ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか 作:その辺のおっさん
ベル「やった………クリアだ………」
神々・人々「「「へー、結構面白そう………」」」(『神の鏡』で中継)
???「よくぞ大魔王アイズを倒した、勇者よ……我が野望はここに潰えた」
ベル「………?あれ?なんか嫌なよか…」
カルキ「故にこの言葉をくれてやろう………『死 ぬ が よ い。』」←ヴィジャヤ装備
ベル「ファッ!!??」
神々「「「何だこのクソゲー!!!!????」」」
カルキ「10秒生き残れば第一段階クリア、10の顔と20の腕を持つ姿となる第2形態、インドラの冠、スーリヤの鎧、シヴァの炎で出来た2頭の馬に引かせた戦車、ヴィジャヤ、シミター、パラシュを装備した第3形態を合計30秒生き残ればクリアです」
ヘスティア「………クリアできる奴、いるの?それ」
どうにも前回の最後に出てきた神のことを皆気にしていますが、
………ちゃんと言っているじゃないですか
『ちょっと話をしよう』って
「いい場所があるんだ、付いて来るといい」
「あ、ま、待ってください」
クルリと踵を返し、ベルを誘うマハーデーヴァと名乗った神にベルは困惑するが、まるで逆らえない水の流れに沿うように神の後を着いていく
────そこで、ふとベルは疑問に思う
「(人の気配が無くなった………?)」
先程まで、自分に向けられているために、感じていた悪意や敵意を持った己を監視する視線、それが、追っている神と会う直前に、一瞬で消えたのだ
話しかけられたときは何も感じなかったが、流石にベルも違和感を持ち、直ぐに一つの考えに至る
「(こ、これって………何かの罠!?)」
そう思うと途端に不安になってくるのが人というものである
ベルは何としてでも逃げなければと思い、どうにか理由をつけて逃げ出そうと考えた時、目の前を歩いている神は急に振り返り
「安心したまえ、只の『人払い』さ、罠じゃあない」
「ッ!!」
まるで「考えなどお見通し」と言わんばかりに微笑む男神にベルは戦慄し、背中に冷や汗を流すが、男神は気にする素振りもみせずに、明るい声でベルに語りかける
「なぁに、怒っちゃいないさ、君はまだ幼…いや、若い。人から『悪意』を向けられるのなんて初めてだろうし、気が立つのも分かる」
「っ…………ごめんなさい」
「謝るようなことじゃあない、ああ、それとチャイを用意してあるから飲むと良い、そうすれば多少は落ち着くだろうしね」
そう言って、再び歩き始めるマハーデーヴァを名乗る神の後ろを大人しく、しかし、緊張しながらベルは着いていった
───ただし
「おい!あの兎野郎何処に消えやがった!?」
「いや、確かにそこを歩いていたんだがよ………」
「バカ言え!人間が急に消えるわけねぇだろうがよ!!」
「何も見えない!目が!!目がぁぁぁああァァァ!!」
…………一部大騒ぎを起こしながら、ではあるが
そんなことはつゆ知らず、謎の神についていくベルであったが、やがて男神は、とあるオラリオの裏通りのど真ん中に不自然にありながら、まるでそこにあるのが当然の様に感じる扉に手をかけ
「さ、此処だ、入っていいよ」
「え…………?」
オラリオの裏通りをクネクネと歩いた先にあった扉、その扉を開けたら、そこに広がっていたのは………
「ええぇぇェェ!!」
「ハッハッハ!良い反応だ」
そこに広がるは一面の砂浜、静かに響く波音、そして三日月が照らす夜空に満天の星
…………およそこの世とは思えない絶景にベルは驚愕し、あらん限りに目を剥く
「立ってるのも疲れるだろ?椅子あるから座りなよ」
「えっ!?あっ、はい、失礼します………」
「ほら、チャイだ、口に合うかわからないけどね」
「あ、ありがとうございます」
いつの間にか、目の前には風景にピッタリな木でできた机と揺り椅子が並んでおり、恐る恐る座ると、いつの間にか男神の後ろから荘厳な鎧を着た寡黙な男が姿を現し、何処で淹れたのか、飲み物が入った木のコップを差し出し、慌てていると「気にしなくていいよ」と微笑まれ、恐る恐るゆっくりと飲む
「!美味しい……」
「ハハハ、やっと笑顔が出たね、パールヴァティーに頼んで用意していた甲斐があったものだ」
「あ、ありがとうございます?」
「なぁに、気にすることじゃあないさ………じゃ、ちょっと落ち着いてから話そうか」
そう言って、揺り椅子でリラックスしている神に影響されたのか、暫くベルはゆっくりと波の音を聞きながら、穏やかな時間をすごしていた
※※※
「…………」
「リオン………」
