ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか   作:その辺のおっさん

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初めて評価がつきました。ありがとうございます

ここはこうしたらいいよ等の意見募集中です。何分、初投稿なもので


第3話

日が沈もうとし、暗くなり始め、うっすらと満月が輝き、魔石灯の明かりがつき始めたオラリオの大通り、ガネーシャから魔石を換金してもらったカルキは、先刻出会った女神の本拠(ホーム)へと向かっていると、少し離れたところから

 

「あ、カルキさーん」

 

自分が向かっている方向から自分を呼ぶ声がしたので、声のした方向をみると、丁度、自分が夕飯に誘おうかと思っていた白い髪と紅い眼が特徴でどことなく白兎を彷彿させる少年がこちらに向かってくるのが分かった。この少年こそ、【ヘスティア・ファミリア】の唯一の眷属でしばらく一緒に暮らしたことのあるベル・クラネルである。久しぶりに会うカルキに嬉しそうなベルの呼びかけに片手を上げて答えつつ、ふと疑問に思ったことを聞く。

 

「ベル、久しぶりだな……ベル一人か?」

 

そう、ベルの主神であるヘスティアがいないのである、実は、ヘスティアは自神の唯一の眷属であるベルをちょっと、いや、かなり溺愛しており、それは、カルキが一緒に住むことになる前も「ここはボクとベル君の愛の巣だぞぉ~!」と反対していたのだ(ただし、すぐに一緒に住むことを認め、カルキを迎え入れたが)そしてその溺愛っぷりは今も変わらないため、カルキはベルが一人でいることを疑問に思ったのであった

 

「いや、実は……」

 

何でも、ベルのステイタスを更新し、ステイタスの上昇が凄いことになっていることを話した後、怒りはじめ、バイト仲間との打ち上げがあると言って出て行ってしまったらしい、ちなみに怒った理由はわからないそうだ

 

「(ふむ、これは何か気に入らないことでもあったな、恐らくスキル関連で)そうか、実は今日、バイト終わりのヘスティア神にあったので偶には一緒に夕飯でもと思っていたが、それなら仕方がないな、ベル、一緒に夕飯でもどうだ」

 

「じゃあ、今日、僕が行こうと思っていた店に行きませんか?一人だとちょっと不安で」

 

どうやら行きたい店があるようなので一緒に行くことにしたのだが、その店は酒場のようで、どうしてその酒場に?と聞くと、今朝、落とした魔石をその酒場の女店員に拾ってもらい、さらには昼飯ももらったので、そのお礼も兼ねてその酒場で夕飯を食べるつもりらしい……が

 

「(いや、明らかに騙されているぞ、ベル)」

 

明らかにその女店員に騙されて、カモになっている白兎のお人好しっぷりに頭痛がしたが、この少年、無類のお人好しの上、このオラリオに来た理由が訳すると『英雄譚に憧れ、ダンジョンに女の子との出会いを求めて』である。そして、そんな女性に幻想を抱いている少年に残酷な事実を教えるのが正解であろうか、否、それは少年が自分で気づくことが正解であるとカルキは思っている。まあ、オラリオに来た理由が妙に子供っぽく面白いと感じたからカルキもベルに目をつけているのであるが

 

そこから店につくまでここ最近のベルの話を聞いていたのだが、どうやら2日前、ダンジョン5階層でミノタウロスに襲われ、【ロキ・ファミリア】の【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインに助けられたらしく、さらには一目惚れをしてしまったらしい

 

「(やれやれ、ベルはあんな堕ちた復讐者のどこがいいのやら)」

 

カルキが内心呆れていると

 

「……ここ、だよね」

 

とベルが言ったのでどうやら件の酒場についたようである。その酒場は『豊穣の女主人』、『豊穣』ということで美と豊穣を司る面倒な女神(フレイヤ)を思い出し、カルキは嫌な予感がして、ベルに話しかけようとすると

 

「ベルさんっ、あら?そちらのお方は……?」

 

どうやら一歩遅かったらしい、ベルが店員に捕まってしまった

 

「あ、えっと、この人は」

 

女性に耐性を持っていないベルがかわいそうなので自己紹介しようとその店員を見ると、やはりというかその店員からは例の女神(フレイヤ)とのかなり深いつながりを感じられた

 

「カルキ・ブラフマンだ、今日はベルの相伴にきたんだが、迷惑だったか?」

 

「いえいえ、迷惑だなんて、私はここの店員のシル・フローヴァです」

 

お互い目が笑っていない自己紹介をすると「お客様2名入りまーす」と酒場の隅に当たるカウンター席へと通された。隣ではベルとシル、そしてここの女将が何やら面白いやり取りをしていたが、カルキは酒場で働いている店員を観察していた。なぜなら、ここの制服と思われる服を着た店員は行ったり来たりせわしなく働いているが、その特徴として、従業員のすべてが女性であり、そのうち何人かは、武器を使う者特有の歩き方をしていたからだ

 

「(ほう、あの猫人(キャット・ピープル)は槍、黒い方はナイフであの人間は徒手格闘で二人とも暗殺者(アサシン)、あっちのエルフは刀、いや木刀か?……やはり、普通の酒場ではないな)」

 

間違いなくワケ有りな女性従業員が働く酒場に面倒ごとが起こりそうだ、いやそれはそれで世界を担う英雄の卵に会えるかもしれぬと思っていると

 

「あんた、ウチの子供に色目使って注文しないってんなら店の外にぶっ飛ばすよ」

 

恐らくはこの酒場の女将であろうドワーフににらまれてしまったようだ、まあ、普通に戦っても勝つのはカルキだが、ここは酒場、注文せず店員を観察していた自分に非があると思い、ベルに何を頼んだのか聞くとパスタを頼んだという答えが返ってきたので自分も同じものを注文し、酒は二人とも頼まなかったが女将が勝手にエールをドンっとカウンターに叩きつけたのでベルと苦笑いしつつ乾杯し、暫くベルと話しながら待っていると山盛りのパスタが出され、さらには注文していないはずの魚の姿焼きまで出てきて、やはりベルは騙されたな(カモにされた)と思いつつ、それぞれカルキが3分の2、ベルが半分ほどパスタを食べたところで

 

「楽しんでますか」

 

「圧倒されてます」

 

「まあ、料理が美味しいし、楽しんでいるといえば楽しんでいるな」

 

横からスッと諸悪の根げ、否、シルがやってきてエプロンを外して壁際にあった丸椅子をとってベルの隣に陣取り、「いいのか」と女将に視線を送ると口を吊り上げながら顎をあげたのでどうやら許されているらしい、そのままベルとシルの会話を聞いていると女将の名前はミア・グラントといい、元冒険者で【ファミリア】の主神から許可を得て半脱退状態であるらしい。あの女神(フレイヤ)がそんなことをよく許したなと思ったが、シルが酒場で働いているのは要約すると『人を通して新しい発見があり、心が疼くから』らしい、まあ、あの女神(フレイヤ)にかかわりがある者なのでそうしているのだろうと思っていると

 

「ご予約していたお客様のご来店ニャ!」

 

定員である猫人の少女が招き入れた団体様がやってきたかと思うと、ベルの顔が真っ赤になったかと思うとカウンターに顔を伏せてしまった。シルも混乱しているようだが一体何が起こったのやら




追記

カルキとシルが会話しないのは、カルキがシルとフレイヤが何かしらの関係があると気付いたことをシルが気付いたためです

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