ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか   作:その辺のおっさん

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次回予告でタケミカヅチとイチャイチャするといったな………あれは嘘だ



期待している方がいるかどうか分かりませんがすみません!!どうしても書きたいことが多くて文量が増えたからキリの良いところで切ります

本当にごめんなさい!!許してください、なんでもしま(ry




第42話

「『人も怪物も助けを求めているなら助ける』か………ならばそれを例え他人から非難されようと笑われようと曲げるなよベル」

 

何故モンスターを助けるのかというベルの答えに「面白い」と笑うカルキはベルにその思いを貫いてみせろと語り、ディックス達【イケロス・ファミリア】に向き合うとディックスや【イケロス・ファミリア】の団員達はカルキに怯え生唾を飲むが

 

「しかし、【イケロス・ファミリア】を間引けとガネーシャ神から言われたが………ここで自分が手を下すのは無粋だな」

 

「は?何言って………」

 

『オオオオオオオオオオオオッ!』

 

雄黄の眼から涙を流し、ベルに謝罪と感謝の言葉を絞り出した蜥蜴人(リザードマン)はディックスに向き合うとモンスターの咆哮を上げ襲い掛かり、蜥蜴人(リザードマン)以外の異端児(ゼノス)達も今だ呪詛(カース)にかかったままであるが、【イケロス・ファミリア】の団員達へと襲い掛かっていく

 

「どうやら、お前の意思が届いたようだな………お前はどうする、ベル?」

 

「ッ!」

 

混沌となる人工迷宮(クノックス)部屋(ルーム)を眺めながら膝をついているベルに声を掛けるとベルは立ち上がり、蜥蜴人(リザードマン)の後に続いてディックスに向かっていく

 

「誰も進まず、停滞している状況で誰よりも早く飛び出し、諸人を己が意図せずとも動かす………‥それもある意味では『英雄』たる者の素質か」

 

それが今回は『人』ではなく『モンスター』だったというだけのことかとカルキは蜥蜴人(リザードマン)と共に『悪』を倒そうとするベルを眺めながら嗤った

 

***

「で?『インドラの槍』とは何なのだ、主神殿?」

 

タケミカヅチを『ダイダロス通り』で見かけたという情報を得たヘスティア、ミアハ、ヘファイストスは団員を率いタケミカヅチを探していたところ、【ヘファイストス・ファミリア】の団長である椿がヘファイストスに尋ね、他の者達も同じ気持ちなのか神々を見る

 

「………一言で言うなら天界に存在する神造武器の一つよ」

 

椿からの質問に観念したかのようにヘファイストスが答え

 

「天界で『神々の王』、『最強の武神』と称され恐れられる武神インドラが持つ槍……手にした者に勝利の加護を与え、真名解放すれば、神を消滅させ、世界を焼き払う天界最強を謳われる豪槍だ」

 

それ故に神々はこのオラリオに『インドラの槍』が顕現することを恐れているのだとミアハが補足する

 

「で、でも、どうしてタケミカヅチ様がカルキ様と闘おうとするんですか?」

 

その槍とタケミカヅチが結びつかないとリリが聞くが

 

「………その槍の真名解放をカルキ君が出来る可能性があるからさ」

 

『!!?』

 

人間が神の武器である神造武器を使うという前代未聞の異常事態(イレギュラー)に聞いていた誰もが驚愕する

 

「だから……だから早くタケを見つけなきゃ」

 

そう真剣な顔をしてヘスティアの呟いた言葉は『ダイダロス通り』に吸い込まれていった

 

 

「チッ………これでは準備運動にもならんな………」

 

『ダイダロス通り』の路地裏、刀で肩を叩きながらポツリと呟きながら佇むタケミカヅチの足元には20名近くの冒険者が倒れ伏していた

 

「しかし、やはり第一級冒険者といえこの程度、所詮強者といっても人間の範疇でしかないな」

 

そう言って右足でタケミカヅチが転がすのは【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】アレン・フローメルを含む獣人を中心とした【フレイヤ・ファミリア】の斥候部隊であった

 

彼らはフレイヤからイケロス及びタケミカヅチ捜索の命令を受け、『ダイダロス通り』をしらみつぶしに捜索していたところを隠形で姿を消していたタケミカヅチに奇襲されたのである

