ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか   作:その辺のおっさん

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戦闘描写が書けないことを悩む………これでええかな?


どこかで躍らせたいがどこで躍らせたらいいのかが分からないジレンマよ…………


第43話

「東区画が消滅した!?」

 

「ひ、被害は………?」

 

「恐らく、助かった者は誰も………!」

 

「馬鹿な!?東区画には万に近い人々が住んでいるんだぞ!?」

 

ギルド本部では突然の事態に混乱していた

 

「一体どうなっている!?私の、私のオラリオが」

 

「落ち着け、ロイマン」

 

『!?』

 

騒ぎ立てるロイマンを一言で静めた存在にギルドにいる誰もが驚愕する。なぜなら、そこにいるのは本来、『祈祷の間』でダンジョンへの祈祷を行い、その絶大な神威でモンスターの地上進出を防いでいるギルドの主神ウラノスだったからだ

 

「最早、これ以上の被害を出さないためには私も出るしかあるまい、今すぐにオラリオ全体へ戒厳令を出せ、それから東、西、南区画を放棄、全ての冒険者・民衆を北区画へ避難させ神々の『神の力(アルカナム)』を解放する許可も出し、障壁を造るように通達しろ………急げ」

 

ウラノスからの命令に「はっ」とギルド職員達は答え、直ぐに蜘蛛の子を散らすように動き始める

 

「こうなった以上、どこまで被害を押さえられるか………」

 

そう呟いたウラノスは『ダイダロス通り』に向かって走り出した

 

***

「嘘だろ………」

 

「あのイキリ野郎、人間の姿をした化物じゃねえか………っ!」

 

「それは人間が使っていいもんじゃねえよ………!」

 

『インドラの槍』を持つカルキを目にした神々はザワザワと騒ぎ、冷や汗をかく。今まで「常識のないイキリ野郎」と馬鹿にし、いくらレベル2を含む冒険者を100名殺したとはいえ、第一級冒険者、しかもフレイヤ・ロキの両【ファミリア】にケンカを売る真似をしたのを見て、「あーあ、自分が強いって勘違いしちゃったわけねー、プー、クスクスw」と嘲笑ったら、その「イキリ野郎」が神造武器を使うという『下界の未知』という言葉では片づけられない異常事態(イレギュラー)に戦慄し

 

「まさか、あの槍を本当に下界で見ることになるなんてね………」

 

「おいおい……マジで闇派閥(イヴィルス)も地下勢力も可愛く見えちまうぜこれじゃ」

 

フレイヤとヘルメスは頬を引きつらせながら何とか笑い

 

「何ということだ………っ!」

 

「ねぇ、ヘファイストス……もしも君の『盾』があったら止められるかな?」

 

「一回だけなら防げるけど2発目は無理よ………」

 

最悪の状況になってしまった事にミアハは顔を歪め、ヘスティアはヘファイストスが天界で造った『世界を内包する盾』ならば止められるかどうか聞くが一回だけという答えが返ってくる

 

「あの人間、よりにもよってインドラと繋がっとたか………っ!」

 

ヘルメスから送られてきた密書でカルキが『リグ・ヴェーダ』の神々の誰かとつながっていることを知っていたロキは双眼を見開き、苦渋の表情を浮かべる

 

「………ロキ……あの槍は……アレは……何だ……‥?」

 

そのロキにどうにかという様子でフィンが尋ねる。が、その様子は普段の余裕のある冷静な【ロキ・ファミリア】の団長の姿ではなく、冷や汗をかき、恐怖になんとか耐えている姿であった

 

が、それは彼だけではなくリヴェリアやガレス、アイズ、ベート、ティオネ、ティオナ達【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者だけでなく、オッタル、ガリバー兄弟、ヘグニ、ヘディン、主神の命令で一時的に前線に戻って来たミアといった、今だ戦線に復帰していないアレンを除いた【フレイヤ・ファミリア】の第一級冒険者の面々でさえ、フィンと同じ様子であり、他の冒険者や民衆は恐怖で指一本動かせない有様であった