以前に【イケロス・ファミリア】について話した酒場の2階に、アスフィ、リュー、アイシャは情報のやり取りを行うために集まっていた
…………が、ほぼ無理矢理アイシャが連れてきたリューだけは昨日から雰囲気が暗い
「アンドロメダ………私のせいなのだろうか………」
「ッ!」
俯きながらポツリと漏らした妖精の問いにアスフィは何も答えられない
リューの脳裏に焼き付いて離れないのは、カルキとタケミカヅチの『闘争』の余波で全壊した『豊穣の女主人』の建物の前で、自分達の『家』が無くなったことに涙し、理不尽に奪われたことに拳を震わせる同僚たち………特にアーニャは普段の明るさは一切消え、見ていられない程に憔悴していた
そして、リューにとどめを刺したのは『カルキがかつての同朋……死んだはずの【アストレア・ファミリア】の仲間たちに天界で手を付けた』ということ
オラリオの平和と安寧のために『闇派閥』と闘い、【ルドラ・ファミリア】の謀略により産み出された『厄災』に命を奪われ、天界でその魂を安らぎ、漂白され、新しい命として輪廻するはずの場所で、彼女たちは純潔さえも汚されたのだ
「あーっ、湿っぽい!!これだからエルフってやつは面倒くさい!」
「ちょっ!?」
ガジガジと後頭部を掻きながら、立ち上がったアイシャにアスフィは驚くが、アイシャはリューの胸ぐらを掴み上げ
「じゃあ、アンタはそのままあの野郎に仲間を汚されたままで良いってのか!?アタシだったら一発ぶん殴らなきゃ気がすまないね!!」
「………っ!それは…‥!!」
そんなことは不可能だとリューは言外に語る
『神の力』を使うことなく、目の前で誰も辿り着いていない圧倒的な『技』を見せつけながら飛んでくる瓦礫を一つも人々にいる場所に落とさなかったガネーシャとタケミカヅチ、そして遠目でしか見えなかったが、オラリオどころか大陸を焼き払わんばかりの『闘争』を繰り広げたソーマとカルキの体を依り代にしたインドラ
決して人間には届きそうもない領域をまざまざと見せつけ、嫌というほどに思い知らせた4柱に喰らいつける実力を有する男にどうやって一発殴れるというのか
「コホン……とりあえず、あの規格外のことは置いておいてください。今は例の『武装したモンスター』について説明させてもらいます」
このままでは埒が明かないと判断したアスフィがわざとらしく咳払いをし、今回の『武装したモンスター』について、そして今ベルが置かれている状況について話し始めた
***
「ハハハ!!いやぁ、君の祖父は随分とまあ愉快な人物だったんだねぇ!うん、君がおじいさんが大好きだった理由がよくわかるよ」
「な、なんか恥ずかしいんですけど………」
「いやいや、恥ずかしがることなんてどこにもないじゃあないか!むしろ君がそう思ったことを貫き通せばいいことさ」
「………でも、僕はおじいちゃんとの約束を」
多少落ち着いてから、ベルはマハーデーヴァからいくつかの質問を受けた
何故オラリオに来たのか?オラリオに来てから何を感じ、何をしたのか。そして『何故英雄に憧れたのか』
いくつかのやり取りをしていくうちに、ベルは天性のお人好しっぷりを発揮し、ついさっきまでは警戒してたのもどこへやら、普段、ヘスティアや仲間たちに向けるような砕けた話し方へとなっていた
が、やはり、先日のことに関しては未だに迷いがあるのか、顔を曇らせる
「あっ、ごめんなさい、初対面の神様にこんなことを………」
「ふむ………こういうのは本人が気付くべきであまり教えるのは良くないんだが……まあ久しぶりにあの好々爺のことを聞かせてくれたお礼に教えようか」
それを見て、少し考えた後、右の人差し指を立てながら、教えるようにベルに語りかける
「『英雄になろうとした瞬間、英雄の資格を失う』とはインドラの奴の考えだけど…ま、正しいと思うよ。英雄になろうとする奴は必ず『名誉』や『名声』ってのを求める………そのためには例え自分が正しかろうと、己の信念に反することであろうと、他人から『己の行いがどう思われるか』というのを第一にしてしまう…………つまりは君の祖父の言う『他人に己の意思を委ねる』って奴さ、そんな俗物がいつまでも『英雄』って呼ばれるかい?」
「それは…………」
「それに『正しい行い』なんてコロコロ変わるものさ、百年前の『正義』と今の『正義』は違うし、今の『正義』は百年後の『悪』かもしれない」
何処か冷めた目で虚空を見る男神に、ベルは薄ら寒いものを覚えるが
「でもね」
「?」
「たまーにいるんだよ、『名誉や名声?他人の思惑なんか知ったことか!』って言わんばかりに、その行動が良かろうが悪かろうが、己を曲げずに、突っ走ってボクたちすら驚愕させて世界に名を刻んでみせる『大馬鹿』が」