 

「……………」

 

彼らは誰一人血を流しておらず力なく倒れ伏しており、タケミカヅチが峰打ちだけで彼らを制圧したことを物語っていた

 

「ああ────────カルキ・ブラフマンとの闘争が愉しみだ」

 

そう言い残してタケミカヅチが姿を消した数分後、フレイヤを含む【フレイヤ・ファミリア】の本隊が倒れ伏すアレン達を見つけるのであった

 

***

「…………随分早く終わったな」

 

あっさりと終わった【イケロス・ファミリア】と異端児(ゼノス)の戦いに拍子抜けしたようにカルキが呟きながら、足元に来た【イケロス・ファミリア】が使っていた呪道具(カースウェポン)を拾い上げる

 

結果的には【イケロス・ファミリア】は異端児(ゼノス)達に1分も経たずに塵殺され、一人だけ逃げようとして這いずっていた男はカルキが床を蹴り砕き、散弾のように飛ばして絶命させた。団長であるディックスはベルの一撃を受けて異端児(ゼノス)を閉じ込めていた黒檻に吹っ飛ばされていた

 

「がっっ、あ…………痛ええええええええええええ……………!?」

 

が、どうやらまだ息があるらしい、仕留めそこなったベルに詰めが甘いと少し呆れつつも眺めていると、蜥蜴人(リザードマン)がとどめを刺そうとし、ベルが紅石を取り返そうと参戦し、逃げ惑うことしか出来ないディックスがニヤリと笑うと

 

「────────壊れちまうぜ?」

 

「「ッ!?」」

 

そう言って紅石を懐から取り出すとベル達に突き出し、ベル達は攻撃を中断せざるを得なくなる

 

「そんなに大事か?な…‥‥」

 

『ッ!!?』

 

「はぁ………」

 

紅石を縦穴に投げ込もうとしたディックスだったが、最後まで言うことは出来ず、右腕だけ残してビシャッと子気味いい音を残して辺り一面にぶちまけた血だけを残して消滅し、轟音と共にディックスの後ろにあった超硬金属(アダマンタイト)製の『扉』が崩れる

 

その光景に絶句していたベル、異端児(ゼノス)、フェルズが恐る恐るそのあり得ない光景を引き起こしたであろう人物の方を見ると、拾い上げた呪道具(カースウェポン)を投擲したカルキがため息をついていた

 

「(なんだ……この男は…‥……)」

 

フェルズは内心、このカルキ・ブラフマンという男の底知れぬ実力に恐怖を抱いていた

 

「(ウラノスを驚愕させる神々を知っているだけでなく、なんだこれは………この『扉』は超硬金属(アダマンタイト)製だ……それをただの投擲で壊すなど………そんなことが、そんなことを出来る人間がいるはずがない!!)」

 

しかも、この男はまるでこの程度は簡単にできるといわんばかりの雰囲気を出しており、数百年生きた屍となった自分が見てきた、かつての『最強』、【ヘラ・ファミリア】と【ゼウス・ファミリア】にいたレベル9とレベル8の冒険者すら霞む実力を有していると直感し、現在のオラリオにいや、現在と過去の世界に彼に勝てる人間はいないと戦慄する

 

その場にいるカルキ以外の存在がカルキの埒外の実力を見せつけられ固まっていると

 

『────────アアアアアァ!!』

 

突如叫び声を上げたウィーネが暴れだし、まるで何かを恐れるように何かから逃げるように暴れだす

 

「む………どうやら、あの男の飛び跳ねた血があの竜女(ヴィーヴル)心的外傷(トラウマ)を刺激したらしい」

 

「いや!カルキさん、そんな冷静に分析してる場合じゃ………!」

 

「クッ……リド、グロス、ウィーネを止める!手伝ってくれ」

 

『落ち着け!ウィーネ!!』

 

ベルとフェルズ、異端児(ゼノス)が錯乱したウィーネを落ち着かせようとするが、ウィーネはベルでさえ近づくと恐怖で暴れ、更にはカルキが壊した『扉』に向かって行ってしまう

 

「待って!ウィーネ!?」

 

「────────不味い!?リド、グロス、ここは任せた!!」

 