 

彼らが見るのはカルキが手にしている一本の大槍、槍から放たれる神威は人々を圧倒し、万人を押し黙らせ、その槍の前では下界にある、ありとあらゆる武器は小枝同然であり、防具は薄っぺらい紙で出来ていると錯覚させるほどの威容であった

 

「………………」

 

『ッツ!?』

 

その槍をカルキは軽々と片手で持ち上げ、上段までもっていき、ピタリと止める

 

「ッ!皆!逃げ……!!」

 

次にカルキが何をするのか気付いたヘスティアが叫ぶが、それよりも早くカルキが槍を振り下ろし、槍から放たれた斬撃が走り、フレイヤ・ロキの【ファミリア】が最強だと叫んだ人間とその人間の言葉に同調した民衆が斬撃に呑まれ、肉片も血痕も残さず消し飛び、咄嗟に神々は下界で許される神の力(アルカナム)を解放し、眷属や民衆を守ろうとするが、斬撃の衝撃だけで嵐の中木の葉が舞うように吹き飛ばされた

 

***

「フィン……ガレス………リヴェリア………ロキ………皆………?」

 

瓦礫の山となった『ダイダロス通り』の一角で呆然と辺りを見回し、血を流しながらアイズは呟く

 

「そ…‥んな…………」

 

辺りの建物は全て倒壊していて、土煙の隙間からは、神が天界に送還された際に出る光の柱が立ち、斬撃の跡が地面に残り、斬撃は北区画と北の城壁まで切り裂き、遠くにあるベオル山脈の山の一つが真っ二つにしていることが確認できた

 

「アイズ、無事やったか!」

 

「ロキ!?」

 

喜んだロキの声が聞こえ、そちらを振り向くと両手から血を流したロキと満身創痍の【ロキ・ファミリア】の満面が現れ、一応は無事だったことをアイズは喜ぶ

 

 

「許されるギリギリで衝撃を逸らせるのが精一杯ね……」

 

下界で許されるギリギリの神の力(アルカナム)を使用したフレイヤは息を上げながら、地面に座り込む

 

「フレイヤ様!」

 

その姿にオッタル達が駆け寄り、フレイヤを気遣うが、フレイヤは右手で彼らを制し、

 

「今は、生き延びることだけを考えなさい、あれはただの振り下ろし、次は『技』も使って狙ってくる可能性があるわ」

 

今まで見せたことのない真剣な顔のフレイヤにオッタル達だけでなく、ミアでさえ顔を険しくし、「はっ!」と返事をし、周囲の警戒をする

 

 

「ミアハ、ヘファイストス、皆、大丈夫かい!?」

 

咄嗟にロキやフレイヤの様に神の力(アルカナム)を限界まで解放して、()()()()()()()()()()()()()()ヘスティアが慌てて聞くと「なんとか………」と放心状態のミアハ・ヘスティア・ヘファイストス【ファミリア】の面々が答える

 

「は、初めてヘスティア様を敬おうと思いましたよ………」

 

「むっ、どういう意味だい!?サポーター君!!」

 

『不滅』を司る女神は伊達じゃないだぞぅとこんな状況にもかかわらず、竈の女神は普段通りであった

 

***

「さて……これからどうするか………」

 

左手で口を隠しながらカルキは思案する

 

「既に異端児(ゼノス)は賢者と共にどこかへ行ったし、ロキとフレイヤ【ファミリア】を『最強』だと言った者は消したから後はロキ神とフレイヤ神を天界に還せば最小限の犠牲で済むが………気が乗らんな」

 

フレイヤとロキを天界に還そうとすれば、天界に還すことを阻止しようとする眷属達と闘うことは誰でも予想できるが、戦えばカルキとの実力と武器の差で一方的どころか弱い者いじめになる。それは興が乗らないとため息をつく

 

が、このままインドラを不機嫌にしたままではオラリオにヴァジュラが飛んでくる。そうすれば待っているのはオラリオ崩壊どころの騒ぎではない

 

