリア】の精鋭たちへ一際膨れ上がる民衆の声援が響き渡る中、

 

「なるほど…どうやらベルはサポーターに扮して参加するようだな………賢者の策か」

 

『バベル』を封鎖する【ガネーシャ・ファミリア】の居残り組が柵の代わりになっているにも拘らず、冒険者やオラリオ市民、神々ですら気付かない隠形術を使い、堂々と『バベル』に侵入したカルキは『バベル』の中から、中央広場(セントラルパーク)での喧騒を眺める

 

「しかし……あの後ろにいる3人は何が目的だ………?」

 

【ヘルメス・ファミリア】の団長、歓楽街にいた春姫と一緒にいたため、見逃した【イシュタル・ファミリア】の団員だったアマゾネス、【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)の際、ベル達【ヘスティア・ファミリア】の助っ人としてカルキと共に参戦した『豊穣の女主人』の店員であるエルフ…………正直、何故姿を消し、【ガネーシャ・ファミリア】の後をつけているのか分からない一団にカルキも疑問に思いつつ

 

「まあ、放って置いていいだろう」

 

()()()()()()()しかない3人がどう動こうと問題はないだろうと判断したカルキは、ダンジョンに突入する【ガネーシャ・ファミリア】と3人の後ろを追いかけていった

 

***

「ベル君………」

 

「ベル………」

 

「ベル殿…」

 

【ガネーシャ・ファミリア】が出発した中央広場(セントラルパーク)、【ガネーシャ・ファミリア】にサポーターの変装をして紛れ込み、ダンジョンへと向かったベルの後姿を見送った【ヘスティア・ファミリア】の面々が不安げに『バベル』を見ている中

 

「リリルカ・アーデ…………」

 

「ソ、ソーマ様!?」

 

「こんっ!?」

 

いつの間にかソーマが【ヘスティア・ファミリア】の面々の後ろに来ており、ソーマの接近に気付かず、唐突に背後からソーマに話しかけられた元【ソーマ・ファミリア】の団員だったリリが驚き、春姫が特徴的な声を上げ、ヘスティア、ヴェルフ、命がギョッとしていると、ソーマは顔の前に人差し指を立て、静かにするようにジェスチャーで伝えると

 

「付いて来い…………」

 

それだけ言うと、こちらを一瞥することもなく路地裏に向かって歩き出したソーマをヘスティア達は慌てて追いかけるが、何故か一定の距離までしか追いつけないでいると

 

「おお、ヘスティアではないか!朝ぶりだな!!」

 

『ガネーシャ(様)!?』

 

ソーマについて行った裏路地にいたまさかの神物に【ヘスティア・ファミリア】の誰もが驚きを隠せずにいる中、以外にもソーマが口を開き

 

「リリルカ・アーデ、俺の【ファミリア】の元団長ザニスを覚えているか?」

 

「え、ええ、覚えていますが……」

 

何故、今、ソーマが半殺しにした元【ソーマ・ファミリア】の団長の名前が出てきたのか分からないリリが首を傾げ、そもそもザニスのことを知らないヘスティア、ヴェルフ、命、春姫が首を傾げ、リリがザニスの特徴を説明すると、ヘスティアとヴェルフが「あー、あの時サポーター君(リリスケ)を連れて行った」と納得し、命と春姫に簡単な説明をし終えるとヘスティアが代表してソーマに尋ねる

 

「それで、その君の所の元団長がどうしてこのタイミングで出てきたんだい?」

 

「うむ!俺にも説明してくれソーマ!!」

 

実はソーマから何も説明を受けていなかったガネーシャもヘスティアの問いに乗じて質問すると

 

「実は俺も昨日ザニスから聞き出したばかりなのだが、どうやらザニスはこの騒動………人の言葉を話し、理性のあるモンスター、異端児(ゼノス)について以前から【イケロス・ファミリア】を通じて知っていたようでな」

 

『!?』

 

「ふむ、それで?」

 

動揺する【ヘスティア・ファミリア】をよそにあくまでも冷静なガネーシャが続きを促し

 

「ザニスはリリルカ・アーデの『変身魔法』を利用して異端児(ゼノス)をおびき出し、【イケロス・ファミリア】が捕まえた後、俺の【ファミリア】が所有する酒蔵のある『ダイダロス通り』から秘密裏にオラリオ外の物好きな者共に売り払い金を稼ぐつもりだったようでな」

 

「なるほど、そういうことか」

 

「ちょ、ちょっと待って………どういうことだい!?」

 

ソーマの説明を聞き、ニヤリと笑うガネーシャにヘスティアが何のことかわからず叫ぶと

 

「つ、つまり、そのザニスという御仁が【イケロス・ファミリア】と共にウィーネ殿やグロス殿達を狙っていて」

 

「【ファミリア】の団長という立場を利用して秘密裏に【ファミリア】で造った酒と一緒にオラリオの外に売ろうとしていたということは」

 

「『ダイダロス通り』に【イケロス・ファミリア】、敵のアジトに通じる道があるってことですね!!」

 

命、ヴェルフ、リリがつなぐように説明するとヘスティアと春姫が「な、なるほど………」と感心すると

 

「どうして眷属がここまで説明しないと分からないのだ……………?まあ、いい‥……今から『ダイダロス通り』を調べようと思っているのだが…………来るか?」

 

ソーマの問いに「愚問だな!!」とガネーシャはポーズをとりながら答え、ヘスティア達も力強く頷くと『ダイダロス通り』へと向かうのであった

 

***

時を少し巻き戻し、カルキがガネーシャからイケロス及び【イケロス・ファミリア】の殲滅を命じられた頃

 