床に落ちた紅石を拾い、ベルがウィーネを追いかけ、それを見たフェルズがその後を追い、通路に飛び込んでいく。異端児(ゼノス)達はここに残るものとベル達を追うものと呪盾に分かれる中、カルキは彼らを追わず

 

「────────それは一体どういう意味でしょうか」

 

そう呆然と呟いた後、彼等を追って通路に走っていくのであった

 

***

「あーっ!もう、タケの奴は何処に行ったんだっ!?」

 

『ダイダロス通り』にヘスティアの叫びが響く

 

「たぶんですが……タケミカヅチ様は隠形を使っているかと………」

 

「うん、タケミカヅチ様………隠形使ったら私達見つけられないから………」

 

ヘスティアの叫びに命と千草が答え、「そうなのか?」とヴェルフ達が桜花に聞くと桜花は頷き肯定する

 

「これは………本当にタケミカヅチはオラリオのことなど考えずに戦うつもりだな」

 

「ええ………こんなに自己中心的な武神はインドラだけで十分なのに」

 

そう話していると

 

「む────?」

 

最初に気付いたのは椿

 

「────────!」

 

『今のは?』

 

次に気付いたのはレベル2のヴェルフ、命、桜花、千草、ダフネ、カサンドラ、ナァーザ

 

『!』

 

最後に耳をピンと立たせた獣人に化けたリリと春姫が反応すると、人々の悲鳴がはっきりと聞こえる

 

「今のは!?」

 

「とにかく向かうぞ!遅れるなよ!!」

 

何事かと声を上げると椿が先行し、他の者達は遅れないように走りだす。逃げてくる人々とすれ違いながら、流れの元に急行すると

 

「なっ……!?」

 

「モンスター………!」

 

「こんな時にか………っ!」

 

ダフネとカサンドラ、桜花がモンスターが地上にいることに驚愕し、

 

「しかも竜女(ヴィーヴル)とはな………」

 

『『────────ッツ!?』』

 

主神を守るべく素早く抜刀し、構える椿の呟いた言葉にヘスティア、命、ヴェルフ、リリ、春姫、ヘファイストス、ミアハが驚愕する

 

『────────アアアアアアアァッ!』

 

「いかんっ!?」

 

「ミアハ様っ!」

 

こちらを見るなり突っ込んできた竜女(ヴィーヴル)にいち早く反応した椿がヘファイストスを守り、ナァーザが悲鳴を上げる中、竜女(ヴィーヴル)は真っ直ぐに春姫へと向かう

 

「「「春姫(殿)(ちゃん)!!」」」

 

桜花、命、千草が反応の遅れた春姫の身を案じ叫ぶが

 

「ウィーネ様………?」

 

押し倒された狐人(ルナール)の、竜の娘と誰よりも長く触れあった少女はその醜悪なモンスターがウィーネだと確信し、その変わり果てた姿に翠の双眼に涙を浮かべる

 

「────────ウィーネッ!!」

 

そして、さらに暴れようとするウィーネから春姫をかばいベルが飛び込んできた

 

***

「ほう……これは………」

 

カルキが通路を通り、地上に戻った時、やたら騒がしい一角があったので、建物の屋上に飛び移り、移動してみると、そこには

 

槍に縫い付けられた竜女(ヴィーヴル)、その前に立つベル、【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】の幹部たちとその主神をはじめとしてオラリオ全ての【ファミリア】の冒険者とその主神、そしてほぼ全ての民衆が、ギルド職員が向かい合っていた

 

「さあ……どうするベル?他者の評価を気にして『人工の英雄』になるか、『名誉』や『名声』などいらないと『人工の英雄』の椅子など座らないと蹴り飛ばし、己の意思を貫き通す『真の英雄』の『器』となるか…………」

 

ニヤリと笑ってカルキが見ていると、ベルはモンスターを背にし、オラリオに冒険者に対峙した

 

「────────ああ、どうか照覧あれ、ヴィシュヌ神よ………時代を担う英雄になれるかは今だ未知数ですが、少なくともベル・クラネルは『英雄』の『器』だと、このカルキ・ブラフマンが認めましょう」

 

それを見てカルキは天界にいるヴィシュヌに手を広げ報告していると、どうやらウィーネは槍の拘束を解き、ベルは追いかけ、異端児(ゼノス)は冒険者達の足止めをしようと理性のないふりをしながら冒険者達に襲い掛かっていた