「いっそ、インドラ神に剣舞でも捧げるか………?」

 

「いいや、その必要はないぞ」

 

思わず出た独り言に答えた存在は髪を角髪にし、腰に刀を差した男神であった

 

***

「こ、今度は何だ!?」

 

突然晴れていた空が雷雲に覆われ、暗くなったオラリオの空を見上げ、誰かが悲鳴を上げ、人々は呆然と空を見上げる

 

「タケ………」

 

その雷雲の正体は、カルキと向かい合うタケミカヅチから漏れ出た神威の影響であると、唯一、その場から動かなかったヘスティア達だけが認識していた

 

「あ、あれが本当にタケミカヅチ様なのですか………?」

 

そう命が呟くがヘスティア、ミアハ、ヘファイストスは無理もないだろうと思う、今のタケミカヅチからは普段の快活な雰囲気はなく、飢えた獣のような雰囲気を纏っていた

 

「初めましてとでも言おうか、カルキ・ブラフマンよ」

 

「インドラ神以外の雷を司る武神……貴神がタケミカヅチ神ですか、話はインドラ神から聞いております」

 

どこか和やかに、しかし、その間には濃密な殺気と闘気が充満し、近くにいるはずのヘスティア達は圧倒され、カルキとタケミカヅチの間に入れない

 

「それで、自分に何用でしょうか?」

 

「ああ、なに、一つ提案があるのだ」

 

「………ほう?」

 

タケミカヅチの言葉にカルキだけでなくヘスティア達も疑問に思う中、タケミカヅチは嗤い

 

「なに簡単なことだ────今から闘争でもどうだ?」

 

『ッツ!!?』

 

「タケミカヅチ!!」

 

タケミカヅチの『提案』に固まるヘスティア達とギルド本部から到着したウラノスが怒るが、タケミカヅチは鼻で笑いながら

 

「おいおい、ウラノス、俺はこのオラリオを守るために『提案』したんだぞ?このままインドラを不機嫌にしたままではオラリオにヴァジュラを投げ込むだろう……そうなればこれ以上の被害が『世界』に出る、それは避けねばなるまい?」

 

「そ、それは……」

 

「それにな、犠牲を最小限にとどめるにはフレイヤとロキの首とその眷属を塵殺することだが、たかがあの程度の連中に神造武器を使うのは(武神である自分)が惜しい、カルキ・ブラフマンも不本意だろう………ならば俺とカルキ・ブラフマンの闘争でインドラを満足させるのが一番だ」

 

一見、カルキを気遣っているように聞こえる意見であるが武神をよく知るウラノス、ヘスティア、ミアハ、ヘファイストスはその魂胆を見抜いていた

 

『それはただお前(タケミカヅチ)が戦いたいだけだろう』と

 

それをタケミカヅチにぶつけてやろうとヘファイストスが思った瞬間

 

「クハハハ!良いではないか!先ほど、うっかりイケロスを殺してしまったから暇でな、その『提案』受けてやれカルキ」

 

「ああ!極東の『技』俺も久しぶりに見てみたいものだ!!」

 

「やるならば早くしろ『戦争』や『稽古』であるならば夜まで打ち合うが『闘争』は日が出ている間だけだ………」

 

「カーリー、ガネーシャ、ソーマ…………」

 

背後から3柱が音もなく現れ、タケミカヅチとカルキの『闘争』が心底楽しみだと笑う

 

「確かに自分もインドラ神より聞いている極東の『技』ぜひ見てみたい、それにフレイヤ・ロキの眷属を塵殺するのも気が乗らない………その『提案』受けましょう」

 

そう言うなやいなや笑みを浮かべながら槍を構えるカルキにタケミカヅチも獰猛に笑い、角髪を束ねていた紐が千切れ、長い髪を振り乱し、刀を抜き、自然体で構える

 