「ロキ……あの人と敵対したらダメってどういうこと………?」

 

【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)『黄昏の館』にある一室、ギルドからの指令で本拠(ホーム)で待機している【ロキ・ファミリア】の幹部が集まる部屋で意を決したようにアイズがロキに質問していた

 

「んー?まあ、もしものための保険や、保険」

 

「えー?何それー?」

 

アイズの質問をはぐらかそうとするロキにティオナが文句を言うが、彼女の言葉は【ロキ・ファミリア】の幹部の総意であった

 

「チッ…ロキがどう言おうが関係ねぇ、あの野郎には借りがある………一発殴らねえと気が済まねぇ」

 

「ベート程じゃあないけど、私も一発腹に膝を入れたいわね………よくも私の団長を馬鹿にしてくれやがったものよ」

 

「ベ、ベートさんもティオネさんもロキがああ言ってるんだし止めた方がいいっすよ……」

 

カルキによって地雷を踏みぬかれた挙句、手を抜かれたうえ、放り投げられ地面に2回叩きつけられたベート、『豊穣の女主人』の一件を今だ根に持っているティオネをラウルが宥めているのを見て

 

「じゃがのう、ロキよ、『豊穣の女主人』の一件でベートやティオネだけでなく団員達のカルキ・ブラフマンへの敵意は強いぞ」

 

「ガレスの言う通りだ、今は抑え込めているが、次にあの男が火をつければ我々でも押さえられないかもしれない」

 

【ロキ・ファミリア】を馬鹿にされて怒るということは、ある意味では【ロキ・ファミリア】に愛着を持ってくれていることになるので良いことではあるのだがなと、古参幹部であるガレスとリヴェリアがロキにカルキと敵対することを禁止した意図を説明させようとすると、ロキは観念したように大きくため息をつくと

 

「………………恐らく、いや、間違いなくカルキ・ブラフマンと闘えばウチら【ロキ・ファミリア】とあの色ボケのところ……【フレイヤ・ファミリア】が同盟を組んでも一方的に蹂躙される……いいや、このオラリオにいる全ての冒険者、一般市民、ソーマ、ガネーシャ、タケミカヅチを除いた神の力(アルカナム)を解放した神々が相手になっても良くて相打ち、最悪全滅させられる…………そんくらいの差があるわ」

 

『………………………は?』

 

ロキのカルキ・ブラフマンへの過大評価というしかない評価に【ロキ・ファミリア】の幹部たちは固まるが、フィンだけは顔を険しくし、ロキが数日前に話していたことから懸念していたことを問う

 

「ロキ‥……それはつまり、カルキ・ブラフマンは怪人(クリーチャー)の【上位存在】ということかい?」

 

『ッツ!?』

 

フィンの話した懸念に【ロキ・ファミリア】の幹部達は凍り付くが

 

「いいや、怪人(クリーチャー)やない、普通の人間や」

 

「じゃ、じゃあ、やっぱり『神の恩恵』を貰って………」

 

「いいや、レフィーヤ、()()()()()()()()()()()()()()()、レフィーヤが朝持って来たこの【ヘルメス・ファミリア】からの密書の内容が……あの胡散臭い男神(ヘルメス)の考えが正しいなら、カルキ・ブラフマンはこの数千年、誰も成し遂げたことのない偉業を成し遂げ、神々に認められた真の傑物や」

 

レフィーヤに答えたロキは手に持っている【ヘルメス・ファミリア】からの密書――――『カルキ・ブラフマンは人の身で天界に至り、『リグ・ヴェーダ』の神々の誰かに弟子入りし、他の神々とも何らかの関係を持った可能性がある』という一見信じられないような内容を思い出し、顔を険しくさせるのであった

 

***

ロキがカルキの実力に限りなく正解に近くまで気付き、ソーマとガネーシャ、【ヘルメス・ファミリア】が『ダイダロス通り』で【イケロス・ファミリア】のアジトを探して、ロキの話の衝撃から持ち直した【ロキ・ファミリア】が『ダイダロス通り』で何かが起きると確信し、隠密行動をし始めた頃

 

「しまった……………」

 

ダンジョン18階層にある『リヴィラの街』、武装したモンスター、異端児(ゼノス)によって廃墟となった冒険者の街には、今、立っている人間はカルキしかおらず、倒壊した建物に巻き込まれた逃げ遅れ、建物の下で呻く冒険者や、異端児(ゼノス)に殺された【イケロス・ファミリア】の死体が転がり、リヴィラの街周辺では武装したモンスターとモンスターが殺し合いをしている中で、【ガネーシャ・ファミリア】の精鋭やベル、三人組の影は姿かたちもなく、カルキは自分のしでかしたことに気付き、珍しく呆然とした声で呟く

 

「ベル達を追い抜いていた…………‥……」

 

 




カルキ「ベル達は行ったな………ふむ、鍛錬ついでに壁でも走りながら行くか」

ベル・ガネーシャ・ファミリアの皆さん・アスフィ・リュー・アイシャ「今、風が吹いたような………?」

18階層

カルキ「あれぇー!?」←追い抜いていたことに気付いた

カルキさん、どうやらベルやゼノスを見極めようと思って気が逸ったらしく、やらかした模様




ロキさん、知ってますか?この人(カルキ)、ブラフマー神から『一部を除く神々、精霊及びその眷属からの攻撃無効化』っていう祝福貰ってんですよ(なお、ガネーシャ、ソーマ、タケミカヅチ、インドの神々は問答無用で祝福を貫通してくる模様)

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