 

「しかし、あの状態ではすぐに終わろう………む?」

 

カルキの見立て通り、【フレイヤ・ファミリア】は参加していないようだが、いくら異端児(ゼノス)が《強化種》であるとはいえ、多勢に無勢、どうやら【ロキ・ファミリア】やギルドは討伐ではなく捕獲をしているようであるが10分も経たぬうちに半数が捕獲され、フェルズの作った人形兵(ゴーレム)も破壊され、もう少しで終わろうかとしていたところに

 

『ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

雄たけびを上げながら武装した漆黒の猛牛(ミノタウロス)が現れ、冒険者を蹴散らしていき、【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者達と闘い始めるのを眺める

 

「『強烈な憧憬』を持ったモンスターが異端児(ゼノス)となるか」

 

カルキはあの漆黒のミノタウロスがかつてベルが倒したミノタウロスだと気付いた

 

「『器』を示したベルへの褒美にちょうどいいか………」

 

そう呟いたカルキは建物から飛び降り、ミノタウロスへと向かう

 

***

「ふむ………そのミノタウロス、お前らに殺させるわけにはいかないな」

 

戦場に何故か通った男の声に、その場にいる誰もが反応し、神も、人間もモンスターでさえもその男を見る

 

神々のうち、ヘスティア等のカルキの背後にいる神々を知っている神は顔を青ざめ、何も知らない神は「まーたイキリ発言かよ」と第一級冒険者に勝てるはずがないとニヤニヤと笑い、ごく一部の神は「ようやく来たか」と狂喜する

 

【ロキ・ファミリア】の一部と集まったオラリオの民衆からはカルキに対して先ほどベルに向けられた敵意と害意が向けられるが、向けられている当の本人は全く気にした様子もなく

 

「ああ、気にするな、別に自分が殺そうというわけでも見逃すわけでもない………ただ、褒美にはちょうどいいと思い、つまらん奴らと戦わせるより良いと判断しただけだ」

 

ロキ・フレイヤの第一級冒険者を「つまらない奴ら」と評したカルキに両【ファミリア】から殺気が向けられるが

 

「当然だろう?『英雄の器』たる者と復讐に囚われた阿呆、『武人』の本質もわからぬ愚者、『美の神』に陶酔し、己が最も大切にしなければならないモノを失う馬鹿共に『名誉』と『名声』を求めるだけの紛い物…………どちらを尊ぶかなど考えずとも分かる事だ」

 

当たり前のことを言わせるなと言外に言うカルキに民衆や冒険者達から、「調子に乗るな!」とか「お前なんかあっという間に殺されちまえ」などの罵声が飛ぶ中

 

「フレイヤ・ロキの【ファミリア】が()()なんだよ!!」

 

その言葉を名も知らぬ者が発した瞬間、カルキは反応し

 

「ああ………先ほど『槍を授ける』と仰ったのは、このためですか────────インドラ神よ」

 

『ッツ!?』

 

カルキが言った神の名に神々が顔を強張らせたその時、オラリオの東区画に空からナニカが落ちて東区画が消滅する。その光景に神も人も絶句するが、カルキが右手を突き出すと、その落ちてきたナニカは幾何学模様を描きながら飛び、カルキの手に収まる

 

「クハハハ!懐かしい、懐かしいのォ!!」

 

「ほう………やはり素晴らしいな」

 

「見事なものだ…………さて神酒の用意をしなければな」

 

「ああ────────これは滾る、早く戦いたいものだ」

 

カルキが手にしているのは天にいる神の一柱、その配下の神を従える姿から『神々の王』と称えられる最強の武神が所有する漆黒の刀身をした身の丈を超す大槍、真名解放すれば神を消滅させ、世界を焼き払う天界屈指の威力を誇る神造武器

 

「『インドラの槍』……………」

 

オラリオにいる神々のうち、その槍を見て歓喜するのは4柱のみ、男の実力に気付いていた神々は最悪の事態に唇をかみ、男を嘲笑っていた神々は男の異様さに気付かされ戦慄する

 

カサンドラが見た『予知夢』が実現しようとしていた

 




次回こそタケミカヅチとのラブラブデートです

いや、本当に…………


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