「では────我が名はカルキ・ブラフマン、人の身で天界へと至り、偉大なる『リグ・ヴェーダ』の神々に弟子入りし磨いた我が『武』を極東の武神にぶつけよう!!」

 

「いいだろう!カルキ・ブラフマン!我が名はタケミカヅチ!極東『タカアマノハラもしくはタカマノハラ・タカマガハラ』の『雷』を司る『武神』なり!!」

 

「いざ────────参る!」

 

「来い!!」

 

次の瞬間、カルキとタケミカヅチの姿は掻き消え、カルキの振り下ろした槍とタケミカヅチが振り上げた刀がぶつかり合った轟音と衝撃がオラリオを襲った

 

***

「おい!あれ!!」

 

「嘘だろ………」

 

「なんだよこれは………」

 

オラリオを轟音と衝撃が襲う前、突然暗くなった空に『ダイダロス通り』から吹き飛ばされ、命からがら助かった誰もが呆然としていると、ギルド職員が慌ててウラノスからの通達を伝えると「西と南区画の放棄!?」と動揺が走るが

 

「ッツ!伏せろぉ!!」

 

緊迫した神の声がした瞬間、轟音と衝撃がオラリオを襲い、地面に伏せた人々が恐る恐る顔を上げると、目に飛び込んできたのは、空を追う分厚い雷雲と地面が割れ、あれほどにぎわっていた大通りの建物が次々と倒壊していく様子だった

 

「あ……ああ………」

 

「み、南区画が…………」

 

建物が倒壊したせいで見通しが良くなり、人々の眼には東区画に続き南区画が崩壊したことが映り、その崩壊した南区画で激しくぶつかりあう大槍を振るう者と長い髪を振り乱しながら刀を振るう2つの人影が映る

 

「もう終わりだ…………」

 

そう誰かが力なく呟いた言葉は再び響いた轟音にかき消された

 

***

「(これが……これが極東の『技』か!!」

 

タケミカヅチと打ち合いながらカルキは震え口角が上がる

 

「(インドラ神やスガンダ神から『極東の技は見てると頭がおかしくなる』と聞き及んでいたが、まさか一つの斬撃に三つの斬撃を内包し、全て同時に放つとは!!)」

 

しかもその全てが急所狙いの一撃必殺、当たればいくらアムリタを飲んだカルキでも一撃でも貰えば天界送りは間違いない。更にタケミカヅチは、一瞬で消える踏み込み────次元跳躍を使用した『突き』や、一瞬で納刀したかと思うと、すぐさま自分の首筋に全く軌道の見えない超神速の抜刀術を放ち、カルキはどうにかその技を受け止めていた

 

「(ならば)────────(アグニ)よ!」

 

「!」

 

カルキが槍に炎を纏わせ、威力を底上げさせた一撃をタケミカヅチが防ごうと構えた刀とぶつかり

 

「────ォオオオオッ!」

 

「!?」

 

カルキが咆哮し、タケミカヅチを吹き飛ばす。そしてカルキはすぐに『奥儀』を放つべく右手で顔を覆い

 

「極東の武神の『技』に神々より授かりし『奥儀』で応えよう、ブラフマーストラ!!」

 

37階層でジャガーノートを消滅させたときの様にカルキの眼から光線が放たれ、その光線は崩壊していた南区画を襲い、南区画にある瓦礫を爆発させ跡形もなく吹き飛ばす

 

「………やはり立つか………」

 

が、カルキの眼に映っているのは、左腕を炭化させ、全身がボロボロになりながらも獰猛な笑みを浮かべる武神の姿、一瞬だけ天界に還る光が上りかけるが、タケミカヅチの気合一つで光は霧散し、無傷のタケミカヅチが現れる

 

「ああ────出来ることなら…………」

 

そう惜しむように呟いたカルキは槍を持ち直し、再び極東の武神と打ち合うべく踏み込んだ

 

 




次はタケミカヅチ視点とインド神視点かな………?



いかん、これ終わった後に踊らせてもギャグみたいにしかならん、どうしよう

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