思い出すように目を閉じ、微笑む男神にベルだけでなく、後ろに控えている神も驚いた雰囲気になるが、マハーデーヴァはそんなことを気にする様子もなく
「そんでもって、そういう奴らってのは漏れなく強欲で傲慢なのさ………100を拾おうとして周りから馬鹿にされて、でもまた100を拾おうとする、これを強欲と傲慢と言わずして何というのか」
その男神の言葉にに何か貫かれたような、天啓を受けたような雰囲気で呆然とするベルを見て、可笑しいのかコロコロと笑う男神であったが
背後に控えている男神がそっと耳元へ近づき「そろそろ…」と耳打ちをすると「じゃあ、きょうはここまでかな?」と言ってベルに「お開きにしようか」と笑いかけ、ベルに立つように促す
「いや、今日は忙しいのに悪かったね、ベル・クラネル」
「いえ…………こちらこそ飲み物まで頂いてありがとう御座いました」
「なぁに気にすることはない………じゃ、彼を送ってあげて」
一礼して去るベルに「ああ、そうだ」と何かを思い出した男神はベルの背中に向かって声をかける
「最後にインドラからの伝言を伝えておくよ………『女神から告白されたらこれ以上無いって次元でこっ酷くフッてやれ!何なら畜生の臓物でも顔面にぶつけてやりゃあもっといい!このインドラが許す!!あの思い上がった腐れ女にゃあそんぐらいが丁度良いだろうよ!!』ってさ」
最後の伝言に「は、はぁ………?」と困惑しながらベルは、その空間からオラリオへと戻っていった
※※※
「………そんなに彼は気に入らないかな?………スカンダ」
ベルが出ていってからしばらく経ち、未だにリラックスした状態で椅子に腰掛ける男神に、鎧を着た神は顔色一つ変えずに進言する
「あの者は少しゼウスに影響されすぎています…………それに周りに女が多い……あれではいずれ女関係で破滅しましょう」
「ハハハ、そりゃまぁ、育ての親なんだから仕方ないね!」
カラカラと腹を抱えて笑う男神に、僅かに不機嫌になり、神威と怒気だけで空間にヒビを入れるスガンダを見ても態度は変わらず
「相変わらず『色事』が苦手だねぇ…………でも、いいじゃないかたった一人の女の子の涙を厭い、突っ走る『異端の大馬鹿者』ってのもさ」
「…………ゼウスやインドラは好みそうですが」
「『男を堕落させるのは酒と博打と女…………だが、酒を知らねば仲間と交わる楽しみは減り、博打を知らねばここぞという際の勝負所に弱く、女を知らねば騙され、子は成せぬ』とも言うじゃあないか」
「それは『ある程度の節度を持て』という意味です」
ピシャリと言い切ったスカンダに苦笑していたが、スッと目を細め
「ま、カルキから聞いていたとおり、彼の本質は『善性』だね………流石はヘスティアといった訳だ。眷属を見る目はある」
「それについては同感です………しかし、その『善性』が己の危機を招いているのでは?」
「だから、どうなるのか興味があるんじゃぁないか…………彼が負けて、神に踊らされる有象無象なのか、乗り越えて行く『英雄』ってやつなのかをさ」
そう薄く嗤う神に、スカンダは小さくため息をつき
「それで、天界にはいつお戻りに?」
「え?戻んないよ?」
「………は!?」
「いや、ボク以外に『破壊者』名乗ってる奴がいるらしいじゃん?それにほら、ガネーシャの奴がルドラみたいに鈍ってないか気になるし」
「……………」
「それにここってさ、ボクが世界と世界の狭間に新しく創った世界だし、誰にも観測されずに下界眺められるから何かと都合がいいんだよね」
暫くなんとも言えない顔をしていたスカンダであったが、その男神の神意が硬いのを受けて、何処か疲れたようではあるが一礼し、従うことを宣言する
「承りました………我らが
※※※※
その頃『アイアム・ガネーシャ』では
「………カルキよ」
「はい」
「何故だかさっきから背筋が凍り付くのだが、まさか『あのお方』が動いたなんてことは…………?」
「流石にそれは………」
「ない‥…と言い切れるか?」
「………………」
ガネーシャとカルキの間に何とも言えない空気が漂っていた
『人払い』のために目を『破壊』された人………アミッドでもカルキの持っている薬でも二度と治せないぞ(ニッコリ)
流石は下半神、カルキがうっすらとしか分からなかった『娘』の秘密をチラリと見ただけで相手に気付かれずに看破した模様
「えー?君達が捨てたんだろう?だったらボクたちがどう『処分』しようが君達には関係ないじゃないか」って言いながら笑うシヴァの前に晒される『豊穣の女主人』の妹猫を見て曇るフレイヤと兄猫………見たくない?